第1話 スカウト
「この…大ボケボケナスゥーーっっ!!」
そう言って蹴りを入れようとすると、巨大なハエたたきで反撃される。
ハエたたきで吹き飛ばされるが、体勢を整え着地する。
「今時間ないんやし、用件は口で言って」
うちを吹っ飛ばした親友の蛍が言う。
「この蛍からの手紙…ここに遠くの学校にいくてあんねんけど。しかも出発今日で、小・中・高エスカレーター式の学校て…」
納得ができずさっき届いた手紙を握り締める。
「ああ、全部ホンマや」
「んな大事な事こんなカメ使おて知らせるなーーっっ!!」
カメとは、蛍が開発したカメ便。届くのに1週間かかるメカ…。
「だってあんた早めに知ったら知ったでうるさいし…」
お、お前ってやつは〜…。
「蛍のアホバカ冷血漢〜っ!」
一緒の学校に行くていうたくせに!
「…バカね蜜柑。こんなの泣く程のことじゃないわよ。一生会えないわけじゃあるまいし」
そういうとうちの涙を拭き取ってきた。相変わらず美人の顔やぁ…。
タクシーだかなんだかの人が、出発の時間だと声をかけてくる。
「元気でね」
こんな突然なんひどすぎる。
離れ離れになったらウチら絶対、絶対絶対連絡途絶えるに決まってるもんーーっっ!!
予想してた通り、それからの半年間での蛍との関わりはハガキが一通きただけだった。
「蛍ちゃんは面倒臭がりじゃからのう……」
育ての親であるじーちゃんが蛍からのハガキを見ながら苦笑している。
ハガキには、今年の夏は暑いし疲れそうだから帰らないということだけでなく、スイカをねだる文が書いてあった。
「帰らない」と書いてあるが、本当は「帰れない」のだと知っている。
蛍が行ったのはアリス学園。アリスという天賦の才能を持った人だけが入学できる学校のこと。
そこは、アリスを持っている生徒を守るために閉鎖空間になっていて、一度入れば高校を卒業するまで外へ出ることは許されない場所。なんでうちがそんなことを知っているかというと、うちもアリスやから。
本当のお母さんとお父さんはどこにいるんやろ、どうしているんやろ、タイムトリップでもして知りたい。うちの過去を。そう願ったら、うちが持っている創造のアリスがタイムトリップのアリスをうちの中に作り出しそのまま勝手に起動された。
そこでうちの過去はもちろん、アリス学園のこと、お父さんお母さんのことを知った。
小学生を上がった頃だっただろうか。タイムトリップして見た映像はとても衝撃的で、耐え難くて…。どれだけ涙したか覚えていない。
それから蛍がうちが通っていた小学校に転入してきて、初めてアリス持ちの子に会って驚いたのを覚えとる。でも蛍にはうちのアリスのことは言っていない。全てが特殊すぎるから。
やから元々蛍が帰ってこないというのは知っていた。でもあんな学園に行った蛍が心配でしょうがなかった。
「じーちゃん」
寝ようとしているじーちゃんに話しかける。
「うち、蛍の行ったアリス学園に行こうと思う」
じーちゃんも真剣な顔をして、うちの話を聞いてくれている。
「アリス学園に行ったら、しばらく帰ってこれんと思う」
「…そうか」
悲しそうな顔をしながら、掠れた声でそう言う。
「お母さんが急に連れてきたよくわからんうちをここまで育ててくれて本当にありがと。親不孝でごめんなさい」
するとじーちゃんの目が見開く。
「み、蜜柑、なぜそのことを…!」
「うちもアリスっていう特別な力を持ってて、それで知ったんや。黙っててごめんなさい」
「…はぁ〜…そう…そうか…。とりあえず今日は寝よう、蜜柑」
その日はじーちゃんと一緒の布団で寝て、2人の時間を過ごした。
やっと…東京についた〜!
じーちゃんとしっかりお別れをして片道7時間…無事東京に到着!
タクシーでアリス学園に向かおうとしたら、走ってきて息が絶え絶えのお兄さんに話しかけられた。
「あの…大丈夫ですか?」
声をかけるが、どれほど走ってきたのだ…と言うくらいゼーハーしていて会話にならない。
「あっ、はぁ…はぁ…あのっ…!あなた、アリスですかっ…」
なぜ知っているのかと警戒心が高まる。
なんやこの人…。
「あぁ、すみません!私こういう者です…」
名刺を出してきたので、それを受け取る。
アリス芸能事務所…?
「アリスを持つ人専用の芸能事務所なんです。
私もマネージャーですが結界のアリスを持っています。社長が占いのアリスを持っていて、ここに1人でいる小学生の女の子がアリス持ちでアイドルにしたいから交渉してこいと言われ…急いできたということです…」
えっと…スカウトってこと?
「う、うち、そういうの間に合ってるんで…」
蛍のところ行かなあかんし。
「お願いだあぁ!!!」
そう言って目の前で土下座してきた。
えぇぇええ…!!!!
初めまして、hainaです。
閲覧していただきありがとうございます。
初投稿なので、至らぬ点等あると思いますが楽しんで読んでくださると嬉しいです!
よろしくお願いします。