とある稲妻の呪術廻戦 作:ネシエル
〇高専内部
七葉守柄は、九条沙良をしっかりと抱えながら、
高専の内部を駆け抜けた。
背後からは、無数の呪霊たちが迫ってくる。
「……っ!」
呼吸を整えながら、守柄は冷静に状況を分析した。
黒い赤ん坊のような呪霊、ムカデのように異形、
そして頭のない人間の姿をした不気味な呪霊たち――
それらが一斉に群がってくる。
「丹羽!」
「GOOOOOOO――!!」
咆哮と共に、爆音が巻き起こる。
全長5メートルもの赤き鎧武者――特級変異呪霊、丹羽久秀が顕現した。
その雄叫びが轟いた瞬間、空間が震え、
衝撃波と共に呪霊たちが爆散した。
守柄はそれを見届けると、塔の影に身を寄せ、
慎重に九条沙良を横たえた。
額に滲んだ汗を拭い、反転術式を発動する。
「……くっ、頼む……!」
青白い光が守柄の手から放たれ、傷を負った沙良の体を覆う。
呪力をぶつけ、正のエネルギーへと変換する反転術式――
本来、扱うには膨大な呪力と高度な技術が必要な術を、
守柄はわずか半年で習得していた。
――その光景を、八重桜は物陰からじっと見つめていた。
『反転術式。
呪力をぶつけて、正のエネルギーを生み出す高等技術。
たった半年で習得したのか』
治癒をする間も八重は攻撃する。
虫のような呪霊、ムカデのような呪霊、
頭の無い人間のような呪霊。
塔の周囲には奇奇怪怪の呪霊たちが囲み
守柄に襲い掛かる。
最初にムカデのような異形が守柄の足元に忍び寄り、
鋭い牙を剥き出しにする。
――だが、その攻撃が届くことはなかった。
「GUUPPOOOOO!!」
丹羽久秀が腕を振るう。
ただ、それだけの動作だった。
だが、その一撃は大気を引き裂き、暴風を生み出し、
呪霊たちは塵となって消し飛んだ。
八重桜はその光景を見届けると、小さく呟く。
「やはり、丹羽久秀の正体は強力無比。
底無しの呪力の塊。」
彼女の指がゆっくりと宙をなぞる。
その所作は、何かを掴み取るような動きだった。
「……ぜひ、手に入れたい。」
八重桜の生得術式――呪霊操術。
調伏した呪霊を球状に圧縮し、
体内に取り込むことで自在に操る術。
階級換算で自身よりも二級下の呪霊であれば、
調伏無しで強制的に取り込める。
さらに、格上の呪霊であっても、
弱らせれば支配することが可能となる。
彼女は、今まさに目の前にいる
「特級変異呪霊」――丹羽久秀を
取り込むことを目論んでいた。
だが――
「それがどうした。」
守柄が塔から飛び降り、
冷ややかに言い放った。
「丹羽が強くても、お前自身が弱ければ意味がないだろう。」
腰に下げていた刀を抜く。
この刀は、かつて九条沙良から手渡されたものだった。
鋭い刃に呪力を纏わせ、構えを取る。
八重桜は守柄を見つめ、ふっと微笑んだ。
「さあ、それはどうかな。」
刹那、桜の指が腰に指した刀の柄へと伸びる。
その動きは、舞のように滑らかで、一分の隙もない。
「抜刀」
瞬間、刀が抜かれると同時に、空間そのものが歪んだ。
シュン――
守柄の眼前に、見えない刃が疾駆する。
「なっ――!?」
横によけると
ズバァァァァ!!
ほんの一瞬前まで守柄が立っていた場所――
そこには巨大な斬撃跡が刻まれていた。
「有象無象はもう役には立たん。」
腰から抜いた桜色の刀を構え、
静かに告げる八重桜。
その佇まいはまさに剣鬼の如く、
己の術と剣技に絶対の自信を持つ者のそれだった。
「ここからは、直に戦おうじゃないか。」
▲▲▲
一般市民A『おいおい、なんだよこれ……
呪霊を操ると思ったら、いきなりバチバチの剣術勝負始めてんだけど?』
一般市民B『遠距離から呪霊を使役して戦うもんじゃないのか?
