助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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第一章(4)第三勢力

 リナから魔力や魔法、魔法少女やミッドナイトに関する事を聞いた。

 ……しかし一番の議題(ぎだい)になったのは“嵜渡の力”についてだ。

 

 リナは魔法少女の力に似ている(・・・・・・・・・・・)と言っていたが、結局答えは出なかった……嵜渡自身、勢いと直感で使いこなしてはいたが、今までこんな力は見たことも使ったこともなく、正体などわかるわけもない。

 ――けれど、

 

「ふ――ッ!」

 

「くっ! ち……っ!」

 

 外套(これ)らは『彼』――嵜渡の意志一つで出現させられる。

 それは今しがたカーランに振るった『紺色の剣』とて同じ事。

 

 剣など振るったこともないのに、まるで自分の手足のように剣を扱える。

 常軌を逸した動きだというのに、自分の体が、脳が、目が……その動きについてくる。

 

 ――だから使う。

 正体不明だとしても、誰かを助けられるのなら――この力を使いこなしてみせる。

 

「纏めて……ッ!」

 

「っ、」

 

「――消し飛べぇぇぇーッ!!」

 

 上空に飛び上がったカーランが、竜巻を生み出し地面に向かって投げつける。

 

「リナ」

 

「――了解!」

 

 嵜渡は竜巻の下で待機、リナは倒れている魔法少女の元まで一息で跳ぶ。

 

「動かないでよ、魔法少女!」

 

 自分と魔法少女を囲む魔力のドームを出現させ、地面に突き刺さった竜巻から自分たちを守る。

 

「え? ちょっと――ッ!?」

 

 絵美が魔力(ドーム)の外にいる嵜渡を思い声を上げようとするが、それよりも先に嵜渡の姿が竜巻に隠れて見えなくなる。

 

「あ――アンタッ! あの人アンタの仲間じゃないの……!」

 

 目を鋭くしながら茉優が(とが)めるように声を飛ばす。

 だがリナは、

 

「大丈夫」

 

 その一言だけを返し、魔力のドームを解除した。

 

「ふ、ふふ――フハハハハハッ!!」

 

 何処にも嵜渡の姿が見えないからか、カーランは高笑いを上げる。

 

「ふふふ。何処の馬の骨だか知らないけど、ヒーロー気取りの愚か者にはお似合いの末――」

 

 カーランの背後に(・・・・・・・・)紺色の外套がはためいている(・・・・・・・・・・・・・)

 

「――ぐぼあッッッ!?」

 

 竜巻の死角に隠れ背後へと回っていた嵜渡が、(むち)のようにしなった足で、勝ち誇っていたカーランを蹴り落とす。

 

 僅かな地震を発生させる勢いで地面へと叩きつけられるカーラン。

 対して同じ位置まで跳躍していた嵜渡は、スタッ、と着地する。

 

「す……凄い……」

 

 感嘆(かんたん)の声を漏らす絵美とは違い、香梨は警戒心を解かないままリナに話しかける。

 

「……どういうつもり?」

 

 這いつくばりから片膝立ちに変わりながら、

 

「なんでお前らがあたしたちを助けるの? お前らにとってあたしたちは排除すべき敵でしょ?」

 

 当然と言えば当然だが、嵜渡の事も敵の一人だと思っているらしい。

 今までリナと戦ってきた魔法少女であれば気になる事を直接聞いてくる。

 

「――――」

 

 何故助けるのか。

 ――何故、嵜渡と共に戦っているのか。

 

 ……全ては数分前に語られていた。

 

          ◆

 

 お互いの自己紹介の(のち)、リナから一通りの説明を受けた嵜渡は質問した。

 

『お前、これからどうするんだ? さっき、組織を抜けるって言ってたけど……』

 

『もちろん組織を抜けるわ、もうアイツらのやり方にはついていけない……』

 

『やり方?』

 

『えぇ――ミッドナイトの目的は、封印から目覚めた魔女に魔力を与え(・・・・・・・・・・・・・・・・)かつての力を取り戻させること(・・・・・・・・・・・・・・)――わたしも含めた怪人たちは全て魔女から生み出され、魔女に魔力を与えるために活動しているの。

 ……だけど、最近アイツらの魔力の収集のやり方が過激になってきて、遂には死人を出しかねない量の魔力を吸い上げた』

 

 リナは一呼吸置き、

 

『あの魔力収集はやり過ぎだ、って仲間に言ったんだけど、さっきのカーランのように他の奴らはそんな事を気にせず、次々と魔力を集めたわ。

 ――そこで初めて気づいたの。

 わたしは同じ魔女(おや)から生まれておきながら、みんなとは違う考えを持って生まれたんだ、って』

 

