とある稲妻の呪術廻戦   作:ネシエル

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第六話  防衛

高専校門

 

「ぼ、僕ですか?」

 

守柄が戸惑いながら問いかける。

それに対し、八重桜は微笑みながら答えた。

 

「そうよ、七葉守柄。

一般家庭の出身にもかかわらず、特級呪霊・丹羽久秀を従え、

国家転覆すら可能にする“特級被呪者”。

裏社会では、あなたのことで持ちきりよ。」

 

守柄は頬を掻きながら、

少し照れくさそうに笑った。

 

「そ、そうですか……えへへ……」

 

「なに笑ってるのよ!」

 

沙良がすかさずツッコミを入れる。

 

八重桜はくすりと笑い、続けた。

 

「ふん、“悪鬼現象”と“特級被呪者”……

今年の一年生は豊作ね。」

 

 

彼女は、眞に向かって尋ねる。

「そうだ、眞。

影はどう?元気にしてる?」

 

 

 

 

 

 

〇影「!!」

 

 

 

 

 

眞は腕を組みながら、

余裕のある笑みを見せた。

 

「影は元気にしてるよ。

それで、何?

桜、大層な格好をしてきて、ただの挨拶か?」

 

桜は微笑んだまま、一歩前に出る。

そして――

気がつけば、彼女はすでに守柄の目の前にいた。

 

「!? い、いつの間に――?」

 

守柄の目が驚きに見開かれる。

八重桜は、優雅な動作で守柄の手を取る。

 

「改めて、自己紹介を。私は八重桜。

七葉守柄さん、あなた――

“新世界”に興味はないかしら?」

 

守柄は眉をひそめた。

 

「し、新世界……?」

 

「ええ、新世界よ。」

 

八重桜は穏やかに微笑んだ。

その様子を見て、眞は桜の手を払いのける。

 

「やめろ、桜。

これ以上、私の後輩に怪しいものを売り込むな。」

 

桜は肩をすくめる。

 

「そこらの悪徳宗教法人と一緒にしないでくれる?

詐欺しかできない凡夫とは違って、私は本気なの。」

 

 

「新世界って……何ですか?」

 

守柄が警戒しながら尋ねると、

八重桜は少し楽しげに答えた。

 

「簡単に言えば、呪霊のない世界のことよ。」

 

一瞬、守柄の目が揺れる。

 

八重桜は続けた。

 

「あなた、呪霊がどうやって発生するのか知ってる?」

 

「確か……人間の負の感情から生まれるんですよね?」

 

八重桜は小さく笑い、首を振る。

 

「厳密に言えば、呪力を制御できない

“非術師”から放たれる呪力によって生み出されるの。

呪力を操作できる呪術師は、己の呪力を完全にコントロールしている。

だから、呪霊を生み出すことはない。

今、稲妻幕府がやっていることは、結局“焼け石に水”よ。

呪霊を討伐すれば、被害は一時的に食い止められるけど――

それはあくまで短期的な話。」

呪霊が生まれる原因を根本から解決しなければ、本当の意味での平和は訪れない。

つまり――

全ての非術師を皆殺しにすれば、

理論上、呪霊の発生を完全に食い止めることができる。」

 

 

 

 

守柄の表情が凍りついた。

 

「そ、そんなこと……できるわけないだろう!!」

 

横で話を聞いていた沙良が、

怒りの表情を浮かべる。

 

「そうだぞ!

非術師の割合は稲妻の人口の95%よ!?

貴様は、その人たちに死ねと言うの!?」

 

八重桜は静かに頷いた。

 

「そうよ。

逆に考えて?

95%さえ殺せば、呪霊はもういなくなる。

稲妻は、今後二度と呪霊に悩まされることはなくなる。

愛する人が、わけのわからない死に怯えることもない。

理不尽な死に遭うこともない。

幸福な世界が、私たちを待っている。」

 

 

八重桜の瞳が静かに光る。

 

 

「どう、七葉守柄?

素晴らしいことじゃないかしら?」

 

「そこまでだ、桜。」

 

眞の声が響く。

 

「君の考えは、あまりにも危険すぎる。」

 

しかし、八重桜は眞には目もくれず――

守柄だけを見つめた。

 

「眞、あなたには聞いていない。

私は、彼に聞いているのよ。」

 

沈黙が訪れる。

やがて――

守柄は、静かに口を開いた。

 

「……わかりません。

正直に言って、“新世界”やら、あなたのことはよくわかりませんが――

僕の父と母は非術師です。

僕は非術者だけでなく、みんなに救われてほしいです。

ですので、あなたの話には乗りません。」

 

 

八重桜の表情が僅かに変わる。

そして――

小さく微笑んだ。

 

