星の君はもう見えない   作:猪のような

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フェルン、それは流石に嘘だよ。この小説が前回の投稿から一年以上経ってるなんて…あ、やめ、ゾルトラークやめろぉっ!皆ごめんねぇ!!


第陸話 それでも星はいつも優しい

 

 

 

 

「うーん……」

 

「さっきから何唸ってんだよ…」

 

アジトのリビングのソファで、里桜が唸っていると、アドニスが面倒くさそうに話しかける。

 

「アドニス君、なんだっけあれ、サクリファイス?あれどうするの?回収失敗しちゃったけど」

 

「あーあれな、依頼主の方でなんとかするってよ。まぁ文句は言われたが探し物見つけてやったし、問題無し」

 

「そっかぁ……因みに…今どうなってるの?」

 

「まぁお前も知ってんだろ?朱鳶先輩が現場に来て治安局が回収。んで、H.A.N.Dに送られるって話だぜ。まぁその途中で回収するつもりらしいが」

 

「ふーん……ねぇアドニス君、回収されたらさ、朱鳶先輩困るよね?」

 

「え?いや、まぁ、うん……おい待て、お前何考えてる?」

 

「ねぇ〜アドニスく〜ん、僕頑張ったしぃ〜ご褒美欲しいなぁ〜!」

 

「は?いや…頑張ったって…ええ…?」

 

「何?頑張ったのはホントだし、というか僕の立場考えたらお願い事聞いてくれてもよくない?」

 

「…確かに。で、何をして欲しいんだ?」

 

「今から君の取引先の邪魔してくるけど見逃して♪」

 

「勘弁してくれや、いや、ホントに…待って?」

 

「安心して!ちゃんとバレないようにするから!」

 

「そういう問題じゃ、大体気持ちは分かるがお前がそんな事する理由は」

 

「そう?君は寧ろ、僕がそうした方が嬉しいんじゃない?じゃなきゃ()()()()しないよね?

 

「……」

 

「はい反論出来ないー!じゃあ僕今日もお出掛け行ってきまーす!」

 

「あ、ちょ、おい!」

 

里桜はルンルンとアジトを出て行く。アドニスが頭を抱えていると、ホワイトとスカイがひょいと現れた

 

「私かスカイがついて行きましょうか?」

 

「アンタらは最悪里桜よりややこしい事になるからやめて…はぁ…アイツバレないようにするってどうするつもりなんだ…?ああ、コレで誰かにアイツの事バレたらどうしよう…」

 

「お言葉ですが、パエトーンと既に接触している時点で…」

 

「そうだけどなぁ…そういやあれから他の奴等の動きは?」

 

「対ホロウ6課はサクリファイスの受け取り態勢を整えています。オニロ・ネイロスは…最近は会社を休んで訓練に没頭しています。ヴィクトリア家政を特に動きはありません」

 

「オニロ・ネイロス… 対ホロウ特別鎮圧課か…あそこも化け物揃いなんだよな…」

 

「ですが、里桜様はオニロ・ネイロスは弱くなっていたと…」

 

「だから訓練してんだろ。その内全盛期まで仕上げてくるだろうなあの人は…他の二人もいつか…郊外の方にも目を配っとかねえとな…」

 

アドニスが今後の動きを考えていると、Aが入って来る

 

「お、Aじゃんどうした?お前の手術なら再来週くらいには…」

 

「っ…!」

 

Aはぎこちなく身振り手振りで何かを必死に伝えようとしている

 

「な、なんだよ…つかツイッギーはどうした?いつも一緒に……」

 

するとアドニスの端末にメッセージが入る

 

「あ、里桜から…?まさか早速何かやらかし……」

 

送られてきたメッセージには写真がついており、写真にはピースサインの里桜と横でうんざりした表情を浮かべたツイッギーがいた

 

「何やってんだ里桜ぉぉぉぉぉぉっ!?!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、コレでオッケー」

 

「何がオッケーよ死になさい」

 

「辛辣ぅ…折角のお出掛けなんだから楽しもうよ〜。新しい義肢のお陰で思いっきり動けるんだからさ!」

 

「だからってあなたの我儘に付き合う義理は無いのよ!ホンット最悪、こんな服まで着させられて…!」

 

「流石にあの服(シルバー小隊の隊服)はダメでしょ…似合ってるよ!」

 

ツイッギーは白と灰色を基調とした長袖にロングスカートの服を着ていた。手袋もしているので一見すると義肢とは分からない

 

「大体、何処にこんな服あったのよ」

 

「僕の自作」

 

