異世界で追放されたからざまぁしてみようと思ったら割とリアルだった件について 作: ころっくー
ギルドの二階。
個室の中で、テーブルを囲み座る二人の姿。
入口側に座り、身を縮こまらせながら俯いているカイト。
反対側に座り、どこか困った様に、それでいて鋭さを秘めた目付きでカイトを見ているヘリーゼ。
カイトは今、副ギルド長から直々にお叱りを受けていたのであった。
ここ一週間のルーティーンとなっていた、トレーニングと称した散策。
それを行う前に、そろそろ手持ちが尽きてきた事に気付いたカイトは、ギルドで預金を引き出そうと立ち寄ったのだ。
クエストを行わず、暮らし続ける。
当初の七日を過ぎてもラヴィのホテル暮らしが継続する事になった為、宿泊費を払う必要がある。
そして二人の食費。
その全てをカイトが支払っている。
以前のクエストで手にした報酬が底を尽きるのは、時間の問題だった。
ギルドに向かい、カウンターにハンナの姿を確認したカイトが近寄る。
声をかけ預金を引き出したい旨を伝えたカイトを、ハンナは無言で見つめた。
いつもと変わらない無表情。
だがカイトには何故か、彼女の表情に恐ろしさを感じたのである。
やがてハンナが口を開く。
「副ギルド長がお呼びです。預金の引き出しは、そちらが終わってからにしてください」
その言葉と同時にカイトの肩が軽く、背後から二度叩かれた。
呆然とカイトが振り返れば、そこには笑顔のヘリーゼの姿。
笑みをそのままに、ヘリーゼが告げる。
「お待ちしてました、カイトさん。ちょっと、個室でお話でもしませんか?」
柔らかな口調。上品な笑み。
それを受けたカイトは、小鹿の様に足を震わせながら肯定したのだった。
ギルド内に居た冒険者達からは怪訝な目で見られつつもヘリーゼに連れられ、二階へと上がる。
二階には幾つかの扉があり、奥の扉を開けたヘリーゼに促され、カイトは入室。
執務室の様な光景をカイトが見れば、ヘリーゼから着席を促されて恐る恐ると手前の椅子に腰掛けた。
やがて部屋の鍵をかけた音がカイトの耳に届き、机を挟んだ向こうに移動したヘリーゼが静かに座るのだった。
そして、開口一番。
「カイトさん。あなた、他の冒険者に魔力提供をしていますね?」
彼女の言葉に、カイトは身を縮こまらせて俯いたのであった。
何か返そうにも、上手く口が動かないカイト。
そんなカイトを見て、ヘリーゼは静かに息を吐くのだった。
「カイトさん、あなたは悪い事をした訳では無いのですから、そんなに怯えないでください」
優し気に問いかけるヘリーゼに、カイトは僅かに顔を上げた。
そこで見たのは、柔らかな笑みを浮かべるヘリーゼ。
彼女の言葉と表情から、カイトの中で僅かに緊張が解れる。
もしかしたら、怒られる訳ではないのか。
そんな考えが脳裏に浮かぶ程度には、落ち着きを取り戻し始めていた。
金を引き出そうと思ったら、突然の連行。
何か心当たりがある訳では無かったが、不意の事態に恐怖と緊張がカイトを支配したのだ。
唯一脳裏に浮かんだのは、ここ暫くの散歩。
当初は検証を進める過程で、何れはモンスターに遭遇し戦闘の中で検証を進めようと考えていた。
だが、現時点ではクエスト外でモンスターとの戦闘には至っていない。
故にクエスト以外でのモンスターの討伐や捕獲等の違反行為は行っておらず、それが原因とは考え辛い。
ならば森の木々を、破裂で消してしまったのがまずかったのだろうか。
しかし一定の箇所で大量に木々を破裂させて、はっきりと景色を変えた訳では無い。
幾分か間引いても影響が無さそうな箇所だけを転々として、その中の一つや二つの木を破裂させただけだ。
環境破壊に該当する程に、伐採した訳じゃ無い。
だから、木々の破裂がバレる可能性も低い。
そこまで考えたカイトに、別の思考が湧く。
もしかしたら、他に何かやってしまったのでは。
自分が知らない所で何か、迷惑をかけてしまったのではないか。
そう考えたカイトではあるが、優し気な笑みを浮かべるヘリーゼの姿を見れば、それは杞憂かもしれない。
