助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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第一章(10)最後に現れたのは……

 袈裟懸けに紫炎(しえん)を残しながら、カーランは倒れ伏せる。

 

「サンキューな、リナ」

 

「どういたしまして。……ほとんど終わったみたいね」

 

「あぁ……。その服装は?」

 

 リナの服装は先ほどまでとは違い、その身に漆黒のローブを纏い、片手には大鎌を(たずさ)えている。

 ……どこか死神(しにがみ)を思わせる服装だ。

 

「あぁ、これ? ミッドナイトにいた頃からのわたしの戦闘服」

 

 リナが質問に答えていると、荒い息が二人の鼓膜を震わせる。

 振り向けば、そこには荒い息を吐くカーランがいた。

 袈裟懸けの傷口を抑えながらカーランは言葉を吐き出す。

 

「お……おのれ……ッ!」

 

 血走った目で二人を睨み付ける。

 

「まだ、だ……まだ終わりじゃない!」

 

 暴風が吹き荒れ、カーランを包んでいく。

 カーランの周囲に存在するものが凪払われ、打ち上がり、数百メートル先へと落下する。

 

「ぶっ飛ばしてやるッ!! 全てをォ……ッ!!」

 

 嵜渡とリナも耐えられなくなり後方へと吹き飛ばされる。

 一瞬で三〇メートル先へと飛ばされた二人は地面に掴まり、

 

「これ、は……っ!」

 

「カーラン……まさか、ここで命を使い果たす気ッ!?」

 

 暴風はやがて一つの竜巻となり、カーランに纏われる。

 その密度は先ほどの比ではない――集束した竜巻が放たれれば、この辺り一帯が消し飛ぶ……そんなレベルの話では済まない。

 

「まずい――!」

 

 真っ先に駆け出したのはリナ。

 三〇メートルを一瞬で駆け抜ける。

 

「アアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 怒りのあまり周りが見えなくなっているカーランを掴み取るように手を伸ばし――

 

 

 

 ――上空から落ちた(かみなり)が、竜巻を切り裂きカーランへと突き刺さった。

 

 

 

 掴む事は叶わず、リナはカーランの絶叫を目の前で浴びた。

 

「カーラン!?」

 

 やがて雷は収まり、気を失ったカーランは仰向けに倒れ込み……、

 

「……手荒で悪いな」

 

 いつの間にか現れた、ライオンの特徴を持った怪人に支えられていた。

 

「っ――、ラオン」

 

「久しぶりだな、リナ」

 

 ミッドナイトの幹部の一人、ラオン。

 かつてリナも所属していた組織の仲間の一人だ。

 だが、思い出話など咲く筈もない……立ち止まったリナに雷が落ちる――!

 

「ッ!?」

 

 咄嗟に飛び退き回避するが、ラオンの周囲から放たれた複数の槍のような雷がリナに襲いかかる。

 

「くっ――!」

 

 ぐるんぐるんっ! と片手で大鎌を自在に操り、体を回転させ、大鎌を振るい、一つも討ち漏らさずに迫る雷の槍を全て切り落とす。

 

「相変わらず見事だな、リナ」

 

 しかしリナを倒す事がラオンの目的ではない。

 ……周りの見えなくなったカーランを無事に連れ戻し、休ませるのがラオンの目的だ――だからこそリナを後退させた時点で雷は十分に役目を果たした。

 

「……頭冷やせ、このバカ」

 

 カーランを抱き上げ、ラオンは二人に背を向ける。

 

「……リナ」

 

 そのままラオンは声をかける。

 

「何……?」

 

 ふっ、と。何処か嬉しそうに、

 

ミッドナイト(こっち)にいた頃よりもいい顔をしているな。

 迷いが晴れた……そんなところか」

 

「……ラオン」

 

「魔女様の障害となるであろう、反感を抱いているリナを排除する――カーランからの意見に賛同はしたが、そんな顔のお前が見れて何処か嬉しくもある」

 

 それに嫌味や皮肉の類いは一切ない。

 

坊主(ぼうず)、お前さんの名は?」

 

「さ――、メイガス」

 

 敵意を感じさせないあまりの気さくさに本名を言いそうになってしまった。

 

「リナと一緒にやってくなら気を付けろよ? そいつはちょいとバカだからな、胃が痛くなるぞ。ちゃんと手綱(たづな)は握っとけ」

 

 言って、ラオンはカーランを連れて戦場から去っていく。

 

「な……なんなのよ、さっきの暴風は……」

 

