ロボトミー社鳥取支部 鳥小屋観察日記 作:ぷれろーる1123
楽しんでいってくださいませ(推奨)
お待たせして申し訳ありませんでした(謝罪)
ー記録プロセスー
...〇〇県△△市。14:52...
大規模な異形災害を確認。同市の壊滅的な損害を確認...
尚、同被害の中にアブノーマリティによる物が確認される。
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「...はぁっ、はぁっ...!」
彼はのりたま。比較的普通なただの1学生、だった。
この日までは。
突如起きた記録レベルの異形災害。町は異形で埋め尽くされ、街の残状には目を覆うばかりであった...
「どこに逃げれば...それに、レミ...どこにいったんだよ...無事でいてくれ...」
彼の幼なじみ、れみぉん。彼女の安否も分からずじまいとなっていた。
ウォーゥ...!
遠くから狼の遠吠えが聞こえる...!
「クソっ、ここから離れないと...!」
今のりたまに出来ることと言えば、異形の気配のない方に走り続けることのみであった...
走り、逃げ回るうちに時は夕方へと移る。
「こ、ここまで来れば多少は安全...か?」
のりたまは町を囲むようにそびえる山の麓にある洞窟の1つへ逃げ込んでいた...
「...!これは、血...か?」
よく見ると入口から奥に向けて、血が続いている...
「奥に化け物の気配はないし...怪我をしてる人がいるのかもしれない...!急ごう。」
のりたまは洞窟の奥へと歩を進める。
「結構深いな、この洞窟...あ!大丈夫ですか!?」
洞窟の最深部。そこに、血まみれで倒れている人を発見する。
全身を赤い装束に包んだ、かなり背の高い人間。。
『ガ、ハッ...』
「だ、大丈夫ですか!?早く手当てをしないと...!」
『しくじった...!殺す、次は絶対に殺してやる、クソ犬がぁ...!』
「なんでこんなに怒ってるんだ、この人…?」
不思議に思いながらものりたまは簡易的な手当を済ませる。
『…助かった。』
患部を擦りながらその人は言う。声からして女性だろうか。外見では分からなかったが。
「貴方も異形に襲われたんですか…?」『ハッ、あんな雑魚どもに俺が遅れを取るかよ。これも全てあのクソ野郎のせいだ…次会った時がヤツの命日よ…!』「そ、そうなんですね…(何があったのかはあまり聞かない方が良さそうだな…)」
そのまま数刻が過ぎ…
ふと、のりたまは気づく。先程自分が手当てした傷。致命傷にはギリギリならなかったとはいえ、かなりの大怪我だったはずだ。
しかし目の前の人物の怪我は既に塞がりかけている。まだ数時間も経っていないのに…
「え、き、傷がもう塞がって…?」『あ?伊達に鍛えてねぇよ…あの野郎に鉛玉と蹴りをぶち込むためにな。』
「あ、貴方も異形…ってことですか…?」『異形ぅ?あんな腑抜け共と一緒にするんじゃねぇよ!あの野郎の体に鉛と蹴りを喰らわせてやる為だけに生きてきたんだ…あんなカス共と並べられちゃかなわねぇ。』
「(より化け物って事でいいのだろうか…)」
『…フン、まぁいい。このままさよならってのも一つの手だが…施しを受けたままってのは癪に障る。俺に付いてくるって言うなら、途中安全な所までは面倒を見てやる。感謝しろよ?』
「本当ですか!?ありがとうございます!ところで灰色の髪をした「決まりだな。疲れた、俺は寝る。」「えっ?ちょっと!...寝てる。なんなんだ本当...いいや、僕も寝よう...明日に備えないと...」
まどろんでいた意識は直ぐに落ちた。
ー...翌日...ー
『おい、起きろ。行くぞ。』「はぃ...眠い...」
2人は早朝から移動を始めていた。
『チッ...考えれば考える程腹が立つ...そもそもあの時のヤツは様子がおかしかった...内的要因か、それとも...』
赤い服の女性は常に何かを呟きながら進む。
「一体(ヤツ)っていう何かと、何があったんだろう...ん?」
