ゾルディック家のブラコン長男 作:見切り発車丸
推敲しようと見返す度に加筆をしてしまうから全然修正が追いついておらず……本当ありがたい_:(´ཀ`」 ∠):
評価・感想・お気に入りもありがとうございます。かなり励みになってます。
「なにかボクに出来ることがあれば何でも言ってね」
そんな風にクロウが言ってきたので、ルイは膝のうえにヒソカを乗せたまま念の修行をつけてほしいと頼んだ。
やはり渋い顔をするクロウ。だがルイはあと一押しだと思った。
「あの占い師、結構信頼してるんでしょ?」
「うん。信じて大丈夫だよ。
ボクは彼女にも、彼女のお姉さんにも本当に頭が上がらない。
彼女の占いのおかげで、色んな意味で救われたからね」
「そっか。
クロウの占いに仲間とともに戦力増強に努めよ、ってあったじゃん。あれって、このことだと思うんだよね」
これ、すなわちルイがクロウに念を教わる。
にっこりと微笑むルイとは対照的に、クロウは片眉だけを器用に上げて口の両端を下げた。
ヒソカは楽しげに「ぎゅーっ」と言いながらルイにひしっと抱きついている。我関せずである。
先ほどデリバリーしたマクド◯ルドのポテトをいまだに手に持ったままだ。食べないのにずっと握りしめている。
ちなみに2人分のデリバリーをしたが、ゲームの賭けの対象になっていたので、勝ったルイが2人分のハンバーガーを食べた。
あのとき途轍もなく恨めしい目でクロウから見られたが、賭けは賭けだ。
「……ボクのは我流だからオススメしないよ。
きちんとした師匠に習っているんだろう?」
「まあね。でも気が乗らないならアドバイスだけでもいいよ。
オレの師匠よりクロウのほうが強いし。
いま能力を考えてるんだけどさ、相談に乗ってくれない?」
「うーん……。ボクに聞くよりもっといい人はいるような気がするけど……まあ、キミがそれでいいなら」
含みのある視線で数秒見つめられる。
ルイが真っ向からクロウを見返していると、諦めたように視線を落とした。勝った!
ルイは言う。
「オレは念の修行こそしてたけど、能力を作ることは父親から禁止されてたんだ」
「その年で念を知ってるだけでも脅威だけどね。
じゃあ四大行は修めてるんだね。
ボクは具現化系だけど、キミは?」
あっさりと自分の念の系統を明かされて面食らった。
「易々と系統は教えちゃダメだとか、ってやつかい? その教えは正しいよ。
でもボクは戦闘向きの能力じゃないし、キミのことは信じると決めたからね。
もちろんこれから話すことはキミだから話すことであって、他言無用で頼むよ」
「オレ、自分の系統を知らないんだ」
「そうか。じゃあ水見式からしよう」
そう言ってテキパキと必要物資を準備するクロウ。
ルイはヒソカを抱っこしたまま待つ。
廊下に観葉植物があってよかったよ、と笑いながらクロウがコップに水を汲んで葉っぱを一枚乗せる。
「じゃあここに練をして。こっちにおいで、ヒソカ」
クロウがヒソカに向けて手を広げる。
「や!」
「ヒソカ……」
一言で拒絶し、ヒソカは再びぴったりとルイに張り付いた。
「このままで大丈夫だよ。コップに練をすればいいんだよね」
寂しげなクロウの視線を感じつつも、ポーカーフェイスで練をする。
すると、水の色が白く変わった。
同時にゆらりと動いた葉っぱが瞬く間にハンバーガーへと変化する。
「なんでハンバーガー?」
思わずルイは呟いた。
「さっき食べたからなのか……
それとも!
今!
ボクが!
強烈に食べたいと思っている気持ちが伝わったからか!」
まだ恨めしい顔してらぁ。
ルイはけたけた笑いながら「食べる?」と冗談で聞いてみた。
「……ふやけちゃってるよ。
あぁ……ボクが食べるはずだった月見バーガー……濡れてなかったら本当に食べたかった……」
残念そうにハンバーガーを取り上げるクロウ。
クロウはハンバーガーを片手に持ち、もう片方の手で人差し指を水に浸してぺろりと舐めた。
「甘いね。
水の色が変わるのは放出系、水の味が変わるのは変化系、水に不純物が現れるのは具現化系と言われているけれど、キミは特質系だね」
「ふうん。これは特質系になるんだ。
水見式ってわかりづらい方法だね」
見る人によっては違う判断になりそうだ。
他の人の水見式を見たことがないルイが素直な感想を口にすると、呆れたようにクロウが言う。
「世間一般ではそう困ることはないんだけどね。キミの場合が特殊すぎただけだよ」
そう言いつつ新しいコップに水を汲み、予備で置いていた葉っぱを浮かべてクロウが練をする。
かなりの量のオーラが注ぎ込まれ、コップの中にシンプルなボールペンが現れる。それだけだった。
「え? 地味……」
思わず溢れでたルイの小声にクロウがずっこけた。
「なんか傷つくなあ。こういうものなんだって。キミが特殊なんだって言ったろ?
