記憶喪失ウマ娘は幸福になれるか   作:deyus

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おひさしぶりですでゆーすです。

いや、本当にお久しぶりです。
本当にいろんなことがありすぎて処理しきれずに遅れた感じですね。マジで忙しすぎた。

残りの3月中にやることは運転の卒業検定ぐらいなので、少しずつ遅れを取り戻していきたいです。具体的には今後出すやつを3月15日、3月23日、3月31日という感じで2日ずつ取り戻していく予定です。

あと今回の件を経て生存報告をしっかりしたいとも思いました。ハーメルンには活動報告があるので、もし遅れそうならそこに書きます。いつ地震とか起きてもおかしくないですからね。

逆に言えば私が生きている限りは絶対に書くので、活動報告すらされなったらそういうことです。



ここからはウマ娘に関するやつを書きます。好きな人だけ読んでもらえると。

まずは5周年おめでとうございます!
早いですね、私はカラオケで一生1周年の曲を歌ってます。3周年もいいぞ。あと5周年も聞きました。ありえんぐらいかっこよくて好きです。
アニメ2期オープニングのの因子を感じたり、ケイちゃんで聞くとCメロ?の歌詞が刺さって泣きそうになる。

あとトレーナー技能試験ですがケイちゃんで49位でした。どうして無料120連終わるまで期間がない??? 許さんぞサイゲ。まあ50位に入れたのでギリギリ満足してます、ギリギリですけど。


Ep.43 弥生の足音、紅き風

冬の終わりの、ツンとした冷たさが少しずつ和らいできた。

朝の陽光が差し込む廊下を、教室へと向かって歩みを進める。春の気配が混じり始めるのと歩調を合わせるように、学園の空気も少しずつ、張り詰めたものに変わっていく。それは、クラシック三冠の初戦へと繋がる大切な一戦、弥生賞が近づいているからであった。

 

すれ違う生徒たちから向けられる視線が、以前とは違うことに気づく。かつての「記憶のないウマ娘」という好奇の目は、今は「G1をレコードで勝ったウマ娘」としての期待や、その走りの質を確かめるような、どこか鋭いものに変わっていた。

 

あの冬の日、中山の芝を一番で駆け抜け、ホープフルステークスの勝者という肩書きを手に入れた。

それは自分の過去さえ持たない私にとって、あまりに眩しく、それでいてずっしりと重い。けれど今の私には、その「重さ」が、自分がここに生きている証のようで、どこか幸福に感じられた。

 

「……期待、されているのかな」

 

誰に言うでもなく呟いた言葉が、白い息になって朝の空気に溶けていく。

 

教室の入り口近く、掲示板に貼られた弥生賞のポスターの前で、私はふと足を止めた。皐月賞へと続く、重要なステップレース。そこには私と同じように冬を越え、牙を研いできた強い子たちが集まるのである。

 

過去の私が、どんな風にこの時期を過ごしていたのかは分からない。

だけど、今の私は一人じゃない。信じてくれる渡辺トレーナーがいて、想いを託してくれたラサさんがいて、再び並んで走ることを約束してくれたケイさんがいる。

 

教室の扉に手をかける前、私は一瞬だけ自分の脚をじっと見つめる。この脚で、私はまた新しい景色を見に行かなければならない。

弥生賞へと続く足音は、静かに、けれど確実に、私のすぐ後ろまで迫っていた。

 

………………

 

 

…………

 

 

……

 

放課後のトレーニングコース。

芝を掴む一歩一歩に、確かな重みを感じる。かつての冷徹な万能感はない。

肺を焼く熱さも、筋肉の張りも、今の私が"私"として走っている何よりの証であった。

 

(……このまま、もっと。自分の力で、新しい景色を見に行きたい)

 

そう願い、呼吸を整えて加速しようとしたその時だった。

 

穏やかな時間を切り裂くように、背後から猛烈な風が私の横を通り抜けていった。

 

「……っ!?」

 

一瞬、視界が紅く染まった。足を止め、その背中を目で追う。視線の先に、一人のウマ娘がいた。

風にたなびく燃えるような紅い髪。彼女が地を蹴るたびに、冬の芝が鮮やかに舞い上がる。

 

彼女はコーナーを抜けたところで速度を落とし、ゆっくりと振り返り、こちらへと歩み寄ってきた。

夕陽を反射する瞳は、獲物を仕留める鷹のように鋭い。彼女から向けられたのは、学園で浴びるような好奇の目でも、レコードホルダーへの羨望でもなかった。

 

それは、剥き出しの"敵意"。

──戦う者だけが持つ、純粋な闘争心だった。

 

「──貴女が、あの冬にレコードを書き換え、そして弥生賞で私、レガリアエンブレムと対峙するウマ娘か」

 

凛とした、けれど刃物のように冷たく研ぎ澄まされた声が届く。彼女は私の走りを値踏みするように、じっと見つめてきた。

 

「レガリア、エンブレム……」

 

「記憶がないのだと聞いたが、その走りに迷いはないようだな」

 

彼女は一歩、私との距離を詰める。その瞳の奥の燃える炎に、私は言葉を失い立ち尽くすことしかできない。

 

「だが、弥生賞で私に捕らえられるとき、その平穏が続くのか……試させてもらう」

 

