とある稲妻の呪術廻戦 作:ネシエル
鳴神神社
神社内の襖の中、
アレクは八重神子と対面した。
『どうして、こうなった……』
アレクは八重神子を前に、
心の中で再びため息をついた。
『まるで尋問されているみたい。
というか、なんで向こうは何も質問しないんだ……。』
「ふむ、そこの」
八重神子が口を開いた。
「は、はい!」
アレクは慌てて返事をする。
「来て早々悪いが、妾も正直戸惑っていてな。
何を言おうか迷っている。」
「はい……」
「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったな。
妾の名は八重神子。ここ鳴神神社の大宮司であり、
八重堂の編集長である。」
「私の名前はアレクと申します。
八重神子さん、以前からお名前を存じ上げておりました。」
「ほう、遠い異国の地でも妾の名は轟いていたのか。」
「はい?」
「何だ、その顔は妾を笑わせる気か?」
「いえ、なぜ、私が外国から……」
「お主、どう見ても人間ではないしな。
いくら稲妻の伝統的衣装を身に着けても、
怪しげな術で人間に偽装しておるだけで、
妾の目は誤魔化せぬぞ。」
「あ、はい、すみません。」
「なぜ謝る。人間でないことが
そんなに恥ずかしいのか?」
「いえ、ただ申し訳ないと思って……」
「謙虚だな、お主は。だが安心せい。
妾も人の身ではない。
稲妻に滞在して困ったときは妾に助けを求めるがいい。」
「ありがとうございます。」
『話がスムーズだ……
さっきまでの緊張していた雰囲気が嘘みたいに晴れた。
というか、なぜ私だけこんな目に。
ティティも出てくればいいのに……』
「ところで、いよいよ本題に入ろう。」
八重神子は後ろから分厚い原稿を取り出した。
『……私が描いた絵!?』
「これはお主が描いた絵か?」
「はい!」
「ふむ、実によくできた絵だな。
だが、この紙の質と使っているインクは違うな。」
八重神子はイラストを見つめ、
指でなぞりながら触感を感じ取った。
「最初の数ページは手書きで書いて、
後は全て印刷されたものだが、そこはいい。」
八重神子はイラスト集をざっとめくり終え、
最初の表紙をアレクに向けて見せた。
「これは、誰じゃあ?」
八重神子は表紙を飾るために描かれた女性――
雷電眞を指さした。
「見ての通り、雷電将軍です。」
「そうだ、間違いなく雷電将軍だ。
だが、この服……どこで見たのだ?」
「え、自分で描いた物ですけど、
この世にはいない服ですよ。」
「……そうだ。この服は稲妻において
最も高貴なお方が着ていた浴衣だ。
もう、どこにもいない……。」
「・・・」
「妾はお主の絵を見て、思わず、動揺した。
微かに心が動かされた。
絵があまりにも、似ていたからだ。
眼ではない心で分かった。
もう、二度と会えないかと思った。
そう思ってしまった。
間違いない、これは影打ではない真打だ。」
八重神子はイラストをアレクへ向けるのをやめて、
手元で撫でる。
まるで、宝物のように扱っていた。
「あ・・・」
「答えろ。
これはいつ、どこ、誰、
昔の、それとも今の雷電将軍。
どっちだ。」
八重神子は微かに涙を出して
アレクを問い詰める。
「・・・」
アレクは少しの間を置き、答える。
「初代、雷電将軍」
口を開き、八重神子は瞳が大きく開ける。
「雷電眞です」
無音になった。
小鳥の声も聞こえず、音のない世界が続いた。
時間は僅か3秒。
それが永遠に続いているみたいに感じた。
八重神子の頬にある一滴の涙が
落ちた瞬間。
永遠の時間は終わった。
「そうか、そうだな。」
八重神子は目を暗くし、
イラストを横へ丁寧に置き、
静かに思い出す。
▲▲▲
どこまでも広がる草原。
その中央に小さな木が一本立っている。
幼き八重神子――
まだ狐の姿であった彼女は、
その木に勢いよく登ってみたものの、降りるのが怖くなってしまった。
「きゅう……」
「……あらあら。」
御建鳴神主尊大御所、雷電眞がそれを見かけた。
「よしよし、こっちにおいで。」
八重神子は「きゅん」と鳴き、勢いよく雷電眞の腕に飛び降りた。
「かわいい子だね。」
雷電眞はそっと八重神子を撫でて、落ち着かせる。
「きゅん、きゅん……」
「よしよし、あなたは一人じゃないよ。」
泣く八重神子に、雷電眞は優しく語りかけながら撫でた。
▲▲▲
鳴神神社
八重神子は涙を軽く拭き、
少し落ち着いた様子を見せていた。
アレクは彼女の様子を気遣いながら声をかけた。
「大丈夫ですか?」アレクが静かに問いかける。
「……ああ、すまん。見っともないところを見せてしまったな」
八重神子は眉を寄せつつも答える。
「いえ、大丈夫です」
アレクは優しく微笑む。
八重神子は少し考え込むように間を置き、再び口を開いた。
「お主、なぜ嘘をつかなかった?」
「え……?」
アレクは目を見開き、戸惑った様子を見せる。
「正直に言えば、妾はお主の返答をこう予測しておった。
『八重堂の出版物や服は昔の絵から着想を得た』とでも言うと思ったぞ。
そっちのほうが辻褄が合うし、違和感がない。」
八重神子の視線が鋭くなる。
「私も最初はそう答えようと思いました」
アレクが少しばつが悪そうに言う。
「そうだろう。妾が質問したとて、
大抵の者は作り話でお茶を濁すものだ。
なのにお主はなぜ、嘘をつかなかったのだ?
