パフォーマンス祭当日、ルカぴょんは苛立っていた。
「……来るなよ?ホントーーーに来るなよ」
うんうん。
「来るなったら見に来るなよ」
うんうんうん。
「来るなったら来るなったら来るな————っっ」
怒りながら体質系エリアに向かおうとするルカぴょんを、ウチ、蛍、心読み君、野乃子ちゃん…B組クラスメンバーがジリジリ追いかける。
「体質系ミュージカルは高等部第2講堂やって!」
蜜柑と蛍、心読み達だけでなく、キツネ目くんが棗も引っ張って駆け出す。
『眠りの森の白雪姫』と書かれた看板が飾られている門をくぐり、裏方にいる流架の様子を覗きに行った。
「し…白雪姫やーーーっっ!!!」
「!!くるなっていっただろーーっ!」
ルカぴょんはふてくされた顔して座っている。
「ルカぴょん可愛いねえ…♡」
みんなの声が重なる。
「ホンマかわいーっ!ルカぴょん、
蜜柑がそう言った瞬間、流架はより拗ねてどこかへ行ってしまう。
ありん?
「それにしても客席すっごい人やね!」
何か…客の動物率高いけど…。
「体質系はいろいろとフェロモンっ子が多いからFANがついちゃってるんだよねー」
鳴海先生!おったんや。
「ところで、この劇って一体どんな内容なん?」
「まあ、タイトルのまんま『眠れる森の美女』と『白雪姫』を足して2で割ったような話なんだけど、ルカ君演じる’’白雪姫’’と正田さん演じる’’眠り姫’’が王子をめぐって繰り広げるスペクタルラブロマンってカンジかな〜〜♡」
パーマが眠り姫!?えええー、それ配役間違ってませんかー!?
「…ルカ、大丈夫なのかよあれで」
棗が鳴海に話しかける。
「ああ、彼は大丈夫。何だかんだいって演技になれば変われる子だからね♡それよりも問題は…」
鳴海先生の目線の先には、ボーイッシュで整った顔の人が…。周りにはたくさんの女性がユーリお姉さま〜♡と言いながらくっついている。
「彼女の名前は宮園百合ちゃん。王子役の子なんだけどね、女性限定フェロモンの
なるほど…。元々顔整っとるのもあるけど、あの感じはフェロモンの制御が苦手なせいで余計集まってるんかな?
「『これ以上無駄に女の子にモテるのはもう嫌』とか言ってこの劇に出るのもかなり嫌がってんだけど、僕的にははやく彼女がつまらない心のしがらみから解き放たれて自分のアリスに自信と誇りを持ったすばらしきフェロモンライフを…という願いを込めての配役だったんだけど、まだ彼女ごねててね!」
「何言ってんだこいつ」
「要するに腹括って女好きになれってこと?」
「
棗、蛍、心読み君…。
「あ、心読み君それ何ー!?」
何か箱を持っているのが気になって尋ねる。
「これ?技術系の’’恨み屋本舗’’で買った、強力ひっつき玉。熱と衝撃を与えると爆発してその粘液がつくと約1時間はひっついて剥がれないの。いやな事する奴に投げつけたらおもしろいなーと思ってー。1個あげようか?」
えーー、別にウチ投げつけたい奴なんていーひんしなーーー。な〜〜??
「…そこで何でわざとらしく俺の方を見る?」
ハハハ。いーひんけどもらっとこかなーー。
「あっ!緞帳が…っ!!下の人、あぶない!!!」
へ?
「わ————————っっ!!」
緞帳がウチらの方へ落ちてきて大慌て。
「なんだ!?!?」
「みんな大丈夫!?」
鳴海先生達が駆け寄ってくれる。
いてて…。
なんとか落ちてくる場所からズレることができたが、盛大に転んでしまったため頭をさすりながら起き上がる。
すると、目の前には色々なものにくっついて離れられなくなっている体質系の人達…。
え………まさか…。
心読みが持っていたひっつき玉が箱ごと落ちてきた熱を持った照明とぶつかったことで、大爆発を起こしたらしい…。
「うそだろ…セットや裏方どころか王子役と女王役、狩人役までひっつき玉の餌食…。しかも1時間は威力消えないなんて…」
ご…ごめんなさいっっ!!!
