筆者は文才はありません。
解釈違いなどを多く含む恐れがあります。
曇らせです。
人によっては受け入れられない内容が
ある恐れがあります。
以上が大丈夫な方は稚拙な文ですが
お楽しみいただければ幸いです。
先生「あー…終わらない…」
ここに赴任されてからもう長い。
日々騒動の絶えない、超巨大学園都市
キヴォトス。その中心であるシャーレに
配属された私は今日も終わらない
業務に明け暮れていた。
先生「さてと…今日の当番は…ヒナか」
空崎ヒナ。ゲヘナ学園の風紀委員長であり、
キヴォトス内で最強格の一人とされる生徒。
基本的に激務が続くシャーレには
生徒がシャーレに手伝いに来る
いわゆる『当番』がある。
大抵の場合は遊びに来たり、サボりに
さそったり、読書や手伝いなどなど
来る生徒によってさまざまである。
先生「ヒナか…今日は早めに日課を済ませよう」
先生はそう呟いて、鍵のついた引き出しから
小さな工具類を取り出した。
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ヒナ「…終わった…?」
普段はいつまでやっても終わらない
仕事が今日という日に限って早く終わった。
万魔殿も給食部もその他不良生徒の被害の
報告も入っていない。
ヒナ「…早めに行こうかしらね」
終わったのなら早く先生に会いに行こう。
少しでも貴重な先生との時間を過ごすために。
ヒナ「アコ、もしなにかあったら連絡して」
アコ「わかりました、ヒナ委員長」
万が一何かあった時の保険を入れて、
私は早々にゲヘナの自室を出て、
若干駆け足でシャーレへと向かった。
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予定よりも2時間ほど早くに
シャーレについた。先生はきっと中で
仕事の最中だろう。私も手伝えばきっと
早く終わって、長く一緒にいられるはずだ。
ヒナ「先生…」
何を話そうか、何を聞こうか、何を
してもらおうか、そんなことを考えていると
すでに先生のいる部屋の前にいた。
ヒナ「先生、おはよう」
ノックをすると同時に、ドアを開いて
中に入り込む。
先生「えっ!?ヒナ!?待って今は!!」
ヒナ「どうしたの?せんせ……」
先生はソファに座って何かをしている。
前にあるテーブルにはたくさんの細かな
歯車やコード、細い円柱のようなものや
ネジなど様々な種類の部品があった。
どれもこれも銀色に輝いて綺麗に見えた。
だが、
ヒナ「せ…せんせ……」
先生「ヒ…ヒナ…これは…」
それより言葉が出てこない。初めは先生の
好きなロボットの部品か何かだと思っていた。
だが、だとすれば、なぜ『先生にはあるはずの
脚がくっついていない』のか。ヒナの網膜は
片足のない、片側だけ空気を孕みつつも薄く
潰れたズボンを映した。ヒナがそれを認識した
瞬間に視界がぼやけてふらつく。
頭の中はまるで豪雨のような音を立てて、
思考がまるでまとまらない。
ヒナ「せんせ…あし…あしは…」
先生「ヒナ…落ち着いて…」
ヒナの目は、先生のない足とテーブルに
綺麗に並べられ、鋭く銀に光る部品とを
何度も行き来していた。確かにその部品
には人の足に似通った部分があった。
足の指の形を模したもの、足の骨のような
組み合わさり方の大きな部品など、
どれもが、これが義足であることを
示していた。なによりそのそばで潰れていた
先生と同じ肌の色をした肉の抜け殻が、
先生が義足をつけていることの、
何よりの証明になった。
ヒナ「あ……ああ……」
先生「ヒナ!」
私は思わずその場にへたり込んでしまった。
それをみた片足だけの先生がこちらへ
寄ってくる。
片足がないために半ば這うように。
隣にまで這い進んで座ると
そっと肩に寄せてくれた。
先生「ごめん、辛いものを見せたね」
ヒナ「あ…あ…せん…あし…は…」
先生「ここに来る前に事故でね」
ヒナ「そう…なのね…」
先生「うん」
静かな部屋で銀の光と時計の音だけが
過ぎていく。