「は?」

 

「ふふん、驚いた?世界に一着しかないツイッギーちゃんだけの服だよ!」

 

「気持ち悪い…」

 

「泣いていい?」

 

「サイズは?」

 

「アドニス君から聞いた」

 

「戻ったらアイツ殺す」

 

(アドニス君、ごめん)

 

「はぁ…で、実際何で私を連れて来たのよ?私もスポンサーの事があるからあなたには協力出来ないわよ」

 

「ん、それは大丈夫だよ。というかツイッギーちゃんを連れて来たのは協力して欲しいからじゃないし」

 

「は?じゃあ何でよ」

 

「やっぱり折角作った服を着て欲しかったなってのと、たまには誰かと一緒に出かけたかったんだ。アドニス君や、ホワイトさんにスカイさんは人前に出るのはちょっと不味いし、それにAちゃんはちょっとこういうのは負担になるかなって!」

 

「それで私?私も人前に出るの嫌なんだけど」

 

「えへへ〜ごめんね〜。今日はお金は全部僕が出すから楽しもう!」

 

「その金アドニスのでしょ」

 

「うんまぁそうなんだけどね」

 

里桜はちょっと申し訳なさそうに笑うと、ツイッギーに手を差し出す

 

「それじゃ、行こっかツイッギーちゃん」

 

「……調子に乗るんじゃないわよ」

 

ツイッギーはその手を無視して歩き出した。里桜は気にせず後を追って隣に並び、行こうと思っていた場所について話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……ぐっ……」

 

オニロはホロウの中に居た。周りには先ほどまでエーテリアスがいたが、全て倒している

 

「……私って、こんなに弱くなっていたのか…」

 

オニロは手元のタイマーを見ると、4分13秒と表示されていた

 

「昔なら半分の時間も掛からなかった……ヤバい…」

 

ガックリと項垂れていると、新たなエーテリアスが現れる

 

「…必ず、里桜君を取り戻す、その為なら私は…!」

 

そう言ってエーテリアスに向けて剣を構えた瞬間…

 

「っ…!?」

 

そのエーテリアスの背後から剣が突き出て、コアを貫く。エーテリアスが消滅すると…

 

「遅い、アンタどんだけ腑抜けになったのよ」

 

「……セナ…」

 

そこに居たのは、青いロングポニーテールを持つ女性だった。刀を持っており、腰の鞘に納めるとオニロに近付く。彼女はオニロのかつての同僚…元対ホロウ特別鎮圧課の一員、晴嵐(せいらん)セナだった。

 

「来てくれたんですね」

 

「里桜が生きてるって聞いたらそりゃ来るわよ。それよりアンタ、さっきの動き何?」

 

「み、見てたんですか?」

 

「途中から酷すぎて見てられなかったわよ。対ホロウ特別鎮圧課の副課長だった男が、こんな体たらくだったとわね。今のアンタなら半分くらいの力で勝てそう」

 

「そ、そんなにですか……そういう貴女は…昔と変わらず、ですね」

 

「どうかしら、私はあの時の弱い私とは訣別したつもりなんだけど、今のアンタみたいに後悔しないようにね」

 

「後悔、ですか…今は何を?」

 

「別に適当に生きてるわよ。金だけなら無駄にあるし」

 

「そうですか…あ、ガナメアの連絡先って知ってます?」

 

「はぁ?知らないわよ、てかアンタ知らないの?」

 

「いや、知らないです…」

 

「はぁ…アイツ何処行ったのかしら…まさか郊外とかじゃないでしょうね?」

 

「…あり得なくはないですね。彼には預け物もありますし、連絡を取りたいんですが…」

 

「……そういえば、里桜の事、雅から聞いたらしいわね。アイツとも久しぶりに会ったんじゃない?」

 

「ええ、テレビで見るよりも立派になっていましたよ。彼女は本当に強いです。それに比べて私は…」

 

オニロはぶつぶつ何かを呟きながら落ち込み始める。それを見たセナは呆れたようにため息を吐く。

 

「ちょっといきなりウジウジし出すのやめてくれる?アンタ昔より自己肯定感終わってるわねウザいわよ」

 

「ひ、久しぶりに会った元同僚に対して辛辣過ぎませんか…?自己肯定感もっと下がりそう…」

 

「里桜を取り戻すっていうのにいつまでもその調子だと困るのよ。ほら、行くわよ」

 

セナはいきなり歩き出すと、オニロがそれに少し慌てながらついて行く。

 

「どちらに?」

 

