助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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第二章(8)カラスの羽は散って()く――

 傷ついた(本体)のカーランと、無傷(分身)のカーラン。

 一秒後に迫る二体の同時攻撃に構える。

 

 ――だが、嵜渡たちは忘れていた。

 カーランと戦えるのは自分たちだけではない……この街には、もう一組(・・・・)いたことを。

 

 ――それ(・・)は、視界の外から飛んできた。

 

 

「はあああああああああああああーッ!!」

 

 

 ――斬ッ!! と。

 青い魔法少女の一閃が分身のカーランを切り飛ばす。

 本体から離された分身は地面へと切り飛ばされ、大きく地面を揺らしながら転がる。

 

 分身のカーランを切り飛ばした、頭巾のないシスター服を纏った魔法少女が降り立つ。

 

「っ……お前、」

 

 降り立った魔法少女、シスター――笹波(ささなみ)茉優(まゆ)が口を開く。

 

「一体は私たちがやります。メイガスさんたちはもう一体を――!」

 

 告げて、茉優は分身の方へと跳躍(ちょうやく)する。

 後に続くように『赤』と『黄』の魔法少女が嵜渡たちの頭上を飛び越え、分身との戦闘を開始する。

 

「サンキューな……!」

 

 これで嵜渡たちも、魔法少女たちも、それぞれ相手にするのは一体のカーラン。

 

「これ以上、街への被害を増やしたくない……そろそろ(かた)を付けるよ、二人とも」

 

「カーラン、あんたはここで止める。

 ――かつての仲間として、その魔法(苦しみ)から解放する」

 

 各々が武器を構える。

 

「ァ――ア、ァア……ァァアアアアアアッッッ!!」

 

 辺りに暴風を撒き散らしながらカーランは(たけ)る。

 理性を失い、暴走から出たはずの叫びは……どこか苦しんでいるようにも聞こえた……。

 

          ◆

 

 魔法少女たちはカーランの攻撃を(さば)いていく。

 槍であろうと、拳であろうと、風であろうと、魔法少女たちに当たることはない。

 

 絵美(えみ)の『炎』がカーランの両足を焼く。

 香梨(かおり)の『稲妻』が(つた)となって炎に気を取られているカーランの身を捕らえる。

 

「はあああああああああああッ!!」

 

 その隙に茉優の『水』を纏った剣がカーランの羽を切り落とす。

 地面に着地すると同時に跳ね飛び、続けて左脚を根元から一閃する。

 

「ガアアアアアアアアァァァァッ!?」

 

 羽と足を失い、激痛に悶絶するカーランは暴れるが魔法少女たちには当たらない。

 

 ――異形化しようと関係ない。巨大化しようと変わらない。

 前の戦いの時のように――真っ向勝負であるのなら、魔法少女たちがカーランに遅れをとることはもうない。

 対峙するカーランが『本物』でなく、弱体化した『分身』であるのなら(なお)(こと)だ。

 

「当たって……ッ!」

 

 一条の赤光(せきこう)と化した火矢(ひや)がカーランの顔面へと迫るが、直前で回避される――しかし、火矢は絵美の意志によって軌道を変え、そのまま()を描くように空を回りカーランの後頭部へと直撃する。

 

「グッ――エ、アァァ!!」

 

 負けじとカーランも絵美に向かい暴風を放つが、絵美の目の前に出現した障壁(しょうへき)が彼女を守り、暴風を防いだ(のち)にガラスのように砕け散っていく。

 咄嗟(とっさ)に障壁を張った人物は、絵美の後ろにいる――、

 

「ありがとう、サヤちゃん!」

 

「……うん!」

 

 銀色(ぎんいろ)の髪が特徴的なマジックワールドの姫、サヤだった。

 

「今だよ、みんな!」

 

 指揮棒(しきぼう)を操るように手を振るう。

 サヤがその動作を行った瞬間、魔法少女たちは体内から力が涌き出てくるのを感じた。

 ――強化(きょうか)

 サヤが得意とする魔法の一つだ。

 

「了解!」

 

「わかった!」

 

一気(いっき)にいくッ!」

 

 得物(えもの)にそれぞれの炎/水/稲妻(魔法)を纏わせた三人は狙いを定め、駆け出す。

 攻撃を(くぐ)り抜け、飛び上がる――絵美は首に。茉優は頭に。香梨は胸に。

 

『――喰らえッ!!』

 

