異世界で追放されたからざまぁしてみようと思ったら割とリアルだった件について   作: ころっくー

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第10話

 呆然と立ち竦み、眼前を見つめ続けるカイト。

 たった今起こった出来事が、彼の脳内で処理出来なかった。

 横を何かが過ぎた後、目の前に大きな何かが現れ、そして脳内の謎の声と共に破裂した。

 その全てが、カイトにとって理解するのに時間を要していたのだ。

 何が起こったのか、それだけがカイトの思考を埋めていた。

 

「ちょっ、ちょちょちょちょっとぉっ!」

 

 不意にカイトの背後から、何やらどもりを伴った声が聴こえてくる。

 その声に反応する様にカイトが振り向けば、その瞬間に彼は胸倉を掴まれた。

 

「何やってんのぉぉっ! 消し飛ばすとか、また探し直しじゃんかぁぁぁぁっ!」

 

 叫ぶ様な声と共に両手で掴まれた胸倉を勢い良く前後に振られ、カイトは成す術なくその動きに合わせて頭を揺らすしかなかった。

 脳が揺れる感覚に、僅かに気持ち悪さを抱いたカイト。

 

「……ちょ、ちょっと、待って……!」

 

 そこで漸く我に返り、慌てて声を掛けたのであった。

 胸倉を掴んでいるその手首を握り、何とか動きを止めさせようと藻掻く。

 

「ちょっとだけ相手してって言ったよね!? 一瞬、壁になって時間を稼ぐならまだしも消せなんて誰も言ってないでしょぉぉぉぉっ!」

 

 だが相手は、カイトの状況等一切鑑みず、思いのままにカイトを揺さぶり続ける。

 それに対して、やはり成す術の無いカイトであった。

 気持ち悪さが増しつつも揺さぶられ続けていると、その力が次第に弱まるのを感じた。

 そしてその動きが完全に止まれば、カイトの胸倉を掴んだままに荒く呼吸を繰り返すだけとなった相手。

 そこで漸くカイトは、落ち着いて眼前の人物の姿を見る事が出来た。

 腰上程度の緑色の髪は全体的に流しており片側の側頭部分が一部、一束に纏められていた。

 大き目の目も髪と同様に緑色をしており、その目付きはどこか活発さを感じさせる。

 服装は非常に軽装であり、薄緑色の布で胸部と臀部をそれぞれ隠している程度、肩口や腹部には何も覆ってはおらず、冒険者としては見ない服装であった。

 カイトにとって見覚えの無い少女が、そこには居た。

 真っ白い肌に大量の汗を掻きつつも、僅かに俯きながら何とか息を整えようとする彼女の顔を漠然と見ながら、カイトはある事に気付いた。

 それは彼女の髪の間から抜きん出ている耳。

 人間の耳という形からは逸脱しており、横に細長く伸びている特徴的な耳をしていた。

 その姿に、カイトは思う。

 もしかして、エルフなのかと。

 それはカイトにとって、空想上の生物。

 ファンタジーという分野において代表格の一つとも呼べる種族。

 この世界に転生しても今まで見た事が無かった、前世のサブカルチャーにおいてあまりにも有名過ぎる存在。

 その姿に当てはまる存在が今、カイトの目の前に居たのだった。

 そこまで考え、カイトは我に返る。

 こんな事を考えてる場合ではないと。

 何故ならば彼は今、目の前のエルフから責められているのだから。

 原因として考えられるのは、一つ。

 それは彼女の口からも放たれた通り、気付けば弾け飛んでいた物に対しての事だろう。

 だが、何故彼女がカイトに関してこれ程までに怒っているのかが理解できない。

 しかし、このまま互いに無言の時間が過ぎるのも気まずい。

 だからこそカイトは、意を決して話しかける事にした。

 未だに呼吸を必死に整えようとしている姿を目に収めつつ、口を開く。

 

「……あ、あの、大丈夫ですか……?」

 