「ホロウの中でエーテリアス狩まくるより、私と模擬戦した方がいいわよ。あの頃以上に強くなるよう死ぬ気で努力しなさい」

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

「絶対やだ。弱いアンタを叩き潰すつもりでやるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はぁ…最悪…確かに義肢の調子は確かめたかったけど…こんな茶番に付き合わされるなんて…)

 

ツイッギーは目の前にある大スクリーンに流される恋愛映画を退屈そうに眺めながら、時折ポップコーンを口に放り込み、ジュースをストローで飲む。

 

『私は今も、あなたを忘れられません。どうしてでしょうか。雪のように、触れれば溶けてしまいそうな想いほど、胸の奥にずっと残り続けてしまうのは』

 

(というかコイツ、恋愛物とか見るのね。どんな顔して……)

 

映画は終盤。ツイッギーは横に座る里桜の横顔をチラッと見ると…

 

「………」

 

里桜は、ぼんやりと、まるで遠くの景色を眺めているかのように、スクリーンを見つめていた。手元にあるポップコーンの量はほぼ減っておらず、飲み物にも手をつけない。

 

(…?)

 

『嘘、どうして…?』

 

『やっと見つけた…遅れてごめん』

 

スクリーンの向こうで、波を流した女性が男性の胸に飛び込む。他の観客達が啜り泣く声が僅かに聞こえる中、ツイッギーはただジッと、里桜の変化の無い横顔を見ていた。そして映画はハッピーエンドを迎え、エンドロールが流れ出す。

 

(おかしい…前、アジトで映画を見た時は、楽しそうに…)

 

以前、アドニス達も含めた6人で映画を見た時は里桜は常に笑顔で楽しそうにしていた。だというのに、今はまるで感情を見せていない。するとエンドロールの途中で突然徐々に表情が和らぎ、ポップコーンやジュースを口にしだす。

 

(……アドニスなら、何か知ってるわよね…)

 

エンドロールが終わり、明かりがつく。里桜は立ち上がって背伸びする

 

「ん〜!中々良かったね。いこ、ツイッギーちゃん」

 

「…ええ」

 

「?ツイッギーちゃんどうしたの、面白くなかった?」

 

「くそ退屈だったわ」

 

「前みんなで見た時も同じ事言ってなかった?」

 

二人は映画館を出ると、ルミナスクエアの空は茜色に染まっており、夕陽の光が近くの川の水面に反射してキラキラとしている。

 

「結構遊んだね〜。よし、晩御飯食べてから帰ろうか!」

 

「いいけどせめて個室がある場所にしてちょうだい」

 

「分かってるよ。えーっと近くでいい場所ないかな〜…」

 

里桜はスマホを取り出して近くにある料理店を調べようとすると…

 

「あれ、なんか電波が繋がら──」

 

里桜の言葉が途切れ、次の瞬間カタンっと何かが地面に落ちる音がする。ツイッギーが咄嗟に振り返ると、里桜がスマホを落としていた。里桜は目を少し見開いており、ツイッギーが「何やってんのよ」と声を掛けようとした瞬間、悲鳴が少し離れた場所から聞こえる。二人が悲鳴がした方に目を向けると、車が歩道を暴走しており、目の前には里桜も知る女性が…

 

(あ、あれリンちゃん…ってやばっ…!)

 

里桜が咄嗟に足に力を込めた瞬間、治安官の服を着た女性がリンに飛び付いて車の進路から外れ、続いて別の治安官が棒を地面に突き刺して車を無理矢理止める。

 

「派手な止め方ねぇ…里桜、どうしたのよ」

 

「びっくりしちゃって…怪我人は…運転手さん以外にはいないかな…?ってかアレパエトーンのお二人さんに…や、やば…!朱鳶先輩だ…!」

 

「はぁ…!?会っちゃダメな奴じゃない!行くわよ…!」

 

二人は少し慌てながらその場を離れた。

 

 

 

 

「い、いや〜危なかった〜…!流石に朱鳶先輩には会えないよ僕…!」

 

「それで言ったら私もパエトーンには会いたくないのよ…!アイツらアンビー隊長の知り合いだし…」

 

「絶対ややこしい事になるよね…」

 

「てかアンタもうルミナスクエアに来るのやめなさいよ…!ここ治安局の建物あるのよ…?」

 

「うーん…確かに…ちょっと朱鳶先輩に会う可能性が常にあるのは不味いかも…ちょっと控えようかな…あ、ご飯ここどう?」

 

「何でもいいって言ってるでしょ。さっさと食って帰るわよ」

 