 先ほどまで中身が見えていた腹部を擦りながら続ける。

 

『……で、反感を覚え始めたわたしを邪魔に思ったアイツらは最終的に、魔法少女との戦いの最中にわたしを不意打ち……あんたに見つけられなかったら死んでたってわけ』

 

『……』

 

『――わたしはこれから組織とは決別して、ミッドナイトと戦うわ。

 今まで傷つけてしまった人たちのためにも……あんたみたいな優しい人のためにも、わたしはアイツらと戦う。

 ……それが、わたしなりの(つぐな)い』

 

『……そうか』

 

 リナの『これから』を噛み締めるように嵜渡は聞いていた……そして、決心したように、

 

『……なら、俺にも手伝わせてくれ、その戦い』

 

『っ……気持ちは嬉しいけど……』

 

 リナは途中で口を閉ざした。

 償いの戦いはあくまで自分の戦い……たとえ事情を知り、戦える力を持っていたとしても、他の者を巻き込むのは気が引けるのだろう。

 ……だが、

 

『頼む』

 

 少年が戦おうとしている理由は、リナを助けたいという思いだけではない……それを感じ取ったのか、

 

『……どうして? なんでわたしを助けようとするの?

 あんたが今からしようとしてるのは死と隣り合わせよ。わたしとは、ついさっき知り合ったばかりの関係……それなのにここまでするのはなんで?

 ……何か企みがある。そう考えた方が自然なまであるわよ?』

 

 理由を問われた嵜渡はふっと俯く。

 答えを考えていなかったわけでも、企みがあるわけでもない……昔を思い返したからだ。

 

『――――』

 

 無力だった自分(ころ)を。

 ひとりぼっちになった、あの家族の死(しゅんかん)を。

 

何もできないのは嫌なんだ(・・・・・・・・・・・・)……もう(・・)二度と(・・・)

 

 それがもう一つの理由。

 嵜渡の行動指針ともなっている、揺るがない決意だった――。

 

『…………』

 

 心の底から出た言葉をどう思ったのか、リナはそっと息を吐くと、

 

『そんな顔されちゃあ、断った方が罪悪感を感じるじゃない……』

 

 嵜渡の前まで歩み寄り、片手を出した。

 

『少しとはいえ、命の恩人を疑って悪かったわ……。

 力を貸してくれる? 嵜渡』

 

『っ――あぁ……! もちろんだ!』

 

 差し出された手を握る。

 

『ありがとな、リナ』

 

『なんであんたがお礼を言うのよ。

 お礼を言うのはわたしの方……ありがとうね』

 

          ◆

 

 そして今。魔法少女ともミッドナイトとも違う『第三勢力』としての最初の活動は『魔法少女の救出』。

 今もなお連続で放たれる突きと払いを防いでいくが、流石は本体といったところか時折防ぎきれず体を掠めていく。

 

 しかしこの外套は堅牢(けんろう)そのもの。

 掠めた程度では嵜渡の体は傷つけられない。

 

 それに加え、

 

「わたしを忘れてない?」

 

 リナの拳がカーランの顎下を貫く。

 打ち上がったカーランの元へ高速移動したリナが、地面に向かって斜めに蹴り落とす。

 

「大丈夫、リーダー?」

 

『リーダー』と呼ばれているのは、敵に名前を知られないためという理由と、もう一つ。

 ――リナ曰く、『わたしを助けた時の判断力と胆力(たんりょく)、そして迷いなく行動に移す実行力はグループのリーダーポジションでしょ!』……とのこと。

 

「あぁ、サンキューな。……あの()たちは?」

 

「魔法少女は大丈夫。ちゃんと守ったから」

 

 ドフォッ! と、蹴り落とされていたカーランが翼を使い飛び上がる。

 その顔には怒りが浮かんでいる。

 

「リ――リナ……! 貴女、楽に死ねるとは思わないことね……ッ!」

 

 捨て台詞を吐き、カーランは撤退する。

 戦闘を終えて重い息を吐く嵜渡とリナの背後には、いまいち状況を理解できていない魔法少女たちがいる。

 

          ◆

 

 校庭に現れた怪人のみならず、魔法少女、嵜渡たちの戦闘の乱入、撤退していくカーラン。

 

「……」

 

 戦場から離れるように避難していた先生や生徒とは違い……戦場からもっとも近い瓦礫の陰(・・・・・・・・・・・・・・)から、誰にも悟られず(・・・・・・・)に、この学校に通うとある生徒(・・・・・・・・・・・・)は全てを見ていた。

 

「……もっと調べる必要があるか」

 

 未知の現象を見たことによる驚きや恐怖もなく、生徒(・・)はただ静かにそう呟いた。




 今年最後の投稿となります。
 皆様、よいお年をお迎えください。
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