しかも、普通に強いし!』
一般市民C『最初から殴り合ったほうがよかったのでは……。』
一般市民D『呪霊操るやつってもっと後ろでドヤ顔してるイメージだったんだけど……
まさか、ゴリゴリの剣士だったとはな……』
団子を売る人『呪術師って何だろう……。いや、よくよく考えたら、みんな肉弾戦をしているじゃないか。』
雷電将軍に憧れている人『呪術師の固定概念を崩しているな。
それにしても、八重桜の細見の体でどこから
このバカ力を発揮しているのか。』
パイモ『「えっ、呪霊使いって後ろで『やれ!』とか言って操るものじゃないの!?
なんで自分からガンガン前に出て戦ってるの!?』
旅人『完全に前線に立ってるな。むしろ呪霊を補助に使うタイプか?』
八重神子『これは妾も予想外じゃのう。
それにしてもこの作品に登場する呪術師たちはみんなこんなものか。
妾の知っている呪術師は肉弾戦せんし。
ふむ、固定概念を捨てて新しいジャンルを確立させる。
妾も剣道をやってみようか。』
▲▲▲
決戦の刻
白刃が交錯し、鉄の火花が散る。
雷鳴のように響く剣戟の音が、
静寂に包まれた戦場に轟いた。
「はあああ!」
七葉守柄は怒りと共に斬りかかる。
全身に呪力を込め、斬撃に乗せる。
だが、その刃は八重桜の刀に軽々と受け止められた。
「ダメだよ、そんなに呪いを込めちゃ。
武器が壊れてしまう」
八重桜は軽やかに言い放ち、守柄の刀を弾く。
「眞に教わっていないのか?」
「……ねぇよ」
守柄は忌々しげに呟いた。
「そうか」
その瞬間、八重桜の背後に黒い影が立ち上がる。
鎧を纏い、蒼炎を背負う巨躯――特級変異呪霊・丹羽久秀。
「GUUUUUOOOOO!」
咆哮と共に、丹羽の拳が振り下ろされる。
八重桜は身を翻し、紙一重でそれを避けた。
しかし、その余波だけで地面が砕け、衝撃波が辺りを吹き飛ばした。
「おっと……さすがに今のは危なかったぞ」
八重桜は笑みを浮かべながら、刀を構える。
「そうかよ」
守柄は歯を食いしばる。丹羽と二人がかりで攻め立てるも、
八重桜は軽やかにいなし続ける。
まるで舞うような足捌き、刃の流れに無駄はない。
「殺す……絶対に殺す……」
怒りを滲ませながら守柄が呟くと、八重桜は肩をすくめた。
「殺すとか言うなよ。呪いが分散してしまう」
「黙れ!」
激昂した守柄が突進する。
だが、その刃はまたも八重桜に受け止められる。
「はぁ……こんな奴が特級になれるとはね。眞は見る目がないな」
八重桜は静かに告げた。
「あいつはいつもそうだ。誰かに優しい言葉を注ぎ、誰かを認める。
でも、結局は自分が上にいると見下しているのさ」
「黙れ!! 将軍様はそんな人じゃない!」
守柄は叫んだ。
「僕を認めてくれた。あの人は誰よりも優しいんだ!
