ロボトミー社鳥取支部 鳥小屋観察日記 作:ぷれろーる1123
異形 氷の地神 HE相当
元はただの野良異形だったモノが、祭壇と生贄という契約により仮初の土地神になった姿。自らに信仰を行う物への簡易的な加護を授けるが、年々要求する贄の量は増えてゆく。間違っても奴らに信仰など行ってはならない。
物理的なダメージにはめっぽう強い反面、WHITEやBLACK、PALEといった内面へのダメージにはめっぽう弱い。どんなに強くても異形の強さはHE止まりと言った所で、ラ・ルナには勝てるはずも無かった。
〜翔side〜
「.....どこだ、ここ....」
彼は翔。割とどこにでもいる、普通の学生である。
この日も趣味のウォーキングを行っていたのだが....
いつの間にやら全く見覚えのない場所に辿り着いていた...
「携帯も繋がんないしさぁ....マジでどうしよう...」
「もし」「うわぁ!?」
「もし、もし。そこの方、なにかお困りで?」
見ると和服姿の今どき珍しい格好の女の子がこちらを見ている。
「あ、あぁ....良かった、人がいた....実は道に迷っちゃいまして....」
「まぁ!それはお困りでしょう!私の村に案内致しましょうか?」
「いいんですか?じゃあお願いしても...」
「ではご案内致しましょう。こちらへ。」
その女の子に着いていくとそのうちに村が見える。
「ようこそ珠村へ。こんな田舎で何もありませんが、どうぞごゆっくりして行ってください」
通された大広間で村長とおぼしき人から伝えられる。
「それにしても今日は2人も客人が来られるとは、珍しいことですな。」
「え、そうなんですか?」「はい、こんな田舎にまで...もの好きな事です。」
しばらくして大きな部屋に通された。
「どうぞ、ごゆっくり。」
随分豪華な部屋だ。そう思って荷物を置くと。
「どうも。」「うわぁ今度は誰だ!?」
部屋の机に座っている男から声を掛けられた。
「初めまして。貴方も道に迷って?」
「あ、ああ。そうか、君が村長が話していた...」
「私以外にも同じ境遇の方と会えるとは...なんと僥倖!お願い致しますね...私は篝。どうかただカガリ、と。」
「あ、あぁ。」
「私は篝!どうかただカガリと!」「あ、あぁ。俺は翔。」
(随分クセの強い奴だな...)
2人の話題は現在いるこの村についてのものになる。
「ところで...この村、何か感じませんか?翔さん」
「え?んーっと...特には何も感じないかな...今どき随分古びた生活をしてるなとは思ったが」
「そう!!それです!!!」「!?」
「風呂が五右衛門である、マトモに電気が通ってない...これだけならば辺境の村である、と片付ける事もできましょう!しかし...」
「他にも不審な点があると?」
「この時代に置き電話の1つもなし、村民は皆和服、移動が徒歩...これだけの材料が揃えば、私の疑いが深まるのは当然のことと言えるでしょうね。それに...」「?」
「彼らの...目。」「目?」
「こちらを見ているようでどこを見ているのか分からない...心ここに在らず、といった印象を受けます...」
「考えすぎなんじゃないか?」「であれば良いのですが...」
結局2人の考えはまとまらず、その日はそのまま就寝する事にした...
翌日...
「結局何も悪いことは起きてないけどなぁ...」
朝から昼にかけて運動のためにも散歩を数回に分けて行ったが、特に不審な出来事はなかった。
その事を篝にも伝える。
「カガリさんの考えすぎだと思うんだけどなぁ....」
「何も無いのであればそれが1番ですが...安心しすぎないことをオススメします...」
「分かったよ」
結局そのままその日は何も起きなかった...
翌日...
「もし、おふた方。薪割りを手伝っては貰えませんか。なにぶん男手が少なく...」
「ん〜...はい、今起きま...す?」
気づいたら部屋を出ている。
「む?」
カガリさんも不思議がっている...
「寝起きが良くなった?のか...?」
不審な事ってこれか...嫌でも寝起きが良くなるって何だ?
釈然としないが、とりあえず薪割りに行くことにした。
「どうぞこちらに。」
やけに笑顔に見える娘の案内で中庭に出る。
さっさと薪割りを済ませる事にした...
