調子に乗って別キャラverです。
前作通りの注意事項ですが、
お楽しみいただければ幸いです。
注意事項に関しては前回をお読みください。
先生「…疲れた…」
キヴォトスの中心を担うシャーレ。
その先生に配属され、一人だけで静まり返った
部屋の中、今日も私は激務をこなす。
先生「…そういえばそろそろ当番の来る時間か」
今日の当番は誰だっただろうかと、
当番表を取ろうとした時だった。
ワカモ「あなた様〜!!このワカモ!
時間通りに当番に来ましたわ!」
先生「おはようワカモ、元気だね」
ワカモ「はい!あなた様に会えることを
楽しみにしておりましたから♡」
狐坂ワカモ、「災厄の狐」の異名を持つ
七囚人が1人の生徒。
彼女が元気よく、威勢よく、快活に
ドアを開けて登場した
先生「さて、それじゃあ仕事にしようか」
ワカモ「はい♡」
なぜこの生徒が私をそれほどまでに
慕ってくれるのかはあまり見当がつかないが
嫌われるか襲われるよりはマシだ。
ワカモ「では失礼しますね」
先生「…えっと…ワカモ?」
ワカモ「はい?」
先生「…近いね?」
ワカモ「はい、お隣にお邪魔させて
いただきました♡」
先生「…あと…これは?」
ワカモ「あら?偶然ですわよ♡」
先生「…まあ…仕事しようか」
ワカモ「はい♡」
ワカモと部屋でピッタリくっついて、
腰にワカモの尻尾を巻きつけられて
仕事をこなしていく。
片腕に寄り添われて動かしづらいが
仕方がないだろう。
手伝ってくれているだけありがたいものだ。
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ワカモ(うふふ…今日は先生の当番…!
やっと待ちに待ったこの日!)
私は先生が好きだ。
というより愛している。
一目見た時からこの人を愛すると決めた。
ワカモ(あぁあなた様…先生のワカモが
今から参りますよ…!)
半ば瞳孔の開いた目と口角の上がった
表情を仮面の下に隠してワカモは
シャーレへの進路を取った。
ワカモ「あなた様〜!!このワカモ!
時間通りに当番に来ましたわ!」
先生「おはようワカモ、元気だね」
ワカモ「はい!あなた様に会えることを
楽しみにしておりましたから♡」
先生にはどれだけ気持ちを伝えても
かわされてしまう。
他にも生徒や、まだ為すべきことがあるのだ
から当然といえば当然だが、それでも。
ワカモ(いつかは私のものに…!ふふふ…!)
ワカモ「では失礼しますね」
先生「…えっと…ワカモ?」
ワカモ「はい?」
先生「…近いね?」
ワカモ「はい、お隣にお邪魔させて
いただきました♡」
先生「…あと…これは?」
ワカモ「あら?偶然ですわよ♡」
先生「…まあ…仕事しようか」
ワカモ「はい♡」
せっかくの当番で2人きりなのだから、
このくらいハメを外しても問題ないだろう。
今朝入念に手入れしたばかりの私の尻尾を
先生の腰に巻きつけて、仕事をこなしていく。
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先生「…んー…ちょっとコーヒー淹れてくるよ」
ワカモ「はい♡わかりましたわ」
先生「…ワカモ、尻尾解いてくれない?」
ワカモ「むぅ…仕方ないですね…」
先生が気分転換にコーヒーを淹れに行く。
名残惜しいが尻尾を解いた。
その時だった。
先生「おわっ!!」
ガチャガシャガシャン!
