助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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『12月27日』
※所々を編集しましたが、展開に変化はありません。


第一章 暗躍の始まり
第一章(1)瀕死の少女


 ――血まみれの女の子が倒れている。

 

「っ!? おい、しっかりしろ! おい!」

 

 重症……いや、これはもう瀕死だ。腹部を見ればわかる。

 肉と骨と内臓が、ぐりゅぐりゅぐりゅッ!! と、ミキサーにでもかけたかのような有り様だ……誰がどう見ても瀕死にしか見えないだろう。

 

「ぐ……ご、あッ!?」

 

 吐血する少女に駆け寄り、制服のブレザーを脱いで腹部に優しく押し当てる。

 駆け寄った少年、影宮(かげみや)嵜渡(さきと)は医療の事には詳しくないが、まずは少しでも血を止めなくては。

 

「ぁ……ぅ……、あ、あんた……人、間?」

 

 息も絶え絶えな様子で、瀕死の白髪(はくはつ)の少女は嵜渡の顔を見てくる。

 

「喋っちゃダメだ! 喋ると傷口が……!」

 

 少女がこんな目にあっている理由は、校庭の方を見ればわかる。

 ――嵜渡も通う学校の校庭では今、怪人(かいじん)と三人の魔法少女(まほうしょうじょ)が戦っていた。

 

 嵜渡は円錐形(えんすいけい)の暴風がここに直撃したのを見て、巻き込まれた者がいないか確認のために駆けつけた。

 ……この少女は恐らく、運悪く巻き込まれてしまったのだろう。

 

 …………()思っていたのだが(・・・・・・・・)

 

 虚ろな目で腹部に目を落とした少女はこう言った。

 

「わたし、は……怪人(・・)だから……この程度じゃ、まだ(・・)死なない、わよ……」

 

「――は?」

 

 (かい)(じん)

 怪人って、いま校庭で魔法少女と戦っている……あの?

 

「か、あ……ッ! ……それ、よりも……あんたが、逃げ――、!?」

 

 言葉も満足に繋げられない状態で話していた少女が、突如として嵜渡を掴み、力を振り絞って真横へと跳んだ。

 直後。先ほどまで二人がいた場所を暴風の波が消し飛ばしていく。

 

 

 

「――――まだそんな力が残っていたのね」

 

 

 

 二人の近くへと歩いてきた誰かがそう言った。

 瀕死の少女はあからさまに顔をしかめ、嵜渡はその誰かを見る。

 

「ごほっ! っ……カーラン(・・・・)……」

 

「ふふふ。血に染まっていた方が似合うわよ、リナ(・・)

 

 そこにいたのは、カラスのような特徴を持つ女性だった。

 背中からはカラスを思わせる巨大な翼が生え、右手には槍を持っている。

 ……同じ怪人であるのなら味方同士である筈なのに……カーランと呼ばれた怪人が、リナという名の怪人の少女に向けているのは、殺意一色であった。

 

「ワタシの“円錐形の暴風(ぼうふう)”を腹部に受けて大変な事になっちゃったわね~。ま、それじゃあ殺しきれてないと思って来てみたけど……」

 

 嵜渡へと視線を移す。

 

「貴方は誰かしら?」

 

「ッ……。お、俺は……」

 

 べちゃべちゃと、原型を保っていない腹部から血を流しながらリナは嵜渡の前へと歩み出る。

 

「っ!? なにして――」

 

「あんたはッ――う!? ごぼッ!! ……ぁ……だまっ、てな……さい……」

 

 血の塊を吐き出しながらも嵜渡へ声を投げるリナ。

 そして、少しでも安心させるためか頬を緩めて、

 

「早く……逃げて」

 

 ニヤニヤと笑うカーランへと、ふらつきながら歩いていく。

 そんなリナを見て……、

 

(助け、ないと……ッ)

 

 ――何故?

 相手は怪人……いわば『敵』だ。どうして助ける必要がある?

 

「ッ――」

 

 仮に助けるとしても、お前に何ができる?

 さっきの暴風を見たろ?

 嵜渡(おまえ)は魔法少女でもなければ、この二人のように常軌を逸した存在でもない。

 

 …………影宮嵜渡(おまえ)は、何の力もないただの人間だろ?

 ――勢いだけの正義感で死ぬのか?

 

(――――違う(・・)

 

 この胸の内の“助けたい”という衝動は、決して勢いだけのものではない――

 

          ◆

 

 ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一〇年前のあの時から、この胸に宿った思いは、決して……。

 

          ◆

 

「――こっちだっ!」

 

「!? な――っ!?」

 

 リナを両手で抱きかかえその場から逃げ出す。

 

「あ、あんた! なにし――」

 

「いいから黙ってろ! 絶対助けるから!」

 

 校舎の一角は暴風で崩壊しているが、それでも曲がり角や物陰を利用し、ジグザグにカーランから距離を取る。

 

「は、離して……! このままじゃ、あんた、まで……っ!」

 

 離さないまま、駆ける足にさらに力を込めていく。

 そんな嵜渡に痺れを切らしたようにリナはキッと目を鋭くし、

 

「わたしは……敵よッ!! あんた、たちは、知らないかもしれない、けど……わたしは、魔法少女の敵で、この学校をこんな風にした奴の、仲間……!

 だから、下ろして……このままじゃ、あんた、カーランに殺される……ッ!」

 

 思いつく限りの言葉だったのだろう。

 上手く言葉が出ない状態で必死に自分を下ろすように言ってくる。

 でも――

 

「それはできない」

 

「あん、た……ねぇッ!」

 

 遂には弱々しく胸ぐらを掴んでくる。

 だが、その行動さえも根底にある思いは、

 

「――優しいんだな、お前」

 

「っ、――え?」

 

「そう言ってくるのは、俺を守ろうとしてるからだろ? このままじゃ巻き込まれて死ぬから、早く自分を下ろせって」

 

「……わ、わかってる、なら――」

 

「その思いは嬉しいよ……だけど、」

 

 先ほどの攻撃から身を(てい)して助けてくれたお前を、

 必死に守ろうとしてくれるお前を、

 何より、そんなに優しいお前を、

 ……たとえ、怪人だとしても――

 

「――助けないなんて選択肢は俺にはない。さっきお前が俺を助けてくれたように、今度は俺がお前を助けるから! だから今は、俺を信じろッ!!」

 

「っ――――」

 

「それにな……本当に悪い奴ってのは、そんな()をしないんだよ!」

 

 そう――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて、根っからの悪ができる目じゃない。

 

 ――その時、

 

「……ッ!?」

 

 ……上空(・・)から放たれた柱のような一条の魔力が、嵜渡たちを呑み込んだ。




 今夜の18時5分あたりに、二話目を投稿します!
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