「さて...翔殿」
朝食も終え、部屋に戻るなりカガリさんが口を開く。
「今朝の出来事の事?」「お察しで。私はあの時、"絶対にまだ寝ていました"。それがあの娘の声を聞き、返事を脳がまとめる間もなく、部屋の前に立っていました。謎です、全くの謎です...」
「う〜ん...俺にも詳しくはわかりません...でも、僕も同じく思いました。考えるより先に体が動く感じがしました。」
「少し、警戒度を上げる必要があるかもしれませんね...」
カガリさんは呟きながらどこかに行ってしまった...
同日、深夜。
「ん〜...トイレ...」
寒さもあり目が覚めてしまった翔はトイレに行くことにした。
「えーっとトイレは確かこの広間の横を通って...ん?」
「.....ヲ」「.....ナレ...」
広間で誰かが話している...?
「何を話してるんだ...?」
「ソレデ...ヤツラノヨウスハ...?」「モウミッカメニナル...モウソロソロ"トリドキ"ダロウ...」
「村長...と、娘さん...?でも...」
2人はお互いのことを見てすらいない。それどころか声がするのに...
「口が...動いて...無い...?」
「フフフ...ソレニシテモフタリモナカマガフエルトオモウト...」
「ウレシクモナル...!」
「「フフフ.....」」
(ま..不味い...!)
翔の直感が告げる。目の前の2人だけでなく、恐らく村全体の人間が人の形をした"ナニカ"であること。このままだと、自分達に何か良くないことが起こること。
音を立てないように部屋に戻った翔は、篝を起こす。
「か、カガリさん...!カガリさん...!!」
「ど、どうしたのですか翔殿...」「化け物...化け物だ...」「?」
「村長も...あの子も...それどころか村の人達全員...人じゃない、人なんかじゃ...」
「...何があったのですか。」
翔は篝に今見た物について説明した...
「...やはり、私の悪い予感が当たっていた...という訳ですか。」
「い、急いで、この村から出ましょう...」
「今思ったのですが...」「何ですか...?」
「なぜ我々は今の今まで、この村から出る、という選択肢を撮らなかったのでしょうか」「!?」
「た、確かに...」
考えてみればおかしな話だ。
突然訪れた村の様子がおかしい。ならばなぜ直ぐにそこから脱するという手段が思いつかなかったのか。
「どうやら、精神に関与するタイプの異形のようですね...」
「異形...?」「おや、貴方探訪者でしょう?」「!何故それを...?」
「立ち振る舞いや雰囲気で何となくですがね...」
(バレていたのか...)
そう、この青年翔、学生の身にして探訪者の顔を持っている。上位層とまでは行かなくても、それなりの実力を有していた。
「ということは...貴方も?」「まぁ似たようなものです。私の場合、"テラ"の望みの都合上探訪者というのは良い隠れ蓑でして...」
「テラ?」「そのうちお話します。まずは支度を...」
彼が言ったその時だった。
「もし。」「「!?」」
「お迎えに...オ、オム、お迎えに上がりました...」
いる。襖の先にアレが...いる...
「何のでしょう?何も用事はなかったと記憶していますが。」
篝の問には答えることなく、声の主は続ける。
「準備が整いましたノデ...どうぞこちらニ。」
「断る」「遠慮します。」
「...。ククッ...」
「何がおかしい!」「ちょっ、カガリさん!?」
カガリが懐から出した小型のナイフを襖で透ける影に向けて投げる。
こともなげに影の主は続ける...
「世話になりました。ですが、そろそろお暇を頂きましょうかと思いましてね...!」
「承知致シましタ。では今日までノ、代金をお支払いくださイ」「代金?」
「はイ。どうかその魂を」「魂...?」
「たまシ、たまシイ、タ...」
「...なんだ...?」
様子がおかしい。急に押し黙ってしまった...?
「.....ちょうだい。」「!」
「中身、ナカ、ナ、カミ、を...」
襖が蹴り破られて、声の主が姿を現す。
「……よこせ」
「クソッやるしかないか!」「油断なさらぬよう!」
生きて帰るためにも、2人は武器を手に取った...