のりたまは足元に"足跡"を発見する。
「随分大きいな...こんな生き物が居たのか...?この山に」
『...!どけっ!』「痛ぁ!?」
女性はのりたまを押しのけて足跡の調査を始める。
『古いな...だが遠くまで行った訳でもない...こっちか...行くぞガキ!』
言うなり走り出す。
「えぇ!?...ていうかガキって言うの辞めてもらっていいですか!?はぁっ、はあっ、貴方の名前も知らないし!」
『あぁ!?...そういや言ってなかったかぁ?赤ずきんだ!』
「赤ずきん?赤ずきんってあの?」『どのだよ。俺は俺だ。んな無駄話はいい!行くぞ!』「あっちょっと!」
そのまま赤ずきんは隣町まで走り抜けた。
赤ずきんは鼻を何度か鳴らす。
『...近ぇな。ここに潜んでやがったか、犬ケラが。』
「...ぜぇ、ぜぇ、全然ペース落とさなかったよ、この人...」
『遅せぇよ、ガキ...行くぞ。』
「はい、はい、分かりましたよ!それにしても...」
のりたまは辺りを見回しながら歩く。
「随分ここも荒れ果ててはいるけど...どうやら中心部に人はいるみたいだな...人がいた痕跡がある。レミもそこに...?」『レミ?誰だそりゃ。』
「あ...レミって言うのは僕の幼なじみで...逃げる時にはぐれてしまって、今は行方が分からないんです。無事でいてくれるといいんですけど...」
『ふーーん。興味ねぇな...おい、止まれ。』
「どうしました?」
『そこから動くな...忙しいってのに...そんなに殺されてぇのか?こいつら...』「!」
2人の周りを薄い朱色のスライム状の生物が囲む。
どうやら仲良くなりに来た訳では無いようだ...
「おかしい...今回の異形災害で発生した異形は(虫)と(獣)のはず...!スライム状の異形なんていなかったはずなのに...」
『何か嫌な気配を感じるなぁ...下手したらあのクソ犬よりも厄介そうな奴の気配がするぜ...だが、テメェらなんぞに負ける俺じゃ...ねぇ!』
言いながら赤ずきんは敵の処理にかかる。
銃と短刀を巧みに使いながら、瞬く間にスライムを細切れにしていく。
「凄い...」
数分も経たない内に、周りには一体の生物も残ってはいなかった。
「つ、強い...でも、こんなに強い赤ずきんさんにあれだけの傷を負わせた相手って一体...」
のりたまはまだ見ぬ敵の強大さを予感し、震えた。
2人は街の散策を続ける。
「...やっぱりおかしい...これだけ異形による被害が出た街で、こんなに歩き回って、一体の異形とも遭遇しない、なんて...」
『あのスライム共が喰いつくしたんだろ』
「異形が異形を!?何のためにそんなことを...」
『あ?アレは異形なんかじゃ...(まぁ、説明するのもダルいし、それでいいか)...いや、なんでもない。』
しばらく歩いていると。
『...!この気配、追いついたか!?野郎、殺す!ここで!必ず!』
「あっちょっと!?」
赤ずきんは突然走り出し、何かを追っていく。
のりたまは彼女を追いかけるが、当然追いつける訳もなく...
「...ぜぇ、はぁ、ふぅ...どこいったのあの人...」
赤ずきんを見失ってしまった。
「もう、どれだけ恨んでるんだあの人...ん?」
とりあえず赤ずきんが走っていった方に向けて歩いていると、ふと。
1つの瓦礫の山が目に付く。
「見えにくいけど...扉、かな?」
瓦礫の下。地下室か何かに繋がっているとおぼしき扉の上には、瓦礫や木材やらがやけに積み重なっていた。
まるで何かを抑え込むように。
「やけにここだけ瓦礫が多いな...」(...誰か。)「!?」
(誰か、いるの?)「(人の声!?)誰か中にいるんですか!」
(うん...閉じ込められちゃって...お願い、ここから出して...私を...助けて)
「わ、分かりました!」
のりたまは扉の上を塞いでいる物を退け始める。
「ずい、ぶんっ...!物が塞いでる...!」(...くすっ...)