言い放つと、彼女は未練もなさそうに背を向け、そのまま歩き去っていった。

後に残されたのは、彼女が踏みしめた芝の匂いと、逃げ場のない闘争の予感だけが漂っている。

 

私は自分の胸をそっと押さえた。心臓が、今までとは違う速さで脈打っている。恐怖だろうか。それとも──。

 

 

トレーニングを終えてトレーナー室に戻っても、私の胸のざわめきは収まらなかった。窓の外では夕陽が校舎を長く引き延ばし、空を薄い赤色に染めている。

 

ソファに座り、トレーナーさんに先ほど遭遇したウマ娘、レガリアエンブレムのことを報告した。

 

「……レガリアエンブレム、か」

 

トレーナーさんは私の話を聞きながら、手元の資料を一度置き、静かにこちらを向いた。

 

「燃えるような紅い髪と、射抜くような鋭い瞳……。あの子は間違いなく、今年のクラシックの有力候補の一人だ」

 

「すごく、怖かったんです。学園の皆さんが向けてくれる期待とも、昔感じた好奇の目とも違う……。剥き出しの、明確な『敵意』に近い闘争心でした」

 

私は自分の膝の上で、無意識に指先を強く握りしめた。

 

「私……あんな走りに、耐えられるでしょうか。今の私は、自分の足で走る手応えを感じられるようになったばかりなのに」

 

震えそうになる声を抑えて俯く私に、トレーナーさんは椅子から立って、私の正面のソファに座り直した。

 

「ユーフォリア、その重圧を感じるということは、お前がその場所に立っているという証拠だ」

 

彼は努めて穏やかに、けれど揺るぎない確信を持って言葉を続けた。

 

「彼女がそれほどの敵意を向けたのは、お前を好奇の対象ではなく、自分と対等、あるいはそれ以上の『ライバル』だと認めたからなんだよ」

 

「ライバル……」

 

「ああ。ただの幸運で勝った相手なら、あんな瞳は向けない。レコードを書き換え、自分の前に立ちはだかる強敵だと思ったからこそ、彼女は君を試そうとしたんだ。それは、君が積み上げてきた『今』の重さが、彼女に届いたということだよ」

 

トレーナーさんの瞳には、私を支えるという強い意志が宿っていた。

 

「忘れるな。お前はもう、一人で走っているんじゃない。俺がいて、支えてくれる皆がいる。その重圧さえも、お前の走りの力に変えていけばいい」

 

「……はい」

 

窓の外を見ると、街灯がひとつ、またひとつと点り始めていた。レガリアエンブレムの、あの鋭い瞳を思い出す。逃げ場のない闘争の予感に、私の指先は、静かな武者震いに震えていた。

 

………………

 

 

…………

 

 

……

 

トレーナー室を後にした私は、冷え込みの増した夜の道を一人で歩いた。先ほどまで感じていたレガリアエンブレムの鋭い視線と、指先に残る静かな武者震いが、まだ身体の芯に熱く残っている。

 

寮の自室に戻り、扉を開ける。迎えてくれたのは、かつての賑やかさが嘘のような、しんとした静寂だった。

 

「……ただいま」

 

返事のない言葉が、空っぽの部屋に虚しく響く。

 

ラサさんがいなくなってからの、この部屋の静寂にはまだ慣れそうにない。

彼女の机の上、あの写真立てが置かれていた四角い埃の跡は、今はもう綺麗に拭き取られている。けれど、そこに誰かがいたという「不在の気配」だけが、しがみつくように残っていた。

 

私は自分のベッドに腰を下ろし、暗い部屋の中でふと窓の外を眺めた。

 

夜空に浮かぶ冬の星を見つめていると、あの日、山の上でラサさんから託された言葉が鮮明に蘇ってくる。

 

託された想い。

あの日、涙ながらに彼女が私に預けてくれた、届かなかった未来の欠片。それを背負って走るのだと決めたはずなのに、強敵の出現に気圧されている自分が情けなかった。

 

 

 

その時、手元のスマートフォンが微かな振動を伝えてきた。

画面を開くと、そこにはケイさんからのメッセージが届いていた。

 

『ユーフォリアさん、お疲れ様です。随分と長い休養でしたが、ようやく目標が決まりました』

 

『3月の終わり、高松宮記念。おれはそこで、もう一度ターフに戻るつもりです。また、あなたの走りに追いつけるように……おれも、全力を尽くします』

 

という、力強い決意が綴られていた。あの過酷な怪我を乗り越え、再び前を向こうとする彼女の言葉は、私の背中を強く、優しく押し上げる。

 

暗い部屋の中で、スマートフォンの明かりが私の指先を白く照らす。

かつて記憶のない私を抱きしめてくれた温もりや、共に風を切った瞬間の輝き。それらは今、名前を連ねずとも、私の一部となってこの身体の内側に息づいている。

背負っているものは、確かに重い。けれど、その重さこそが、私が"私"としてここに立っている何よりの証なのだ。

 

窓の外、遠くで瞬く街灯の光をじっと見つめる。

誰かのために。そして、私自身の未来のために。鏡を見るまでもなく分かっていた。恐怖に震えていたはずの指先が、今は次の一歩を踏み出すための熱に満たされていることを。弥生賞へと続く足音は、もう迷うことなく、闇の先へと刻まれ始めていた。




新キャラ、登場──。立ち絵は今後出します。
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