助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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 幕間は、あと二話で終わります。


幕間(2)魔法少女の誕生/笹波茉優

茉優(まゆ)ちゃーん!」

 

 家のチャイムと同時に、昔からの幼なじみの声がする。

 明るさいっぱいのこの声は、絵美(えみ)だとすぐに気づいた。

 

「そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえてるわよ」

 

 ドアを開けると、絵美と手を繋いで来たのであろう、絵美よりも身長が低い銀髪の少女もいる。

 

「その子がアンタの言ってた、海外の親戚の子……?」

 

「う、うん……サヤっていうの。仲良くしてくれると嬉しいな!」

 

「は、初めまして、霧原(きりはら)サヤです。よろしくお願いします……」

 

「そんなに固くならなくて大丈夫よ。敬語もなしでいいから。

 私は笹波(ささなみ)茉優(まゆ)。絵美とは幼なじみなんだ」

 

 家の中へと入れると、茉優の母親も二人を歓迎する。

 今日は茉優の家で遊ぶ予定だった。

 三人で遊んでいると、母親が焼きたてのクッキーを持ってくる。

 

「……っ、」

 

 クッキーを食べていると、サヤが不意に窓の外を見た。

 

「? サヤ、どうしたの……?」

 

 気になり、サヤの顔を覗き込むと、

 

「エミッ!!」

 

 血の気の引いた叫びに、絵美も目を見開きながら窓を見る。

 瞬間――尋常ではない倦怠感(けんたいかん)が茉優たちを襲った。

 

『――!?』

 

 全員膝から崩れ落ちていくが、

 マジックワールドの姫であり、魔道士(まどうし)の端くれでもあるサヤと、

 先日、魔法少女になった絵美には僅かながら耐性があるのか、茉優とその母親よりは体を起こせていた。

 

 ――ギュオオオッ!! と。

 そんな四人に追い討ちをかけるように暴風が窓を叩き壊し、ガラスの破片を纏って迫り来る。

 

『危ない――ッ!』

 

 絵美は変身し、サヤは両手を突き出し、魔力の壁を張る。

 

「……あらぁ~? 他とは違う魔力を感じて来てみたら、貴女たちに会えるなんてね」

 

 割れた窓から入ってきたのは、絵美とサヤにとっては二度目の相対となるカラスの女性――カラスの怪人、カーラン。

 ――そして(・・・)

 

「……ねぇ、家を壊す必要はあったの?」

 

 背中まで伸びた白髪(・・・・・・・・・)死神を思わせる漆黒のローブを纏った(・・・・・・・・・・・・・・・・・)……(はた)から見たら人間の女の子にしか見えない、人の怪人(・・・・)

 

「あるわよ。先手必勝ってやつ……貴女も覚えときなさいリナ(・・)

 

「あ、あなた、この前の……ッ!」

 

「また会えたわね魔法少女。それとお姫様」

 

「……っ!」

 

 絵美は弓を構え、

 サヤは魔力を放てるように手を構える。

 

「ここら一帯の魔力は吸い上げたし、このまま帰ってもいいんだけど……」

 

 構える二人を舐めるように見て、

 

「ふふっ……どうやら帰す気はなさそうね」

 

「当然……!」

 

「貴女が奪った魔力、みんなに返しなさい!」

 

「それはできないわ。魔女様への献上品だもの……」

 

 カーランを睨み、一挙手(いっきょしゅ)一投足(いっとうそく)を見逃さぬようにしていると……、

 

「――お母さん……? お母さんッ!!」

 

 気が動転した様子の叫びが後方より聞こえてきた。

 突然の叫びに肩を揺らした二人が振り返ると……そこには倒れた母親に寄り添う茉優と、後頭部から出血している母親の姿があった……。

 

「っ!? お母さん!!」

 

「まさか、さっき倒れた時に……ッ」

 

 倒れた場所や、打ち所が悪かったのだろう。

 後頭部を強打した茉優の母親は唸ることしかできず、血を抑えることもできない……体が動かないのだ。

 

「よそ見とは舐められたものね――」

 

 瞬間、かっ跳んできたカーランが槍を振るい――反応が間に合った絵美は弓を盾にし、間に合わなかったサヤは凪払われ壁に叩きつけられる。

 

「がは……ッ!?」

 

「サヤちゃん――!!」

 

 続けざまに繰り出される槍を(さば)くが、カーランが後ろに跳び、暴風を放ったことで状況が一変する。

 

「ッ!?」

 

 回避すれば、茉優とその母親に当たる――絵美は回避せずにその身で受けた。

 

「ぐっ!? う……ッ、――が、あああああああッ!!」

 

 遂に耐えられなくなった絵美の体がぶっ飛び、茉優たちの上を通過し、壁にクレーターを作る。

 

「絵美ッ!!」

 

「……守りたい人がいるっていうのは弱みねぇ……」

 

 槍をくるくると回しカーランは微笑(びしょう)する。

 

「……ん、なの――」

 

「ん?」

 

「――なんなのよアンタらッ!!」

 

 両手を母親の血で染めた茉優が激昂を飛ばす。

 

「私の家族も、幼なじみも、友だちも……!