「(...笑い声?...いや、気のせいか。)」
随分と時間がかかったが、のりたまは扉を塞ぐ瓦礫を除去し終えた。
「大丈夫です...か...」
扉を開けて中をみて、言葉を失う。
そこにいたのは...
街の入口で襲われたスライムにそっくりな見た目の、女の子だった。
ソレはこっちを見て、微笑む。
『出してくれて、ありがとう...大好き...』
その液体の滴る手が、のりたまを抱きしめようと伸ばされた。
『そこまでだ。』「!」
赤ずきんがいつの間に階段を降り、壁を背にこちらを見ている。
『何...?あら?誰かと思ったらお仲間じゃないの...貴女も彼にご執心?』『チッ...違ぇよ。ほんの少しばかり恩義があってな...ここでお前の恋人にされちゃあ、約束を違える事になる...』
『ふぅん...?でも私、彼のこと気に入っちゃった...。悪いようにはしないわ、だからさ、彼の事は...諦めて?ね?』
ワカラナイ。この2人が何を言っているのかも。"恋人"という単語が何を指すのかも。だというのに震えが止まらない。目の前の存在から、速く逃げろと生存本能が叫ぶ。
『...ふふっ。震えちゃって...可愛い♡』
再度彼女は、その手を伸ばす。
『...面倒事ばっか持ち込みやがって...こんな奴に助けられるんじゃなかったぜ、クソが...』赤ずきんは武器を構える。
ドゴォォォォォン!
瓦礫は瞬時に吹き飛ぶ。
『ふふっ...しつこい女は嫌われるわよ?』『うるせぇ、黙って死ね!』
アブノーマリティ「赤ずきんの傭兵」、「溶ける愛」。
両者の戦闘が幕を開ける。
ぶつかる両者。しかし、戦線は拮抗していた。
溶ける愛の異常な感染力。しかし、それはアブノーマリティの赤ずきんには通用しない。
赤ずきんの高い戦闘力。しかり、それは溶ける愛の高い再生力、スライム状の体の前にはほとんどダメージを与えられなかった。
それに気づいているのか、しばらくの戦闘の後、両者は一斉にその矛を降ろす。
『...ラチが開かねぇ。諦める気はねぇのか?』
『そうね...そこに関しては同感かしら。...でも、彼は諦める気は無いわよ?...そうね...』
溶ける愛は考えた末に、1つの結論を出す。
『私も貴方達について行くわ。彼は今の所は、私色に染めてあげるのは勘弁してあげる。これでどう?』
『...その辺りが落とし所か?チッ...しょうがねぇ。こいつを安全な所に押し付けるまでだぞ。"その後は好きにしな"』「え?」
『ふふっ...楽しみね、のりたま君♡』
何の因果か、溶ける愛までもが一行に加わってしまった...
「どうしてこんな事に…」
「ところで、赤ずきんさん。」『あ?』
「よかったんですか?例の「アイツ」とやらを追いかけて行ったと思うんですけど…」
『…チッ…。あの野郎、目が合うなり尻尾巻いて逃げやがった。やはりなにかがおかしい。何がアイツを変えた?埒が明かねぇ…』
赤ずきんはブツブツと独り言を始める…
『あいつ?あいつって何?』
「赤ずきんさんとどうやら深い因縁があるみたいで…
『ふーん…それってあそこでこっちを見てるワンちゃんのこと?』
『…あ?』
赤ずきんとのりたまは愛が指さす方を見上げる。
「あ、あれが…ヤツ?」
そこには、アブノーマリティ"大きくて悪いオオカミ"が瓦礫の山からこちらを見下ろしていた。
『…ハッ、何だよ。素直に出てこれるじゃねぇか…殺す!!』
赤ずきんは走り出す。不倶戴天の敵を屠る為に。
銃と短刀を取り出し、オオカミへの攻撃を開始する。
『アォォーーーン!』
オオカミが遠吠えをすると、昼にもかかわらず空に蒼い月が現れる。
戦闘の準備を整えた両者が、戦闘を始める。
……カサッ…
「?…今なにか聞こえませんでした?」
『え?何も聞こえなかったけど?』
「気の所為かな…。」
一瞬、オオカミの目が"紫色"に光る。
『ガッ!?』「赤ずきんさん!?」
隙をついてオオカミは赤ずきんを蹴り飛ばした。
オオカミはこちらを向く。
