それから数日、みんなが日にちを分けてお見舞いに来てくれる日が続いた。
当然初校長がいなくなってからの話も蜜柑の耳に届いている。
蜜柑が倒れた後、少ししてから高校長管理の警備隊が到着し、棗の炎で動けなくなった初校長本人とその部下である月、ペルソナ、警備隊全員が身柄を拘束された。
それから事情を聞き、初校長の部下はそれぞれの状態や反省度合いから高校長や中校長、新しく初校長となった神野が処分を決めた。
ペルソナは、記憶を操作されていたことや元の記憶が戻り反省していることから、今までと変わらず学園の教師として過ごすことになった。しかしその性格はとても丸く、前からは考えられないほど穏やかな性格になったそう。
月は、最も元初校長と親密で、自主的に加担していたことからかなり重い処分になる予定だった。だが、本人の反省している様子や実害は出していなかったことから、元初校長を吸魂のアリスで管理下に置き学園本部の隔離部屋にて面倒を見ること、元初校長が今まで自身のアリスで作っていたクローンを排除する協力をするなど学園のために力を使う仕事を全うすれば罪を赦すということになった。そして、学園の病院にて体を小さくしたことで発生した副作用の治療も行っている。
ペルソナも月も、たまに柚香の病室に来ている様子が見られている。そして蜜柑とも会うことがあり、和解後みんなで楽しく時間を過ごしている日もある。
はー、今日もお母さんと小泉さんとめっちゃ話したなぁ。ペルソナは今日能力別クラスで忙しくて来られへんかったけど…。
もう夜になり病院も消灯時間。なぜか寝るに寝れなくて天井をぼー…っと見つめる。
「………棗に、会いたいなぁ…」
つい口から漏れた。目が覚めてから、ずっとずっと忘れたことはない……好きな人。
「蜜柑」
焦がれていた声が耳に届く。
声がした方へ向くと、夜空のように真っ黒な髪から煌々とした月の光が漏れている光景に目を魅かれる。
「な、棗!?なんで!?」
「んだよ、きちゃ悪かったか」
「いや、そないなことないけど…」
消灯時間になってから来ると思ってへんかったから…。
「お前が呼んでる気がしたから来たんだけど」
え…?
「お前が俺に会いたすぎて、あの何か変な力発動させたんじゃねーの」
「ちがーーーう!!勝手に話都合よく作んなーっ!」
そんなことに創造のアリス使うわけないやん!
「ふーん、違うのかよ。めちゃくちゃ呼ばれた気がしてここまで来たけど……会いたいって呼んでなかったのかよ。……ふーーん」
棗が窓枠でくつろぎながら横目で蜜柑を見てくる。
…………。
「それは……ち…違わへんけど……?」
正直に気持ちを言葉にすると、棗の口の端が少し上がって目に見えて機嫌が良くなる。
な、棗め〜…!
「遅くなって悪かった。色々やることがあったのと…
そういえばすっかり忘れとったけど…初校長の部屋にきた時、ウチのこと…す、『
「蜜柑」
「はっ、はいっ!」
そんなことを考えていた時にいきなり名前を呼ばれたので、つい返事する声が裏返ってしまった。
ベッドまで歩いてきて、棗が蜜柑のそばに座る。そして握られた手から棗の体温を感じる。
「……アイツに狙われた時、お前の手を引いて…最後まで誰かに渡さないで済むくらい俺に力があったら…って、そう思った。力がなくて、大人でもない俺が…嫌だった」
一見いつもと同じ仏頂面。だが、口が悔しそうに微かに結ばれているのに気づく。
「…棗、前に誘拐された時にウチが使った力について聞いてきたよな。ウチのアリス…無効化だけやないねん。初校長に狙われたお母さんと同じ盗む・入れるアリス。…そして、創造のアリス」
初めて聞くアリスの名前に棗が反応する。
みんなよりも先に伝えたかった、アリスのこと。
「アリスとかモノとか…色々作れるアリスやねん。だから、あの時は風のアリスと身体強化のアリスを作ってZに対抗してん。ちゃんと助けられんかったけど……」
棗は静かに蜜柑の話を聞いている。
「お母さんが初校長に撃たれて死んじゃいそうになってた時も、癒しのアリスをつくってやっとった。でも…力が足らんかった…。ウチも、悔しかった。ウチが弱いから…って」
あの時を思い出したらまた目に涙が浮かんでくる。
「でも、お母さんは助かった、先生達や蛍のお兄さんのおかげで……。褒めてくれた、ウチが頑張って時間を作ったからって…。それ聞いて、小さい、弱い力でも力になれたんやって…嬉しかった」
そしてそれは、棗にも…。
「棗が初校長室までウチのこと連れ出しにきてくれて…何があっても守ってくれるって言うてくれて…嬉しかった」
棗の手を強く握り返す。
「初校長と戦う時も、棗にめっちゃ助けてもらったし…ありがとうな!あ、何かお礼せなあかんなぁ。何か欲しいものとかないん?」
蜜柑がそう聞くと、棗が小声で何か言う。
ん?