怒るのなら、そんな表情をする筈が無いだろう。
カイトはそう思い、内心で嘆息する。
ひょっとしたら、最近受けていない不良依頼についてかもしれない。
散歩にかまけてクエストを受注していなかった。
カイトの中で、その可能性が濃厚なのではないかという思いが強まる。
そこに、ヘリーゼからの声がかかった。
「ですが、良くない事はしました」
「え……」
彼女の言葉に、カイトは声を漏らす。
ヘリーゼは僅かに表情を引き締め、カイトを見据える。
「ここ一週間程、幾つかの冒険者やパーティーに、ギルドの査定とのズレが見受けられる様になりました」
ヘリーゼが告げた内容に、カイトの心臓が高鳴った。
心当たりが、あった。
「その冒険者やパーティーの評価では見合わないクエスト完了の仕方や、戦い方。それらがいきなり現れ始めたので、ギルドとしては首を傾げるばかりでした」
その時期が、内容が。
カイトを見つめたまま、ヘリーゼが続ける。
「そしてすぐに調査を開始。冒険者への聞き取りや、完了報告書の再精査に大分と時間を要し……昨日、漸くその原因の把握に至ったのです」
滝の様に汗を流しながら震えるカイト。
脳裏に蘇る光景。
「該当の冒険者やパーティーからの聞き取りでは、急に魔力が戻ったであったり、いつもより魔力が尽きなかったといった証言が得られました」
脳裏に蘇る記憶。
笑みを消さぬまま、ヘリーゼは言葉を重ねる。
「その為ギルドでは、それらを実行出来る者としてカイトさんが候補に挙がりました。そこから、カイトさんを森や草原で見たという情報や、件の冒険者やパーティーが戦闘していた時間帯を全て纏めて計算した結果……」
僅かに間を空けて、締めの言葉が告げられた。
「カイトさん、あなたが冒険者達へ魔力提供をしていると、確信しました」
カイトは只、震えながら俯くのみ。
そんなカイトを見つめ、ヘリーゼの表情から険が取れる。
「カイトさん、そんなに思いつめないでください。最初にも言いましたが、あなたは別に悪い事をした訳ではありません。罪を犯した訳ではないのですから、怯える必要はないんですよ」
柔らかな口調で話すヘリーゼにカイトは俯いたまま、しかし目線だけをゆっくりと上げた。
「あなたは悪い事はしていません。私はただ、カイトさんが何故その様な行動をしたのか、知りたいだけなんです」
諭す様にカイトへと話し、優し気な笑みを向ける。
それに導かれる様に、徐々にカイトは顔を上げ始めた。
「怒る事はしませんから、理由を教えてはくれませんか?」
どこか慈愛を含む様な声に、ゆっくりとカイトの唇が動き始める。
僅かに開いては閉じる。だがまた開き始める。
ヘリーゼの雰囲気に導かれる様に、やがてカイトは視線を落としてぽつぽつと話し始めた。
「……僕にも、手を貸せる事が、あるって……思ったん、です」
「手を貸せる事、ですか……?」
話し始めたカイトに、ヘリーゼが小首を傾げた。
カイトは彼女の言葉に小さく頷く。
そして再び、口を開いた。
「……その……皆に迷惑をかけたんで……僕の力が助けになるなら、力を貸したいって、思って……その……」
カイトの言葉に、ヘリーゼの目が僅かに見開かれた。
ヘリーゼの様子に気付かないカイトは言葉を続ける。
「……モンスターにやられそうな……パーティーが、いたんです……だから力になれればって、思って、魔力を提供したら……モンスターを倒して……皆で、喜んでいたん、です……」
記憶を思い出しながら、カイトは呟く。
どこか胸の内に溜まっていた物を吐き出す様に、カイトは無心で話し続けた。
「……喜んでる人達を見て……死なずに済んだ人達を、見て……僕の力で喜んで、くれるなら……生き残ってくれる、なら……力を貸したいって、思って……」
カイト自身も初めて気付いた本心。
ラヴィの疑念を誤魔化してまで続けた行動の真意。
苦戦しながらも決して諦めず、仲間を信じて、仲間と励まし合って、一丸となってモンスターに立ち向かう姿。