「ッ!」
『グルル...』
『何?私に攻撃するつもり?物理攻撃は私には効かな...え?』
突然、オオカミの前足を植物のようなツタが覆う。
『うっ!?』『ガルルァ!』
植物がエネルギーを吸収する役割を果たし、溶ける愛に明確なダメージが通っている。
油断していた溶ける愛に、深々と突き刺さった爪は、動けなくなる程のダメージを与えるには十分であった。
『くっ...不味い、逃げ切れ...ない...』
「愛さん!?」
オオカミがトドメを刺すために前脚を振り上げる。
「危ない!」
のりたまは溶ける愛に"直接触れ"、彼女を押しのける。
『うっ!』
愛は突き飛ばされ、倒れる。
『...えっ...のり、たま...くん...』
そこに、腹を大きく切り裂かれたのりたまが横たわっていた。
『うそっ、嘘、...っ...!のりたま君!ねぇ!』
『グルル...』
のりたまに駆け寄る溶ける愛にも容赦なく、オオカミは牙を向ける。
『痛ぇなクソがぁ!』『ガァァ!』
赤ずきんがオオカミを蹴り飛ばした事で、難を逃れる。
『グルル...』『あっテメェ!!待ちやがれ!』
オオカミは赤ずきんが戻ってきた事を確認すると、数的不利と見たのか踵を返して走り去る。
『どうして!どうして庇ったの!』
溶ける愛は壊れたように同じ質問をする。
『私は...貴方を染めようとしてたのよ...?助けてくれた貴方を...なのに何で...』
「...うっ...」『のりたま君...』
「何故だか...助けなきゃ...って...体が勝手に...動いてました...怪我はないですか...?」
『バカ!』『...イカれてるな、お前...化け物を庇って人が死ぬとは...』
2人はのりたまの容態を確認する。
先程触れた影響で、のりたまの体を溶ける愛の粘液が覆い始めている。
『ダメ...私の力じゃ、染めるだけで治せない...そんな、私が油断したから?何で?何で貴方が私を助けるの...?...ごめん、ごめん...のりたま君...』
『とりあえず止血するぞ、動くな...だが、ただのガキが負うにはこの傷...血を流しすぎだ...』『い、嫌だ。そんなの嫌だ!のりたま君、のりたま君、のりたま君...』
「...またか。何回死にかければいいんだ?お前。」『『!?』』
突然背後から人の声がする。赤ずきんは銃を抜いて後ろに向ける。溶ける愛は周りに残った液体を集め、対象に向ける。
『...誰だテメェ。(気配が無かった...?)』『近づくな。...この人に危害を加えるなら、潰す。...殺してやる。』
気が付かないうちに後ろに人が立っている。
「はぁ...落ち着け、お前らはともかくそこののりたまには危害を加えるつもりはない。治療しに来た。」
『それを信じろってのか?』「それ以外に方法があるのか?」
『...どうする?』『説明して。彼に、何をするの?答えて。』
「分かった分かった、だからその物騒なモンをしまえ。危害を加えるつもりはない。」
目の前の人物は1本の小さなビンを取り出す。
「この中に入ってるのは、とある木の樹液でね。飲めば完全に怪我やらなんやらを完治させるっていう優れ物だ。」
『代償は?どうせ俺らと同じ類のモンだろ、それ。』
「察しがいいな...低確率だが、飲むと"面白い事になる。"」
彼が手に持っている液体。自分たちと同じアブノーマリティである以上、彼の言う(面白い事)というのがどういう事なのかは、容易に想像がつく。
「どうする?待つのもいいが...あと何分持つかな?それに、怪我をさせた原因を作ったやつが、どうこう言える状況じゃないと思うがな?」
『うるさいっ!』
溶ける愛の激情に反応して、液状の触手が男へと伸びる。
『...乱暴ですね。我々は貴方達を助けようとここまで来たというのに。』
『...誰。』
いつの間に現れたのか、彼の横に青と黒の髪の毛をした女性が立っている。
『正義の、守護者...だった者です。』『...ふざけてるの?』