「状況から見て、カーランのものだとは思うけど……」

 

 ラオンの去った方向を見ていると、茉優と絵美が瓦礫の向こう側からやってきた。

 どうやら分身との戦闘は、二人の勝利に終わったらしい。

 

「よかった」

 

 そっとリナは微笑む。

 嵜渡の元に駆けつける前に戦闘中の二人が目に入ったため、通りすがりに“紫の炎(手を貸した)”のだが、無事に勝利をもぎ取ったらしい。

 

「……さてと。帰るわよ、リーダー」

 

「ちょ、ちょっと待って! 貴方たちには聞きたいことが――!」

 

 嵜渡たちの帰る雰囲気を感じたのか、茉優が制止してくる。

 だが茉優の制止を聞かず、リナはそそくさと歩いていく。

 

「ごめんな、詳しい話はできないんだ」

 

「で、でも――」

 

 跳躍していくリナを追うように茉優たちに背中を向け、

 

「俺たちの事を知りたいならサヤに聞いてくれ」

 

「え……?」

 

「マジックワールドのお姫様とは、少しだけ話をしたんだ」

 

 そう言い残し、嵜渡もその場を後にした。

 

          ◆

 

 崩壊したショッピングモールの周囲は警察や消防が何台も駆けつけていた。

 他の人にバレないようにショッピングモール内から出て、ごった返している野次馬を横目に見ながら路地裏へと駆け込む。

 

「ふぅー……なんとかバレなかったわね」

 

「……魔法少女たち、大丈夫か?」

 

「仮に消防に見つかったとしても、香梨が怪我してたから、崩壊に巻き込まれた人とその友人、っていうので怪しまれずに抜けられるわよ」

 

 額の汗を脱ぐっていると――ぐぅ~! という音がリナのお腹より路地裏に鳴り響いた。

 

「あ……」

 

 頬を赤らめながらリナはお腹を抑える。

 外はもう暗い。そろそろ夕飯の時間だ。

 柔らかな笑みを溢しながらリナの頭にポンっ、と手を置く。

 

「早く帰ってご飯にするか」

 

「あ――うん! 今日は何を食べさせてくれるの、嵜渡!」

 

「ふふふ――そうだなぁ、何かリクエストはあるか? 今日はお前の好きなものを作って……、あ――」

 

「? どうしたの、嵜渡?」

 

 大事な事を思い出した嵜渡は額に手を置き、

 

「リナ……レジ袋はどうした?」

 

「レジ袋? それな……、あ――」

 

 ……戦闘前に置いてきちゃったじゃん物陰によ。

 

「……ごめんね、嵜渡」

 

「……い、いや、謝らなくていいよ。あの状況じゃ置いとくほかなかったからな……」

 

 もう一度ショッピングモールに入って取りに行くのはリスクが高い、今も中に突入している消防隊に見られる可能性が高すぎる……。

 

「じゃあ、今日は外食に……」

 

 

 

君たちの荷物ならここにあるよ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 ――その気配は、突然現れた。

 

『ッ!?』

 

 躊躇(ためら)う事なく警戒する。

 声がしたのは路地裏の奥――ではなく(・・・・)嵜渡たちの背後(・・・・・・・)

 見られている感覚も、人の気配もなかった……なのに、どうやって?

 すぐに武器を出せるようにし、声の主へと振り返――――

 

「…………え?」

 

 脳が状況を理解するのに数秒かかってしまった。

 

「あん、たは……」

 

 武器を出そうとしていたのも忘れてしまう。

 それだけそこにいた人物は、この状況に、起きた現象に、そぐわない存在だったのだ。

 

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 そして今、二人に気づかれずに路地裏に現れた。

 

「――――――朱坂(あかさか)?」

 

「……また明日って言ってたのに、今日会っちゃったね、影宮(かげみや)くん」

 

 ……正真正銘、底が知れない(・・・・・・)クラスメイト――朱坂(あかさか)菜雪(なゆき)がそこにいる。




 これにて第一章は終了です。
 続いて第二章に入りますが、その前にいくつか幕間の話を投稿します。
 幕間の話としては、魔法少女や、リナの話です。

第一章終了! 好きなキャラは?

  • 影宮嵜渡
  • リナ
  • 朱坂菜雪
  • 霧原絵美〈シャイン〉
  • 笹波茉優〈シスター〉
  • 空下香梨〈ウィッチ〉
  • サヤ〈マジックワールドのお姫様〉
  • カーラン
  • ラオン
  • スパール
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