 それは気遣いの言葉。

 そして、相手の事が分からない以上、唯一言葉に出来た内容だった。

 だがその言葉にはカイトの本心も含まれている。

 何故責められているのか分からない現状ではあるが、疲れ果てている様な少女に対して心配の言葉を掛けるよりも訳を話すよう責める程、彼は幼稚にはなれなかった。

 彼女が落ち着いてから話を聞ければ良いと、カイトはそう考えていたのだった。

 気遣いを込めた、カイトの言葉。

 その言葉を受けた少女は、俯きながらも視線を上げてカイトを睨み付けた。

 彼女の表情にカイトはたじろぎ、そして思わず目を逸らす。

 その目はカイトが今まで受けて来たものと同じく、自身を非難する様な印象を覚え、耐え切れなくなったのだった。

 僅かな沈黙が二人を包み込む。

 やがて息を整えた少女が、口を開いた。

 

「……何したの?」

 

 静かに告げられたその言葉に、カイトの視線が一瞬戻る。

 だが、彼女の変わらない視線に、カイトの視線は再び逸らされたのだった。

 

「どうやって、消したの?」

 

 少女の鋭い視線は変わらずカイトを射抜き、見合った口調で再び問いかける。

 目を逸らしつつ、カイトは静かに口を開いた。

 

「……ごめん、俺にも分かんなくて……」

 

 隠しても意味が無い。

 だからこそカイトは正直に述べ、謝罪をした。

 それを聞いた少女の目が見開かれる。

 

「分かんないって、そんな訳ないでしょうが! 君がやったのはあたしちゃんと見てたんだからね! 何をしたかさっさと吐きなさぁぁぁぁいっ!」

 

 再び声を荒げながらカイトの胸倉を揺すり始める。

 だが、それ以外の答えを持たないカイトは言葉に窮し、只々揺すられ続けるしか出来ない。

 

「せっかく見つけたのに台無しだよっ! ちょっと君が肉壁になってくれて、あいつとの距離だけ稼げれば問題無かったのにぃぃ! 全くもぉぉぉぉっ!」

 

 揺さぶり続けられるカイト。

 しかしすぐにその動きが止まる。

 再び体力を使い果たした少女が、カイトの胸倉から手を離したのだ。

 両手を膝の上に置きながらぜえぜえと肩で大きく息をしつつ、視線だけがカイトを威嚇している。

 そんな姿を視界の端に入れつつ、カイトは僅かに逡巡した。

 肉壁云々に関して文句を言おうと思ったが、出なかった。

 あの時に感じた"死"という感覚を抱いた時に、彼女を責める気持ちが湧かなかった。

 今も何故か、彼女に対してそれを責めようという思いが無かったのだから。

 何故かは分からない。けれど、彼女が死なずに済んで良かったという思いが大きかった。

 そして何をしたのかと言われても、カイト自身が分かっていないのだ。

 だが目の前の少女の必死な形相を見て、困っているのなら助けてあげた方が良いのかとも思い始めていた。

 自身と同い年程度だが、幾分か大人びて見える可憐な少女というのもあるのかもしれない。

 だがそれ以上に、迷惑を掛けたという申し訳無さがカイトの心を苛んでいた。

 同時に自分でも理解出来てない現状が、もし彼女に話す事で何か解決の糸口が見つかる可能性があるのでは、という漠然とした他力本願な思いもあった。

 先程眼前で引き起こされた事象と、脳内に流れた謎の電子音。そしてその電子音が言っていた内容。

 自分だけでは処理しきれない事柄を解決したいという思い。

 睨み付けてくる少女を直視する勇気は無い。

 彼女から目を逸らしたまま、カイトは口を開く。

 

「……本当にどうやったかは、分からないんですが……何かスキルが、解放したみたいで、えっと……その影響みたいです」

 

 カイトの言葉に、少女の目が丸くなる。

 それは驚いた表情であり、カイトの言葉が意外だったという事を如実に表していた。

 

「……どういう事?」

 

 そう言葉を発した少女の表情が、訝しいものへと変わる。

 カイトは視線を変えぬまま、改めて口を開いた。

 