彼女が作り出した盾によって溶ける愛の触手が阻まれる。
「まぁまぁ。彼女らの気持ちも分かる。俺の言い方も悪かった。そこで、だ...んっ。」
『!?』『...大丈夫なのか?それ。』
男は瓶の中身を1口飲む。
「...よし。ラッキー。これで悪意がないってのは、伝わったかな?」
『...早くして。』
「はいはい、仰せのままに...っと」
彼はのりたまに瓶の中身を飲ませる。
死の寸前まで傷ついた肉体が急速に回復を遂げる。
「...え、あれっ...体が痛くない。」
『のりたま君っ!』『待て待て!』
抱きつこうとする溶ける愛を赤ずきんが止める。
『元も子もなくなるだろうが!』『だ、だって!』
「...元気になったようで何よりだ。では。」
「ま、待ってください!」「うん?」
「助けていただいてありがとうございます!...それで、お名前だけでも聞きたくて!」
「ふむ。殊勝な心掛けだね。���だ。」
「ありがとうございました、���さん!またいつかお会い出来たら、ぜひお礼をさせてくださいね!」
「ふっ、楽しみにしているよ。じゃあね。行くよ、騎士さん。」『えぇ...』
���はその場を去る。
彼が去った後、のりたまは話し始めた。
「赤ずきんさん。」『あ?』
「あのオオカミが、いつもと何か違うって、言ってましたよね。」
『?...あぁ。いつもとは何か様子が違う。』
「あのオオカミに、木を操る能力はありますか?」
『あ?んなもんある訳ねぇだろ。今まで殺し合ってきたが、んな事は1度だって無かったぜ?』
「...僕たちを攻撃してきた時に奴は、前脚を樹木のような何かで覆っていました。」『...あ?』
「ですよね、愛さん。」『えぇ!?う、うん!そうだねのりたま君!』
溶ける愛は何故かそっぽを向いたまま答える。
「...そっちに何かあるんですか?」
『いやいや、何でもないよ!何にもない!うん!』
「そうですか?...あ、話を戻しますが...その時に見えたんですが、オオカミの腹の部分から、木が伸びてきていたように見えたんです。」
『...まさか』
「...はい。予想にはなりますが、何かしらの理由であの木の力を手に入れた、もしくは木に操られている可能性があるかと。」
『いつもと違う行動を取り始めたのはそれが理由か...?常にあの形態で移動してるのも腑に落ちねぇ...操られてる、てのが濃厚な線か...?』
「なので、提案です。赤ずきんさん。」『あ?』
「次に戦う時に...」
(...どうしよう。のりたま君の顔が真っ直ぐ見れない...今までこんなことなかったのに...!助けられた位で...いや、助けてくれたからこそ、か...どうしよう...)
2人は話を進める。1人で顔を赤らめ、惚けた顔でのりたまを見る彼女を置いて。
ー翌日ー
...れみぉんside...
彼女が隣町の中央に位置する避難所に来てから2日。
"異形を襲う謎のスライム型異形"のおかげで、異形による大きな被害は出ていないものの、街から出られない事で、物資は底をつこうとしていた。
このままでは、応援が間に合わず、飢え死にしてしまう人が出てくるかもしれない。
避難所に集まった人々は、元気な人員を数名、先遣として送り出す事で、事態の打開を図ろうとしていた。
学生であるため若く、馬術等スポーツをしている事で肉体的にも健康はれみぉんは、そのメンバーの中の1人として、瓦礫だらけとなった街を進んでいた。
「...大丈夫かい?れみぉんさん。思い詰めた顔をしているけど。」
「...。」「れみぉんさん?」
「え?あぁ!はい、大丈夫です!」
「本当に?キツくなったら何時でも言うんだよ?」
「ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですから。」
歩く彼女の頭の中にあったのは、幼なじみの安否についであった。
(のりたま...大丈夫だって、信じてるよ...?死んだりしてたら、絶対恨むからね...)