ワカモ「外…?いや、あなた様!」
私は初め、外を見た。
なぜならその音は聞き慣れた、
重機や建物が崩れるような無数の金属音を
孕んだ音だったからだ。
休憩室の壁に隠れた先生へ駆け寄る。
ワカモ「どうしまし…たか…」
言葉が出ない。
なんの冗談だ、目の前のコレは。
ワカモ「あなた…様…これは…」
先生の片足が無い。あるのは血液の代わりと
言わんばかりに散らばった、特有の反射光を
放つ機械の部品とコード類。
その先にはさっきまでついていただろう
先生の足が転がっていた。
先生「いてて…あっ…」
ワカモ「…っはぁ……っはぁ……」
呼吸が荒い、心臓が煩い、冷や汗が
気持ち悪い、思考がまとまらない。
ワカモ「あ…あな…た…様…」
先生「ワカモ」
ワカモ「…っ」
先生「ワカモ、おいで」
先生が、足をまるで気にせずに腕を開く。
私はこの不快さを掻き消すためにもつれながら
その中に入っていく。
先生「ごめん、辛いものを見せたね」
ワカモ「…」
先生「しばらくそのままでいいから、
おちついたら全部話そう」
ワカモ「…はいっ…」
涙が止まらない。今抱いてくれる先生は
しっかりと暖かい。
でも、足元に転がる機械たちと片足の
冷たさが痛い。撃たれたときとは違う
痛さ。物理的ではなく精神的な痛み。
ワカモ「…先生」
先生「どうしたの?」
ワカモ「…先生は…」
先生「…ワカモ?」
もうこんなことのないように
ワカモ「あなた様は私が」
もうこれ以上こんな痛みを知らないために
ワカモ「私が!」
先生「ワカモ!?」
もう…こんな気持ちにならないために
ワカモ「私が…お守りします…!」
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モブA「…いつやるよ」
モブB「2週間後ってとこかな」
モブC「つかマジでやんのかよ」
モブB「何が」
モブC「いくら高額とはいえよ、
脱獄犯の鎮圧なんて出来んのか?」
モブB「やるしかねえだろ、金もないんだ」
モブA「そうは言っても相手がなぁ…」
モブB「数でおせば勝てるって!」
モブA・C「うーん…」
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ワカモ「 〜」
先生「ご機嫌だね、ワカモ」
ワカモ「はい!あなた様と念願のデート
ですもの!」
先生「デートって、備蓄品のチェックだよ?」
ワカモ「私には、あなた様と行く倉庫でさえ、
楽しいデートになりますわ!」
あれからしばらく経った。
先生からは足についての事情を説明され、
それと同時に半ば押し切る形で先生の
護衛をすることになった。
片足が義足であるということは、
万が一先生に何かあれば、
生存率は格段に低くなる。
ワカモ(絶対にあなた様は、私が守ります)
先生「さてと…今回検品するのはここだね」
ワカモ「ここは…危険物管理庫ですか」
先生「そう、色んな爆薬、薬品があるところ」
ワカモ「そこに先生を…?」
先生「?…まあそうなるね」
腹が立つ。私たちに比べヘイローを持たない
彼がどれだけ脆く弱いかを知らないのか、
それとも敢えてここに送り込んでいるのか。
この依頼を送ったのが誰であれ許せない。
先生「ワカモ」
ワカモ「っはい!」
先生「ワカモ、顔が怖いよ」
ワカモ「申し訳ありません…」
先生「…心配してくれてありがとうね」
先生は、あなた様は本当に優しい。
たとえどんな理不尽でも、どんな苦境でも
乗り越えるあなた様は。
本当に脆くて、本当に弱い。
けれど私たちが持たない強さを持っている。
先生「じゃあ、始めようか」
ワカモ「はいっ!」
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モブB「獲物は入ったか?」
モブA「入った、今管理庫の前」
モブC「となりに誰かいるよ」
モブA「…あれはシャーレの…先生?」
モブC「前に来たっていう人?」
モブB「構やしないさ、決行だ」
モブB「全員へ連絡、作戦開始」
手に取ったスイッチを、
モブB「狐を狩るぞ」
押し込んだ。
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先生「…これもよし…あれも問題なし…」
ワカモ「…全数アリ…異常なし…」
先生「よしっ、全部あるから、一旦帰って
資料を作って終わりかな」
ワカモ「はい!では早速帰りましょう!」
先生「そうだね……ん?」
ワカモ「先生?」
先生「あれは…?」
管理庫の扉、大きなスライド式の防火扉の影に
何が置いてある。大きな黒いカバンに入って
気が付かなかったがコレも検品だろうか。
先生「カバン?」
ワカモ「忘れ物でしょうか?」
先生「んー…危険物だったら困るし一応
開けてみようか」
先生が、私の目の前で鞄のファスナーを開く。
先生「中身は…っ!!」
中には赤いタイマーで残り3秒と告げる爆弾。
先生「ワカモ!!」
ワカモ「きゃっ!」
ズドォンッ!!!
