助けた女の子は魔法少女の敵!?   作:雪山崇一

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 この物語における、リナに続く二人目のキーパーソン登場!

          ◆

『2月1日』

・菜雪の設定や服装を少しだけ変更。


第一章(6)底が知れないクラスメイト

 ――キーンコーンカーンコーン。

 

 帰りのホームルームが終わる。

 カーランが暴れた影響で学校の一部が崩壊した校舎は修復されるまで立ち入る事ができず、現在、嵜渡たち私立色彩中学校の生徒は別の学校の校舎を借り、学校生活を送っている。

 ……しかし、

 

「えーと……確か、こっちが昇降口で……、あれ?」

 

「職員室って何処!? ――ん? あれ? 反対校舎の一階!?」

 

「誰か調理実習室の場所覚えてる人いない? こっそり五時間目にアイスを持っていってたんだけど忘れちゃってー!!」

 

「それはもう諦めなよ……」

 

 といった感じで、今まで自分たちのいた校舎とは色々と違う点に混乱している生徒もしばしば。

 

 だが放課後という事で、生徒たちがそれぞれこの後の予定を話しながら帰ったり、教室で友だちと会話を楽しんだりと、それぞれの時間を過ごす中、

 

(……確かめてみるか)

 

 リナに言われた事が気になり、嵜渡は学生鞄を持ちながら一年生の教室となっている部屋へと向かう。

 ……リナ曰く、あの三人の魔法少女は嵜渡と同じ学校に通う一年生だという。

 

(そういえば……あの顔、見たことがあるような……)

 

 遡ること四日前。

 未知の力に目覚め、初めて戦闘を行った日。

 あの時には顔をチラッと見ただけだったが、よく考えればあの三人の魔法少女は、同じ学校の一年生にいた気がする。

 ……と言っても嵜渡は三人とあまり接点がなく、彼女たちの入学式の時に顔を見たくらいのものだが。

 

「――――――――、あれ?」

 

 ………………やっべ、迷った。

 

(た、確か一年生の教室は……)

 

 場所を把握する為に辺りを見渡していると、

 

「ねぇねぇ、茉優ちゃん! 香梨ちゃん!

 新しいクレープ屋さんのクレープ食べに行こうよ!」

 

「わかった、わかったから引っ張らないで!」

 

「えっへへ~、もっと引っ張っていいよ~、あたしは大歓迎~!」

 

 (くだん)の魔法少女三人が、仲睦まじく下校しようとしている様子が目に入った。

 咄嗟(とっさ)に物陰に身を潜め、廊下の先にいる三人を見る。

 

(た、確かに……あの時見た魔法少女だ。本当に同じ学校に魔法少女がいたんだな……)

 

 楽しそうに談笑しながら昇降口へと歩いていく三人。

 そんな三人を見ていた嵜渡は、ふと思った。

 

(……なんで俺隠れてんだ?)

 

 そうだ。

 戦いの最中ならともかく、学校生活中に姿を隠す必要はない。……むしろ隠れた方が怪しい。

 何処かに恥ずかしさを感じながら物陰から出て――

 

「……覗きの練習?」

 

「ひゃああああッ!?」

 

 突如として背後からそう呟かれ体が跳ねる。

 驚きを隠さず背後へと顔を向けると、そこには見知った顔があった。

 

「そんなに驚かなくてもいいでしょ?」

 

「あ……朱坂(あかさか)、」

 

 朱坂(あかさか)菜雪(なゆき)

 紫の髪が特徴的な少女。嵜渡のクラスメイトで席が隣のため、嵜渡も毎日顔を見ている。

 

「なんでここに?」

 

「なんでって、帰ろうと思ったら影宮(かげみや)くんを見かけて……来てみたら覗きの練習をしてたからびっくりしたよ」

 

「ち、違う! 俺は別に覗きの練習をしてたわけじゃない!」

 

「違うの?」

 

「あぁ!」

 

「じゃあ……本番の覗きを……ッ」

 

「――なんで練習じゃないなら本番かって思うんだよ!?

 練習でもなければ本番でもない! そもそも覗きをしてたわけ、じゃ、あ…………」

 

 …………あれ? 遠くの物陰から後輩を見てるのって、ある意味覗きでは?

 

「……影宮くん?」

 

「……と、とにかく、やましい事をしていたわけではない!」

 

 肩で息をしながら必死に弁明する。

 菜雪は『ふ~ん……』と嵜渡を見ていたが、不意に目を伏せ、

 

「ま、確かに……(きみ)は悪質な覗きをするような人じゃないか……ところで、」

 

 校庭が見える窓へと人差し指を向け、

 

「……さっきからこっちを見てる白髪(はくはつ)の女の子、君の知り合い? だったら誰かに見つかる前に敷地から出した方がいいよ」

 

「……へ?」

 

 菜雪が指差す方を見る。

 より見えやすいように窓を開ける。

 ……すると、校庭の端に生えている木の陰から、同居人(どうきょにん)となった白髪の女の子が手を振って――

 

「ふん……ッ!!」

 

 ――窓枠を飛び越え、そこまで全力疾走する……ッ!

