温泉シナリオよく分からん、とりあえず1天井でテイオー完凸と女将1枚手に入れたので大勝ちではある。
なんとかイクノでUS1出しました、イクノ以外は出てません。
アルテミスステークスから一夜明けた放課後。
窓の外からは夕陽が差し込み、机の上に積まれた書類を黄金色に染めていた。
トレーナーさんは、その書類を一枚ずつ丁寧にめくっていた。
シャツの袖口から覗く腕時計の針は、午後3時を少し過ぎたところを指している。
「昨日のレース、よく頑張ったな。初めての重賞で、あの展開を逃げ切れるのは大したもんだ」
「はい。ありがとうございます……」
ソファに座りながらそう答えると、胸の奥がじんわりと温かくなる。
ゴールした瞬間の歓声。風を切る感覚。心臓の高鳴り。どれもまだ身体の中に残っている。
アルテミスステークス、初めての重賞。
勝てた。……勝ったのに、なぜか心のどこかがざらついていた。
何に引っかかっているのか、自分でもうまく言葉にできなかった。
けど、なんとなくレースの時の光景が頭に浮かぶ。
「……最後、少し危なかったですよね」
背後の足音を感じた瞬間、身体のどこかが冷たくなった。誰かに追われる感覚──それだけは、なぜか懐かしかった。
自然と口から出た言葉に、トレーナーさんは頷きつつも首を傾げた。
「うーん……まぁ、危なくないと言えば嘘になるが……。あれぐらいなら、気にしなくても大丈夫だ」
そう言って、彼は少しだけ椅子の背にもたれる。
机の端には、昨日の新聞が置かれていた。紙面には『新星ユーフォリア、圧巻の逃走劇』の見出し。だけど、私の目はその横に小さく載った別の記事に向いた。
『ケイエスミラクル、近日退院へ』
目に入った瞬間、胸の奥が熱くなる。
──ああ、そうだ。ミラクルさん。
気づけば私は、その名前を呟いていた。
「……トレーナーさん。今日、ミラクルさんに会いに行ってもいいですか?」
「ミラクルさんにも、勝ったことを報告したくて」
「もちろんだ。ミラクルもきっと喜ぶ」
即答だった。
胸の奥で何かが軽くなるのを感じながら、私は小さく頷いた。
「ありがとうございます。じゃあ……病院に行ってきます」
そう答えて、ドアを閉めた。
外の空気は少し冷たくて、でも心の中は不思議と温かかった。
……
病院の廊下は、やけに静かだった。
窓から差し込む午後の日差しが白く反射して、床を淡く照らしている。
受付で病室を聞いて、廊下を歩くたびに、消毒液の匂いが鼻をかすめた。
軽くノックして、ドアを開ける。
「……失礼します」
ベッドの上では、ミラクルさんが座って本を読んでいた。
私の顔を見るなり、彼女はぱっと表情を明るくした。
「ユーフォリアさん……! 来てくれたんですね」
「はい。……突然、すみません」
「全然ですよ。むしろ、来てくれて嬉しいです」
彼女の声は以前より少しだけ落ち着いて聞こえた。
脚にはまだ軽いサポーターが巻かれているけど、表情には前のような痛みの影が薄い。
あのスプリンターズステークスの日から、もうひと月以上が経つ。
時の流れが残酷でありながら、やさしくもあることを、今さら思い知らされた。
「……怪我の具合は、どうですか?」
そう尋ねると、ミラクルさんは少し照れたように笑った。
「……そういえば言ってませんでしたね。全治1か月くらいって言われてたので、もうすぐ退院できるんです。早ければ来週には」
「そう、なんですか……! 本当によかった……」
「ふふっ。ユーフォリアさんらしい反応です。そんなに安心した顔されると、少し照れますね」
思わず頬が熱くなる。
彼女が笑っている。それだけで本当に胸がいっぱいになる。
「……アルテミスステークス、見ましたよ」
「えっ……! 見ていてくれたんですか?」
