Lantern & Cage   作:FOOO嘉

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四番隊

 

「だからよぉ〜〜!!ちんたら治療なんていらねぇって言ってんだろ」

「要りますよ。貴方ここに運ばれて来たたとき血塗れだったのを忘れたんですか?」

「んなもんもう治ってんだよ。なぁ」

「おお。いつまでもこんな退屈なところ居られるかよ。酒も無ぇし」

 

人の注意に聞く耳を持たず、がなり立てる隊士二人に溜め息が出る。

この手の輩は珍しくはない。

特に荒くれ者の多い十一番隊なら尚更。

というかガラの悪さならば群を抜いている。

喧嘩っ早く、荒くれ者だらけの十一番隊には 四番隊(ここ)の常連が多い。

ケガをするだけならばまだいい。いや良くはない。

彼らの性質が悪いのはケガが治っていないのに出て行こうとすること、退屈だとわめくこと、そして最悪の場合はこっそり持ち込んだ酒を飲んで暴れるのだ。

彼ら十一番隊が私達四番隊を馬鹿にしていることも彼らの増長を招く原因だとはわかっている。

護廷十三隊唯一の医療従事者による部隊。

救護、治療、補給に当たる職務内容を「雑用」と馬鹿にする輩が多いこともわかっている。

そのことはまぁ、噴飯ものだけれども、いい。

私達が十一番隊を考え無しに突っ込んでは怪我をするだけの猪と揶揄するのと同じだ。

その職務に就かずに離れたところで見ている者にはその職務の過酷さはわかりようもない。

ただ、許しがたいのは⋯

 

「つーかよ、四番隊があんまりゴチャゴチャうるせぇんだよ」

「生意気に俺らに説教垂れようっていうのか?あぁ?」

「いつも俺らの後ろに隠れてる雑魚共が随分偉そうによう。俺達は護廷十三隊最強の十一番隊だって知ってんだよな?」

「最強の更木隊に口答えしてるってわかってんのか?」

別にアンタは更木隊長じゃないだろ。

「テメェらは黙って包帯替えてりゃいいんだよ」

「俺らとやり合う度胸も無いくせに」

十一番隊の男達が顔を見合わせて哄笑する。

私はそっと拳を握り締める。

四番隊を雑用部隊と揶揄するのはいい。

包帯を替えるのも構わない。それが私達の仕事だ。

 

ただ、

 

ただ許しがたいのは、

 

彼らが私達を「弱者」と見下していることだ。

 

何も出来ない、盾突くことすら出来ないとコケおろしていることだ。

 

「貴方方は患者です。患者に手を挙げる医師も看護師もいません」

「ひゃははっ。そりゃあいい」

「じゃあ、そんな色気の無い恰好なんてしてねぇで、もっとそれらしい恰好してくれよ」

「だな。そうすりゃ大人しく治療を受ける気にもなるぜ」

「寧ろすぐに元気になるか」

「バァ〜カ。テメェどこ元気にするんだよ」

 

ゲラゲラと男達が下品に笑う。

足下に視線を落とす。

隊士に威圧されたからじゃない。

下卑た隊士の醜悪な笑みをこれ以上視界に収めたくなかったからだ。

この手の輩は珍しくはないと思ったが、今回は随分と性質が悪い。

 

酒は入っていないのなら、興奮剤でも打ったのかと問いたくなる。

本当に度し難い連中だ。

後方支援と言っても私達四番隊とて護廷十三隊隊士、戦えないはずがない。

それでも私達は仲間の怪我を直す職務に誇りを持っているし、傷ついた仲間達を再び戦地に送り返す業を背負っている。

 

だからこそ、四番隊で治療を受けている間は絶対に彼らを暴力に晒したくはないし、傷つけることなどしたくはない。

その矜持が四番隊隊士達にはある。

だからこそ、どれだけ暴言を吐かれても、殴られることがあっても決して手を上げないのだ。

 

けれど、時にその矜持も揺らぎそうになる。

 

「なぁ、どうだい。俺らと今から飲まねか?」

「お酌してくれよ」

 

何て下衆で下劣で醜悪なのだろうか。

 

「あんたよく見りゃ結構イケてるじゃねぇの」

「現世でナース服ってのがあるんだよ。知ってるか?へへ」

 

流魂街と変わらない。

自分が強いと、強いと勘違いしている連中ばかり。

 

「いいよな〜あれ。太ももぴっちりの短い丈の着物でよ」

「死覇装は色気が無ぇんだよな。四番隊の女はみんな死覇装の丈を膝上にってな」

 

こんな奴らを守る価値があるのか?

 

 

「いいねぇ。僕でよければお酌しようか?」

 

足元に向けていた視線を上げる。

 

「あぁぁっ!?男はお呼びじゃ⋯⋯ヒェッ!?」

「よ、よよよよよよよ、よ、よこ、横嶌四席!!」

 

男達の声が裏返る。

血の気が引くという言葉のお手本にしたくなる程、男達が顔色を真っ青にする。

ほどまでの威勢が何処へいったのか、男達は両手を付けて直立不動で脇に避ける。

男達が避けた先には、いかつい男達とはかけ離れたすらりとした男性が立っていた。

 

死覇装は乱れなく、少し長めの赤銅色の髪のその人の姿に、私の中にこみ上げていた怒りが霧散する。

 

「お疲れ様、咲良さん」

「い、いえ、横嶌四席こそどうしてこちらへ」

「通りかかったら大声が聞こえてね」

 

柔らかな声に、ようやく身体に纏っていた警戒の鎧を解く。

横嶌四席は鳶色の瞳を優しく細める。少し困った顔をするのがこの人の癖のようなものだと私は知っている。

つと私から視線を脇に退いた十一番隊の隊士達に向ける。その瞳は笑みの形のままなのに、瞳から放たれる圧力が一気に膨れ上がる。

 

「それで、随分と元気が有り余ってるようだね」

「えっと⋯へ、へへへ⋯いや、その」

「ま、まだ怪我が」

「いつも君たちの後ろに隠れてる雑魚では物足りないかもしれないけれど、僕で良ければどうだい?久しぶりに一緒に稽古でもするかい?」

「ひ、ヒィィィィーーー!!す、すすすす、すみません」

「し、失礼しました。そうですよね。何枠がってんでしょうね僕ら。ハイ、大人しく寝てま

す」

「謝る相手が違うんじゃないかい?」

 

すぐに地面を舐めるような勢いで頭を下げる隊士達を、笑顔そのままに四席が囁くように言う。

 

「「ヒィィィィィ〜〜!!!」」

 

青白いのを通り越して土気色に変わった隊士達は滝の様な汗をかいて私へと抉り込むように地に頭を擦り付けて土下座をして来たのは言うまでも無かった。

 

 

 




咲良 葵(さくら あおい)
四番隊五席
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