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ヒナ「…ん…?ここは…?」
先生「あ、おはよう、ヒナ」
ヒナ「先…生…?」
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
なぜか起きていた時の記憶が朧げだ。
隣には先生がいて、私はすぐに抱きついた。
まるで悪夢を見た後の子供のように。
ヒナ「先生…よかった…先生…」
先生「…ヒナ、話しておきたいことがあるんだ」
ヒナ「…え?」
聞きたくない、知りたくない、さっきの
悪夢を現実としたくない。
朧げな夢を鮮明な現実にしたくない。
先生「実はね、先生は…」
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アコ「…長!…委員長!…ヒナ委員長!」
ヒナ「っ……アコ?」
アコ「大丈夫ですか?今日はずっと上の空で…」
ヒナ「うん…大丈夫…」
あの後先生から義足についての話を聞いた。
どうやら赴任してくる前に交通事故で
片足を失っていたらしい。そんな中でも
今までの激務をこなして、幾度かの戦闘を
指揮してきた。いくらなんでも危険すぎる。
ヒナ「アコ、頼んだ先生の警護は?」
アコ「はい、イオリとチナツ、それから他の
委員会メンバーを何人か」
ヒナ「わかったわ、ありがとう」
これ以上先生に傷をつけさせないために、
風紀委員会から敬語をつけた。
ただでさえ銃弾の飛び交うキヴォトス、
先生の安全のために、これ以上、
失わないために私が先生を守る。
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先生「…」
イオリ「…」
チナツ「…」
先生「…なんか…厳重だね」
イオリ「理由はわからないけどアコちゃんが
委員長からの指示でしばらく警護しろ
って連絡が来たから」
先生「なるほど…」
恐らくは、先日ヒナに脚のことを話したことで
不安になってしまったが故の行動だろうか。
私を守るために派遣された彼女たちは
あたりに目を光らせている。ただ、この
大所帯で来るにはデパートはのどかすぎる。
タタタン!タタタタン!
イオリ「っ!」
先生「銃声!イオリ、チナツ!鎮圧するよ!」
イオリ&チナツ「はいっ!」
それからは後方で私が指揮を取る形で
暴徒の鎮圧に動いた。素性はわからないが
どうやら素行不良というより、たまたま
テロに居合わせてしまったらしい。
イオリ「このっ!」
前線ではみんなが暴徒と激しい戦闘を
行なっている。敵の武装には燃焼弾が
あったのか周囲は火に包まれていた。
暴徒「ッチ!あの後ろのっ!」
暴徒たちは苦戦を強いられているが、
幾分、数が多いがために半ば互角の戦況が
続いていた。
チナツ「あなた方はイオリさんの援護を!
他の方々は私と一般人の救助を!」
遠くの方でチナツたちが巻き込まれた人の
救助に動いている。前線で戦うイオリたちと
私は目の前の先頭に集中して良さそうだ。
暴徒「…これでも喰らえ!」
暴徒の一人が携帯型のロケットランチャーを
イオリに向けて放つがそれは明後日の方向へ
空を切る。
イオリ「どこに向けて…っ!あの馬鹿!」
ロケットランチャーの着弾先には弾薬などを
販売している小さな店舗。その店の
ガラスドアを突き破り弾頭が中へ入る。
先生「マズ…!」
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ヒナ「…ふぅ」
今日も仕事が終わらない。いつも通りの量だが
先生のことが気になってあまり集中できずに
結局午後まで長引いて半分も終わっていない。
ズドーン……
ヒナ「なに…?」
遠い方から爆発音が聞こえ、窓が衝撃波で
カタカタと揺れる。窓の近くまで歩いて、
カーテンを開いた。
ヒナ「あそこは…!」
デパートから爆炎。黒い煙が天高く
登っていた。あそこには今一番いて
欲しくない人がいる。
私が失いたくないものが。
ヒナ「先生ッ!」