「……攻撃された瞬間に頭の中で、魔力の制御が可能になったので"魔力無限"と"魔力提供"使えます、みたいな声が聴こえまして」

 

 頭の中に現れた電子音が発していた内容を思い出しながら少女へと告げる。

 カイトの内容に、少女は表情を変えずに言葉を返した。

 

「魔力の制御とかよく分かんないけど……"魔力無限"と"魔力提供"っていうのが、君のスキルなの?」

 

 少女の疑問、それを受けてカイトは言葉を噤んだ。

 何故ならスキルがそれで正しいのか、彼自身が分からなかったのだから。

 故に告げる。

 

「……元々は"無限"と"提供"っていうスキルだったんです」

 

 ただどっちも使えなくて、そう呟いて言葉を締めたカイト。

 少女は僅かに驚きの表情へと変わる。

 

「へー、最初から二つのスキル持ちとか珍し。まあ使えないなら意味無いけど」

 

 感想の様に述べた少女の言葉に、カイトは辛そうに眉を潜めた。

 使えないなら意味が無い。

 他ならぬカイトがそれを、一番気にしており苦悩し続けていたのだから。

 宝の持ち腐れ、または無用の長物。

 スキルが使える様に幾ら試しても使えない。

 スキルがいつか使える様になるんじゃないかという、期待だけが無駄に残り続けて成果を得ない事を続けてしまう。

 いつかスキルさえ使えれば、その気持ちを言い訳として不甲斐ない自分を正当化してしまう事もあった。

 使えないのなら意味が無い。その事実は変わらないのに。

 俯きを強めるカイトに、少女が声をかける。

 

「てか魔力の制御って何? 今まで魔力が制御出来なかったとか?」

 

 そんな事ある? そう言って僅かに首を傾げる少女にカイトが、呟く様に言葉を返した。

 

「……生まれつき、魔力が無かったんです」

 

 辛く悲しそうなカイトの口調。

 それを受けた少女が、表情をきょとんとした様に呆ける。

 そして次第にカイトの言葉を理解したのか表情が変わり、大声で笑い始めた。

 

「生まれつき魔力が無いって、聞いた事ないよっ! 何それ! 面白いね君っ!」

 

 笑い声、そして愉快そうな口調が、カイトの心を傷付ける。

 魔力無し。その事実を伝えようか彼は迷っていた。

 だが少女に迷惑を掛けたという事、そして今の自分の身に起きた事への解決の糸口が見つかれば良いという思いで、少女へと告げたのだ。

 だからこそ、少女の反応が辛かった。

 分かってはいた、魔力無しという異質さを。

 覚悟はしていた、魔力無しに対する評価を。

 だがやはり、それを実際目にすると耐えられるものでは無かった。

 まるでツボに嵌ったと言わんばかりに笑う少女。

 それを耳にしながら、相談をしない方が良かったんじゃないか、自分の相談に乗ってくれる人なんて居ないんじゃないか。そんな思いがカイトの中で強まっていく。

 やがて一頻り笑い終えたのか、少女が大きく息を吐いた。

 そして、カイトへと声を掛ける。

 

「あー、久しぶりにこんなに笑ったよ! 君、人を笑わせる才能があるかもねっ!」

 

 楽し気に話す少女に、カイトは只耐えるだけ。

 そして少女は、浮かべていた笑みを僅かに変える。

 

「魔力が無いのも魔力の制御も聞いた事無いけどさ、もしかしたら魔力が使える様になったって事はないの?」

 

「え?」

 

 何気無く告げた少女の言葉。

 それを受けてカイトは、久方ぶりに少女へと顔を向けた。

 彼女が発した内容が理解出来なかったから。

 カイトの様子を気にする事無く、少女は続ける。

 

「あたしも良く分かんないけどね。魔力が無いのに魔力の制御が可能になったとか意味分かんないし、君が魔力を使える様になったんなら辻褄合うのかなって思っただけ」

 

