キセキくん実装おめでとうございます!
史実でちょこちょこ見かけてたりエフフォーリアさんとも走っていらっしゃったので引きに行きました。
結果は140連で小さめのキセキが、180連で普通のキセキ(ふつ~のキセキではない)が出ました。仕方ないので200連まで回すとバンブーさんが出ました。それ以外出てないです、緑の悪魔め……。
あっエフフォーリアさんの名前出したついでに。ユーフォリアさんとエフフォーリアさんの関係は特にないです。名前が似てたり、同じ意味の"多幸感"だったりしますがないです。本当です。
でもエフフォーリアさんも大好きです。前述の理由もそうですし、若干見てた記憶がありますし。
一月上旬。
冬休みが明ける直前の朝は、目を覚ましただけで喉の奥がひりつくほど冷たかった。息を吸うたび、肺の奥まで凍っていくみたいで、思わず肩をすくめる。窓の外は白く霞んでいて、世界そのものが音を失ってしまったように静かだった。
重たい瞼を持ち上げて、違和感に気づく。
いつもなら聞こえてくるはずの寝息がない。
視線を向けると、隣のベッドはすでに空で、ラサさんは身支度を終え、椅子に腰掛けていた。足元には、彼女の持ち物がまとめられた荷物。きれいに揃えられていて、もう迷いが残っていないことが分かる。
なんとなく、机の方を見た。
そこにあったはずの写真立てがなくなっている。
代わりに、薄く積もった埃の上に、四角い輪郭だけが残っていた。何かが置かれていた、その痕跡だけが。
「……おはよう、リアさん」
名前を呼ばれて、ようやく息を吐く。
「おはようございます、ラサさん。……早いんですね」
「ええ。あまり長くいると、決心が鈍りそうでしたから」
そう言って、彼女は少しだけ口元を緩めた。
もう、言わなくても分かっている。
大切なことは、全部、あの夜に話した。だから今さら、引き止める言葉も、涙を誘う言葉も、ここにはなかった。
「掃除をサボったらだめですよ、リアさん。私がいないからって、部屋を散らかし放題にしたら承知しませんからね」
「……気をつけます。たぶん、ですけど」
「もう」
小さく笑うその声に、胸の奥がきゅっと縮む。
初めて会った頃に感じた、あの張り詰めた空気はもうなかった。
ラサさんは立ち上がり、私の机の上に、小さな包みを1つ置いた。見覚えのあるお菓子だ。
「後で食べてください。……これからは、一人のファンとして応援しています」
一瞬、言葉に詰まる。
彼女の手が、ほんの少しだけ私の肩に触れた。
その温度が、やけに鮮明だった。
「……はい。行ってらっしゃい、ラサさん」
「ええ。……行ってきます」
それだけ言って、彼女は振り返らずに部屋を出た。
バタン、と小さな音。
それが、この部屋で過ごした時間の終わりを告げたみたいで、胸の奥が静かに沈んでいく。
明日から、「おはよう」を言う相手はいない。
吐き出した息が白く曇って、すぐに消えた。
その白さが、胸の奥にそのまま積もっていくような気がして、私はしばらく、その場から動けずにいた。
………………
…………
……
放課後。
一度は寮の部屋に戻ったものの、扉を開けた瞬間に広がる静寂に、私は耐えられなかった。つい数時間前までそこにいたはずの人の気配が、音を立てて消えていくような感覚。隣の机に残された四角い埃の跡が、ラサさんの不在をこれ以上ないほど冷たく突きつけてくる。
私は逃げるように部屋を飛び出し、気がつけばトレーナー室の前に立っていた。
トレーナー室のドアをノックして中に入ると、渡辺トレーナーはいつものように机に向かっていた。けれど、その机の上に広げられていたのは、新しい年度の「クラシック戦線」を記したレースカレンダーだった。
「……来たか」
トレーナーは顔を上げ、私をソファに座るよう促した。
示されたのは、皐月賞、そしてそのステップレースとなる弥生賞への出走計画だった。三冠という、ウマ娘にとって最も輝かしい舞台が、鮮やかな文字でカレンダーに刻まれている。
普通なら胸を躍らせるはずのその計画を前にして、それをなぞる指先はわずかに震えた。
私の胸の奥には、正月の初詣で引いた「凶」の文字が、消えない棘のように刺さったままだったからだ。あのおみくじに書かれていた不吉な言葉が、冷たい風のように心を吹き抜ける。
トレーナーさんは資料を置くと、椅子を引いて私の正面に座り直した。その瞳には、いつもの信頼だけでなく、壊れ物を扱うような危うい慎重さが宿っていた。
「……ユーフォリア。レース、出たくないのか?」
その問いは静かだったが、今の私にはあまりにも重かった。もし私がここで「怖い」と言えば、彼は迷わずこのカレンダーを白紙に戻すだろう。トレーナーさんは、そういう人だ。
「……違います。走りたいです。走って、勝ちたい。ミラクルさんや、ラサさんのためにも」
私はすぐに否定した。それは嘘偽りのない、私の本当の願いだった。けれど、言葉にすればするほど、自分の中の矛盾が喉元までせり上がってくる。
「でも、怖いんです。……負けることじゃなくて、勝つことが。あのホープフルSの直線で感じた、あの冷たい感覚が、また私を飲み込もうとしている気がして……」
自分の意志とは無関係に、身体だけが「正解」を選び取っていくあの不気味な万能感。勝利を重ねるたびに、自分が自分でなくなっていくような、今の私が誰かに塗り替えられて消えてしまうような、たまらなく鋭い恐怖。
消え入るような声で打ち明けた言葉は、冬の夕暮れの部屋に重く沈んでいった。
トレーナーはしばらく沈黙し、私の震える手を見つめていた。やがて、彼は私の目をまっすぐに見つめて、静かに口を開いた。
「お前が何に怯えていても、俺は変わらずここにいる。……お前を迷わせるものが『影』なら、俺がその隣で灯りになる。いいな」
その揺るぎない肯定の言葉に、胸のざらつきが少しだけ和らいでいくのを感じた。たとえどれほど不吉な予感が現実に近づこうとも、この人が隣にいてくれる限り、私はまだ「私」でいられると信じたかった。
窓の外では、硬く閉ざされていた冬の空気が、夕映えの熱にわずかに解け始めていた。凍てつく別れを越えて、私は再び、闇を穿つ一筋の光のような決意を、胸の奥底に灯した。
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