轟音。衝撃。黒煙と炎。それが私達の周りを
取り囲んでいた。
ワカモ「…ゴホッ…ゴホッ…先生…?」
何が起きた。爆風で叩かれた頭を回転させる。
最後に見たのは私に覆い被さる先生と、
外へと投げ出された黒いカバン。
ワカモ「…先生…?あなた様!何処ですか!」
近くに先生が見えない。
いつ誘爆で吹き飛んでもおかしくない
管理庫に長居はできない。
ワカモ「あなた様!あなた様何処ですか!」
必死で辺りを探す。
爆発があったとはいえ、そう遠くには
行けないはずだ。であれば近くに。
ワカモ「あな…あぁ…!!」
爆風で倒れた何も入っていなかった
ロッカーの下に先生の足が見えた。
ワカモ「あなた様!!」
ワカモはロッカーを片手で持ち上げ
先生を助けた。
はずだった。
ワカモ「なっ…」
そこにあったのは取れてしまった片足で、
いつか見たように血液の代わりに
機械が散らばっていた。
ひしゃげて歪んだ接合部は赤く濡れていた。
それは先生が出血していること、
それは先生が片足だけでどこかにいることを
示していた。
ワカモ「一体何処に…!」
倉庫とはいえただでさえ爆発物などの多い
キヴォトス。この管理庫はやたらと広く、
1人で探すには手間だった。
ワカモ「私を…私を置いていかないで…!」
その時だった。
遠くに壁にもたれかかるように
気を失っている先生が見えた。
ワカモ「あなた様!!」
先生「ゲホッ…ゲホッ…あぁワカモ…」
ワカモ「ご無事でしたか!今止血します!」
先生「駄目だ…逃げないと…」
ワカモ「駄目ではありません!あなた様を
守ると私は約束したのです!」
先生「ワカモ…」
着ていた服の一部を破り捨て先生に
応急処置を施していく。
血は止まったが早く救急医学部や
救護騎士団に連れていかないと手遅れになる。
ワカモ「少し揺れますから、しっかり
捕まっていてくださいまし!」
先生「あぁ…」
先生を背に乗せて燃え盛る管理庫を出る。
早く、早く連れていかなければ。
先生は歩けない。今先生を助けられるのは
私だけだ。一刻も早く、連れていかないと。
また先生が体を失うなんてことにはさせない。
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モブA「…遅いな」
モブC「…流石に倉庫の中だし死んだ?」
モブB「いや、念の為に出入り口の爆弾も
起爆しよう」
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ワカモ「…っはぁ!…っはぁ!あなた様、
もう少しですから…!」
先生「うん…ごめんね…」
ワカモ「謝らないでくださいまし!
私が、守ると言ったのですから!」
私が守ると言ったのだ。
あの日あれを見た日から先生を助けると。
これ以上先生から何も奪わせないと。
略奪と破壊を趣味にする私が言ったのだ。
絶対に、これ以上失わせない。
先生「…あれは…っ!ワカモ!」
ワカモ「きゃっ!」
ズドンッ!