人が死なず、そして喜んでいる顔。
その手助けを出来ているという思いが、カイトを動かしていた。
死ぬ人がいない、喜んでいる人がいる。
それをカイトは、感じたかったのだ。
少しでも自分が力になれた。
それをカイトは、思いたかったのだ。
今までは人に助けられてばかり。
自分の力で人を手助け出来た。
役立たずや無能だと言われ、思われ続けてた。
だが、僅かでも誰かの役に立てた。
成長したという実感が、そこにはあったのだ。
驚きの表情でカイトを見つめるヘリーゼ。
やがて、その表情を柔らかなものへと変えた。
「カイトさん、あなたの考えは素晴らしいものです」
次いで微かに険しい表情を作る。
ですが、そうヘリーゼが続ける。
「同時に、冒険者を侮辱しているとは、思いませんか?」
「……え?」
ヘリーゼの言葉に、カイトが呆けた声を溢す。
目線を上げてヘリーゼを見た。
笑みを残しつつも、険しい雰囲気を醸し出すヘリーゼ。
「副ギルド長として、お話します。カイトさん、あなたのその行動は他の冒険者を侮辱しており……何より、命の危険に晒す行為です」
カイトの目が見開かれた。
「い、いえっ、そんなつもりなんてっ」
慌てて否定の言葉を述べるが、ヘリーゼの表情は変わらない。
「例えあなたにそのつもりが無くとも、結果的にはそうなのです」
目を見開き呆然と見つめるカイトを、ヘリーゼは見つめる。
顔を逸らす事無く、言葉を続けた。
「以前、冒険者の責任についてお話しましたよね? 冒険者とはクエストを達成させる責任があり、その命に対する責任がある、と。あなたは弱い冒険者が憐れで可哀想だから……自分が助けてあげようと思ったのですか?」
「ちっ、違います!」
ヘリーゼの言葉に、咄嗟に否定を叫ぶカイト。
「いえ、違いません」
だが、一蹴されるのだった。
「冒険者とは自身の成功体験、そして失敗体験を基に成長します。今までは倒せなかったモンスターを倒せる様になった……それが実は自分の実力ではなく、あなたの力によるものだと知ったら、その冒険者はどう感じると思いますか?」
突き刺す様な物言い。
それがカイトの心に深く届き、心臓に痛みが走る。
自分ではない、誰かの力による成果。
仮初の実力。
脳裏に微かに浮かんだ、三つのシルエット。
誰かの力になれると思っていた、自分のスキル。
その思いが今、粉々に砕かれたのだ。
魔力の提供、破裂、バリア。
誰かをサポートし、助けられ、守れると思っていた力。
自分では、そう思っていた能力。
だが、他者から見れば正反対の愚物だと知らされる。
誰かの力になりたい。
それは、力を持った自分の驕りだったのだろうか。
自己満足の、間違った考え方だったのだろうか。
自分の解放されたスキルは、力は、他者を愚弄する呪いなのだろうか。
カイトの中でその思いが、強くなる。
「本来は冒険者個人の考え方や行動に、ギルドが口を挟む事はありません。ですが今回は、事が事の為……ギルドの信頼性を担保するという責任を果たす為に、言わせて頂きます」
ヘリーゼの言葉が、カイトの耳に届く。
「あなたが提供した魔力を基に、自分が成長したと勘違いをした冒険者は、次第に実力に見合わないクエスト受注する様になり……命を落とすのです」
カイトの心臓に、強い痛みが走った。
咄嗟に心臓へと手を当てて、その痛みを堪える。
気付かされた。
助けようと思ってした行動が、その先の未来で命を落とさせる行動になってしまうのだと。
良かれと思ってやった事。
それがまた、迷惑をかける事だった。
その事実に、カイトの呼吸が荒くなる。
自分のスキルで、人を殺そうとしていた。
無自覚の、人殺し。
どこまでも自己満足の、偽善だった。
自覚したその現実を受け止める事が出来ない。
「クエストの失敗が増えれば、ギルドの信頼性が担保出来なくなります。それを助長する可能性を秘めていた為、ギルドの責任を果たすべく言わせて頂きました」
ヘリーゼの言葉。
その内容に、再びカイトの心が痛む。
ギルドにも迷惑をかけた。