 私の大切な人たちを平然と傷つけるアンタたちはなんなのよッッッ!!」

 

 充血した目には未だに涙が浮かんでいたが、その瞳は怒りに染まっている。

 先ほどの尋常ではない現象の数々を見ても、茉優は恐れず真っ正面から言葉を刺した。

 

「名乗る必要があるかしら? 貴女たちは今ここで死ぬのに」

 

 カーランが手を(かざ)せば、倒れている母親の唸りがより苦痛を帯びたものになる。

 

「っ!? お母さん――!?」

 

 視認はできないが、魔力を吸い取られているのだ……それも、弱った体から無理やり。

 

「――ちょっとっ(・・・・・)!!」

 

 魔力を吸い取るカーランの腕を掴んだのは……なんと、その隣に立っていたリナであった。

 

「あんた何してんのよ!? それ以上やったらあの人死ぬわよっ!?」

 

 リナの制止に、カーランは怪訝そうな目を向ける。

 

「は? 貴女の方こそ何言ってるの?

 ……死んでもいいじゃない(・・・・・・・・・・)こんな奴ら(・・・・・)

 

「――――」

 

 産まれて初めて、

 ……茉優は、言葉が頭に染み付く感覚を覚えた。

 

(……死んでも、いい? ……こんな、奴ら?)

 

 死にかけている“母親”。

 立ち上がれない“幼なじみ”。

 苦痛の声を漏らす“友だち”。

 

 ――私の大切な人たちが……死んでも、いい――?

 

「――――――――――――――ふざ、けるな……ッ」

 

 血に染まった手を握り締め、立ち上がる。

 

「……許さないッ」

 

「は?」

 

「――アンタたちは絶対に許さない……ッ!!」

 

 その時……サヤが手首から下げていた二つの魔法石のうち、『青』の魔法石が光を灯した。

 

「……魔法石が反応してる――ってことは……!」

 

 敵に(おく)することなく、(みずか)らの決意を宣言する――。

 

「誰も奪わせない――みんなは私が守るっ!!」

 

 ――決意を聞き届け、青の魔法石が光を放つ。

 

「この光って……わたしの時と、同じ――」

 

「ま、まさか……この(むすめ)も……!?」

 

「い……一体、何が――?」

 

 困惑しながらも、『自分を求める青い光』へと顔を向ける。

 

「マユ! 受け取って――!」

 

 青の魔法石が()(えが)いて(くう)を飛ぶ。

 

「このッ!」

 

 魔法石を受け取った茉優を始末しようと、カーランが胸目掛けて槍を放つ。

 だが、

 

「――っ!」

 

 槍よりも早く、魔法石が胸に押し当てられる。

 

 ――絵美の時と同じく、魔力が茉優の体を覆っていく。

 その色は『青』――魔法少女としての服装も青を基調としたものが形作られていく。

 

 青い修道服(しゅうどうふく)頭巾(ずきん)はなく、茉優の特徴的な青髪のポニーテールが魔力に踊る。

 

「チッ――!」

 

「これが……カーランの言ってた……」

 

 魔力に阻まれ槍を弾かれたカーランと、魔法少女の誕生に驚きの声を溢すリナの前で、茉優の右手に『青い剣』が出現する。

 刀身には彼女の魔法である『水の魔法』が斬撃(ざんげき)として纏われ――

 

『!?』

 

 一閃(いっせん)――呆気に取られていた敵二体の視界が、青一色に染まった。

 

          ◆

 

 これが笹波(ささなみ)茉優(まゆ)の『始まり』。

 幼なじみと一緒に魔法少女となって戦うことになった日。

 サヤの求める魔法少女、その二人目が誕生した瞬間だった。




『カーラン』

 魔法少女とは二戦目となる今回も、本体ではなく『分身』。
 最後の茉優の一閃をモロに食らい、退散した。


『リナ』

 カーランに『発明ばかりで籠ってばっかりね。たまには外に出なさい』と言われ、分身のカーランについてきた。

 自分も所属するミッドナイトが『人から魔力を集めている』ことは知っていたが、具体的にどのように集めているかは知らず、今回初めてその場面を見て『人の命すら奪いかねない強引な方法を用いている』ことを知った。

 最後の一閃をバックジャンプで回避し、退散するカーランについていった。

第一章終了! 好きなキャラは?

  • 影宮嵜渡
  • リナ
  • 朱坂菜雪
  • 霧原絵美〈シャイン〉
  • 笹波茉優〈シスター〉
  • 空下香梨〈ウィッチ〉
  • サヤ〈マジックワールドのお姫様〉
  • カーラン
  • ラオン
  • スパール
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