「流架君ー♡流架君どこー?」
「ねぇ誰か流架君みなかったー?」
中庭でパーマ頭の女子が他の女子数名にそう話しかける。
近くの物陰に流架は隠れていた。女子達がどこかへ言ったのを見計らって向かったのは…飼育小屋。入ると、徐々に流架の顔は緩んでいく。
「みんな〜♡僕がいなくてさみしかったでちゅか〜?」
動物達と抱き合いながらうっとりデレデレしている姿がそこにあった…。
するとそんな流架に…
「ルカ〜…北の森が大変なんだよ〜…」
「僕らを助けて〜」
「こわいよ〜…やめてぇ〜…」
というような動物達の鳴き声と悲しんでいる姿が伝わってきた。今すぐ来てほしいと嘆く動物達のために飼育小屋から全速力で駆け出す。蜜柑達がいる、北の森へ。
「わっ」
動物達の声を頼りに無我夢中で進んでいると、いきなり地面がなくなった。全身に痛みが走り顔が歪む。
「ご…ごめんね、流架君」
顔を上げると、申し訳なさそうに謝る委員長の顔が目に入る。瞬時に、幻覚のアリスで誘導されてまんまと罠にハマったのだとすぐに理解した。
「まさかこんな手で本当に来るとはね…。バカなのかしらこいつ」
「動物フェロモンっ子捕獲成功ー!!いえーい!」
蛍はいつもと変わらない仏頂面だが、委員長はどんどん顔が青ざめている。
「———というわけで、行く手を遮るあのヒヨコを何とかしてほしいねん」
「どーゆーわけでだ」と蛍が突っ込んでくるが、それはさておき…
「さあさあよろしくお願いしますー!」
と流架の背中を押した。
「さわるな。……さわるなブス」
………は????もっぺんゆうてみいこのガキャー…。
「ご、ごめんね流架君、騙したりして。こうでもしないと来て貰えないと思って…。蛍ちゃんの吹き矢(麻酔入り)で眠らすって方法もあったけど…」
「…でも
委員長とウチがそう説明を付け足す。
「嫌なら別にいいんだけど。私とり肉好きだし…」
「わ——————っっ!!!」
鬼のようなことを言う蛍を蜜柑と流架が止める。
その結果流架はそれを受け入れてくれたが…その様子を見るなという条件つきであった。
ま、こっそり見るけどな?
「そういえば僕、流架君のアリス目の当たりにするの初めてだ」
へ?そうなん?
「私も。クラスの人間でも見たことある人あまりいないみたいよね…」
「流架君って棗君以外の人と話したりするの見たことないし、棗君とはまた違った…謎な人っていうか…。ホントのとこ…みんな流架君の事よくつかめてないんだ。冷淡なカンジかと思ったらいきなり大胆な事したり…。
そんな会話をしていると、流架とヒヨコがすでに対面していた。目の前に広がっていたのは…カップルのようにイチャイチャしている流架とヒヨコの姿…。2人だけの空間になり抱き合ったり遊んでいる様子にボーゼンとなる。
’’本当の…流架君’’…?
