助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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第二章(3)影の少女

 屋上から弾き出され、重力によりコンクリートの地面に叩きつけられる。

 

 魔法少女二人も地面へと降り立ち、武器を構える。

 

「こ、の……調子に乗って――」

 

 忌々しく二人を睨んでいたカーランだが……不意に『ニヤリ』と笑みを浮かべる。

 

「……なにを笑ってるの?」

 

 切っ先を向けながら茉優が目を鋭くする。

 

「いやなに……やっと本来の使い方ができる(・・・・・・・・・・・・・)って思っただけよ……」

 

 何を言っているのかわからず二人は首を傾げた――次の瞬間、

 

『う――っ!?』

 

 辺りを群がっていた大人(・・)に体を押し倒された。

 それも一人ではない。二人、三人……それ以上。

 

「ふふふ……これが、街の人々を狂人化させた本当の理由よ……貴女たちがどれだけ強くなっていようと、街の人には手を出せないでしょ♪」

 

「く……こ、の……!」

 

「卑怯、者、が……ッ!」

 

 狂人となり理性を失った人々が魔法少女に襲いかかる。

 対する魔法少女は街の人という事で手が出せない……魔法少女となった彼女たちは超人のごとき力と魔法を得ている。

 ……自分たちを押さえつけている人たちを無理やり払おうとすれば、怪我をさせてしまうかもしれない。

 

 否――魔法少女たちが動けないのはそれだけではない。

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 よって、いま魔法少女たちを押さえつけているのはただの人たちではない……魔力によって身体能力を無理やり強化された人たちなのだ。

 

 抵抗すれば傷つけてしまうかもしれない。

 強化された身体能力での押さえつけ。

 ……この二つが、魔法少女たちを動けなくしている要因だった。

 

「さーてと……」

 

 翼を使い、飛び上がる。

 魔法少女は手が出せないが……カーランは手を出すことに躊躇(ためら)いなどない。

 あとは人々ごと暴風で魔法少女を始末するだ――

 

「――ッ!」

 

 首に迫る紺色の剣を防ぐ。

 切創(せっそう)は防いだが、勢いはカーランを地へと戻す。

 

「……ふっ。現れたわね……」

 

「前々からリナ(アイツ)とはずいぶん違うと思ってたが……ここまでとはな」

 

 紺色の外套に、フードを深く被った嵜渡(メイガス)が忌々しく息を吐く。

 暴風は阻止したが、魔法少女が危機なのは変わっておらず、街の人の魔法の支配も解けていない。

 

 魔法少女を救おうとすればカーランが黙っていない。

 ――ならば魔法の大元(おおもと)を断つ。

 街の人(かれら)ではなく、カーランに飛びかかったのはそういうことだった。

 

「ふ――ッ!」

 

 一息で詰められる距離。

 カーランが槍で防御するよりも早く袈裟懸けに剣を振り下ろし――

 

「――これでもやれる?」

 

 周囲に発生した突風が、街の人たちをカーランの前に投げ飛ばしてきた――より正確に言えば、盾にしてきた。

 

「っ!?」

 

 急停止し、剣を引く……同時に人々の隙間からカーランの腕が突き出され、丸腰となった嵜渡に暴風が突き刺さる。

 

「が、あ……ッ!」

 

 背後に立っていたビルの側面にクレーターが作られ、一瞬後に嵜渡は地面に倒れていく。

 

「貴方にはさんざん苦汁(くじゅう)()めさせられたからね……誰よりも苦しめてから殺してあげるわ」

 

 風に掴まれた人たちが、カーランの盾となるように風に拐われてくる。

 

「――お前ッ……!」

 

 嵜渡や魔法少女にとって、狂人にさせられた街の人たちは『敵』であり『人質』だった。

 むやみに攻撃ができなくなった嵜渡たちに対し、カーランが取った行動は考えるまでもない。

 

「今日こそ殺してあげる……気持ちよくなるくらいの悲鳴や断末魔を期待してるわよ♪」

 

          ◆

 

 戦場から少し離れたビル。その屋上。

 魔法少女“シャイン”――霧原(きりはら)絵美(えみ)はそこから狙撃していた。

 茉優と香梨がビルの屋上でカーランを追い詰め、絵美がそれを穿(うが)つ。

 

 結果として矢が直撃したものの、カーランはビルの陰へと……絵美から見えない位置へと落ちてしまった。

 本当ならすぐに援護できるポイントへと移動したい絵美だが、今はその場から移動できなかった。

 ……何故なら、

 

「やめ、て……ッ!」

 

 ビル内部から屋上にやってきた、魔法の支配下に置かれた人たちに取り押さえられていたからだ。

 絵美の考えも茉優たちと同じ……だからこの状況を打破することができていない。

 

「く……!? う、ぇ――ぁ」

 

 俯せに取り押さえられた絵美の首が絞められる。

 手を離させようとするが……彼女が思っている以上に魔力による強化がされているらしい……抑えられた腕が動かない。

 

「ぁ……が――ぅ――――」

 

 呼吸ができない……力が抜けて…………

 

          ◆

 

 ――――瞬間、“影”が(はし)った。

 

          ◆

 

 体を抑える圧迫感から解放されていく。

 自身に群がっていた人たちが次々に倒れていく。

 

「げほっ! げほっ……、ん?」

 

 突然の解放に戸惑いの声を漏らす。

 何が起きたのか……確認の為に辺りを見渡そうとし、

 

「大丈夫……?」

 

 いつの間に現れたのか(・・・・・・・・・・)

 群がる人たちを瞬時に気絶(・・・・・)させた紫の髪の少女――朱坂(あかさか)菜雪(なゆき)が困惑する魔法少女に手を伸ばしていた。




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