助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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第二章(11)魔法少女の原型

 (きら)めきが奔る。

 逆手持ちの銃剣と片手剣の剣撃。

 

 パワーならばミアに()がある。

 一撃ごとに押し負けそうになる……だが菜雪はそれを受け流し、天性(てんせい)の直感と軽やかな身のこなしで攻撃を(しの)いでいた。

 

「攻めてこねぇのか? ――おらァ!!」

 

「う――ッ……!」

 

 銃剣もろとも斬り飛ばされる。

 着地し、摩擦(まさつ)で勢いを消すが、勢いが消えるより先にミアが飛び込み、両膝を一文字に切り裂こうとしてくる。

 

 跳び上がり回避するが、無論ミアも食いついてくる……ワイヤーを射出し、路地裏の奥へと距離をとる。

 

「――どこ行く気だ?」

 

「!?」

 

 気づけば、目の前に(追いつかれて)いた。

 振り下ろしを受け止めるが、体は地上へと戻されコンクリートに打ち付けられる。

 

「ごは……っ!」

 

 打ち付けられた激痛に苦痛の声を漏らす。菜雪はすぐさま立ち上がるがミアは休む暇を与えない。

 剣を振るう度に地面が割れる。剣尖(けんせん)先の建物に深い斬撃(ざんげき)が刻まれる。

 だがやられっぱなしではない……、

 

「ぬっ――!?」

 

 一瞬の隙をついて足を払う。

 体勢を崩したミアに向かい、視界を潰すために銃剣で目を一閃する。

 放たれた一閃を、銃剣を殴ることで軌道を変え、ミアは目を裂かれる事を回避する。

 

「まだ――」

 

 銃剣を殴られたことで崩れた体勢を回転(くるり)と直し、ミアの顔面に発砲(はっぽう)

 剣で防がれてしまうが一瞬とはいえ視界が塞がる――神速(しんそく)の速さで接近し、稲妻のように足を突き刺した。

 

「ぐ――ッ!?」

 

 ミアが始めてまともに攻撃を受けた。

 彼女自身、驚いた顔をしながら後方に飛ばされる。そのまま路地裏から出たミアに菜雪の(やいば)が迫るも、それを剣で受け止め、両者は距離をとる。

 

「へへ、やるな……そろそろ真面目に――ん?」

 

 何かに気づいたように明後日(あさって)の方向を見る。

 

「この感じ……ラオンか? 魔法少女とやり合ってる……?」

 

 何かぶつぶつと言っている間に菜雪は構える。

 ミアの目は菜雪から外れているが、それでも菜雪への警戒は(おこた)っていなかった。

 ……やがてミアは『はぁー……』と大きなため息を吐くと、

 

「押されてんじゃねぇか……何してんだよあの兄貴分は」

 

 くるりと菜雪に背を向け、ひらひらと手を振る。

 

「わりぃが急用ができた、じゃあな」

 

「ッ――! 待てッ!」

 

 逃がすわけがない。

 躊躇(ためら)いなく銃口を背中に向け――

 

 

 パシュ――! と。

 ミアの右手の手のひらから魔力が一直線に放たれた……菜雪にではない、離れた位置に立つ建物へと。

 

 

「え……?」

 

 思わず放たれた魔力を見る。

 魔力が建物へとぶち当たり、一角を破壊し瓦礫(がれき)を落としていく。

 その瓦礫が落ちる先には……菜雪とミアの戦闘音が気になり近寄って来ていた小学生の姿があった。

 

「――っ!」

 

 小学生の元へと全力疾走。……ミアが小さく(あざ)笑ったような気がしたが、そんな事に意識は割かない。

 落ちてくる瓦礫を見て、恐怖からか呆然と立ち尽くしている小学生に飛びかかるように抱きしめその場から離れる。

 

「大丈夫……?」

 

 地面に叩きつけられ砕け散る瓦礫に背を向け、小学生を瓦礫から守る。

 

「――ぁ……う、うん……」

 

 ブルブルと震えている小学生を優しく抱きしめ、ミアの方を見る。

 ……そこにミアの姿はもうなかった。

 

