22時ごろの爆睡が無かったら遅刻してないので実質間に合いました(?)
あと通常オグリでUS出ました、解説を途中まで見てこれだったのでもっと伸ばしたいです。
ついでに関係ない話なんですが卒検合格しました、いえい。
……なんですけど、ATの限定解除がまだ残ってるのでまだある。しかもトータルで4時限やったらもう修了検定。おかしいだろ。
……まあ、これが終わったらもう免許センター行って95問解くだけなので、もうすぐ終わると言えば終わる。ただMTが難しすぎる。なんだあれ、人間が乗ることを想定してないだろ(褒め言葉)
控室の空気は、ひどく張り詰めていた。部屋の外から微かに漏れ聞こえる喧騒とは対照的に、この四角い部屋だけが世界の時間の流れから切り離されたような、奇妙な静寂に包まれている。
壁にかかった時計の針が刻む音さえ、今の私には心臓の鼓動と重なって大きく響く。
「……準備はいいか、ユーフォリア」
不意に、隣に立つ渡辺トレーナーが声をかけてきた。その声はいつも通り穏やかで、けれど私の内側の震えをそっと鎮めてくれるような、確かな重みがあった。
「はい。大丈夫です」
私は短く答え、ゆっくりと立ち上がった。
今回の弥生賞。それは皐月賞へと続く、避けては通れない道だ。私の胸の奥には、もう自分自身の記憶への不安はない。
あるのは、この数ヶ月の間に、私に想いを託してくれた人たちの顔だった。
怪我を乗り越え、再び前を向いたケイさんの真っ直ぐな瞳。涙ながらに、自分の夢と姉の未来を預けてくれたラサさんの手の温もり。
名前すら持たなかった私を支えてくれた人たちの温もりが、今の私を形作っている。その想いを裏切るわけにはいかない。
地下バ道の先に、眩いばかりの光の出口が見える。その先には、私を待つ新しい景色が広がっているはずだ。私は深く息を吸い込み、迷うことなくその光の中へと足を踏み出した。
光の中に飛び出した瞬間、中山レース場の巨大なスタンドを揺らすような歓声が、波となって押し寄せてきた。
「来たぞ、ユーフォリアだ!」
「無敗の三冠、期待してるぞ!」
「レコードホルダーの走り、見せてくれ!」
観客席から飛ぶ声は、まだ三冠初戦の前だというのに、早くも私に大きな称号を期待していた。
ホープフルステークスをレコードで制したという事実は、私の意図とは無関係に、周囲の期待を熱狂的なものに変えている。
けれど、その期待の渦をすり抜けるように、肌を刺すほど鋭い視線が私を射抜いた。
パドックの対角線上。燃えるような紅い髪を冬の風になびかせて歩く、その姿。レガリアエンブレムの鋭い眼差しが、私を捉えていた。
彼女の歩みは力強く、迷いがない。周囲の喧騒など一切耳に入っていないかのように、ただ一点──私という存在だけを、剥き出しの闘争心で捉えている。
彼女がゆっくりと歩み寄り、私たちの距離が縮まる。周囲の歓声が、まるで遠い世界の出来事のように遠のいていった。
「……また会ったな、ユーフォリア」
レガリアは低く、研ぎ澄まされた声で告げた。その瞳の奥には、安っぽい同情や好奇など微塵もない。
「お前が積み上げた過去の勝利など、私にとってはすべてまやかしに過ぎない。この弥生賞で、お前のその無垢な仮面を剥ぎ取り、真実の敗北を刻み込んでやる」
凛とした、刃物のように研ぎ澄まされた声が届く。
その敵意は、あまりにも純粋で、美しかった。
「……まやかしなんかじゃ、ありません」
私は逃げずに、その紅い炎を見つめ返した。
「この脚で感じた痛みも、託された想いも……全部、本物です。それを否定させたりはしません」
私の言葉に、レガリアの口元がわずかに吊り上がった。それは、獲物を見つけた猛獣のような、残酷で歓喜に満ちた笑みだった。
二人だけの剥き出しの闘争心が、冬の終わりの空の下で激しく交差する。
「いいだろう。その覚悟ごと、ターフに沈めてやる」
彼女は未練なく背を向け、去っていく。その後ろ姿を見つめながら、私の指先は静かな武者震いに震えていた。
逃げ場のない闘争が、今、始まろうとしている。
ゲートの中に、静寂が満ちる。目の前の景色が、一点に絞られていく。
(大丈夫、私は走れる)
そう自分に言い聞かせた瞬間、乾いた破裂音が鼓動を突き抜けた。
身体が反射的に前へと飛び出す。迷いはない。私は淀みない動きで、真っ先にハナを奪った。他にも逃げで走ろうとするウマ娘の気配があったが、今の私の脚はそれよりもわずかに速く、そして正確に位置を確保していく。
『スタートしました、弥生賞! 好スタートのユーフォリア、今日も逃げの形を作ります!』
実況の声が、遠くで熱を帯びて響く。
私は自分の刻むリズムだけに集中した。前半の1000m。私の感覚では、無理のない平均的なラップを刻んでいる。けれど、後続にとっては息の抜けない、かなり速い流れになっているはずだ。
それでも、背中を焼くような鋭い圧力が、一時も止むことはなかった。振り返る必要はない。七バ身ほど後ろ、好位のインコース。そこには、あの紅い髪をなびかせたレガリアが、じっと隙を伺って潜んでいる。
彼女の眼差しが、見えない糸のように私の背中に絡みつき、道を塞ごうとしていた。
(……来てる。でも、まだ……)
私はコーナーを回りながら、体力の温存に努める。脚の中に溜めた熱を、今はまだ、解き放つ時ではない。
最終コーナーを抜け、視界が開けた。目の前に中山名物の険しい急坂が立ちはだかる。
「……っ、ここから……!」
私は奥歯を噛み締め、スパートをかけようとした。
その瞬間だった。
視界の端に、モノクロのノイズが走ったような錯覚に陥る。
意識の深淵から、あの冷たい、鋭利な感覚がせり上がってきた。
感情を排し、ただ勝利という結果だけを最短距離で射抜こうとする、機械的な合理性。
(今は、来ないで……!)
