とある稲妻の呪術廻戦   作:ネシエル

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第七話 憧れ

布団の中。

雷電眞は布団の中に入り、

かつての友との思い出を思い出す。

 

 

「いいかい、眞。

呪術師は非術者を守るために力を使うのよ」

 

「知っている。

何度も言わなくてもいいのよ。」

 

雷電眞は、呆れたように肩をすくめながら答えた。

 

「耳にタコができるわ。」

 

「だって、

あんたが忘れてしまうのが怖いもん。」

 

八重桜はふっと微笑みながら言う。

だが――

眞は眉をひそめ、その口調に嫌悪を滲ませた。

 

「その口調をやめろ。気持ち悪い。」

 

「……何だと?」

 

「やるのか? 眞ちゃんは容赦しないぜ?」

 

静かに張り詰める空気。

一瞬の沈黙の後、二人は笑った。

昔は、ただの悪ふざけだった。

だが、今は違う

 

 

 

 

 

▲▲▲

 

 

「ねえ、どういうことだよ、桜。

ちゃんと説明して。」

 

 

 

眞の声は震えていた。

血の殷に勝ち、雷電将軍として承認される前日――

 

 

彼女のもとに飛び込んできたのは、速報。

八重桜による、非術者の大量殺戮。

急いで八重桜が行っている任務の居場所へ向かった。

 

そこには

――無数の死。

――焼け爛れた町並み。

――呪霊すらも沈黙する圧倒的な殺意。

 

 

血の池地獄に

その中心に、桜がいた。

 

血で汚れた制服。

美しかった髪も血によって赤く穢れてしまった。

 

 

「狐斎宮から聞いているだろう。」

 

桜は冷静に言った。

 

「それ以上でも、それ以下でもないわ。

呪霊のいない世界を作るためには――

呪霊を生み出す元凶である非術者を皆殺しにすることが、一番手っ取り早いのよ。」

 

 

「……そのために、無垢な民を殺すのか?」

 

眞の手は震えていた。

桜はその言葉に、鼻で笑った。

 

 

 

 

「無垢……? おかしいわね。

元を辿れば、呪霊を生み出したのは誰だ。

私たちの仲間を殺した原因は誰だ。

もう、うんざりだ。

私たち呪術師が、彼らの尻拭いだけをしている。

無知で、無能で。

それでいて、自ら生み出したものに何の責任も持たない。

この治療はまさに焼け石に水だ。

もっと根本的な治療が必要だ。

私はね――もう、疲れたのさ。」

 

 

 

 

 

桜の声は静かだった。

静かすぎて、眞は逆にぞくりとした。

 

 

桜は眞の目を見詰める

 

 

 

 

「眞、私の頭はもうおかしくなったのよ。」

 

 

 

 

「……だとしても、非術者を皆殺しにできるわけがない。

今ならまだ間に合う。

私が責任を取る。

処刑もさせない。

あと3日もあれば、全てが解決する」

 

 

 

雷電将軍という地位さえ手に入れば、

全ては解決できる。

 

 

眞は、必死に言葉を繋ぐ。

しかし――

桜はふっと微笑み、言った。

 

 

 

「傲慢だね。」

 

 

 

「……はあ?」

 

 

 

眞は眉をひそめる。

 

 

「君たちならできるでしょう?」

 

 

「雷電眞。雷電影。

あなたたち姉妹は、いつだってそうだ。」

 

 

「自分にできることを、他人には“できない”と言い聞かせる。」

 

 

「影の力さえ使えば、将軍の座も簡単に手に入るのに

この国――いや、この世界を思いのままに動かせるのに。」

 

 

「なぜ、そうしない?」

 

 

眞は言葉を失った。

何かを言おうとした――

けれど、言葉にならなかった。

 

 

「ねえ、眞。」

 

 

桜は優しく問いかける。

 

 

 

「あなたたち姉妹は、“雷電将軍だから”最強なの?」

 

 

「それとも――」

 

 

「最強だから、“雷電将軍”なの?」

 

 

眞は拳を握りしめた。

 

 

「……何が言いたい?」

 

 

桜は小さく笑う。

 

 

「いや……もし私も“雷電将軍”になれていたら、

こんな馬鹿げた理想に取りつかれることもなかったのに。」

 

 

「……」

 

 

「じゃあな、眞。」

 

 

桜は静かに背を向けた。

 

 

「生き方は決めた。」

 

 

「後は凡夫らしく、足掻いてみせるさ。」

 

 

眞の目が見開かれる。

 

 

「!!」

「殺したければ、殺せ。」

 

 

桜は振り返らずに、言った。

 

 

「そこには、必ず意味がある。」

 

 

 

 

 

 

 