カイトの中で、人物が浮かび上がる。
こんな自分にも変わらずに接してくれたハンナやヒナ、そして優しく接してくれたヘリーゼ。
彼らにも、多大な迷惑をかけてしまった。
胸へと触れている手を、きつく握りしめる。
自分の力は、人を不幸にするのか。
自分の力は、誰かの為にはならないのか。
自分の力は、使わない方が良いのか。
自分は、成長しない方が、良いのか。
カイトの中で、心が折れる音がした。
呼吸の荒さが引き、青褪めた表情に血色が戻る。
只無言で、俯いていた。
カイトを見るヘリーゼの表情から、険しさが薄れる。
「ですが、副ギルド長ではなく私個人としては……カイトさんの考えや行動はとても素晴らしく、大切に持ち続けて欲しいと願っています」
柔らかな表情に変えたヘリーゼの言葉。
それをカイトは耳にした。
どこか慈愛を含んだ笑みで、ヘリーゼが言う。
「あなたの力は素晴らしく、他に類を見ないものです。その力は必ずや人を助ける事が出来る事でしょう。だからこそその力の使い方……使い時を、誤らない様にしてください」
導く様に、諭す様に優しく告げたヘリーゼ。
それを耳にしたカイトは、
「…………はい」
俯いたままに、そう呟いた。
ヘリーゼから退室の許可が出て、カイトは立ち上がり扉へと歩く。
その時、背後から声がかかった。
「もしも自分の力に悩んだ時は、誰かに相談してみるのも良いかと思いますよ」
カイトは只、軽く頭を下げて部屋を出たのだった。
カイトは静かに話をする。
それを聞いたラヴィが、口を開いた。
「へー、あたしに黙ってそんな事してたんだ」
二人で草原を歩きながら、ラヴィはそんな感想を漏らした。
ギルドの二階から下りたカイト。
一階の食堂には他の冒険者に紛れてラヴィが食事をしており、ちょうど食べ終わった彼女がカイトの存在に気付いた。
声を掛けて何をしていたのかと訊ねれば、カイトが説教されていたと説明。
それを聞いたラヴィが噴き出し、その場で暫く腹を抱えて爆笑するのであった。
やがて笑いが収まり、何かクエストでも受けるのかとカイトに訊ねれば、カイトが「いや、ちょっと今日は気分じゃないから、行かないかな」と、曖昧な表情でやんわりと拒否。
そんな彼の姿に目を丸くしたラヴィだったが、やがてカイトの腕を取りギルドを飛び出す。
休む事無く街を飛び出し、そのまま初心者向けのエリアである草原へと辿り着いた。
走る速度を落として歩きとなった時、この一週間の間に何があったのかをカイトに訊ねる。
それをカイトが、ぽつぽつと話したのだった。
トレーニングの内容、冒険者達の事、ギルドでヘリーゼから話された事。
今更ながらに、友人として嘘は吐きたくないと思ったカイトは全て話した。
話さなくても良い、自分の本心は除いて。
それを聞いたラヴィが告げた感想を最後に、僅かな沈黙が流れる。
心地の良い風が、二人の間を通り抜けた。
ふとラヴィが足を止め、それに気付いたカイトもまた足を止める。
カイトへと背中を向けるラヴィが、空を見上げた。
「ここ、憶えてる?」
ラヴィの言葉に、カイトは彼女の背中へと顔を向けた。
「君と初めて会った場所」
その言葉に、カイトの記憶が蘇る。
魔石の採掘に向かおうと歩いていた時に、背後から声をかけられた。
振り返ればキマラが眼前に迫っており、そしてスキルが解放される。
そこから、ラヴィとの関係が始まった。
どこか懐かしさを感じながらも、思い出したカイト。
再び、声が届く。
「君さ、もしかしてクエストが怖くなった?」
ラヴィの声に、カイトの心臓が高鳴る。
図星、という訳では無いが、何故かその言葉がカイトの中で強く反応を示した。
背を向けたままのラヴィが続ける。
「ここ何日かあたしの事誤魔化してたけど、全部誤魔化すだけで……拒否はしなかったよね」
カイトの記憶が蘇る。
ここ数日の、ラヴィとの会話。
――今日もトレーニング? がんばるねぇ……あ、行く前にご飯代ちょーだい。
――あはは……えと、これで足りるかな……?