「もちろんですよ。あの逃げ切り、すごかったです。テレビの向こうからでも、風が届いたような気がしました」
彼女の言葉は穏やかで、それでいて心の奥まで届くようだった。
「ありがとうございます。……でも、最後、少し危なかったんです。少しでも気を抜いてたら、追いつかれてました」
「そう……ですかね? ……けど、勝ったじゃないですか。逃げるって、誰より勇気が要るんですよ」
そう言ってミラクルさんは軽く笑った。
その横顔を見て胸の奥がまた温かくなる。
この人の笑顔は、誰かを前に進ませるためのものだ。なぜだかそう思えた。
「やっぱり、ユーフォリアさんが走る姿って……いいなって思うんです。おれが走れない今だから、余計にそう思うのかもしれないですけど」
「ミラクルさん……」
「おれも、また走れるように頑張ります。だから……」
「──その時は、もう1回並んで走ってくださいね。前に言った約束、まだ覚えてますから」
「……もちろんです。私も、忘れてません」
窓の外から、秋風がひゅう、とカーテンを揺らした。
淡い光の中で、彼女の笑顔はあの夏の日と変わっていないように見えた。
……
病院を出ると、いつの間にか空が薄暗くなっていた。
街灯がゆっくりと点り始め、窓に映る光がひとつ、またひとつと増えていく。
昼間の病室の白い光が、もう遠い昔みたいに思えた。
『──もうすぐ退院できるんです。早ければ来週には』
その言葉を思い返すたびに、胸の奥に小さな灯かりがともる気がした。
勝ったことを喜んでもらえた。それだけで、なんとなくあのざらつきが薄れた気がする。
そんなことを考えながら、私は学園の寮へと歩いた。
寮の前に着く頃には、空に月がかかっていた。
廊下を静かに歩いて、部屋のドアの前で一度立ち止まる。
中から物音がしない。
「……ラサさん?」
静かにノックをしても返事はない。
部屋のドアを開けると、電気はついていなかった。
ただ、ラサさんの机の上のランプがぼんやりと橙色に光っている。
その下にはラサさんが突っ伏していて、寝息を立てていた。
「……寝ちゃったんだ」
小さく呟いて、そっとドアを閉めた。
机の上には、開きかけのノートと、半分ほど飲みかけのマグカップ。
その隣に、木の縁の写真立てが立てかけられていた。
なんとなく視線が吸い寄せられる。
ふと覗き込むと──そこには、二人のウマ娘が並んで写っていた。
片方は見覚えのある顔。今より少し幼いラサさんだ。
もう片方は、年上の女の子。
ラサさんと同じ瞳の色で、どこか面影のある、優しそうな笑顔。
(……お姉さん、なのかな)
誰に聞かせるでもなく、心の中で呟く。
ランプの明かりが、ガラス越しに淡く反射している。
それを見つめていると、胸の奥にかすかな痛みが生まれた。
──私も、誰かの記憶の中にこうして残る日が来るのだろうか。
そんなことを考えた瞬間、ラサさんが微かに身じろぎした。
寝言のように小さく、「……お姉ちゃん」と呟く。
その声が、静かな部屋の中でほんの少し震えた。
私は何も言わず、ラサさんをそっとベッドまで運んであげた。
それから自分のベッドに腰を下ろして、窓の外を見上げる。
夜空はどこまでも澄んでいて、星がひとつだけ瞬いていた。
手のひらに残る温もりと、胸の奥のざらつきが、静かに混ざり合っていく。
明日になればまた走れる。
そう思うのに、心のどこかがまだ波打っていた。
──そして、あの背後の気配が、今もどこかで追いかけてくる気がした。
来週はこの調子だと予定通り(20日に)投稿できると思います。
……にしても教室の描写とか最近どころかずっとしてないですね……。
直したい設定とかいろいろあってつらい。何やってんだ過去の自分。