「リナ、お願いがあるんだけど……」
「……うーん、菜雪って何がいいんだろう……」
だが当の本人は思考にどっぷり浸かっているようで、菜雪の声に気づいていない様子。
菜雪の名前を出している以上、思考は菜雪に関する事らしいが……。
「リナ……?」
「槍? 刀? ……いや、一回菜雪に聞いてみないと……(ぶつぶつ)」
特に気配を隠してはいないのに気づかれない。
どうやら予想以上に思考に意識を割いているらしい。
……仕方ない。リナの背後にそっと近づき、
「ふぅー――――」
「うひゃあああああああッ!?」
うなじに息を吹きかけたら可愛い悲鳴を上げてソファーからずり落ちた。
「ふふっ――かーわいいっ♪」
「な、菜雪!? あんたこういう事するキャラなの!?」
「私、こう見えて結構イタズラ好きだよ。……はい」
ソファーを回り、リナへと手を差し出す。
「ぞ、ぞくっとした~……でも、丁度よかった。あんたに話があったのよ」
「私に?」
「えぇ」
ぱっぱっ、と。スカートについた
「あんたに戦う力があるのはわかったから、何か武器を作ってあげようと思ってね。
色々と案は出てたんだけど、一番は本人が欲しいものを作った方がいいと思って、話を聞こうと思ってたのよ」
「……そうなんだ。
――なら私も丁度よかった。実は君に、武器を作って欲しいってお願いしようと思ってたんだ」
「なら本当に丁度いいわね♪」
ウキウキした感じでウインクを返すリナ。
「何でも言いなさい! “元”ミッドナイトの科学者
ふっふーん♪ と、胸を張るリナ。
そんなリナについ微笑んでしまい、ふふふっ、と言葉を溢した後、自分が望むものを口にする。
「私が欲しいのは――――」
「………………………………………………、
堂々と胸を張ったロリっ
菜雪からの注文に急に元気がなくなったリナが、ボソリと呟いた。
「うん、
「…………微笑みながら言わないでよ~~~」
「私も最初は無茶な注文かなって思ったんだけど、君の経歴やショベルカー魔改造事件の事を含めたら、できるんじゃないかなって思って」
「……こ、こんな事細かな説明を受けた注文は初めてよ。
――もう半分
「……でも、
ふと、威圧感を感じ顔を上げる。
「
「…………」
わあー(棒)、付き合い短いけど初めて見たわ……。
普段クールなこの
「……わ、わかったわ。とりあえずそれを作ってみる……それを使ってたというのは本当みたいだし、あの身体能力を見れば機動力のヤツの方も使いこなせるだろうし」
「――ッ!? ……ありがとう、リナ」
「……うん。…………クールに戻る前のあんたの一瞬の心底嬉しそうな顔なんて激レアかもね」
◆
「……カーラン」
スパールの失望した声が鼓膜に響く。
「ラオンが気を使ったというのに……無駄にするとはな」
部屋から勝手に抜け出し、魔力収集も行わず、更には敗北した。
……ミッドナイトの恥さらし、とスパールはカーランを見下す。
「……もういい。貴様には失望した」
カーランの元までスパールが歩いてくる。
「そんなに戦いたいのならば……戦わせてやる」
「……?」
一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
スパールが目の前にまで歩いてきたかと思うと……そのまま――
「っ――ぐっ!?」
スパールの右手が、カーランの腹部に突き刺さっている……。
カーランが苦痛に喘ぐ中、スパールは手を引き抜き、
「思う存分戦え。ただし――最期くらい、役に立てよ?」
「ぐぇ!? が、あ!? う゛……す、スパール……ッ! ワタシに、ナに、ヲ――――」
スパールが刺した腹部には……
「カーラ――、!? カーラン……!」
部屋にやってきたラオンがカーランの異常に気づき近寄ろうとするが、カーランより放たれた魔力によって弾かれる。
「こ、これは――スパール! お前何を――!」
「……何も不思議はないだろう? 役立たずに最期の役割を与えてやっただけで……処分も行える。まさに一石二鳥だ」
目の前でカーランが異形へと変わっていく。
皮膚は赤黒く、目は白目、牙は剥き出しとなり、ラオンやスパールと変わらなかった体が巨人へと変貌していく。
「ガ、ア――アアアアアアアアアアアア!!」
カーランとしての意識が消えていく……。
獣のような雄叫び、暴走する数秒前。
「くく――」
我ながら見事な魔法だ、と自分の腕前に笑いを溢しながらスパールが、パチン! と指を鳴らす。
敵味方の区別などつかない……ただ暴走し、破壊を繰り返すだけの獣となったカーランが街へと
◆
「り、リナ……」
「……………………なに?」
目の下に
「く、
「ま、まぁね……三日前、菜雪に注文を受けてから徹夜してさ……寝ずにずっと作業してたから頭が回ってない」
「
「う……うん」
絶対に乙女がしてはいけない顔をしながらソファーに体を預けるリナ。
……もう
「……寝れてないって言ってくれればよかったのに」
「迷惑かけたくなかったのよ……それに、菜雪のあんな目を見れば一秒でも早く作りたくもなるわ。
……さっき渡した時も、嬉しさを隠しきれてなかったしね」
「……さっき朱坂がこの家に来たのはそういう事か。
――ってか、朱坂に何を作ったんだ?」
「んあ~……それは――」
あくびを我慢できないリナの言葉を
取り出すと、菜雪から電話がかかってきていた。
「悪い、朱坂からだ」
画面をタップし電話に出る。
「どうした、朱坂?」
『
スマホから聞こえてくる菜雪の声は何処か緊張感が含まれていた。
それを感じ取った嵜渡は居住まいを正す。
「……リナと一緒に家にいる。何かあったのか?」
『うん――手短に要件だけ話す』
焦っている様子を
『異形化したカーランと思われる存在が街で暴れてる――今から言う場所に二人も来て……!』
『朱坂菜雪』
リナに武器を作って欲しいと頼んだ。
……どうやら『二つの武器が合体』したモノと、『機動力を上げる』モノを頼んだらしい。
注文してから三日後。
嵜渡の家で完成した『ソレ』を受け取った菜雪は、リナ曰く嬉しさを隠しきれてなかったらしい……。
仕方ないよ。だって菜雪ちゃん一四歳だよ?