(アイツ……私の注意を反らすためだけにこの子を危険に――)

 

 ギリ……ッ! と、怒りから歯を鳴らすも、そっと息を吐きながら目を伏せ、耳をすませる。

 

(逃げたか……いや――)

 

 研ぎ澄まされた菜雪の聴覚(ちょうかく)には、遥か遠くからの戦闘音が届いていた。

 

          ◆

 

 ミッドナイトの幹部の一人、ラオンは膝をついていた。

 魔力収集に来たはいいものの、魔法少女に駆けつけられ、追い詰められていた。

 

(はっ……まさか魔法少女どもがこれほどまでに力を上げてるとはな)

 

「あなたの負けだよ。諦めて降参して!」

 

 矢をつがえながら絵美は叫ぶ。

 不意打ちに備えながら香梨は槍を構え、ラオンの真っ正面に立つ茉優は剣の切っ先を向けている。

 

「へっ、わりぃな嬢ちゃん。俺は諦めが悪いんだ……それに――もう諦めるわけにはいかねぇんだよ」

 

 確固たる意志を込めた最後の一文を言い放ち、立ち上がる。

 

 ――そうだ、もう諦めるわけにはいかない。

 カーランは手遅れだったが……ミアはまだ守れる。

 一度仲間を失ってしまったからこそ、もう諦めないと誓った。

 

「ほら……かかってこいよ魔法少女ども。

 ……俺はまだ生きているぞ――」

 

 周囲に稲妻が奔る。

 再び膨れ上がった敵意に魔法少女たちが構え、後方でバッファーであるサヤが魔法少女たちを強化し始める。

 止まっていた戦闘が続行されようとしていた――その時、

 

 

 

「――――随分押されてんなぁ」

 

 

 

 ドンッッッ!! と。

 ラオンと魔法少女の間に何者かが降り立った。

 

『ぐ――っ!?』

 

 四人は同時にその場から飛び退き、降り立った何者かに対して構えをとる。

 

「……ミア」

 

「情けねぇぞラオン。それでもオレの兄貴分かよ」

 

 ショートヘアーの黒髪に小柄。

 活発そうな服装……しかし片手には剣を握っており、ラオンを守るように立ち塞がっている。

 

 目の前の……ミアと呼ばれた少女が少なくとも自分たちの味方でないことは想像に(かた)くなかった。

 

「初めましてだな、魔法少女……」

 

「っ……アンタ、何者?」

 

「さっきも同じコト聞かれたな……まぁいいか。

 オレの名はミア。何となくわかってるとは思うが……お前らの敵だ」

 

 ハッキリと明言(めいげん)され、魔法少女たちに緊張が奔る。

 その様子にミアはケラケラと笑い、

 

「そんなわけだからよ――」

 

 不意に言葉が切られ、

 

 

 

「気ぃ抜いてんじゃねぇぞ――?」

 

 

 

 言葉の続きは、茉優の背後から聞こえた(・・・・・・・・・・・)

 

『!?』

 

 全員同時に反応するも、遅い。

 一瞬で背後をとられた茉優は蹴り飛ばされ、ゴムボールのように跳ねながら店の中へと突っ込んでいった。

 

「シスター……!」

 

 目を見開いた絵美が即座に火矢を放つ。

 矢はミアに向かって一直線に飛んでいき――、

 

「こんなもん?」

 

「え――!?」

 

 見下した目で火矢を掴み、くるんと手元で回転させると槍投げのように絵美の元へと投げ返した。

 

「くっ――!」

 

 火の魔法で壁を作り矢を防ごうとするが――ミアが自身の魔力を()せながら投げ返した矢は着弾と同時に大爆発を起こし、悲鳴と共に絵美が吹き飛ばされる。

 

「シャイン……! ――このッ!」

 

 香梨が(えもの)を振り回しながら接近戦を仕掛ける。

 袈裟懸(けさが)けに突き、体も回転させた凪払い……そのどれもが防がれる。

 

「そこ――ッ!」

 