突如発生した異形に襲われ、離れ離れに。身体中ボロボロになりながらたどり着いた隣町で、なんとか生き延びて来た。
安全な街の中でさえ、命の危険が何度もあるような状況なのに、ここに彼の姿はない。
れみぉんはただひたすらに、彼の幸運を願った。
「うわぁぁぁぁ!?」「ぎゃああああ!」
「...えっ...?」「ガルル」
集団の先頭から悲鳴が上がる。れみぉんが声に気づいてその方向を見るのと、
"大きくて悪いオオカミと目が合ったのは同時だった..."
...のりたまside...
『...こっちだ。足跡が続いてる。』
「街の中心部に向かってる...しかも段々歩幅が大きく...」
『しばらく何も食ってねぇんだろうな、そろそろ我慢の限界のはずだ。』
「そ、それじゃあ...人を襲いに行ってるって...ことですか?」
『当たり前だろ。そうやって私の故郷も...家族も...全てアイツに...』
「い、急ぎましょう!誰かが襲われてるかも...」
のりたまが言いかけたと同時に。
(.....嫌っ...)
「...レミ?レミ!!どこにいる!!」
微かな声であったが、のりたまが聞き間違えるはずがない。
れみぉんの声、それも助けを求める声だ。
のりたまは足跡を頼りに走り出す。
『...近ぇ!』
赤ずきんは、宿敵の気配を感じて武器を取り出す。
『昨日のお礼を...しないとね...。』
妖艶な笑みを浮かべる溶ける愛は、1日のうちに集合させた300という眷属を従え、進む。
走り続けて最初に見えたのは。
腰の抜けた女性に向けて口を開ける、オオカミの姿だった。
『死ねぇ!!』『ウォウ!?』
「レミ!」「のりたま!?」
赫の狩人はその武器を構える。蒼の獣ほその牙を剥く。
『かかってこいや、獣畜生がぁ!!』『ガルルァァ!!』
今再び、2色の獣は衝突する。
間一髪の所で赤ずきんの攻撃と合わせのりたまはれみぉんを滑り込みながら抱える。
「無事だった...良かった...本当に...」「のりたま...ありがとう。無事で良かった...」
再開を喜ぶ2人。
『...誰?あの女。...私を先に助けてくれたのに...私のなのに...ふふっ...。』『...!』『...!?』
自らの眷属を恐れ戦かせる程の圧、ハイライトの完全に消え失せた目でそれを見つめる溶けた愛。
『のりたま君。』「ひっ!...はい、なんですか...」
体の底から凍りつくような声で、彼女は言う。
『"友達と"再開を喜んでる所悪いんだけど...オオカミの方は大丈夫なの?』
「...あっ!そうだった...ありがとうございます、愛さん。」
言うなりのりたまは背負っているバッグを開けて、準備を始める。
「え?のりたま、準備って何の...」『邪魔しないで』「じゃ、邪魔って...そんなことする訳ないじゃない!」『邪魔になるから言ったのよ!』
「なんで初対面で喧嘩してるんですか...?よし、出来た。」
「松明...?何に使うの?まだ昼で、暗い訳でも...」
「明かりとしてじゃなくてね...火を、使うんだ。」
「火?」『わざわざこの女に説明する必要もないんじゃない?のりたま君』「さっきから何なんですか?くどくどと。」
「...なんでこんなに当たりが強いんです?初対面ですよね、貴方達...なんにせよ、これで準備は出来ました。じゃあ、愛さん、お願いします。」
『任せて!そこの女よりは役に立って見せるよ!』「...。」「お、抑えて、レミ。...頼みました、愛さん。」
『みんなー。あの犬、昨日私に噛み付いてきたんだよね...生意気だよね...やっちゃえ、皆。』
『...なるほど。確かに、よく見りゃ所々おかしな点がある...生意気だが、良い推測じゃねぇか...ガキ。』
オオカミとの戦闘を行いながら、赤ずきんは珍しく冷静に考える。
目の色、腹部の木の根のような何か、薬物使用者のような空いたままの口。
所々に、寄生している植物と見られる何かの影響が見られる。
『...グォ?!ガルル...!』『...来たか。』
