ゾルディック家のブラコン長男   作:見切り発車丸

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あけましておめでとうございます


天空闘技場編
天空闘技場01階


 

 

 パドギア共和国、東部の目玉といえば天空闘技場だ。

 

 格闘のメッカと呼ばれており、己の腕っぷしを試したい者はもちろんのこと、賭け事を楽しみたい者も集まる。

 

 ルイが到達するよう指示されたのは200階までだが、251階まであるという。

 

 200階以上はシステムががらりと変わるらしいが、詳細は登ってみてから確かめてくれと言われた。

 

 高さは991m、世界第4位の高さを誇るタワー状の建物。

 

 見た目はゴツゴツとした灰色の塔だ。

 

 タワーの途中途中におできのように突起状のリングが設置されている。

 外観に優れているとは言い難いので、機能性重視なのだろう。

 

 早速登録を済ませて、ルイはその日のうちに試合に臨むことにした。

 

 自身の番号は1992番だ。朝イチで(24時間営業のようだし、深夜0時だろうか)先頭に並んでいたら、1番だったのだろうか。

 

 それにしても午前中に訪れたというのに1992番とは恐れ入る。

 

 1階の試合が行われるリングはざっと見回して10個以上ある。

 

 ガヤガヤと人々の喧騒が耳にやかましく、情報過多に偏頭痛がする。

 

 ルイが身を置く世界は基本静かだ。大人数の人間はいない。

 

 任務で暗殺をするとき、家にいて修行するとき、それ以外は存在しないのがルイの日常だった。

 

 喧騒に紛れての任務はしていない。

 

 ルイは念こそ覚えているものの、まだ能力を作り出すことは許されていないため、請け負う任務の内容も昔からさほど変わっていない。

 

 夜闇のなかで静かに対象(一般人)を仕留める、比較的安全な任務だけだ。

 

 それも、暗殺者が殺した、と分からせるもの。

 

 暗殺したことさえ分からせない任務もあるのだ。

 

 シルバやマハがそういった任務を請け負っているのだが、どうやっているかの詳細は教えてもらえていない。

 

 かなり骨が折れる作業なうえに、バレないとも限らないとのことで、そういう条件付きの任務はべらぼうに法外の価格だ。

 暗殺に法律なんて関係ないけれど。

 

 

 ターゲットのいる施設のセキュリティが強化されたり、護衛がついている対象であったりと、難易度は地味に上がっているのだがルイからしてみれば誤差の範囲内だ。

 

 

 

 イルミが生まれてからはイルミにべったりと張り付いて、この可愛さを見せて回ろうと積極的に使用人とも関わりを持っているが、以前のルイは道端に落ちている石ころと同じ程度の興味しか使用人に対して抱いていなかった。

 

 人と関わり合うメリットを何一つとして見出せていなかったため、そうする必要などないと思っていた。

 そして、そうしていた。

 

 そんなボッチを貫いていたルイが人混みに慣れているはずがない。

 

 

 我慢できないほどではないが、喧騒はどうにもならない。

 

 ルイは珍しく覚える感覚に困惑しながらこめかみをさすった。

 

 自らに突き刺さる不躾な視線も、品なく飛び交うヤジも、肩が当たりそうなほどの人の多さも初めての経験であった。

 

 1階ということもあり、辺りは素人ばかりだ。

 

 ルイが殺そうと思えばあっという間にこのフロアの人間を殺し尽くすことができる。

 

 闘技場というから、そこそこ強い人間が集まってきているのかと思ったが、案外そうでもないらしい。

 

「1992番、2000番、Eのリングにあがってください」

 

 ルイがリングに向かって歩き出すと、まばらな観客のうちのうるさそうな男の集団が騒ぎだした。

 

「見ろよ! まーったガキが来てやがるぜ」

 

「さっきのガキはなかなかに強かったが、ありゃあな……お人形さん遊びでもしてそうにひょろっこいぞ。

 

 ここをお遊戯場とでも間違えてんじゃねえか?」

 

「ちげえねえ! ガハハハハハ」

 

「どっちに賭ける?」

 

「バカ言え。俺ァあの男だ。大穴なんざ狙わねぇぞ」

 

「俺もだ」

 

 ガハハハと盛り上がる集団を背に、ルイはリングに上がる。

 

 対戦相手の2000番は色黒の大男だ。

 

 モヒカン状の黒髪と、タラコ唇。

 テラテラとした布地のボクサーパンツだけを身につけており、そこそこに身体は鍛えられている。

 

 念は身につけてないようだ、と一目見て判断した。

 

 天空闘技場という名前だから、念使いもゴロゴロといるものだと思っていたが、ざっと見渡した限り職員も含めて念能力者はいないようだ。

 

 偽装しているのかもしれないけれど。

 

「この階では試合形式はありません。各々自らの力を示してください。

 それでは、レディ・ファイト」

 

 審判による簡素な説明とやる気のない掛け声で戦いの火蓋が落とされる。

 

 ルイは手刀で相手の意識を刈り取った。

 

 意識を失いバタン、と大きな身体がリングに叩きつけられて初めて、審判はようやく勝負あり、の宣言をする。

 

 自らの力を示すって、これでいいのだろうか。

 

 

「ウオオオオオォォォ、信じらんねえ! お前、見えたか?!」

 

「ありゃあ今のうちに唾つけとかねえとな。ボロ儲けできるぜ」

 

「あの大男を一瞬で……。

 さっきのガキといい、何が起きてんだ?」

 

 相変わらずやかましい外野とは裏腹に、静かな声色で「君は50階へ」とルイは審判に告げられた。

 

 1階から突然50階に進めるのか。

 

 これならばそれほど時間をかけずに200階まで到達できそうだ、とルイは安堵した。

 

 

 見られながら戦う、ということを経験しルイはほんのわずかに頰を紅潮させていた。

 

 なんだこれ。

 

 チョー気持ちいい。

 

 

 




北島康介いただきましたー
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