もっと早くに気づけばよかった。

“純粋”は善ではない。

純粋とは、

気のままに善になり、

気のままに悪を楽しむもの。

善にも悪にも、

どちらにも簡単に染まる、

真っ白な水。

八重桜は――

誰よりも優しく、

誰よりも純粋だったからこそ、

――悪に堕ちたのだ。

 

 

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

人々の反応

 

 

 

一般市民A

「……分かるわ。」

 

 

 

 

 

 

もし自分も“雷電将軍”になれたら、どんなことができただろう。

 

人は平等じゃない。

生まれながらにして、優越がある。

凡人と天才。

人と神。

 

“雷電将軍になりたい”って願う者は少なくない。

でなければ、“転生したら雷電将軍になった”

なんてふざけた小説も生まれなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

一般市民B

「……心にくるな。」

 

 

 

 

▲▲▲

 

 

八重桜の思想について

 

 

 

 

 

一般市民C

「……一理あるな。」

 

一般市民D

「いやいや、それでもダメだろう!

大量虐殺なんて、どんな理屈があっても許されるわけがない!」

 

一般市民C

「……呪霊が人間の負の感情から生まれるなら、

その原因を断つ、って考え自体は理解できる。」

 

「でも、それを実行しようとするなんて……

昔の八重宮司は“弱者救済”の考えを持っていたはず。

一体何があったんだ?」

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

雷電将軍の存在について

 

 

雷電将軍に憧れる者

「雷電将軍だから最強なのか、

それとも、最強だから“雷電将軍”なのか。」

 

「この問いを考えた人は、鋭いな。」

 

「雷電将軍だから最強になれたわけじゃない。

最強=雷電将軍であるなら、

生まれながらにして最強でなければならない。」

 

「最強とは、“与えられた称号”ではなく、

“絶対的な力”によって証明されるものだ。」

 

 

▲▲▲

 

 

 

桜はふっと微笑み、言った。

 

「傲慢だね。」

 

影「!!」

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

 

「……はあ?」

 

眞は眉をひそめる。

 

「君たちならできるでしょう?」

 

「雷電眞。雷電影。」

 

 

 

 

▲▲▲

 

影「!?」

 

▲▲▲

 

「あなたたち姉妹は、いつだってそうだ。」

 

「自分にできることを、他人には“できない”と言い聞かせる。」

 

「影の力さえ使えば、将軍の座も簡単に手に入るのに

この国――いや、この世界を思いのままに動かせるのに。」

 

 

 

▲▲▲

 

影『……これは、私への言葉なのか?』

 

アニメなど、娯楽小説と同じ。

所詮は空想の物語に過ぎない――そう思っていた。

 

しかし、画面の中のキャラクターが語る言葉、

その悲しみ、葛藤。

 

そして何より――

八重桜の声が、雷電影の心に突き刺さる。

 

▲▲▲

 

「あなたたち姉妹は、“雷電将軍だから”最強なの?」

 

「それとも――」

 

「最強だから、“雷電将軍”なの?」

 

▲▲▲

 

影『……』

 

答えは決まっている。

 

――雷電将軍だから最強になれた。

 

生まれながらにして神。

しかし、それだけでは凄惨な魔神戦争には勝てなかった。

 

持ち前の知識、技術、能力をすべて駆使し、

雷電家は稲妻を勝利へと導いた。

 

だが――

 

それもすべて“天理”の思惑。

決められた道標の上を歩いただけならば――

 

「最強だから雷電将軍なのか?」

 

この問いの重みが、彼女の胸に響く。

 

それはまるで、自身を糾弾する言葉のように。

 

娯楽小説ですら感じなかったものを、

声と動きのついた“アニメ”によって揺さぶられるとは。

 

 

 

▲▲▲

 

「いや……もし私も“雷電将軍”になれていたら、

こんな馬鹿げた理想に取りつかれることもなかったのに。」

 

▲▲▲

 

 

 

影「はっ!」

 

思わず、横にいた八重神子の方を振り向いてしまう。

 

八重神子「どうしたのだ?」

 

影は、僅かに唇を噛む。

 

「……いえ、何でもありません。」

 

神子はどう思っているのだろう。

 

神と妖怪。

 

生まれながらにして、実力の差があった。

それを神子も認め、付き従ってくれた。

 

彼女は、影を信じてくれた。

 

狐斎宮も、御輿千代も、笹百合も。

 

そして、自身の姉。

雷電眞も

 

では――もし。

 

もし、彼女たちが「雷電影になりたかった」と願っていたら?

 

雷電影に憧れていたら?

 

八重桜のように、何かを望みながら届かず、

憎しみに飲み込まれていたのかもしれない――

 

嫉妬という感情が・・・

 

だからこそ、

 

八重桜の声を、無視することはできなかった。

 

▲▲▲

 

八重神子『……真面目だな。』

 

影「……」

 

静かに、影は目を伏せた。

 

八重神子『八重桜といい、この小娘。

     あの天狗娘より厄介だのう。

     真面目過ぎる』

 




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