……アーモンドアイ引かなきゃ……。
~ある日~
学園内も探索するところはもうしたので私はトレーナー室のソファに座っていた。
「……その、トレーナーさん」
「どうしたんだ、ユーフォリア?」
「……えっと、保護してもらってる身で言うのもおこがましいと思うんですが……」
「暇です……」
そう、暇なのだ。トレーニングができないのは当たり前だが、学園からも出られない。もちろん、そうする意図もわかっている。前者は大きな怪我をしたとき困るし、後者は記憶がない状態で面倒事に巻き込まれると色々と厄介だからだろう。
ついでに仲良くなった人たちは今授業を受けている時間だから誰もいない。
……つまるところ、私は暇なのだ。
「あー……。まぁ、そうだよな……」
トレーナーさんが苦笑いしながら言う。……やっぱり、迷惑だよね。
「……すみません」
するとトレーナーさんは微笑んで言った。
「いいよ、別に。……ただ、何か暇を潰せるものがあればいいんだけど……」
トレーナーさんは困った様子で頭を搔く。そして少し考えてから言った。
「……じゃあ、ちょっと散歩にでも行こうか」
「え?」
私は驚いて聞き返す。すると彼は微笑んで言った。
「気分転換になるし、いい運動にもなるだろ? それに、何か思い出すかもしれないからな」
「なるほど……」
私は納得して頷く。確かに良いかもしれない。それにトレーナーさんが一緒なら安心だし……。
「よし、決まりだね。それじゃあ準備して行こうか」
「はい!」
私は元気よく返事をして準備を始めたのだった。
………………
…………
……
~河川敷~
私たちは河川敷に来ていた。そこはとても広くて、自然豊かで心地よい風が吹いている。
「いい景色ですね」
私は目を輝かせながら言う。トレーナーさんは微笑んで言った。
「あぁ、そうだな。ここで走ることもできるから、朝の自主トレに使っているウマ娘も多いそうだ」
「へぇ、そうなんですね」
私は感心しながら言う。確かにこれだけ広ければ走りやすそうだ。……いつか、私も走ってみたいな。私はそう思いながら、ふとトレーナーさんを見た。
彼は私の隣に立って空を見上げていた。私も同じように見上げると太陽がさんさんと輝いていた。その光はとても眩しくて思わず目を細める。するとトレーナーさんが口を開いた。
「……ユーフォリアさはさ、記憶を取り戻したいって思ってる?」
「……はい」
私は少し間を置いて答えた。正直まだ不安なところはあるけれど、いつかは思い出したいと思っている。……だって、きっと大切な記憶のはずだから。
「……そっか、じゃあきっと思い出せるよ」
「え?」
私は驚いて聞き返す。すると彼は微笑んで言った。
「だってさ、ユーフォリアは前を向いて頑張ってるじゃないか。俺も頑張らないとね」
そう言って彼は私の頭を撫でる。……なんだかくすぐったい感じだ。でも、不思議と嫌な感じはしない。むしろ心地良いとさえ感じるほどだった。……ただ、少し恥ずかしくなって俯くと、今度は彼が驚いたような声で言った。
「……っ! ごめん! 昔の癖で……」
「……昔の癖?」
私は思わず顔を上げ、疑問符を浮かべる。すると彼は慌てて言った。
「あー……いや、その……昔の担当によくこうしててさ……」
「担当……ですか?」
私は首を傾げる。すると彼は苦笑いしながら言った。
「ああ、そうだよ」
「……その方はどんな子だったんですか……?」
私は恐る恐る聞く。するとトレーナーさんは少し考え込んでから答えた。
「……そうだな。……強くて、しっかりとした子だったよ」
「そうなんですね……」
私がそう相槌を打つと彼は懐かしむように遠くを見ながら言った。
「……あぁ、とても強かったよ」
そう言って微笑む彼の表情はどこか悲しげで、なんだか胸が締め付けられるような気持ちになったのだった。
……どうしてそんな顔をするんだろう……?
私は疑問に思ったが、聞くことはできなかった。──なんとなく、聞いてはいけないような気がしたから。
それからしばらく沈黙が続いたが、彼が口を開いたことでその空気は霧散した。
「……さて、そろそろ戻ろうか」
私はそれに頷き、私たちは学園へと戻ったのだった……。
………………
…………
……
~正門前~
「今日はありがとうございました。わざわざ要望を聞いてくれて……」
「いやいや、いいんだよ。むしろもっと頼ってほしいな」
トレーナーさんは微笑んで言う。その笑顔はとても優しくて、なんだか安心するものだった。
「えへへ……ありがとうございます」
私は笑顔でお礼を言った。そうこうしているとトレーナーさんのスマホから着信音が鳴り響いた。
「あっ、ちょっと待っててね……」
トレーナーさんはそう言い残して少し離れて電話を始めた。私はそれをぼんやりと見ながら待つことにした。
「もしもし? はい……はい……。……えっ本当ですか!? ……はい……分かりました、ありがとうございます」
トレーナーさんは電話を終えると、こちらに戻ってきた。そして私に言った。
「よかったねユーフォリア、明日から暇じゃなくなるよ」
「……えっと、つまり……?」
「クラスとか、学年とかが決まったんだって。だから明日からは授業に参加できるよ」
「そうなんですか!?」
私は思わず大きな声を出してしまう。すると彼は微笑みながら言った。
「ああ、そうだとも。あとかばんとかの荷物はもう寮の方に送ってあるそうだから知っておいてね」
「わかりました。ありがとうございます!」
私はそう言って頭を下げ、寮へと戻ることにしたのだった……。
………………
…………
……
~部屋にて~
「ただいまです」
「おかえりなさい、ユーフォリアさん」
私は部屋に戻るとラッキーサーチャーさんがそう出迎えてくれた。私はベッドに腰を掛けてトレーナーさんから聞いたことを彼女に伝えた。
「明日から、授業に参加できるみたいです」
私がそう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「そうなんですね! せっかくなので明日一緒に登校しませんか?」
「はい、もちろんです!」
「ふふっ、楽しみですね」
それからしばらく雑談をして、私たちは眠りについたのだった……。
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