そのままやり過ごせば、
面倒なことには巻き込まれずに済んだものを」
アレクはしばし沈黙した後、ぽつりと答えた。
「わかりません」
「……はい?」
八重神子は思わず声を漏らし、少し戸惑った表情を浮かべる。
その反応は、数百年を生きてきた大妖怪としても珍しいものだった。
「ただ……あのとき、嘘をついてはいけない気がしたんです。
八重神子が泣いていたし、頭が真っ白になって……つい」
アレクの言葉は途切れ途切れだったが、真剣な響きを持っていた。
その瞬間、八重神子は突然大きく笑い出した。
「ふ、ふふふ、フハハハハハ!
お主、とんだ大馬鹿者だな!」
彼女は腹を抱え、笑い声を鳴神神社に響かせた。
「ハハハ、妾をここまで笑わせたのはお主が初めてじゃ!
……だが、嫌いではないぞ」
八重神子は表情を引き締め、
真剣な目でアレクを見つめ直す。
「お主の返答には稲妻の成り立ちを知る者
でなければ気づけぬ事実が含まれておる。
初代将軍の名前を知っているなら、
今の将軍の名も知っておるのではないか?」
「はい、雷電影ですね」アレクは素直に答える。
「そうじゃな……ますますお主が怪しくなってきた。
先代どころか、雷電将軍の代替わりまで知っておるとは、
一体何者なのじゃ?」
「ただのアニメーターです」
アレクは少し照れくさそうに言う。
「アニメーター?」
八重神子は首をかしげる。
「はい、絵を描いて、
それを映画のように動かすものを作っています。
フォンテーヌ映画みたいなものですね」
「ほう、そういったものが異国では流行しておるのか」
八重神子は感心した様子を見せる。
「いいえ、私が開発したものです」
アレクは小さく胸を張る。
「お主が!?
……そうじゃ、まだお主がここに来た理由を聞いておらなんだな」
アレクは自身の目的である
……著作権や放送に関する後ろ盾をお願いした
「ふむ、そうか。それなら問題はない」
八重神子は微笑み、言葉を続けた。
「いざという時は妾が助けてやろう。
最初に言ったであろう。何かあれば妾が救ってやると」
「ありがとうございます」
アレクは深く頭を下げた。
そのとき、アレクがふと思い出したように問いかける。
「なぜ私が雷電将軍の秘密を知っているのか、
聞かないのですか?」
「なぜかって?
お主が妾のことを案じ、己の身を危険にさらしてまで妾を欺かなかった。
それが答えじゃ。
それ以上にことは妾が問い詰める理由はない。
するつもりはない」
八重神子は穏やかに微笑んだ。
「……ありがとうございます。」
アレクはその言葉に感謝を込めて一礼し、神社を後にした。
▲▲▲
それを見送った八重神子は誰も居ないところでお礼を言った
「ありがとう、お主のおかげで妾の心は……」
八重神子は言葉を一度止め、夜空を見上げた。
その目には微かに笑みが浮かび、夜なのに差し込む柔らかな陽光を感じるように、
どこか穏やかな雰囲気を纏っていた。
「晴れた、と言うべきかのう」
彼女の声はまるで独り言のようだったが、
その言葉には深い意味が込められているように響いた。
次回投稿1/13
アルマリアさん、
感想ありがとうございます。
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