 

          ◆

 

「――あ、やっと気づ、いぃぃぃー!?」

 

 風のようにコンパクトサイズの同居人、リナをかっさらい、立っていた木の更に奥……校庭の(はし)の端に置かれた用具入れの後ろに飛び込む。

 

「なんでここにいる!?」

 

「……あ、あんたがそろそろ帰る時間だと思って迎えに来たのよ……」

 

「気を使ってくれたのはありがとうだけど、勝手に学校の敷地に入ってくるのはダメだろ!?」

 

「だ、大丈夫よ。誰にもバレてないし……」

 

「今しがた俺のクラスメイトにバレてたんだけど!?」

 

 先ほどまでいた廊下へと振り返る。

 そこにはもう菜雪の姿はなかった……というか、

 

(朱坂のやつよく気づいたな……廊下からここまでこんなに離れてるのに、リナの特徴まで当ててたし……)

 

 

 

「……やっぱり君の知り合いだった?」

 

 

 

『――うひゃあっ!?』

 

 突然の声に抱きつく嵜渡とリナ。

 声の方を見ると、いつの間にか(・・・・・・)傍にまでやってきていた菜雪の姿があった。

 

「あ、朱坂……!? いつの間に――は、速すぎないか!?」

 

 今の菜雪は先ほど廊下で話していた時とは違う。

 ちゃんと外履きに履き替えていることからも、一度昇降口に行った後にここまで来た事がわかる。

 

「あんた嵜渡の近くにいた――って、いつの間に近づいて来たのよ!? 気配とか全く感じなかったんだけど……!」

 

 はぁ、と菜雪は息を吐きながら、

 

「二人とも静かにした方がいいよ。影宮くんはともかく、そっちの君は学校関係者じゃないんだからバレたらトラブルになりかねない」

 

 ハッ、とし二人は口を閉じる。

 

「私はこれを届けに来たの」

 

 菜雪の右手には嵜渡の外履きがあった。

 嵜渡が自分の両足を見ると、上履きが校庭の砂まみれになっていた。

 

「そうだった……俺、窓枠を飛び越えて走ってきたんだった」

 

「今からでもこれに履き替えて、上履きは砂を払って下駄箱に戻しておくから」

 

「本当に!? ありがとう、朱坂!」

 

 嵜渡が履き替えると、菜雪は上履きを持って二人に背中を向ける。

 

「……今時間、正門は下校中の生徒でいっぱいだから、こっそり抜けるなら裏門の方がバレないと思うよ。

 それじゃあまた明日ね、影宮くん」

 

 こっそりアドバイスを残し、菜雪はその場から去っていった。

 

「なんていうか……ミステリアスな子ね、あの子」

 

 頭脳明晰。抜群の身体能力。物静かなクールな性格。

 だが逆にそれが近寄りがたい雰囲気を出し、他の生徒からは『底が知れない』と噂されている。

 リナのミステリアスな子というのも間違いではない。

 けれど……嵜渡から言わせてもらえば、

 

「そうか? 俺はただ、優しい子だなって思ったけど」

 

 わざわざ下駄箱から外履きを持ってきてくれたり、今のような細かな気配りをしてくれるのもその証拠だ。

 

「……さてと、生徒がいない瞬間を見計らって裏門から出るぞ。

 そういえばお前、どうやって学校に入ってきたんだ?」

 

「どうやってって……」

 

 ――あれ。と、リナがある方向を指差す。

 

 

 

 ……そこには、明らかにこの学校には置かれていないバカでかい機械と、その横に山積みとなった砂や泥。

 …………機械の足元には、そのアホみたいな機械で掘り返されたのであろう、笑うしかないほどの巨大な穴が空いていた。

 

 

 

「…………………………………………なにこれ?」

 

「ふっふ~ん♪」

 

 横にいる犯人(確信)に問うと、何故か自信満々に胸を張って、

 

「どう? わたしこう見えてもミッドナイトでは『科学者』(けん)『発明家』でもあったのよ? ガラクタからでもこの程度は作れるわ!

 流石に学校の正面から入るのはダメだと思ったから/なに言ってんだコイツ?(あんたの家から地中を掘って来たの!)

 

「……………………リナ、耳貸せ」

 

 頭を抑えながら嵜渡はリナを呼ぶ。

 

「?」

 

 のそのそと近寄り、片耳を向けてくる。

 すぅー、と嵜渡は息を吸って、

 

          ◆

 

 

 

「こォんの――バカ怪人がァアアアアアアアアッッッッッ!!」

 

 

 

          ◆

 

 校庭のみならず校舎まで震わせるほどの激昂。

 それを間近で受けた“天才という名の(リナ)バカ”は白目を剥きながら地面にKOとなった。




朱坂(あかさか)菜雪(なゆき)

 嵜渡と同じ学校に通う中学二年生の少女。嵜渡のクラスメイトで隣の席。
 紫髪のショートヘアが特徴的で、学校の制服のブレザーを羽織ってはいるが、ブレザーのボタンは止めていない。

 一人称は『私』。
 二人称は『君』。

 性格は物静かなクールで、その性格が『頭脳明晰』や『高い身体能力』と合わさり近寄りがたい雰囲気を出してしまっているが、実際には心優しく他人に寄り添える女の子。

 ――この物語における、二人目のキーパーソン。


『リナ』

 天才(ガチ)だがちょっとバカ。

          ◆

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