君だって、そう言っていたじゃないか!」
「傲慢だね」
「……何?」
「人が神を理解できるというのか。
元親友だった私にすら分からなかったのに、
君には分かると言うのか? 出会って半年もたたない君に?」
守柄の呼吸が一瞬止まる。
「いいか、雷電将軍は最強だ」
八重桜は静かに語り始めた。その声には嘲笑も軽蔑もない。
ただ淡々と、事実を告げるように。
「それが彼女たちを表すのにぴったりの言葉だ。
特級の中でも、あいつは群を抜いていた。
あいつと同じ階級に入れば、
同じ力を持っていると錯覚されられる。
私もそうだった。
ずっと、あいつの隣に立てると思っていた。
だが、それは違った。
私が眞に合わせていたのではない――眞が私に合わせていたんだ
眞が私と同じ特級という分類に入っているのは
“特級以上”の階級が存在しないからだ」
その言葉の意味に、守柄の心臓が強く跳ねる。
「そのとき、やっと気づいたのさ。あいつは生まれながらにして最強だった。私は、生まれながらにして凡人だった」
八重桜はまるで悟ったように微笑んだ。
「……ペラペラとよく喋るな。遺言か?」
「遺言? いや、ただの確認さ」
八重桜は刀をゆっくりと掲げた。
「あいつはね、最初から最強だった。
人間ではない。神だ。――人間はどうやって神になれるのか?」
その言葉に、守柄の拳が震えた。
「うるさいな。結局、お前は何が言いたい?」
「まだ、わからないのか」
八重桜は一歩、後ろへ下がる。
「……もういい、所詮カエルの子。眞は最強だ。
七葉守柄、君は眞の足元にも及ばない」
守柄はぐっと奥歯を噛んだ。
「もちろん、私にもだ」
八重桜の言葉が響くと同時に、彼女の背後に黒い影が広がった。
「決着をつけよう、七葉守柄」
暗闇の奥から、巨大な何かが姿を現した。
「出し惜しみはしない」
八重桜の声が静かに響く。
「私の術式は、ただ呪霊を操るだけではない。
呪霊同士を融合し、新たな呪霊を生み出すことができる」
影の奥から、禍々しい黄金の光が漏れた。
「呪霊操術【極ノ番】――」
闇の中から這い出る巨大な獣。白金の毛並み、天を裂くように揺れる九本の尾。
「白面金毛九尾の狐」
その姿を見た瞬間、守柄の心臓は凍りついた。
「じゃあな、七葉守柄。
君に会えてよかった。君の友人は私が大事に使うから」
それを聞いた、
七葉守柄は怒ることも泣くこともなかった。
ただ真顔で隣にいる丹羽へ声を掛けた。
「丹羽」
蒼炎を纏う鎧武者がゆっくりと守柄を見下ろした。
「なんだ」
守柄はその巨躯を抱きしめた。
「信じてくれて、ありがとう」
丹羽は黙ってその言葉を聞く。
「守ってくれて、ありがとう。僕の友達になってくれて、ありがとう」
守柄の声が震える。「だから、今度は僕が君を守りたい。……最後に、もう一度だけ力を貸してくれないか」
その瞬間――
丹羽の鎧が砕け散った。
下から現れたのは、醜くも神々しい異形の体。歪んだ肉が脈打ち、蒼炎が燃え上がる。
「GOOOOOOOOOOOOO!!!」
轟音が響き渡る。
『呪力を完全開放……!』
八重桜は目を見開く。
『私の捨てた友情で、私に勝つ気なのか……!?』
「そんなもの、認めるか!!」
白面金毛九尾の狐が口を開く。灼熱の呪力が収束し、光の奔流が生まれる。
同じく、丹羽の口からも眩い光が放たれる。
――そして、世界が閃光に包まれた。
「じゃあな、丹羽」
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☆10 tako09
☆9 コシヒカリR 痺憧(梅茶漬け) ヨシハラカイト ロコン グルッペン閣下 みつばち
☆8 金持ちになりたい
☆7
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☆5 懐古蟲
☆4
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☆2 2000
☆1 Fふみさん しのびん
☆0
懐古蟲さん、2000さん、Fふみさん
投稿ありがとうございます。
とても嬉しいです。
KAZU.meさん
感想ありがとうございます。
返信したので読んでみてください
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