 (はし)る魔法少女の一撃。異形化しようと変わらない体の急所へと繰り出される。

 首を射貫かれ、頭を裂かれ、胸を穿(うが)たれ……断末魔と共に『分身』のカーランは消滅していった。

 

          ◆

 

「ギュラアアアアアアアアア!!」

 

 巨大な槍が軽々と振るわれる。回避したとしても鼓膜を痛めるほどの暴風が鳴るのだから威力の凄まじさがわかる。

 右目と右足が使えなくなったとしてもカーランには羽がある。

 羽で機動力を補い、右手で槍を、意志で魔法()を。

 

「――今ッ!」

 

 リナが天に手を(かが)げ、紫の稲妻――いや、(かみなり)を落とす。

 カーランはそれを()けるが、嵜渡が懐に飛び込み一閃する。

 一閃を槍で防ぐも、間髪入れずに菜雪が弾丸を撃ち込んでくる。

 

「グウ!? ゴ、アァァ――!」

 

 怯んだ隙を逃さず、文字通り一瞬で接近してきた菜雪が逆手持ちの銃剣(じゅうけん)を振るい手首を切りつける。

 ……流石は殺し屋。即座に殺す事ができない相手には、長期戦が不利となる攻撃をしてくる。

 

 菜雪の狙い通り右手に力が入らなくなったカーランは槍を(こぼ)し……再び空を飛んだ。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアーッ!!」

 

 雄叫(おたけ)びに(したが)うようにいくつもの竜巻(たつまき)が出現する。

 三人を囲むように出現した竜巻は逃げる隙間がなく、ジリジリと三人を潰そうと(にじ)り寄ってくる。

 

「なら――ッ」

 

 本体を攻撃して解除しようと試みるも、カーラン自体も暴風の中を高速で移動しているらしく、先ほどまでいた場所に姿がなかった。

 竜巻のせいでカーランの移動している音が聞こえない……こうしている間にも竜巻が迫ってきている。

 

「こうなったら一点突破――、朱坂(あかさか)?」

 

 嵜渡は打開策を言おうとして言葉を止めた。

 ……菜雪が二人よりも少し離れたところに歩き始めたからだ。

 

「菜雪……? どうしたの?」

 

「……私に任せて――」

 

 二人を落ち着かせるように告げて、心の中で『念』を発し、銃剣の(・・・)()を切り替える(・・・・・・)

 足を止め、()いでそっと目蓋(まぶた)を閉じる。

 

「――――」

 

 全神経を研ぎ澄ます。

 聴覚(ちょうかく)からの情報を元に脳内でマップを形成する。

 

 ――僅かな風の音の違い。

 ――暴風ではなく、生き物の動く音。

 ――どれだけ妨害しようと、彼女の形成した脳内マップにカーラン(ヤツ)は映っている。

 

 魔道士(嵜渡)であろうと、怪人(リナ)であろうと察知(さっち)できない。

 ……だが、

 

「――遅い(・・)

 

 ――――殺し屋(菜雪)からは逃げられない。

 銃口から魔力の弾(・・・・)が放たれ、竜巻の中を移動していたカーランを撃ち抜いた。

 

 自在に(・・・)()を切り替える能力(・・・・・・・・)

 ……これも銃剣に宿る能力の一つだ。

 銃“()”のみならず、魔“()”も放つことができる――いや(・・)、“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 竜巻が霧散(むさん)する。

 撃ち抜かれ、動きが止まった一瞬の()が現れる。

 

「決めろッ!!」

 

 菜雪の力強い声と入れ替わるように嵜渡とリナが前へと出る。

 

「――うォォォオオオオらッッッ!!」

 

 縦横無尽(じゅうおうむじん)に駆けて/跳ぶ嵜渡(しょうねん)の斬撃が無数に(はし)っていく。

 

「カーラン――ッ!」

 

 大鎌を片手で踊らせ、紫の炎/稲妻を纏わせ飛び掛かる。

 

「はあああああああああああああーッッッ!!」

 

 裂帛(れっぱく)の気合いと共に大鎌が振るわれた。

 

          ◆

 

 四度の戦いを()ての決着。

 ゆっくりと……死へと埋もれていく中で――――

 

 

 

「――ァ、アァ…………――――――()――――」

 

 

 

 カーラン(彼女)は、古い記憶を思い出していた。




『銃剣』

“順手持ち”と“逆手持ち”を瞬時に切り替える能力だけでなく、『弾』を自在に切り替える能力も持つ。

 カーラン戦において、竜巻の中を移動するカーランを撃ち抜く為に、『銃弾』を『魔弾』へと切り替えた。

          ◆

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