違う日。
――またトレーニングしに行くの? 今日は買い物したいから、その分もちょーだい。
――えと……これくらいあれば大丈夫?
また別の日。
――今日の分。
――……どうぞ。
ラヴィから特段の行動に対して方向性を示された訳では無い。
だからこそカイトは何も拒否する事が無かった。
だが言い換えれば、ラヴィの言う通り、拒否は一度もしなかったのだ。
「でも、さっき拒否したよね? それで思ったんだよ、クエスト行きたくないんだなぁって」
ラヴィの言葉を、カイトは聞き入る。
「で、今の話を聞いて……君は誰かとクエストに行くのが怖くなったのかなって、思ったんだよね」
その言葉が、カイトの心に入り込む。
心に、拒絶は無かった。
まるで本心を言い当てられた様に、否応なしにカイトの中へと落とし込まれたのだ。
そして気付く。
ラヴィの言う通り、クエストに行くのが怖いのだと。
厳密には、誰かと共にモンスターを相手するのが、怖いのだと。
魔力の提供は出来る、モンスターを破裂させられる、触れていれば仲間にもバリアを張れる。
でも、怖かった。
もしかしたら自分の力を誰かに与える事で、近い未来にその人を死なせてしまうのではないかと。
自分の力を他者に行使する事が、とにかく怖かった。
人を侮辱する力を、誰かに使うのが。
人を殺す力を、大切な友人に使うのが。
そこに、ラヴィの声が聴こえる。
「……君にはさ、夢ってある?」
ラヴィの言葉に、カイトの意識が現実へと戻る。
自分の夢。
「あたしにはあるよ」
告げたラヴィに、カイトは驚く。
彼女にも夢がある。
それを初めて聴いたから。
背中を向けていたラヴィが、カイトへと振り返る。
「君の夢って……お金かかる?」
微かな笑みを浮かべるラヴィ。
思わず小首を傾げたカイトだったが、やがて頷いた。
両親が気楽に暮らせる様に引っ越させる。
その夢を叶える為には、金がかかる。
カイトの反応に、ラヴィの笑みが深まった。
「そっか。あたしの夢も、それなりにお金かかると思うんだよねー」
どこか楽し気な口調で告げたラヴィ。
「あたしは別に冒険者じゃないし、クエストを受けたいって気持ちも無いから……君が受けたくないって思うんなら、それでいいと思うよ」
カイトは只、見つめる事しか出来ない。
「でもさ、お互いに……夢を叶えるにはお金がかかるんだよね?」
目を細めたラヴィが、カイトを捉える。
「だったらさ」
そうして告げた。
「お金儲け、してみない?」
彼女の言葉に、カイトは驚く。
「お金、儲け……?」
唖然としながら言葉を返したカイトに「そそっ」とラヴィが楽し気に返す。
「君もあたしもお金が必要、生活するにもお金はかかる。でも、クエストには行きたくない」
そう呟きながら、ラヴィが上体を倒して足元へと手を伸ばす。
「だったら君の力を使って……別の事で稼げば良い」
地面から何かを掴み、持ち上げる。
「そこで天才のラヴィ様は思い付いたのであるっ」
上体を起こし、それをカイトに見せた。
カイトの目に映り込んだもの。
小石。
ラヴィの笑みが僅かに変わり、にやりとした笑みを溢した。
呆然と見つめるカイトへと口を開く。
「元手無し! 魔石を作って、売ればいいんだよ!」