~???~
……。
……とても、とても長い時間が経った気がする。目の前に誰かいて喋っている声が聞こえる。……誰……だったかな、もうすっかり忘れてしまった。……いや、分からなくなったというのが正しいのか。
「い……やり直……。そし……」
頭が鉄のように重く顔は見えない。それに身体に力が入らず動くことも出来ない。しかし、だんだんと耳は聞こえるようになってきた。
「君……。わ…………希望だ……」
「そのために……君には……、……死を迎える必要があるが……」
その言葉を聞いた瞬間、私は恐怖した。
……え?今……なんて言ったの……?死ぬ……?私が……?そんなわけない。私は……。
「ぃ……や……」
掠れた喉を震わせて言う。しかしそんな思いも届かず、少しづつ全身の力が抜けていく。……死ぬだなんて……嫌、いやだ!イヤダ!!
そう思った時、私の身体は動かなったはずなのに走り出すことができた。
「ッ!!」
「なっ……待て!!」
私は無我夢中で走る。とにかくここから出なければ、あの人から逃げなければと、ただそれだけを考えて。
「ぐっ……!!あ゛ぁ゛……!!」
「ッ!」ガバッ!
私は飛び起きた。急いで辺りを見回す。ここは寮の部屋だ。全身汗まみれで気持ち悪い……。
「はぁ……!はぁ……!」
呼吸を整える。まだ心臓がバクバクと鳴っている。私はゆっくりと深呼吸をする。
「ふぅー……」
……少し落ち着いた。……また、夢……?昨日見たような今の私では無い誰かを追体験しているような夢……。
「……とりあえず、シャワー浴びよ……」
私はベッドから降りて寮の浴室に向かう。そして服を脱ぎ、シャワーを浴びる。汗を流しながら考える。……今回の夢は一体なんなんだろう……? やっぱり、過去の記憶……? ……でも、もしそうだとしたら私は一体何者なんだろう……。
……分からない。考えれば考えるほど頭が痛くなる。これ以上考えても仕方ないなと思いシャワーを止める。そして浴室から出て着替える。髪も乾かして部屋に戻ると時刻は5時30分になっていた。
……どうしようかな、また寝るには遅いし、起きるには早い時間だけど……。まぁいいか……。私はラサさんに書き置きを残して学園に向かうことにした。
………………
…………
……
あの後私はレースコースに出ていた。
とはいえ、まだ走ることが出来ないから観覧席で自主トレーニングをしてる他の娘の走りを見ているだけなんだけどね。
……にしてもみんな朝早くから練習してるんだなぁ……。まだ日も上がりきっていないのに。
(……いいな……自由に走れて……)
……正直、羨ましいと思ってしまった。
まあ私も少ししたら走れるようになると思うけど。
「!」
そんなことを考えていると1人だけ雰囲気の違う……というか目を奪われる娘がいた。
青いショートの髪をして遠目でも小さい……いや、細いと感じてしまった娘だ。そしてどこからか儚げな雰囲気を感じる。
あの場所は……短距離のトラックかな?
誰なんだろう。そう考えていると彼女が水を飲むのをやめ、走り出した。
……速い。他の娘とは比べ物にならないくらいに速い。
そしてフォームも綺麗だ。まるでお手本のような走り方をしている。
でも、それだけじゃない気がする。
しばらく見ていると自主トレーニングを終えたのか彼女はコースを立ち去っていってしまった。
……うーん……。なんでシンパシー的な何かを感じたんだろ……。もしかして、過去に会ったことがある……とかかな……?
そうだとしたら結構もったいなかったかもしれない……。
『ぐ〜……』
そうこうしているとお腹が鳴り始めて慌てて押さえる。時間を確認すると思ったより経っていた。
さっきの娘もカフェテリアに向かったのかな? 私も向かおう。
そう思ってカフェテリアの方を向く。
するとそこには……。
「……よかったら、朝ごはん一緒に食べない?」
(……ぇ!?)
さっきまで見ていたあの娘がいた。
………………
…………
……
~カフェテリア~
「まず、自己紹介しよっか。おれはケイエスミラクル。君は?」
青髪の彼女はそう名乗った。……近くで見てみるとより細く感じる。それに机の上に載っている食事の量もほかのウマ娘よりも明らかに少ない。
「えっと……私はユーフォリアっていいます。そ、その……ミラクルさんって、結構小食なんですね」
「あぁ……おれ、生まれつき体が弱くて……見ての通りあまり食べられないんだ」
「そうなんですね……大変だ……」
「「……」」
……気まずい。……どうしよう。何か話題を振らねばと私は考える。せっかく話しかけてくれてるんだから何か返さないと……!
そう思って話題を探しているとミラクルさんが口を開いた。
「……ところで……」
「おれが走ってた時とか休憩してた時、すごいこっち見てたけど……何かあったかな……?」
「あっい、いえ! えっとですね……」
「……その、私……実は記憶喪失で。他の娘の走りとか見たら昔のこと思い出せないかなって……。そしたら、ミラクルさんが走っていて、何か惹かれるものを感じたんです。そんな感覚は初めてで……っそうだ、私のことについて何か知っていることありませんか!?」ダンッ!
「お、落ち着いて! ……とりあえず、座ろ?」
いつの間にか立ち上がっていたみたいでカフェテリアの付近の人たちの視線を集めていた。……少し興奮してしまった。反省しないと……。幸いあまり人が居なかったからまだ助かった方だけど……。
「! は、はい……///すみません……!」
私は恥ずかしくなって椅子に座った。そしてミラクルさんは考える仕草をして続ける。
「うーん……。……ごめんね、君とは初めて会ったから……。知っていることはないかな……」
「……いえ、大丈夫です。……こちらこそ、ごめんなさい……急にこんなこと言われても、わからないですよね……」
「あ……いや、そういうつもりはなかったんだ。……おれも、体のことで悩んできましたから」
そう言って彼女は苦笑いする。……きっと、色々とあったんだろうな。……でも、今は元気そうでよかった。
「あの、ミラクルさん。……私、またあなたと会ってもいいですか? その、もっとあなたのことを知りたいんです」
「もちろんだよ。おれも君のことが気になるからね」
「……! これからよろしくお願いしますね! ミラクルさん!」
私は嬉しくなって思わず笑顔になる。すると彼女は微笑んでくれた。
「うん、よろしくね。ユーフォリアさん」
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