エタってはいませんので、ご安心ください!
「……ひっっっどい目に遭った……」
重い足取りで嵜渡は帰り道を歩く。
……リナは預かってる親戚の子という嘘から始まり、それを疑う生徒を自分でも驚くほどの巧みな
(アイツに小悪魔な一面があったとは……今度から注意――)
――――
魔法少女たちが感じた感覚と、
「っ――、なんだ……?」
顔はすでにその感覚の方を向いている。
並々ならぬ魔力……それを発しているのは魔法少女か、リナか、それともミッドナイトの――
「っ――!」
……頭よりも体を動かせ。
考えを振り払い、魔力の発生地点まで駆け出した。
◆
「う……」
目を開ける。
どうやら気絶してしまっていたらしい。
理由は明白……ミアという少女が放った矢によって生じた衝撃波によって、意識を
「ッ! サヤちゃん――!」
思い出して体を起こす。
そうだ……あの矢が当たる寸前、サヤが自分の前に飛び込んで来た。
自分が無事だという事を考えると、サヤが何かをしたということだ、が…………、
「……え――?」
正面に、赤がブチまけられている……。
こひゅー、こひゅー、という細い
……
「……サ、ヤ……ちゃん…………」
あの一矢を魔力を展開して防いだのだろう。
……展開のために向けていた右腕は原型を失い血肉と骨をさらけ出していて、体はあらゆる部分が裂けて抉れている。
絵美の声を聞いたサヤは半身で振り返る。
「――――エ、……ミ?」
顔面の皮膚が反り上がり、左目が破裂した
「だい、じょう……ぶ……?」
声を出そうとしても出てこない。
駆け寄ろうとしているのに力が入らない。
こうして話している間にもサヤの口からはボタボタと
「ふ、ひ…………よかっ、――――」
そう、
サヤは倒れた――ビシャッ! という液体が飛び散る音と共に。
「サヤちゃん……ッ!!」
ようやっと動けた絵美はサヤへと駆け寄る。
ネチャ……ッ。……触った感触に『ひっ……っ!』と驚きを隠せなかったが、それでも血塗れの少女を抱き上げ、涙ながらに声をかける。
「サヤちゃん!! しっかりして、サヤちゃんっ!!」
いくら声をかけようと血濡れの少女の目が開くことはない。
「――――ハハッ! さっきのでくたばったかと思ったが、思いの
黒い弓を片手にミアが嘲笑う。
「ッ――!!」
――ゴオッ!! と、
軽く避けるミアだが、続けて右手の凪払いにより放たれた炎の一閃……その火力を見て、初めて眉を揺らした。
「! ――はっ、まともに受けたら火傷しそうだな」
「――あああああああああああああああッッッ!!」
絵美らしからぬ叫びと共に炎の刃が放たれる。
血走った目で手を振り下ろせば天より炎の槍が
その全てを回避し、ミアはニヤリと笑いながら距離を詰めてくる。
「ッ!!」
ブォンッ!! と、いつの間にか剣へと切り替えていたミアが一閃を振るう。
脇腹への一閃を弓を盾にすることで絵美は防ぎ、
「ガッ……! ご、ば……!!」
……一閃の衝撃には耐えきれず、凪払われた体は何度もコンクリートに打ち付けられる。
負けじと顔を上げるが――
「――――――、ぁ――――」
――
既に
◆
「おーしまいっ、と……」
黒い弓を
だが流石は魔法少女というべきか……これほどの攻撃を受けても、失神はするが命を落とすまでには至っていない。
(ラオンは撤退したか……なら後はこの魔法少女どもをどうするか……)
そこまで考えたところで、頭の中に声が響いてきた。
『ミア、聞こえるか?』
『っ、親父』
自分の生みの親でもあるスパールからだ。
『……ほう。なら――――』
現在の状況を聞いたスパールから新たな指示が下った。
『はいよ。すぐに
ミアが返事を返すのと――――背後の
――金属音が鳴る。
振り向き様に剣を振るえば、頭を狙っていた
「……いつの間に来やがった? 直前まで気づけなかったぜ」
地面を、建物の壁を、瓦礫を、全てを足場にしながら一〇〇メートルを一瞬で詰め/
「――直前であろうと気づくか。やっぱりお前は油断ならないな」
ミアの思考を
――
どちらが有利か……直接戦闘ならばミアに分がある。
そもそも殺し屋とは『不意打ち』が基本。真っ正面から挑み殺す、というのは殺し屋のイメージには合わない。
――――だがそれは、相手が菜雪でなかったらの話。
「っ! ふ――ッ!」
不意打ちであっても、直接戦闘であっても、
だからこそ
最強と謳われた彼女だからこそ――魔道士や怪人といった規格外の存在に『生身』の体でやりあえている。
「そォら……ッ!」
ミアの
その場から打ち出され、建物の壁に叩きつけられる。
「か、は……っ! ……ちっ――」
普通ならば立ち上がれないであろう重傷。
しかし幼少期の頃に鍛えられた彼女の体は、その
血を吐かず、それどころか舌打ちを鳴らし、戦闘を続行する。
「は――ッ!」
向かい来る菜雪に対し、
そして矢を放ち――――
「ッ――!」
菜雪へ矢を放とうとした時――不意に接近する魔力に気づき、その場から飛び退く。
――
頭上より一閃が飛来した。
◆
「
一閃を振り下ろしたのは、紺色の
「か――、リーダー」
危うく名前を言いかけた菜雪を背後に、嵜渡は駆ける。
戦場には魔法少女とサヤが倒れている。中でもサヤは重傷だ……すぐにでも治療しなければ死に至る。
……でも、その為にはコイツを何とかしなければ。
先ほどの菜雪との戦闘を僅かに見ただけでもわかる。
――コイツは強い。もし
ミアもその一瞬は狙っているだろう。それは嵜渡も菜雪もわかっている……だからこそ、救出より先に、敵を倒さねばならなかった。
「はぁ――!!」
魔力の込められた一振り。
剣ではなく、弓でそのままガードしてくる。
つばぜり合いが起きる――その、中で――
『!?』
『――ッ!』
互いに距離を取る。
(……今のは……)
ミアは自分の
先ほどの感覚は
――
まるで、あの『剣』を知っているかのように……。
(――っ……まさか、あの剣――)
『何か』に気づいたミアは見開いた目で嵜渡の剣を見て――、
(……何だ、今の?)
奇妙な感覚を感じ取った嵜渡は、何が起きたかわからないまま、自身の剣とミアの弓を交互に見た。
――――
「……っ!? ぐ、ぁ――!」
一瞬。頭の中を割れるような痛みが奔った。
だが痛みだけではない、割れた隙間から――
◆
“
“
“
◆
知らない/古い――戦いの記憶が溢れた――。
『影宮嵜渡』
最後の場面で、“過去”の記憶が僅かに漏れ出した。