二人は店に入り、注文してご飯を食べ始める。ツイッギーは食べながら里桜が首元に巻いているマフラーを見る

 

「あなた、飯食う時くらいソレ外したら?というか外した姿見た事無いわよ」

 

「あ〜…アドニス君にコレは…特に外じゃ絶対に取るなって言われてて…僕も出来るなら外したいんだけどね…」

 

「ふーん……もしかして、ホワイトやスカイも付けてた首輪があるのかしら?」

 

「あはは〜…ノーコメントで」

 

ツイッギーはアジトで見た、ホワイトとスカイの首に付けられた黒い機械的な首輪を思い出した。記憶の限りでは二人はそれを外した事は無い。

 

(……あの首輪、今まで気にしなかったけど、なんであの二人は付けてるのかしら…それに里桜まで…?戻ったらアドニスに聞いてみようかしら…)

 

「あ、ツイッギーちゃんコレ美味しいよ、食べる?」

 

「私はもう腹一杯よ」

 

「そっか、じゃあちょっと待っててね!急ぎ目で食べるから!」

 

そう言って料理を口に運び、美味しそうに味わう。その様子をツイッギーはジッと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜!」

 

「「おかえりなさいませ」」

 

二人がアジトに戻り、里桜が明るく呼びかけるとすぐさまホワイトとスカイが現れて出迎える。

 

「…っ!」

 

「何よ、特に何も無かったわよ。退屈だったわ」

 

次に現れたAがツイッギーに駆け寄り、何かを伝えるとツイッギーは疲れた様子で答える。Aはそんなツイッギーの姿を見てどこか嬉しそうにする。

 

「何よその顔…変なこと考えてるなら殴るわよ。てか、アドニスは?」

 

「開発室でございます」

 

スカイの言葉を聞くとツイッギーはうんざりする。

 

「またぁ?アイツ本当に機械弄り好きよねぇ」

 

「あはは、アドニス君にとってはストレス発散みたいなものだよ」

 

「まぁいいわ、義肢の事で言いたいこともあるし、ちょっと行ってくるわ」

 

「オッケー。あ、ホワイトさんとスカイさんご飯食べたの?」

 

「いえ」

「まだです」

 

「お土産持って来たよ〜食べて食べて〜」

 

里桜がお土産をホワイト達に見せているのを尻目に、ツイッギーはアジトの奥に向かう。やがて見えてきた鉄製の扉を開けると、中に居たアドニスは大きなパワードスーツの調整をしていた。

 

「アンタって見る度別の物作ってるわよねぇ」

 

「あん?ツイッギーか、面倒事は無かったか?里桜がお前を連れて行った時はマジで焦ったぞ…」

 

「大丈夫よ、問題は起きてないわ。退屈だったけどね」

 

「そうか…で、何の用だ?義肢関連か?」

 

「ええ、この義肢、本当によく動くわ。私の失った手足なんかよりもずっと…けど、なんで戦闘用の色々な機能まで積んでるの?私そこまで頼んで無いわよ」

 

「俺の趣味」

 

「あなたねぇ…まぁ、困る事は無いから文句は言わないわよ。けどあなた、こんな玩具を沢山作ってどうするつもり?」

 

ツイッギーはそう言って開発室に置いてある様々な武器、兵器に目を向ける。

 

「あー…別にどうも、ただ作りたいもん作ってるだけだしな…アレだったら持ってってもいいぞ」

 

「金は払えないわよ」

 

「要らねえよ」

 

「なら頼み事かしら?」

 

「そういうのも要らん」

 

「…コレ作るのもただじゃないわよね?金が減る一方なんじゃない?」

 

「まぁ、最近はもうずっと赤字だな。けど…」

 

アドニスは手を止めて天井を見上げる。

 

「そんな長生きする気はねぇし」

 

「……そうだ、アンタに訊きたい事があったのよ」

 

「ん?」

 

「ホワイトとスカイ、それに多分里桜も…首にあなたが作った機械の首輪があるのよね?アレは何?単なるGPSならもっと目立たない形にするでしょうし…もしかして…あの3人が刃向かうような真似をしたらバンって…」

 

アドニスは振り返って真剣な顔でツイッギーを見つめる。

 

「……それを知ってどうするんだ?」

 

「いや、別に?ただもし本当にそうなら、あなたにしては意外ねって。あなた、里桜の事は随分大切にしてる…というかあなた達、昔からの友達なんでしょう?」

 

「まぁな……安心しろよ、アレに爆弾なんて仕込んでねぇ」

 