突然、オオカミは周囲を見て、唸り始める。
いつ間にか、囲まれている。何百という朱いスライム。
『らしくねぇな、テメェ...殺すなんて何時でも出来るが、苦しんで貰わなきゃ意味がねぇ...目ぇ覚まさせてやるよ、クソ犬!』
『やっちゃえ、皆。』
溶ける愛の号令と共に、スライム達が一斉にオオカミに襲いかかる。
ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返すが、ただでさえ赤ずきんを相手にしているのに加えて、この大軍勢。次第にダメージは蓄積していく。
数分も経たずに、オオカミの体力はその大半が削られてしまう。
足取りはふらつき、出血も目立つ。
『頃合か?...フンッ...オラッ!』『!?』
赤ずきんは突然狼の体を掴むと、その身体をひっくり返して地面に叩きつける。
『...ざまぁねぇな、テメェ...ここまで鈍いとは思っていなかったぜ。』
腹部には、植物の根が絡みついていた。オオカミを操る植物はもがく。
ダメージが蓄積していたのもあり、オオカミは上手く体を動かせない。
『ガキ!出番だ!』「はい!」
のりたまは松明に火をつける。
『コイツは火なんぞじゃな死なねぇ!遠慮なくいけ!』
「はい!...えいっ!」
のりたまは火がついた松明を植物の中心に向けて投げる。
(ーーーーーーーー!!!)「うっ!?」
植物は炎を上げた。声にならない叫びが耳をつんざく。
しばらくの間植物はもがいていたが...炎には抗えず、あまりにも呆気なく。
戦いは幕を閉じた。
オオカミは植物が剥がれ落ちると、突然立ち上がり、走り去ってしまった。赤ずきん曰く、
『こんな形の決着は望んでねぇよ。奴には苦しんで貰わねぇときがすまん。』
ということらしい。
のりたまは隣町の避難所に入ることになり、それはすなわち。
約3日間、共に過ごしたメンバーの、別れを意味する。
『...世話になったな。』「いえ、こちらこそ。赤ずきんが居なかったら、レミも僕も死んでました。ありがとうございました。」
『...。おい、ガキ。』「はい?」
『持ってけ。』「これは...笛?」
『犬笛だ。何かあったら吹け。暇だったら助けてやるよ。』
「あ、ありがとうございます!...お元気で!」
『おう。』
『のりたま君...』「どうしたんですか?愛さん」
『これ、付けてみて。』「...マスク、ですか?いいですけど...はい。なんですか?これ。」『...ん!』「!?」
溶ける愛はマスク越しにのりたまにその唇を捧げる。
「!?、!?」「ちょ、何してんの!」
『ふふっ♡はい、これ。』「!?」
『何時でも...呼んでね?』
言うなり足早にその場を去ってしまった...
「!?、!?」「...。(なんだろう、ムカつくと同時にモヤモヤするな...なんでだろ...)」
『そういや、この後テメェらどうするんだ?何かアテでもあんのか?』
「...アテは無いですけど...強く、なりたいです。レミを守れるくらいに。1人で生きていけるくらいに。」「...私も。守ってばっかりは、性にあわない。強く、なりたい。」
『...この間。』「?」
『ロボトミー社の社員って名乗る奴が、尋ねてきた。俺とあの野郎の力で何か作って、トンズラしやがったが...人の見た目した、バケモンだ、あれは。あれくらい強くなる所なのかもな、ロボトミー社って所は。』
「ロボトミー社...行ってみる価値はあるかも...ありがとうございます、赤ずきんさん。」
『あ?独り言だよ独り言。いちいち反応すんな。じゃあな。』
「...素直じゃないなぁ、あの人...」「どうする?のりたま。ここの皆が助かって、異形の心配が無くなったら...行ってみようか、ロボトミー社。」
「...うん。大丈夫、2人ならなんとかなるさ。」「うん。頑張るよ、私!」
今、2つの彗星の行先が決まった...
はい。
次回から現在の時間軸に戻します。
頑張るぞ〜...。(疲労)
お楽しみに