とある稲妻の呪術廻戦   作:ネシエル

3 / 20
第三話 稲妻

鳴神神社

 

 

八重神子とアレクは、神社の内部の襖を挟み向かい合っていた。

 

二人とも言葉を発することなく、静寂だけがその場を支配している。

 

 

アレクは心の中でつぶやいた。

『重い、空気が重い……』

 

 

 

額にはじわりと汗がにじむ。

 

純水精霊である彼女には、

本来汗をかく機能など存在しないはずだった。

 

しかし、極度の緊張感に包まれた彼女の身体は、

残された人間的本能を呼び起こし、

無意識のうちに汗を流してしまっていた。

 

『あ……これ、社長に問い詰められたときと同じだ……

どうしてこうなったんだ……』

 

 

 

 その答えは、三時間前に遡る――。

 

 

▲▲▲

 

 

三時間前、稲妻城下町

 

 空から降り注ぐ太陽の光を浴びながら、

アレクはバックを背負い、

城下町の賑やかな通りを歩いていた。

 

 

「人がいっぱいだな……」

 

 

 人混みを避けながら進むアレクの耳に、

バックの中からティティの声が響く。

 

『まあ、そうだろうな。鎖国が解け、

外航が復活したのだ。浮かれるのも無理はない』

 

 姿を現さないティティは、

アレクの頭の中で話しかけていた。

 

『あんたは見なくてもいいのか?』

 

『私が何だと思っている? 神の中の神。

そなたの視界を共有するのだって雑作がない。

貴様はただ前を向いて歩いていればいいのだ』

 

 

 アレクはティティとの会話を続けながら、

城下町の道を進む。

 

『そんなに文句を言うなら、バックから出てきて自分で見てみろよ』

 

『ダメだ。私の正体をバラすわけにはいかない。

私に繋がる一切の手掛かりを残してはならんのだ』

 

『じゃあ、最初から家に残ってればいいだろ?

うん!?』

 

 

 アレクは突然物陰に隠れると、ひそひそと顔を出して様子を窺った。

 その目線の先には、一人の金髪の美少女と白髪で宙に浮かぶ幼女――。

 

「旅人だ……!」

 

 アレクの瞳は輝き、憧れの眼差しで彼女――

旅人を見つめていた。

 

 

▲▲▲

 

旅人

 

『原神』におけるプレイヤー分身の主人公で、

数多の世界を渡り歩き旅をしていたという

謎の双子の兄妹。

 

 

幻想世界「テイワット」を訪れ去ろうとした際に、

突如見知らぬ存在の襲撃を受け、

妹の蛍・兄の空共々力を封印されて長き眠りにつくことになる。

 

目覚めた現在は離れ離れになってしまい、

主人公となる方は片割れとの再会を目指して、

パイモンと共に大陸の七柱の神の元を巡る旅へと踏み出した。

 

 

このとき、プレイヤーは旅人の片割れを選択でき、

男の子と女の子を選択、

選択されたものが主人公となり、もう一方の片割れはストーリーで探す。

双子の兄弟となる。

 

アレクは選んだのは当然、女主人公。

蛍。

 

理由はかわいいから。

 

▲▲▲

 

 

 

 アレクは椅子に座り、

ラーメンを啜っていた。

 

『・・・・・・・・

うまい……純水精霊になってから、水の味がよく分かるようになった気がする』

 

 ティティの声が脳内に響く。

 

『おい』

 

『なんだよ』

 

『旅人に会わなくていいのか?

貴様、あいつのファンだっただろう』

 

『うん、そうなんだけど……

いざ面と向かうと、なんか緊張して……』

 

『意気地なし』

 

「うええええええっ!」

 

 突然の声に店員が驚き、声をかけてきた。

 

「どうなさいましたか、お客様?」

「いえ、何でもないです!」

 

 再びラーメンを啜るアレク。

 

 

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

 

あれから三年経った……。

 

 

 

 

調査する以外はずっとラボに引きこもって、

アニメを作り続けてきたから、

すっかり時間という概念を忘れちまったよ……。

 

 

寿命がないせいで時間感覚も麻痺したんだろうな。

でも、三年という目標を掲げてアニメを制作した。

 

なぜ、三年に設定したのかというと、

三年後に旅人が稲妻を訪れるタイミングに合わせたんだ……

 

 

三年後、旅人がやってきてテイワットを旅して

稲妻にやってきて、なんやかんやあって

旅人が雷伝将軍を倒し、色々があって稲妻が開国される。

 