「そらよっ!」
翔が得物としているのは太刀。特になんの能力も付与されてはいないが、いわゆる名工の手によって作成された業物である。
大抵の物は切れるし、目の前の化け物に対してもダメージを与えているように見えたが...
「こいつ...切っても切ってもラチが開かねぇ!」
目の前の"鬼"の再生力は異常なものであった。
両断したはずの腕は瞬時に元に戻り、潰した目は太刀を抜いた時にはこちらを見ている。
何か超常的な効果で敵が強くなっているのか、はたまたこの鬼はそれほどの強さをもつ異形なのか。
「分かんねぇな...クソっ...!」
「これは、中々...!骨が折れますね...」
篝が使う獲物はいわゆる暗器と呼ばれるもの。
投げナイフに寸鉄、ピアノ線やダーツといった多種多様な武器を扱う。
しかし、目の前の鬼には相性が悪い。
「毒が効く素振りすらないとは...正直予想以上ですよ...!」
2人の攻撃が共にほとんど意味を成していない事が、目の前の鬼の強さを物語っていた...
️『ふふふ、無駄な事ヲ...』「「!」」
『私ハこの村ト共にアる!我はこの村と共ニ不滅の存在へ成ったのだ!』
「この村にいる限りバフを貰い続ける...といったところでしょうか...?」
「厄介なタイプじゃねぇか、面倒臭い...!」
『何をペラペラとォ!早くその肉体を!そノ魂をよこせぇ!』
「うおぁぁ!」「カガリさん!?」
鬼の振り回す腕を篝がマトモに受けてしまった...!
咄嗟に篝の方を見ると、壁にめり込んでいる...!
俯いたまま動かないのを見ると、どうやら意識が飛んでいるようだ...!
「カガリさん!マズイぞ...マズイマズイマズイ!」
この状況で片方が意識を無くしてしまう、というのは危機的状況である。
篝を狙われれば自分は意識をそちらに割くしかなく、数的有利が逆に不利な状況が出来上がってしまった。
『ふ...ふふふふ...』
鬼の手が篝に伸びる。
「させるか...『邪魔ヲ、するナ』うぉぉっ!?」
鬼が投げてきた扉に足止めを食う...
『もラウぞ、お前の身体...ム?』
「ハハッ...」『オォ?!』
鬼の腕が"細切れになって落ちた"。
「ハハハハハ!久しぶりのシャバだ!てめぇかァ?俺を呼び出してくれた野郎は!」『何ダ?こいツ、急ニ動きガ...!』
「カガリさん...なんですか?」
今目の前にいる人物は本当に篝なのだろうか。髪は白く染まり波打ち、目は赤く光っている...両手には二丁拳銃を構え、服も黒ずくめのコートのようなものに様変わりしている...
「俺をその名で呼ぶなァ!俺は「テラ」!この軟弱者の裏の顔だァ...」
「テ、テラさん...?」
先程カガリが話していた"テラ"とは、この裏の人格のことなのだろうか...?
考える時間もなく、
「オラ起きろ葬儀屋ぁ!今回のは葬りがいがあるぜぇ...?」
...チリーン.....チリーン.....
「なんだこの音...?」
「シィーーーー」「!?」
部屋の奥に置いてある篝のバッグに付けられている棺桶のキーホルダーから、"蝶の頭をした男"が出てきた...!?
「物理的にありえないでしょ、そのサイズがキーホルダーに入るのは...」
「随分長いお眠りだったようだなぁ?葬儀屋...」
蝶頭の男は鬼に向き合う。
『今さラこんな雑魚が出てきた所デ、何の意味モありハ...なんだこれは、蝶...?』
「なんでこんな時間に蝶が...?」
気づくと部屋の中を白い蝶が舞っている。
「やれ、葬儀屋。どうやらこいつを消滅させることは出来ねぇらしいが、しばらく動けなくすることくらいはできんだろ...」「!」『オオォ!?』
部屋中の蝶が一斉に鬼に向かって突撃を始める。
『ハッ...こんな蝶ガ何匹羽ばたいたとコロで、なんノダメージにもなりハ...グッ!?』
鬼が突然跪く。どうやらあの蝶、内面へのダメージ効果があるようだ...