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モブA「…派手に崩落したな」
モブC「…やりすぎじゃないの?」
モブB「ここまでしないとあいつを
捕まえるには足りないかもしれない」
モブA「そうは言ってもよ…」
モブD「出てきたら撃つんだよね?」
モブE「みたいね」
地上では今か今かと脱獄犯を待ち構える
不良でいっぱいだった。
数で押せば勝てると踏んだ不良たちは、
大人数を用意し、爆薬を仕掛け、
弱体化させてから仕留める予定だった。
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何が起きた?後ろに衝撃を感じたと思った
直後の爆発音。私は仰向けに倒れ天井を
見ている。
ワカモ「!先生!ご無事で!?」
先生がいない。
通ってきた道は崩落し、瓦礫の山があるのみで
戻れない。いくら私でも土砂の混じった
瓦礫をどかすのは時間がかかる。
ワカモ「あなた様!!居ますか!!」
先生「…いるよ、ワカモ、無事?」
ワカモ「あぁあなた様!よかった!今助けに」
先生「駄目だ」
ワカモ「どうして!」
先生「お腹に…瓦礫が刺さっててね」
ワカモ「っ!」
先生「もう長くないよ」
ワカモ「そんな…私のそばにいてと…
申しましたのに…」
先生「……ワカモ、聞いて」
ワカモ「はいっ…」
先生「私がいつも…仕事をしてる…デスクの
引き出しに…あるものが入ってる」
ワカモ「…」
先生「それを君にあげるから…」
ワカモ「あなた様…」
先生「…なるべく……長く…生きてね…」
ワカモ「あなた様!!」
ズズン…ガラガラガラ…!
ワカモ「あなた様!!!!」
瓦礫の向こうで崩落音。いくら先生に
問いかけても何も聞こえない。
誰も返事をしてくれない。
先生はきっともう居ない。
私は、守れなかった。
略奪と破壊を繰り返してきた私には。
ワカモ「なぜ…こんなことに…」
私は瓦礫に背を向けて、シャーレのデスクを
めがけて歩き出す。
重い足を動かして、出口へ向かって。
地上へ出ると大量の不良生徒に囲まれていた。
戦車を持つ者、ロケット砲を持つ者、
様々な火器で武装した生徒たち。
ワカモ「あぁ…そういうことでしたの…」
管理庫にあったバッグ、天井を落とした爆弾。
この不良、ゴミ共から感じるぬるい殺気。
ワカモ「なるほどなるほど…ゴミ共が」
モブD「何を」
モブA「…は?」
私は吐き捨て、先生を殺した、私から奪った、
先生から先生を奪ったゴミの掃除を始めた。
阿鼻叫喚の地獄と化したが、そんなことは
どうでもいい。私は帰らなければ。
先生が望んだことをせめて最後には。
モブB「…全滅」
ワカモ「残ったのはお前だけですわね」
モブB「…」
ワカモ「じきにヴァルキューレが来ますから
放っておいてもいいですが、
貴方が主犯ですね」
モブB「!」
ワカモ「あなたは、地下墓地へお送りします」
モブB「なっ!?」
ワカモ「入り口は塞いでおきますので、どうか
自力で出口を見つけて出られると
いいですわね」
モブB「やめろ!やめてぐ」
後頭部を銃のストックで殴りつけ、
首を掴んで引きずっていく。
カンナ「…止まれ」
ワカモ「…なんでしょう」
カンナ「…我々を呼んだのはお前だな?」
ワカモ「…ええ」
カンナ「何故脱獄犯のお前が…」
ワカモ「…地下を調べればわかります」
カンナ「そうか……だが逃すわけにはいかん」
ワカモ「…邪魔をするな」
カンナ「っ!」
押し潰されるような威圧、撃たれたかの
ような殺気、だが、その表情は虚だった。
カンナ「…?お前…」
ワカモ「では…私はこれにて」
私は掴んだゴミをゴミ箱に放り捨て、
入り口を埋めて立ち去った。
そのままシャーレのデスクへ向かい、
引き出しを開けた。
ワカモ「…これは?」
いくつか開けてみた中に、大きな紙袋が
あった。おそらくこれのことだろう。
中のものを傷つけないように丁寧に
包装を剥がして中身を取り出した。
ワカモ「…っ…あなた様は…本当にっ…」
あったのは黒い狐の面。
いつか先生が私の面をかっこいいと
話していたが、おそらくその辺りで
買ったのだろう。
ワカモ「ふふっ…あなた様の形見、大切に
しますわね」
ワカモは白い狐の面を黒い狐の面に替えた。
ワカモ「ふふふ…待っていてくださいね、
先生。あなたを奪ったゴミを掃除して
私も参りますから」
その日からワカモのヘイローは元の紅よりも
紅黒く染まった。
思ったよりも反響がありましたので
第二弾です。
どうぞお楽しみください。
もしコメントやリクエスト等ございましたら
注意事項の範囲でご自由にお書きください。