私は気がつけば、自分の銃を持って
執務室を飛び出し、私に驚く生徒を
全て無視してデパートの前に辿り着いた。
中は炎に包まれて、いつ崩れても
おかしくない。それでも中へ入った。
ヒナ「先生…!先生…!どこに…!」
あの人の名前を叫びながら走る。
周りには恐らくは暴徒だろう倒れた人々。
そしてこのデパートももはや建物としての
寿命を終えつつあるらしく瓦礫が降ってくる。
ヒナ「先生…!先生っ…!」
見当たらない。
ただでさえ広く階数のあるデパートを
制限時間の中で一人で探すのは不可能に近い。
ヒナ「先生…!」
だとしても私は止まれない。
止まってしまえば、諦めることになる。
ヒナ「先せ…」
大きな広場に出たところで、
その人の姿を見た。
ヒナ「…あぁ」
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先生「…ゴフッゴフッ」
爆風をもろに受けたのもあるが、
片足の義足をやられてしまった。
おそらくは助からないだろう。
この爆炎と熱と瓦礫の山を進んで出るのは
今の私には不可能に近い。
イオリやチナツも見えないが、どうやら
爆風で吹き飛ばされたらしい。
先生「…あぁ…どうしようか…」
助けを呼ぼうとモモトークを開こうとしたが、
端末は瓦礫が突き刺さって壊れていた。
私の体も半分が瓦礫の下敷きだった。
先生「…万事休す…かな」
諦めて瞼を閉じた。
???「……ぃ!…生!」
誰かが呼んでいる。
聞き慣れた声の、最近聞いた声。
???「…先生!先生起きてよ!」
先生「…あぁ……ヒナ…よく来たね…」
ヒナ「当たり前でしょう!?早く逃げないと!」
先生「ヒナ…多分私は…」
ヒナ「嫌っ!良いから手を…!」
先生「違うんだ、ヒナ…脚が…」
ヒナ「っ…!」
先生「…ごめんね、ヒナ」
ヒナ「まだ諦めない…!」
ゴゴン……
先生「…それにこの瓦礫は…いくら君でも…」
ヒナ「いいから!!」
私は全力でその瓦礫を持ち上げ、一枚一枚、
大きな瓦礫を押し除けていく。
ギッ……ゴガンッ……!
先生「……なんだ?」
ヒナ「ふっ!」
やっと瓦礫を全て避け終えて、私は先生に
手を伸ばす。
ヒナ「先生!手を…!」
ガンッ!
ヒナ「何!?」
先生「ヒナ!」
もうない片足の分も力を入れて、ズタズタに
折れた脚でその場から飛び上がる。
目の前の生徒を、助けるために。
ドガァンッ!
ヒナ「……何がっ…」
私は先生の腕を掴んだ。
確かに腕の中に先生の手の感触がある。
瓦礫でも降ってきたのか、砂塵が舞って
前が見えない。
ヒナ「先生…早く…!」
違和感、何かおかしい。
ヒナ「…先生?」
あまりにも腕が軽い。
人間の重さを感じない。
砂塵が遠くで誘爆した爆風で揺らぎ、
視界が晴れる。
ヒナ「あっ…」
先生の体が遠くにあった。
私が握っていたものは、「腕」だった。
ヒナ「あぁ…あぁぁ…!」
私は視界が狭くなり、音が遠くなる。
目の前がぐらついて、ふらつきながら
その先生に近寄る。
ヒナ「せ…せんせ…せんせ…」
その体を抱き寄せて、私の中に抱く。
軽い。
片足と片腕を捥がれ、身体中の骨を
砕かれた。
ヒナ「せん……そん…な…せん……」
先生「ゴブッ…ヒナ……」
ヒナ「先生!先生先生!」
先生「よ…かった…無事…だ…」
腕の中の先生はにっこり笑っていた。
残った腕で頭を撫でながら。
私はもう前も見えないほど泣いているのに。
ヒナ「先生…先生…!」
先生「ヒナ……ごめんね…」
ヒナ「先生…!」
私の中の体がどんどん冷めていく。
腕の中のものが冷えていく。
もう鼓動は感じない。
もう目の中に光は見えない。
もう残った腕は私を撫でてくれない。
私の服に先生が染みていく。
床に染みきれなかった中身が漏れていく。
ヒナ「あぁ……あぁ…」
先生の骸を抱いたままの私の中で、
私が終わった音がした。
ヒナ「…先生…ごめんなさい…」
全てが終わったアパートの広場。
その中で骸と全弾打ち尽くして、
ただ茫然と夜空を見上げる生徒が居た。
終わり
ありがとうございました。