「さて、行くぞ、ガキ」「ガキぃ!?」
「さっさとこんなとこおさらばしてやるんだよ、あくしろよ」
「分かりましたよ...もう...」
3人(?)は部屋を飛び出し、村の端まで全力で走った...
村を出てからしばらくして...
「で、結局なんなんですか...コレ」
翔は今も篝がつけているキーホルダーを指さす。
「あぁ、この方ですか」「あ、戻った」
穏やかな口調。どうやら人格は篝に戻ったようだ...
「彼は(死んだ蝶の葬儀)。今世界中にいる異形とは一線を画す存在の、その1人です。彼は敵の"精神"に強く作用する攻撃を得意としています...私はテラの強くなりたいという願いを叶えるための旅の道中、痛く彼と意気投合しまして...今では共に旅を続ける身となりました...」
「な、なるほど...?」
どうやら、自分が思うよりも世界には色々な存在がいるらしい。
「ところで、翔殿はこの後どうされるので?」
「俺?まぁしばらくまたブラブラと旅でもしようかな、と...カガリさんは?」
「ふっふっふ...実は私、この後ロボトミー社に就職してみようかと思いまして...」
「ロボトミー社?あの?」
日本で知らない人などいないであろう、電力会社の最大手だ。
「一体なぜそんな所に...」
「なにを隠そう、ロボトミー社はただの電力会社ではありません!この葬儀のような存在を多数収容する、世界でも屈指の危険施設らしいのですよ...!」
「はぁ!?こんなのがまだ何体も?」
「なんでも人類を危機に陥れうる個体もいるとか...テラを"最強"に連れていくためにも、そこで働くことは有意義だと判断致しまして...そこでです!」「はい?」
「翔殿...あなたもロボトミー社に就職なさっては!?」「はぁ!?」
「"あの程度の異形"に手間取るようでは我々もまだまだです...まだ近辺で戦ってみたい異形もおりますので、私にはしばらくは旅を続ける理由がありますが...翔殿はロボトミー社に足を運んでみては?その危険度故に、待遇もすこぶる良いと聞きますよ...?」
「えー...うーん...まぁ、考えてみようかなぁ」
「えぇ、えぇ、その返事が聞けただけでもお誘いした甲斐があるというものです...!では!またいつかお会い致しましょう!」
「あ、ちょっとカガリさん!?...行っちゃった...。」
翔は空を見上げる。
「ムカつくほど綺麗な夜だな...行ってみるか、ロボトミー社。」
こうして2人の少年の道が決まる。
新鳥と翔、2人は思いがけず同時期に鳥小屋ことロボトミー社鳥取支部に就職し、とんでもない目に逢い続ける事になるのだが...それはまた別のお話で...
〜珠村〜
『チッ...逃がしたカ...まぁ良い、また次の得物を探すまデだ...オっと、誰か来たようだ...』
「しーあわっせはーあーるいってくーるよ、だーかっらはーしいって...ん?」
『もし、もし。旅人さん』
「なんですか?」『お困りですか?』
「うーん、ココどこか分かんなくなっちゃってさ」
『それは良かった!お困りでしょう!良ければ私たちの村にご案内致しましょうか?』
「え、いいんですか?ラッキー♩」
『もちろんです...お客様のお名前は?』
「俺?あー...わっさんでいいよ、お嬢さん!」
ー...ー...ー...
本日のニュースです...
本日未明、「○○県珠村が炎上している」という通報が消防庁に入り、急遽隊員が現場に急行しましたが、村の全焼が確認されました。山火事が発端だと考えられており、警察は引き続き捜査を進めて.....
〜通報をした方へのインタビュー〜
「いやぁ驚きましたよ。趣味のランニングしてたら山燃えてんだもん。最近は治安が悪いのかおちおち山登りも出来ないとはね。サイクリング同好会の一員としては誠に遺憾ですよ...キャンピング最高!」
.....現場からは以上です。引き続き午後のニュースをお伝えします...
長くなったなぁ...(遠い目)
次回からまた日常+α回に戻ります。
ストーリーはゆっくり進めるとしますかね...