かつての私は、この冷たさに身を委ねることしか出来ず、その速さを得ていたのかもしれない。けれど、今の私の脚には、託された想いの重さがある。
(その想いを……『まやかし』になんて、させない……ッ!)
「はあああぁぁ……っ!!」
叫びとともに、私は坂を駆け上がった。重たい脚を、一歩ずつ力任せに前へと踏み出す。
『ユーフォリア、逃げる! ユーフォリア、脚色は衰えない!』
実況が絶叫する。だが、その背後に、紅い旋風が迫っていた。
「捉えたぞ……ユーフォリアッ!」
『外から一気に来た! レガリアエンブレム! レガリアエンブレムがユーフォリアを差しにかかる!』
二バ身、一バ身。
差が縮まり、視界が白と紅に染まる。互いの意地とプライドが、火花を散らしてターフの上で激突する。
「譲らない……絶対に……!」
歯を食いしばり、さらにもう一歩を地面に叩きつける。
ゴール板を駆け抜けた瞬間、世界から音が消えたような錯覚に陥った。肺は焼けるように熱く、喉の奥には鉄の味が広がる。自分の心臓の音だけが、耳の奥でうるさく打ち鳴らされていた。
『ユーフォリア、逃げ切った! わずかに、わずかにユーフォリアが先だ!!』
「……はぁ、はぁ……っ! ……勝ち、ました」
誰に言うでもなく、私は小さく呟く。
実況の絶叫と、地鳴りのような歓声が、遅れて私の意識に流れ込んでくる。両手を膝についたまま荒い息を吐いていたが、ゆっくり上体を起こすと、激しく上下する左肩を右手で押さえた。
ふと視線を横に向ければ、そこには最後まで私を追い詰めたレガリアさんがいた。彼女は私が息を整えたの確認するとじわじわと歩み寄ってきた。掲示板を見ると着差はわずか1/2バ身。
ほんの一瞬、私の想いが勝ったのか、それとも彼女の執念が届かなかったのか。その差は、勝利の喜びよりも先に、私の背中に冷たい汗を走らせるほどの危ういものだった。
彼女の瞳には、敗北の影など微塵もなかった。あるのは、さらに激しさを増して燃え上がる、純粋な闘争の炎だけだ。
「……まやかしではない、と言ったな」
レガリアさんは低く、けれどターフの熱気を孕んだ声で告げた。
「認めよう。お前のその覚悟、そしてその脚……まやかしなどという言葉で片付けられるほど、安っぽいものではなかった」
「……レガリア、さん」
彼女はまっすぐに私を見据えたまま、不敵に口角を上げた。
「だが、今の走りが、お前の全力だというのなら……次はない。皐月賞で決着をつけてやる。私の真の牙は、まだお前の喉元には届いていないのだからな」
「……望むところです。私も、負けたくありませんから」
私は彼女の紅い炎を見つめ返した。レガリアさんはそれ以上何も言わず、堂々とした足取りで先を歩いていく。その後ろ姿を見送りながら、私は自分の胸をそっと押さえた。彼女の中に見た底知れぬ強さ。それは、これから始まる三冠への道が、今まで以上に険しく、厳しいものであることを私に予感させた。
彼女と視線を交わしたあの瞬間に、敵意とは別の、何かが芽生えたのを感じていた。それは、互いの実力を認め、高め合う存在への敬意──ライバルとしての小さな絆の兆しだった。
私は観客に静かに一礼し、待っている渡辺トレーナーのもとへと歩き出した。その一歩一歩が、新しい闘争の始まりであることを、私は本能的に悟っていた。
余談:私は設定とかもひとまとめにして保存しているんですが、この話書き終わった段階でトータルの文字数が166666文字になりました。狙って無いのにこんな数になったので正直面白かった。
あとレガリアさんの立ち絵は皐月賞で勝負服と一緒に出したいと思います。
評価、感想、コメント、メッセージお待ちしております。頂けた暁には作者がMT車でエンストを起こします。