「キス、しろよ」
んん〜?あれ?今聞き間違い……
「 キ ス 」
ギャーーーーー!!何いってんの何いってんの何いってんのこの人ーっ!!
「お前が言ったんだろ。何か欲しいものあるかって」
ゆ…ゆーたけど!!そういう意味じゃなくて、べ、別のーっ!!
「てれんなめんどくせぇ…」
棗の顔がだるそうな表情に変わる。
て、てれるわ普通ーっっ!段階すっとばすな!!
「いいからキス、早くしろよ。誰も見てねーよ」
炎のように真っ赤な瞳が、真っ直ぐ蜜柑を見つめている。
その瞳から逃れるように、目をぎゅっと瞑りキスをする。
わ……。な、なにこれ恥ずかしすぎる…っ!心臓バクバクしてるよーーっ!
「……おい、もっかいしろよ」
ギャーーーーー!
「も、もうムリー!!!」
そう言うと棗の眉間にしわができる。
「ちっ、何でだよ」
もうこんなんはずかしくてしぬーっ!
「これを2度もなんて、ウチ…心臓壊れる…っ!!棗のアホ〜…!」
顔、熱い…!
「…じゃあ俺のこと好きって言えよ。はっきり、お前の口から」
そ…そんなんどっちにしろ心臓こわれるわーっ!!
「あ…あんたが言えばいいやろー!」
「お前が欲しいもの聞いたんだろ」
聞いて、さっきあげたやん!よくばりーーっ!
「て…てゆーかあんたこそウチのこと好————」
「お前が言ったら教えてやる」
く、くそぅ…。
「蜜柑」
棗にどんなにムカついていても…この、想いを込めて名前を呼んでくれる声に…抗えない。
「好き…大好き…。アホ棗…っ!ワガママ……っ」
恥ずかしくて顔ぜんぜん見れへん…。
棗に聞こえてしまいそうなくらい心臓はバクバクうるさい。
蜜柑の言葉を聞いて、恥ずかしがっている姿を見て、棗は嬉しそうに笑う。
「バーカ、アホとワガママはよけいだ」
だ、だって…っ!
真っ赤になっているのを隠すように俯いている蜜柑の顔を持ち上げる。
「俺も…。蜜柑、お前が好きだ。この先ずっと、誰よりも…」
そして、どちらからともなくまた唇を重ねた。
これにて本編完結となります!
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
拙い文でしたが、多くの方に見ていただけて感謝しかありません。お気に入りに登録してくださった方もありがとうございました。もう学園アリスを知っている人はサイトにいないかも…と思いながら始めたので、こんなにたくさん読んでいただけるとは予想しておらず驚いています。
ただ、危力のみんなや葵ちゃん、様々なイベントについても書けなかったのは悔しいです…。どうしても長すぎてしまうので悩みながらも泣く泣くカットしていました。
もし、面白いと思ってここまで読んでくださった方がいれば嬉しいです。
この後は、番外編というか、その後の話を書いていこうと思っています。
そこまで長くならない予定ですが、まだあまり考えていないのでわかりません…!
あと少しお付き合いいただけるととても嬉しいです。
まずは本編完結、ありがとうございました。