「仕方ない…代役を立てるしかないか…」
え、でも誰が…。衣装だってもう元々の役の人が着てもーてるし…。
「こんなこともあろうかと思って一応用意しておいたんだよねー…。あ、僕狩人やりますから副担先生女王やって下さいね…」
「(なぜ当たり前のようにお前が
「先生っ!7人の小人役の子がその…日向君と手がくっついちゃってて…。小人役は初等部低学年の役で体質系にはもう低学年の子は他にいなくて…」
緞帳の下にいたらしい男の子を助けるために手を引いたらそのままくっついてしまったらしい。
「うわ、困ったなー。うーん…いっその事棗君を’’小人と仲良しの森の
「ふざけんなてめえ、ぶっとばすぞ」
「えー、いーじゃんやろうよー♡人助けだと思って!」
「何で俺がてめえを助けなきゃなんねーんだよ。ボケッ」
鳴海と棗が言い争っているのに挟まれた小人役の男の子がすごく困惑した顔で2人を見ている。
「はー…じゃあ仕方ない…’’7人の小人’’を’’6人の小人’’に変更するしかないかー…。一生懸命稽古したのにごめんねー♡」
鳴海先生にそう言われて男の子は泣きそうな顔になって俯いた。
「……」
そのあとも色々準備を進めていく鳴海達。
「さてと…あとは王子役…」
「きゃー!!棗君一体どうしたの、その格好っ!!」
パーマの声が響きみんなが一斉声がした方向を向くと…そこには猫の衣装を着ている棗が。
「棗!?」
「わ、何その格好!山猫やーー!!」
顔はめっちゃ不機嫌やけど!
「棗、何で…」
流架がそう尋ねようとするが、棗の隣で嬉しそうに笑っている男の子を見て口を閉じる。
「あはははは、猫耳!!かーわいー!」
蜜柑が棗の猫耳を触っていると、デコピンをされた。
い…いったーーーー!!何すんねん!
「男に『可愛い』とか言ってんじゃねえ、ブス」
だからっていきなりデコピンすることないやろ、バカネコ!!
蜜柑達が騒いでいる後ろの方で今度は鳴海と王子役の百合が揉めていた。
「冒頭の出番をとりやめてラストだけにしたらギリギリ代役立てずにこのままでいけるんじゃない?」
「そ、そんな…。ひっつき玉が1時間ではずれるちゃんとした確証もないのに…王子役は代役で行くべきです!!」
そんなに王子役嫌なんや…。
「う、うーん…」
「水玉、お前王子役やれ」
へっ?
「おいナル、もういい王子役はこいつで決まりだ」
「ちょ…あんた何言って…」
「てめーは俺の奴隷じゃなかったのか?」
ゔ…そやった…。
「時間もねーのにいつまでもぐだぐだと…さっさとやることやって幕あげろ。てめえらいつまで無駄に俺にこの衣装着せるつもりだ」
超不機嫌の棗の圧にその場にいた全員が従うしかなかった。
「じゃ…そういうことで…」
え、ちょっと、鳴海先生!?ウチが王子役なんてそんな…
「お願い!!!私の代わりに王子役をやって!!」
うわ!!なんや、急に肩掴んできやんといてや!
「あなたならやれるわっ!あなたは今の私の最後の頼みの綱なの…!私普通の女の子になりたいのよー!」
な、なんのこっちゃ…。
「私達からもお願いするわ、ユーリお姉さまを助けると思って!!」
「あなたが王子なんて私達は不満だけどユーリ様のためにこの役をやって!」
先輩だけでなく周りにいたたくさんの女子生徒までが蜜柑に迫ってくる。
ちょっとみんな冷静にーーーっ!!ってか不満でわざわざ言うなー!
「佐倉さん!王子役くらいいーじゃないの。やってあげなさいよ、あんた!」
「ユーリ様を助けてあげて、蜜柑ちゃん…」
「蜜柑…これも人助けよ…」
ギャーーーー!!パーマに野乃子ちゃん、蛍までフェロモン浴びてしもうてるやん!!
「もう幕上げないと客が騒ぎはじめてますー」
とんでもないことになってしもた…。でもこうなったからには悩んでも仕方ないし、みんなの舞台を台無しにはできひん…頑張るしかない…!
「佐倉」
ん?ルカぴょん?
「そんなに…気負うことないから。困った時は…俺がいるし、ちゃんとみんなでフォローするから。えっと……一緒に頑張ろうな」
「うん…っ!」