それで、どんな能力にしたいんだい?」
「考えるなって言われていたから全然考えてないんだけど、イルミを助けられる能力にしたいとは思ってる」
「助けるって言うのは、どんな風に?
一言に助けると言っても、いろいろな方法がある。
敵から助けるもそうだし、怪我を治すのも助けることになるだろう。外的には見えない心が傷ついたのを救うことだって助けることになる」
そうクロウから言われ、確かになと考える。
敵から助ける、もちろんのことだ。
だけどルイが一番恐れているのは、死だ。
何度も夢に見て、心から恐れているのはイルミが目の前で死んでいくこと。べったりとした脂汗とともに嫌な目覚め方をするあの夢。
思い出すだけで心臓の拍動が乱れる。無意識にルイはぎゅっとヒソカを抱く手の力を強めた。
明らかに死にゆく怪我をしているイルミでも助けられるような、そんな能力を作ることは可能だろうか。
「怪我を治す能力が欲しい。瀕死の状態からでも蘇る、そんな能力が」
「なるほど。そもそも回復能力というのがレアだし、瀕死の状態を助けるとなるとかなり制約と誓約を厳しくしないと難しいかもしれないね」
そも、どうやって回復させるのか。
まずはそこからであった。
「一生付き合っていくことになる能力だからね。この場で決めない方がいい。じっくりと日をかけて考えよう。
念の修行でもしながらさ」
ルイの膝の上で大人しくしていたヒソカは、いつの間にかすっかり寝入ってしまっている。
ルイの胸に顔をべったりと押し付けて小さな寝息を立てている。
「本当キミってヒソカに好かれてるよね」
「そうかもね」
「ボクも早くマジックを極めてヒソカに尊敬されるんだ!」
握り拳を突き上げて宣言するクロウにルイは拍手で応援した。
「練習は順調なの?」
「そこそこ順調だよ。まあ、他にやることもないからね」
なるほど、順調。
ゴミ箱に捨てられているボロボロになったトランプは見ない振りをしてあげよう。
「さて、本題に戻ろうか。
ボクは具現化系の能力者だから、回復させるとなると薬や医者なんかを具現化することになるわけだ。
ボクのつ――恋人も特質系だったけど、彼女はかなり特殊な能力だったから、キミの参考にはならないと思う。だけど、特質系でありながら最も習得しづらい変化系の、オーラを変化させることも得意だったよ。
よくオーラを糸状に変化させていた」
こんな風にね、と指先から糸のように細いオーラを繰り出すクロウ。
「オーラに形質を持たせたり、炎や雷に変化させたりするのが変化系。
このタイプだと回復系の能力にするにはオーラを回復能力のあるなにかに変化させるとかかな。
例えばボクが知っているのは、オーラを特殊なローションに変化させて回復させる能力だね」
「なるほど……一口に回復と言っても、さまざまな方法があるんだな」
「そう。能力者の数だけ能力がある。全く同じ能力にはなり得ないんだ。
キミに相応しいキミだけの能力を作らないと、無駄に容量を消費して使えない能力ができてしまうことだってある。
キミの場合は特質系だから特に難しいね。
さて、考えるのは後回しにしよう。せっかくヒソカも眠ったところだし念の修行を始めようか。
念に関してはどうやらボクのほうが一日の長があるようだからね」
そんなこんなで、クロウから念能力の修行をつけてもらうことになった。毎日一緒にいるので、時間は不定で特訓した。
クロウはルイの念の師とはまた違った能力の鍛え方をしてくれた。
基礎はしっかりと出来ており、系統別の修行に入ったのだが、これが難航した。
何でもそこそこには出来てしまうので、底が見えないのだ。
具現化系と操作系の能力を引き出しやすいはずだが、もしかしたらそれぞれの能力を100%引き出せる能力かもしれない。クロウは呟いたが、ルイがクロウを見つめていることに気づくとすぐに、頭を振りつつすまない忘れてくれと言った。
憶測で修行をしてしまうのは勿体無い、と。
ルイの念能力の修行は着々と進んでいき、ヒソカは着々とルイに懐いていく。
しかしながら平和で楽しい日々は、少しずつ終わりへと近づいているのだった。