そのまま蜜柑達3人が呆然としていると、中等部飼育係の人がピヨを見つけにきてくれて、ピヨとルカは泣く泣くお別れしたのでした。
「…なんつーかこの展開、今までの苦労は一体…ってカンジよね。来るなら早くこいっつーの飼育係…」
蛍がそう文句をこぼす。
「…まあ、いいもんみせてもらったし…」
「蜜柑ちゃん。声震えてる…」
そして堪えきれなくてつい吹き出す。
「ウハハハハ!ごみんー!だっておかしすぎるんやもんー!そりゃ隠すわなーアハハ!!」
蜜柑が笑うと、「見ないって約束したくせに!!」と言って流架が走り出す。
…走り出そうとした、瞬間…蛍が流架の肩を掴む。
「はな…っ!」
せ、と言おうと流架が後ろに振り返ると蛍の手には先ほどのピヨにメロメロになっていた流架の写真…。
「旅は道づれっていうじゃない?」
「…流架が捕まってた?」
棗が透視のアリスをもった監視役の生徒からそう伝えられる。
「はいっ。流架君何か騙されて怒ってるカンジでした。あの蜜柑って女に喧嘩売られてたり…」
「そういや飛田のやつ幻覚使いだっけ…」
「まさか勝負に負けると思って汚い手で流架君を人質に!?やだむかつくー!」
棗の取り巻きとパーマが騒いでいると、棗が激怒している表情になっているのに気が付く。
「バカじゃん、あいつら…。よりによって流架君人質にするなんて」
「棗さん…目の色変わったぞ」
「おい…このままだとあの転校生、かなりやばいことになんじゃねーの……?」
教室でそんなことになっているとはつゆ知らず。
「ルーカぴょん♡ほーら森の仲間達があいさつにきてまちゅよー」
蜜柑は変わらず流架のことをいじっていた。
「おや?無視でちゅかー?ヒヨコん時とは大違い。差別でちゅかー?」
と抱いている兎とともに向こうに歩いて行く流架を見つめる。
「…ルカぴょん、なかなか売れ筋好評よ」
一方蛍は流架の写真を動物達に販売していた。
「ルカぴょんルカぴょん、さっきのもっかいやってくれる〜?」
「うるさいなあ!先に進むんだろっ!」
蛍と蜜柑のいじりに赤面しながら怒る。
「やーい、地がでた地がでた!あんたやっぱりわざとスカした態度とってるんやん。さっきまでのあんた見てたらなんか単純やしアホやし、到底ワルにはみえへんもん」
「なっ」
「なんでそんな態度わざととんの?もしかして、棗がグレてるしあんたも足並みあわせてるとか?」
そういうと、流架が驚いた表情をしてこちらを見てきた。
「わっ、図星!?なんかそれって友達ゆうより手下ってカンジ。そういやあいつクラスの子いいように使ってたもんなー」
「何も知らないくせして勝手なこと言うな!」
さっきまでとは違う雰囲気で怒鳴る流架に驚く。
「棗を悪く言うな。…お前らなんかに、欲しくもない力を持ってしまった棗の…棗の気持ちがわかってたまるもんか…」
怒っている流架を見て、申し訳なくなり素直に謝る。
欲しくないもない力、か…。それはわからんでもないけど…。
「あ」
委員長が蜜柑の後ろの方をみて声を漏らす。
何かと思い振り返ると…
「あ、棗…。何でここに…」
風の音が異様に大きく聞こえる。
なんか…怖い。
「ルカ帰るぞ。ゲームは終わりだ。この女は失格だ」
そういうといきなり髪の毛を掴まれ、木に押さえつけられる。
「…俺の作ったルールを無視して、あまつさえ流架を利用して…。なめたまねしてんじゃねえぞ」
「棗やめて!俺は何ともないから。言ってたじゃん棗。この
「…流架。俺は、俺の敵と逆らう奴には容赦しない。汚い手を使ってゲームを終わらせたのはこいつだ。もうこいつの正体暴くのに、いちいち手段を選んでやるつもりはねえよ」
棗がそういうと、いきなり蛍が煙玉のようなものを使った。煙が喉に入り咳き込む棗が蜜柑を掴む手を緩めた瞬間に逃げる。委員長の元へ駆け寄ろうとするが、委員長が火に囲まれそれは叶わない。
「委員長っ!!」
「手段は選ばないと言ったハズだ。とっとと吐けよ、お前のアリス」
そういうと蛍の周りにも火をつける。
「火止めろバカ!」
叫びながら棗に掴みかかる。
バランスを崩した棗が、倒れながら蜜柑にアリスを使おうとした。
「あぶな…っ!!」
蜜柑は辺り一面に無効化のアリスを発動させた。
「……え?今、棗確かに強い力を…」
流架と棗が驚いた顔でこちらを見てくる。
棗が放とうとしたアリスも発動せず、委員長と蛍の火まで消えている。
すると、どこからか鳴海が出てきて、棗はおでこにキスをされてフェロモンのアリスを受け気絶した。
えぇ…。
「ふー、大丈夫だった?蜜柑ちゃん。広範囲にアリスが使えるってことまでは知らなかったな」
蛍と委員長のそばに駆け寄り、危険な目に合わせたことを謝罪する。
「結局蜜柑ちゃんのアリスって…」
「蜜柑ちゃんのアリスは、無効化のアリスだよ。攻撃してくるアリスを打ち消して自分や、使い方によっては周りのみんなの身を守る力があるよ。どんな力だって、その人の心次第で毒にも薬にもなる」
鳴海は続ける。
「こうしている今も、どこかで君の力を必要とする人がいるかもしれない」