 剣で攻撃を防がれた時、片手を滑り込ませ、触れている手のひらからゼロ距離の電撃を放つ。

 確かな手応え。魔法は確実にミアを捉えた。

 ハズなのに――

 

「……電撃ってのはな」

 

 ガシッ、と手首を掴まれる――捕まった。

 不味い――ッ! ……そう思った時には手遅れだった。

 

「――こういうのを言うんだ……ッ!!」

 

「ガッ!? ――アアアアアアアアアアアアーッ!?」

 

 視界が白黒になり、意識が断線(だんせん)する。

 何秒……何十秒間、自分とは桁違いの電撃に絶叫していたのか……電撃から解放される時には体に力が入らなかった……。

 

「ウィッチ……っ!!」

 

 一瞬で壊滅していく魔法少女。

 悲鳴にも等しいサヤの叫びも、地に伏していく黄色の魔法少女には届かない。

 ……ただし、赤と青(ふたり)には届いていたらしい。

 剣と矢の同時攻撃がミアへと襲いかかった。

 

「気絶してなかったのか」

 

「当然……ッ!」

 

 復活してきた茉優の剣舞と絵美の矢をものともせず……それどころか茉優の剣を弾き飛ばし、腕を掴んで地面に叩きつけ、絵美の方向へと投げつけた。

 

「っ! ――わぷっ!?」

 

 自分の方向へ飛んできたため、放っていた矢の軌道を意志でねじ曲げ、茉優を正面から受け止める。

 

「弱い……弱すぎる」

 

 黒い剣が消失(しまわれ)――代わりに手元には一つの『黒い弓』が出現する。

 

『――ッ!?』

 

 ……それを見た、途端。

 ビリビリッ! ――と。

 魔法少女たちは、体に電気が奔るような感覚に襲われた。

 

 ……なん、だ? あれは……なんだ――!?

 

「……ケッヒヒ」

 

 魔法少女の反応に気づいたミアが、お馴染みの笑いを鳴らす。

 

「やっぱり感じるか(・・・・)……そりゃそうだよな、お前らの力の原型なんだからさ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「どういう、事……?」

 

「言葉のままさ……お姫様なら『原型』って意味がわかるんじゃねぇか?」

 

「――――、まさか……いや、でも、そんな……」

 

 問われたサヤは困惑していた。

 不思議に思った絵美が声をかけるもサヤからの返しはない……不適な笑みを浮かべたままミアは語り出す。

 

「……今から一〇〇〇年以上前の話だ。

 魔女(まじょ)に対抗するべくマジックワールドの魔道士どもが生み出した存在――神女(しんにょ)という少女がいた。

 この弓はな、“神女”が有していた“神器(しんき)”と呼ばれる武器の一つ――【ライスピル】……ま、これは『レプリカ』だけどな……」

 

 ライスピルを持つ左手とは違う、カラの右手に『矢』が出現する。

 

「そして神女と呼ばれる存在が……魔法少女の力(・・・・・・)その原型となったものだ(・・・・・・・・・・・)

 

 矢をつがえる……黒の光が矢に纏われていく。

 ミアは真実を伝えられて呆然としている絵美を見て、

 

「赤髪の魔法少女。……お前が持ってるその弓は、このライスピルが元ネタだぞ――?」

 

 ――放たれた矢は、直撃すれば辺り一帯が消し飛ぶ威力を誇る。

 旋風(せんぷう)を纏い迫る一矢(いっし)……それが直撃するよりも前に――

 

「――させないっ!!」

 

 魔法少女と矢の間にサヤが滑り込んだ。

 

「っ!? サヤちゃんなにして――ッ!?」

 

 直後。

 視界は……黒に染まった――――。




神女(しんにょ)

 一〇〇〇年以上前、魔女を倒すためにマジックワールドの魔道士たちが生み出した少女。

 ――魔法少女の原型となった存在。


神器(しんき)

 神女が有していた武器。
 その内の一つが、弓の神器『ライスピル』。
 ミアはそのレプリカ……いわば劣化版を保有しているが、それでも威力は絶大。
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