 ま、確証は無いけどねー。間延びした口調でカイトへと伝える。

 その言葉に、カイトの目が驚愕で見開かれた。

 

「そもそも頭の中でそんな声が聴こえるって事自体、信じらんないんだけどさ」

 

 続けた少女の言葉が耳に入るが、カイトには返す余裕が無かった。

 彼の脳内では少女の言葉が参照され、先程聴こえた謎の電子音が思い起こされる。

 ――"魔力"の制御が可能になりましたので、解放後のスキル"魔力無限"及び"魔力提供"が強制化から随意化へと変更されます。

 魔力の制御。少女の言葉を正とするならば、それは魔力が使える様になったという事。

 そして転生時から授かっていたスキル、"無限"と"提供"。

 これらが"魔力無限"、"魔力提供"に変わった。

 自身を見つめつつも固まっているカイトに、少女は訝し気な表情へと変えつつ首を傾げる。

 だがすぐに、何かを思いついた様に口を開いた。

 

「てゆーか、君さ。魔力無しは嘘でしょ?」

 

 少女の言葉に、カイトの意識が現実へと引き戻された。

 

「……え、う、嘘?」

 

 思わず確認する様に返したカイトだが、慌てて首を横に振り言葉を続けた。

 

「い、いや、嘘じゃないです!」

 

 間違いようのない事実を懸命に述べるが、カイトを見る少女の目がじとっとした半目のまま変わる事は無い。

 やがて落ち着いた口調で、少女が告げる。

 

「だって君、私に魔力を付与してるじゃん」

 

「…………え?」

 

 不意の言葉。

 それを受けたカイトが、完全に動きを止めてしまう。

 呆けた表情のまま動かないカイトに、少女は静かに目を瞑り溜息を吐いた。

 そして再び目を開き、やや不満気を込めた視線でカイトを捉える。

 

「もしかして気付いて無かったの?」

 

 少女の言葉に、カイトはやや間を空けてからゆっくりと頷いた。

 それを見た少女が再び溜息を吐く。

 少女は、カイトのあまりにも間抜けな面を見て、嘘を吐いていないという判断をしたが故に問いかけた言葉だった。

 カイトが本心から驚きを示していると思えたからこそ、気付いていなかったのかと訊ねたのだった。

 少女が再びカイトへと口を開く。

 

「君、さっき"攻撃された瞬間に"頭の中で、そんな声が聴こえたって言ってたよね?」

 

 少女の質問に、カイトはまたしてもやや間を空けてからゆっくりと頷くのみ。

 埒外の内容を全く、彼の中で消化しきれていなかった。

 だからこそ言葉に対して頷きのみで反応する事しか出来ない。

 カイトの様相を無視して、少女は言葉を続ける。

 

「キマラから攻撃を受ける前に、私の背中を押したよね? その後に声が聴こえたって事で良い?」

 

 カイトの中で記憶が蘇っていく。

 自身を喰い殺そうとしてきたあれがキマラだと知りカイトは驚くが、それ以上に少女の言葉に対する整合性の確認が優先された。

 思い起こした記憶。

 カイトの中ですぐ横を通り過ぎた緑色の風。

 それが漸く目の前の少女なのだと理解出来た。

 そして無意識に、彼女の背中を押しやってから、キマラが攻撃を仕掛けてくる。

 キマラの牙が自身の首に食い込んだ時、あの謎の電子音が頭の中に流れたのだった。

 漸くと一連の流れを思い出したカイトが、静かに頷く。

 カイトの反応を見た少女が、またしても溜息を吐いた。

 それは少女自身が思い浮かべていた可能性の正しさが、更に現実味を帯びた事を理解してのものだった。

 

「今でも信じらんないんだけどさ、あの時あたしの魔力結構少なかったんだけど、君に背中を押された時……魔力が回復したんだよね」

 

 今もそうだし、そう言って少女は自身の身体を軽く見まわした。

 そして驚きに固まり続けるカイトへと再び視線を合わせる。

 