「そっか。気分を悪くしてしまって、ごめんなさいね。

――じゃあ、これで。」

 

「逃がすか!」

 

沙良が八重桜に向かって踏み込んだ――

だが、桜の姿は消えた。

沙良の目が見開かれる。

 

「……幻影!! だから将軍様は放置したのか!?」

 

守柄に触れた時も、眞は何も反応しなかった。

――なぜなら、最初から“実体”など存在していなかったのだから。

その時――

どこからともなく、桜の声が響いた。

 

『これより、一週間後。』

 

 

 

 

『我々は――

“百鬼夜行”を行う。』

 

 

 

 

 

『場所は、稲妻の首都・東京。

そして、皇族が住まう呪術の聖地・京都。』

 

 

 

 

 

 

『それぞれに、2000体もの呪霊を解き放つ。』

 

 

 

守柄の背筋に冷たいものが走る。

桜の姿はすでにない。

しかし、彼女の声だけが響き続ける。

 

 

 

 

 

『互いに存分に呪い合おう。』

 

 

 

 

『眞』

 

 

 

 

 

『次に会った時――

共に、新世界を見ようじゃないか。』

 

 

 

▲▲▲

 

〇人々の反応

 

一般市民A

「な、何だ……話についていけないんだが。」

 

一般市民B

「稲妻の全人口の95%を殺すだと!? 正気じゃない!」

 

一般市民C

「ふん、最初からまともな世界観じゃないとは思っていたが……

これは、もっとヤバいな。」

 

 

一般市民D

「き、急展開すぎる……!

あと、“百鬼夜行”とか“東京”とか、一体何なんだ!?

皇室とかもいるし、将軍様とも何か関係があるのか?

作中の“将軍様”は普通の人間みたいだし……

もしかして、雷電家とかあるのか?」

 

 

▲▲▲

 

 

和室

 

雷電眞は静かに襖を開き、中へと入った。

 

玄関で靴を脱ぎ、奥の和室へと向かう。

 

そこには、彼女の帰りを待っていた

雷電影の姿があった。

 

「お帰り、姉さん。」

 

雷電影――眞の双子の妹。

彼女もまた、眞と同じく長く美しい紫色に帯びた黒髪を持ち、

その身体は女性らしく豊満で、優雅な佇まいをしている。

ただし、その瞳には姉とは異なる冷たさが宿っていた。

 

「うん、ただいま。」

 

眞は軽く手を上げながらリビングへと入り、

座敷に腰を下ろす。

 

「お腹すいたよ。今日のご飯はなに?」

 

 

彼女が軽く冗談交じりに尋ねたその瞬間――

影の表情が僅かに引き締まった。

 

 

「眞。それよりも、桜が現れたのは本当?」

 

 

眞は手を止める。

 

「……うん。本当よ。

最後に会ったのは、一年前だったけ?」

 

 

「八重桜――

非術者を数百人も殺害し、幕府から追放された大罪人。

なぜ今更、帰ってきたのですか? しかも、“百鬼夜行”なんて起こして。」

 

 

 

眞は出されたお茶を一口飲み、軽く肩をすくめる。

 

 

 

「さ、さあ。

もしかして、影が作るご飯が恋しくなったとか?」

 

その言葉に、影の眉が微かに動いた。

 

「冗談は止してください、姉さん。」

 

その声には、僅かに怒気が滲んでいた。

 

「裏切り者は、何度でも裏切る。

そんなことは常識です

姉さんは――もしかして、桜が帰ってくることを願っているの?」

 

 

 

眞は慌てて首を振った。

 

「べ、別に、そんなことはないよ。」

 

影はしばらく眞の表情をじっと見つめていたが、

やがて静かに息を吐いた。

 

「……わかりました。

それで? 防衛の話はどうなりましたか?」

 

眞は神妙な面持ちで答える。

 

 

「雷電家は東京を守護することなり、

京都の方は皇室が担当することになったわ。」

 

 

「ほう……」

 

影の口元に、皮肉げな笑みが浮かぶ。

 

 

「あの皇室が? 普段は雷電家に嫌がらせばかりしているくせに――

今回は本気を出すのですか?

かつて、一臣下でしかなかった雷電家に相当な恨みを抱いている“あの皇室”が?」

 

 

 

「影、あんまりそういうことを言わないで。」

 

眞は軽く眉をひそめ、妹をたしなめる。

しかし、影は肩をすくめて続ける。

 

「別にいいでしょう?

誰も聞いていないし。

何の取柄もなく、

神の血を引いているだけで

威張っている凡夫を笑わないほうがおかしいでしょう?」

 

眞は小さく息を吐く。

 

「……雷電家も、神の血を引いているよ。」

 

「ああ、そうでしたね。

忘れました」

 




次回投稿2/11

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