「ぐっ……!」
嵜渡は
「がはッ……!?」
床へと倒れる嵜渡と、手から転がり落ちるリナ。
「……逃げ切れると思っているの?」
カーランが二人の側へと降り立つ。
「坊や、鬼ごっこがしたいの? それなら後でお友達とたくさんやるといいわ。だから今はワタシの邪魔をしないでね♡」
表情には笑みが浮かんでいるが、それが心からの感情表現でないことは、嵜渡の顔へと
「に……人、間」
床を転がったリナが苦しそうに嵜渡に声をかけるが、それを遮るようにカーランがリナの前へと歩いてくる。
「さて、リナ。――どうして殺されるのかはわかるわよね」
「……
「いいえ、これは貴女を除いた幹部のみで決めたこと。
「っ…………あんた、たちの……やり方には……もうついて、いけない。
あのやり方は――
「はっ、なに言ってるのよ? 人間の事なんてどうでもいいじゃない……魔女様も気の毒ね、こんな失敗作を生み出すなんて」
トドメを刺すために、カーランは槍を引き絞る。
「……く、そッ!」
壁に叩きつけられた体が重い、起き上がれない……。
それでも……立ち上がらないと。守らないと。
――このままじゃ、一〇年前と一緒だ……。
「……やめろ」
生きてるのに動けなくて、助けたいのに助けられなくて、ただ……家族が炎に飲まれていくのを見ていることしかできなかった、あの頃と。
「――やめろ」
――覚悟は? / ――ある。
――体は? / ――動く。
――力は? / ……ない。
「――やめろッ!!」
覚悟を胸に駆け出す。
体に鞭打ち足を前へと。
――戦え。力がなくても構わない。ここで死ぬことになろうと恐れない――それでも、助けろ……ッ!
◆
揺るがない覚悟。
他者のものとはいえ、
ならば――
◆
「――なにっ!?」
初めてカーランに動揺が奔った。
――繰り出した槍が受け止められたのだ。
リナではなく……突如として間に割って入ってきた少年によって。
「あん、た……」
動揺したのはリナも同じ。
嵜渡の眼光は目の前のカーランにのみ向けられている。
「カラス女――」
「ッッッ!?」
底冷えするような声にカーランの背筋が凍る。
ナイフのように鋭い少年の目は、カーランを真っ正面から突き刺し、
「――お前の相手は、俺だ」
瞬間――天を貫くほどの魔力が少年より立ち
「ごはッ!?」
対峙していたカーランは吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
倒れていたリナはそれには巻き込まれず、突然の魔力に目を伏せる。
「な……なに、が……?」
勢いよく立ち上った魔力が静かに収まっていく。
魔力で覆い隠された光の中心にはあの少年がいる。
その姿が、ゆっくりと
――
「これ、は……」
何が起こったのか、リナは理解できずにそう漏らす。
しかし……この
「
リナの声を掻き消すように嵜渡の右手に光の粒子が出現する。
一瞬で光は形を作り、やがて『紺色の剣』が右手に握られた。
「待ってろ」
剣を払い、
「――すぐに終わらせる」
◆
全身に力が
未知の事が起きているというのに、まるで
「貴方……何者ッ!?」
問いかけには返さず『
何故だろうか……『こうすればこうなる』という事が今の自分には理解できていた。
「え?」
驚きの声は背後から……リナの体が淡い光に包まれ瀕死の体が癒されていく。
少しずつではあるが、確実に傷が癒えていくこの
「
リナが答えを呟く。
そして、この魔法を行使しているのは間違いなく目の前の――
「あんた……本当に何者……?」
誰もが欲しいであろう答えは返されず、嵜渡は剣を片手に駆け出した。
「っ……!!」
咄嗟にカーランが槍で防御すると、ガンッ!! という音と共に槍が弾かれ、カーランの腹部に鋭い蹴りが差し込まれる。
「ぐほ……!? かっ、――よ、よくも……ッ!!」
完全に頭に血が上ったカーランは槍のような暴風を打ち出すが、ひらりとそれを躱し、続けて放たれる二撃目も当たり前のように避け――床、壁、死角、全てを利用した
「なら……これで――どうッ!!」
暴風を圧縮し、少年など簡単に呑み込む巨大な暴風の球体を放つ。
だが――、
「邪魔だ」
――
ソレを一刀両断し、両断した隙間から滑り込むように嵜渡が飛び込んでくる。
「――、なッ!?」
気づいた時には手遅れだ。
一瞬のうちに六度の斬撃を叩き込まれ、カーランは断末魔を上げる。
「カッ、ハ……!? ……こん、な……こんな――」
「――終わりだ」
視界を覆い尽くすその一撃が、
【
紺色の髪に、黒い瞳を持つ少年。
私立色彩中学校の二年生。一四歳。本作の主人公。
殺されそうになったリナを目の前にして、謎の覚醒を果たした少年。
覚醒した際の服装を細かく描写すると、
【上半身】
『丈が腰の下くらいまである、黒い線の奔った紺色のジップパーカー。上から羽織っており、前は全開で閉めていない』
『同じく黒い線の奔った紺色のシャツ』
【下半身】
『黒いズボン』
『紺色のブーツ』
【リナ】
背中まで伸びた
実は嵜渡よりも頭一個分小さく、いわゆるロリ。