「元々"提供"ってスキルがあるんなら、君は他の人に魔力を提供出来るスキルを持ってるって事なんじゃない? ま、他の人に魔力を送るとか聞いた事無いから、合ってるか分かんないけどさ」

 

「……魔力を、てい、きょう」

 

 少女の言葉に、カイトは呆然と呟く。

 彼にとって完全に、想定外の言葉だった。

 だがどこかで納得出来る自分がいたのも事実。

 元々持っていた"提供"というスキル。

 それが少女の話した仮説に、上手く嵌った気がしたのだ。

 根拠は無い。けれども不思議と否定は出来なかった。

 そして謎の電子音が告げた"魔力提供"。正に少女の仮設にぴたりと嵌る名前だったのだから。

 

「もう一個の"無限"ってスキルは分かんないけどね。"魔力無限"なら、文字通り魔力が無限とか?」

 

 自分で言ってて馬鹿馬鹿しいや、そう言って少女は再び笑い始めた。

 少女の笑い声。

 それが再びカイトの耳に届くが、何故か今はその音に苦しさや辛さを感じる事は無かった。

 カイトの中では、少女の言葉と自身の考えが徐々に中和していく。

 "魔力無限"というスキル。

 それも"魔力提供"と同じく考えれば、魔力が制御出来る様になったから元々の"無限"というスキルに魔力という言葉が追加されたのではないか。

 そう考えれば、カイトの中で徐々に辻褄が合う様な感覚で満たされていく。

 しかし同時に、別の問題へと直面したのだった。

 何故なら現在時点においてもカイト自身が、魔力が"無限"や、魔力を"提供"しているという感覚が皆無なのだから。

 自覚が無いからこそ、仮定が仮定のままで確定になる事が無かった。

 けれども少女の言葉を受けて、自分のスキルに対する理解が深まったと思えたのもまた事実だった。

 笑い終えた少女が、柔らかな表情でカイトへと訊ねる。

 

「そういえば、どうやってキマラを消し飛ばしたの?」

 

 自身の言葉で思い出したのか、柔らかな表情が僅かに険しさを含めた。

 それに対してカイトは記憶を思い出しながら、その状況を口に出す。

 

「えっと……不要になった外部魔力と既存の不随意魔力を接触している対象へと提供し排出しますとかって声が聴こえたら、破裂したんです」

 

 記憶を呼び起こした只の報告。

 それを聞いた少女は、

 

「ヒィィィィっ! ご、ごごごごごめんなさいぃぃぃぃ! 詰め寄ったの謝りますんでお許しを! 何卒お許しくださいぃぃぃぃっ!」

 

 突如距離を取り地面に両膝をついて、両腕を頭を上に伸ばした状態で上半身を何度も上下させる。

 不意の事態に思わず目を丸くしたカイト。

 少女は一心不乱に上体を上下に振り、土下座を繰り返す。

 

「お許しをばぁぁぁぁ! キマラの事も全部忘れるんでどうかお命だけはぁぁぁぁっ!」

 

 謝罪を続ける少女。

 カイトはそこで漸く我に返った。

 

「えっ、いや、あの、何をっ」

 

 慌てて少女へと駈け寄れば、

 

「ヒィィィィッ! お許しっ、お許しくだせぇぇぇぇっ!」

 

 更に飛び退きカイトから距離を取って再び土下座を敢行する少女。

 それを見て再びの困惑。

 そして何とか落ち着かせようと、再び近付くカイト。

 カイトから更に距離を取る少女。

 

「あ、あのっ、お、落ち着いてください!」

 

「ヒィィィィッ! な、何卒っ! なにとぞぉぉぉぉっ!」

 

 テンパっている少女を落ち着かせようと、テンパるカイト。

 必死なカイトは気付かなかった。

 ――無駄話はしないでください。ああ、やはり剥奪されに来たんですね。

 ギルドでそう告げたハンナ以来に、辛さや苦しさや悲しさといった負の感情が、この瞬間は心から消えている事に。

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