 

 

鎖国する前、一年前に稲妻に来ていればいいけど、

そうはそうだけど、理由は二つある。

 

 

 

一つは、アニメはまだ完成されていなかったこと。

 

 

 

そして、もう一つは旅人によって(結果的に)

稲妻の名家。

九条家や柊家が没落してしまうからだ。

 

 

 

私としては没落、あるいは権力を失う

というかそうしなければ、困る。

 

 

 

 

なぜなら、私が作るアニメ、呪術廻戦【原神版】はやば過ぎた。

 

 

具体的に何がやばいかというと、

稲妻の登場人物を

そのまま、呪術廻戦の登場人物と入れ替わってしまったからだ。

 

 

 

 

 

例えば、雷電眞は五条悟ポジション。

八重神子、基、崩壊シリーズでお馴染みの八重桜は夏油ポジションに入る。

 

 

 

雷電眞は初代雷電将軍だから

五条悟という最強ポジションに当てはまるのは当然として。

 

八重神子は雷電眞の親友ポジションにしたいから、

親友の夏油ポジションに入れてみた。

 

 

しかし、なんかピンとこないため、

ミホヨワールドでお馴染み崩壊シリーズで登場する。

同じ存在、八重桜を入れてみた。

 

 

 

ここまではいい、

真に問題なのは。

 

 

 

 

 

 

稲妻の名家、九条家、柊家、神里家を

呪術廻戦で腐ったミカンのバーゲンセールでお馴染みの。

御三家の禅院家、加茂家、五条家が入れ替わってしまった。

 

 

 

 

 

わかる?

 

 

 

 

いくら、腐敗しているとはいえ、九条家、柊千家、神里家を含めた。

 

 

幕府上層部をさらに腐敗した呪術界上層部、呪術総監部と

そっくりそのまま交換したと言えば、

分かるでしょう。

 

どれほどやばいか。

 

幕府上層部は確かに腐敗しているとはいえ、

将軍への忠誠心があり、自浄作用が少なからずある。

 

だが、呪術総監部にはそれすらない。

腐って、カビが生えているレベルだ。

 

 

比べると文字通りレベルが違う。

月とスッポンだ。

 

 

こんなあからさまに

ボロクソに言われると持ち前の権力で

放送禁止にされかねない。

 

 

 

 

一年前に持ってきたら違いなく

放送禁止まっしくら。

 

 

 

 

文句を言うなら、

ティティに言ってくれ。

 

設定もセリフもあいつが書いたからだ。

 

 

 

そういえば、自分で書いたセリフを

どんな能力か知らないが自由自在に声を変え、

自分で声優の物真似ごとをしてセリフを喋ったな。

 

 

 

 

演技も迫力もすごいが、

どこか、再生したみたいな声だった。

 

 

 

 

ともあれ、アニメは完成した。

 

 

 

画質も2024年で放送されているものと同じもの。

 

戦闘描写に力を入れたからかなりの出来だ。

鬼滅の刃やFateシリーズを手掛けた

ufotableと同じ画質と言ったら凄いだろう。

 

何せこの体だ。

不眠不休で働き、人間の頃よりも身体能力が上がった結果。

一人で十人、いや、百人分の仕事が出来た。

 

 

 

 

出来上がったものを

後はスクリーンを使ってプロジェクターで再生するだけだ。

 

 

この中世のファンタジー世界でアニメを作るのに

大いに役になったのはティティの能力、物質創造。

 

魔力を使い、あらゆるものを

創造することができる能力だ。

 

無から有は生み出せず、

必ず等価交換でなければならないので、

機材を生み出しては休み、

アニメを作るために必要な機材をそろうまでに実に1年かかった。

 

 

作画のために使う液晶タブレット、スキャナー、

音声を録音するために使うスタジオマイク

編集・再生などに使う高性能PCなど

多くの物を作ってもらった。

 

 

 

 

 

 

 

制作時間実に6600時間。

 

 

企画や音響などはティティに全部任せたとはいえ、

流石にしんどかった。

 

 

 

 

それを、八重堂の編集者に見せ、

アニメを見ずに設定資料だけを勢いで持っていた結果。

 

 

 

▲▲▲

 

 

鳴神神社

 『こうなった』

 

 アレクは八重神子を前に、再び心の中で溜息をついた。




次回投稿1/11日
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。