「じゃあ本当になんなの?」

 

「……お前がシルバー小隊…その隊長さんに夢中な奴で良かったよ。じゃなきゃワンチャン、もっと早く問いただされると思ってたからな」

 

「はぁ?どういう意味?」

 

「ツイッギー、お前はあの3人悍ましいの真実を知ったらどうする?それでも俺に協力するか?」

 

「………内容次第ね、まぁけど、私だって悍ましい真実側の存在だし、あまり気にしないわよ」

 

アドニスは自嘲するような笑みを浮かべて語り続ける。

 

「ほぅ言ったな?じゃあ教えてやるよ、あの首輪はな……」

 

 

 

 

 

 

 

「………♪」

 

Aは里桜が買ってきたお土産のスイーツを持って開発室に向かっていた。

 

『どうせアドニス君ご飯忘れてるだろうから!持って行って!』

 

と里桜に言われたからだ。Aは最近よく笑うようになった。唇は無い為そうは見えないが、心では笑みを浮かべている。

 

(ツイッギー、楽しそう)

 

Aはアドニス達の事はよく知らない。ただツイッギーとアドニスの間でなんらかの協力関係が結ばれ、そのお陰でこのアジトにも来るようになった。優しくて温かい里桜、ぶっきらぼうだが色々してくれるアドニス、表情は自分以上に堅いがいつも気遣ってくれるホワイトとスカイ。四人と関わる中で、ツイッギーが以前よりも柔らかくなったようにAは感じていた。

 

(もし、喋れるようになったら、なんて言おう…ありがとう、がいい、かな。初めての、ご飯は…ハンバーガー、で…)

 

そんな事を考えながら、開発室の扉を開けると…

 

「このゴミクズ、出来るだけ苦しんで死んで地獄に堕ちろ」

 

「ぐえっ!!」

 

「っ!?」

 

ツイッギーがアドニスを右手で思いっきりぶん殴っていた。Aのすぐ横。扉の隣の壁に激突する。

 

「ま、まぁ当然だけど、お前に殴られるとはな…」

 

「因みに今の拳は里桜に私の身体のサイズを勝手に教えた事に対する拳よ」

 

「あ、そっち…って、A?どうしたんだ」

 

「っ…!」

 

Aは慌てた様子でツイッギーとアドニスを交互に見る。

 

「あなた用の飯でも持って来たんでしょう。ほら、何ボサっとしてるのよさっさと渡しなさい」

 

ツイッギーがそう言うとAは困惑しながらもアドニスにお土産を差し出す

 

「ありがと…」

 

「行くわよ。私達もそろそろ向こうに戻らないと」

 

「っ!」

 

Aが頷くと、ツイッギーは座り込んでいるアドニスの横を素通りしようとする。すると真横で一旦止まると…

 

「…私も確かにアンビー隊長に執着してるのは事実よ。けどあなたよりイカれてなければ歪んでもいないわ」

 

「…そうだな」

 

「…最低よ、本当に…あなたの勝手な都合でそんな……一番ムカつくのは、アイツがそれに怒りもしないで、従っている事だけど」

 

「…ああ…里桜だったから、俺はこうしたんだ」

 

「…安心しなさい、協力関係はこれからも続行よ。もう私から、どうこう言うつもりは無いわ。ただもう、あなたを里桜の友達だなんて認めない」

 

「はっ…俺も自分がそんな奴だなんて、思ってねぇよ」

 

ツイッギーは開発室を出て行き、Aも不安そうな顔を浮かべながらついて行った。アドニスは暫く座り込んだままだったが、Aから受け取ったスイーツが入った箱を開ける。すると中には紙が入っており…

 

 

 

『あんまり無理はしない事!食事はちゃんと食べてお風呂に入りなさい!      里桜』

 

「……ははっ…本当、なんで優しいんだよ…」

 

アドニスはそう呟くとスイーツを一口食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、六分街にて

 

「里桜…君…?」

 

治安局の特務捜査班の治安官、朱鳶は、ある理由により六分街を訪れていた。そして今、彼女の目の前には…アヒルを抱えた、かつて親しかった学生時代の後輩と全く同じ見た目をした、茶髪に黒目の狐のシリオンが居たのだがら。

 

(アドニス君、マジでごめんなさい)




果たして読者の皆さんには里桜君、ホワイトさんスカイさんに関する真実を明かすべきなのか、まだ隠していた方がいいのか…

里桜君達の真実、読者の皆さんにだけ早めに明かした方が良いですか?

  • 早めに知りたい!
  • 後からでもいいかな
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