「おい 」
棗が久しぶりに蜜柑と一緒に帰れると声をかけようとすると…2人の間に碧が割り込んでくる。
「みかーーーん!ねぇねぇ、この後学園の案内してよ〜!」
まただ。俺が蜜柑に話しかけようと思ってもこいつがずっと邪魔してくる。
「あ、ええよ!大輝と悠真も誘って行こ!」
俺のことを忘れて承諾する蜜柑も気に食わない。
「おい、一緒に帰らないのかよ」
そう話しかけると、ハッとマヌケな顔になる。
「えー、僕らは久しぶりに会えたのに…?」
そう言ってうるうるとした目で見てくる。
なんだこいつ…ぜってー嘘泣きだろ。
「うーん…棗とも久しぶりに一緒に帰りたいけど……今日だけ!なぁ、棗…」
その言葉に棗はため息をこぼす。
泣き落としには弱いのかよこいつ…。
「はぁ。流架、帰るぞ」
蜜柑のお願いには逆らえず、いつも通り流架と帰ることにした。
次の日の朝、蜜柑とアイツがくっついた状態で登校してきた。
「おはよう、2人とも。佐倉たち一緒に登校してきたの?」
「ルカぴょんおはよ!昨日そういう話になってん!」
「蜜柑と登校するの夢だったから〜」
そう言って、蜜柑の腕に抱きついたのを即座に引き剥がす。
嘘くせぇ奴…。
「抱きつかれてニヤニヤしてんじゃねーよ」
「し、してへんわーっ!!」
「アホ面になってたぞ」
「なんやと、このむっつりイヤミ狐ーー!!」
キーキー騒いでいる蜜柑を横目にアイツを見ると、すごい形相で睨んでいることに気づく。
「あ、碧くん登校してきてる!」
「碧くーん!!」
「きゃー!今日もかわいい!」
生徒が碧の姿を見て周りに集まってくる。
「もう、朝から騒がしいわね!アリス学園Stella Curareファンクラブ会長の私が先でしょっ」
「…パーマあんた、棗とルカぴょんのファンクラブだけやなかったんかい…。っていうか碧たちのファンクラブもあったんや…」
スミレが騒いでいるのなんて気にすることなく、女子たちがすごい勢いで碧に話しかけている隙に蜜柑の手を引いて自分たちの席に移動する。
「え?なに、急に」
「寝る」
「えぇ?もうすぐホームルーム始まるで?」
そんな言葉は気にせず蜜柑の手を握りながら漫画を顔に載せて目を瞑った。
Stella Curareが転入してきたのは昨日1日であっという間に学園中に広がり学年問わずたくさんの生徒たちが押し寄せてきていたため、今日は碧に邪魔をされないと思っていた棗だったが、ファンをどうにか振り切って今日もたびたび蜜柑に話しかけていた。
そんな様子を見て棗だけでなく生徒たちも碧は蜜柑のことが好きなのでは?という考えになるのに時間は掛からなかった。
放課後、昨日約束した通り蜜柑と一緒に帰ろうするとまたアイツが割り込んできた。
「ね、セントラルタウンで今日イベントやるんだって!蜜柑行こうよ〜」
「ほんま!?行きたい行きたい!」
その言葉に眉間に皺を寄せる。
「棗、一緒に行こっ」
その言葉に碧が焦る。
「え、一緒に行くの…?」
「え?うん、昨日一緒におるって約束したし…」
その言葉に棗の機嫌が少し良くなるが、碧は諦めない。
「でも2人きりでって話でもなかったよね?」
「あら、じゃあ私も行こうかしら」
今度は蛍が割り込んでくる。
「ね、ルカくんも行くでしょう?」
「…え、俺も!?」
その後大輝、悠真も一緒に行くことになり結局みんなでセントラルタウンへ。
「久しぶりのセントラルタウンやー!!」
「うおー!!なんだあれ、すげー!!」
「蜜柑、大輝!ちょっと待ってよ、僕迷子になっちゃう!」
「もう、3人とも落ち着いて〜」
着いて早々蜜柑と大輝が騒いで駆け出したのを碧と悠真が追いかけている。
「セントラルタウンで楽しむオフのStella Curare3人…ふふふ、これは高く売れそうだわ…」
「い、今井…」
今日の放課後は2人きりで過ごせると思ってたのになんでこんな大人数に……くそ。
「でももし3人で来て蜜柑が碧くんに構い出したら終わりだったでしょ?あの子、碧くんに弱いみたいだし」
心を読んでいるかのような言葉に舌打ちをする。
「白石、やけに佐倉と棗の邪魔をしようとしてるもんな」
「やっぱりあの子達の関係、どこか特別よね」
「佐倉を取られないように頑張らなきゃね、棗」
揶揄うんじゃねぇ…。そんなこと、わかってる。
「棗、蛍、ルカぴょんー!なにしてるん、イベント始まっちゃうで!」
るんるんな蜜柑の隣にいるあいつに目を向けると、嫌そうな顔をして逸らされた。
「特別上演イベント、めっちゃ面白かったねー!」
「アリス使ったミュージカルなんて初めて見たぜ!」
「うぅ、最後あの2人が再会できてほんまによかった〜…!!」
セントラルタウンでのイベントとは、新しくセントラルタウンの隣に作られたステージを使ってのミュージカル上演だった。
新生アリス学園の取り組みの一つとしてアリスを使った歌劇にも力を入れており、それに関連してのものだった。
「おい、鼻水出てんぞ」
ズビズビ泣いている蜜柑にいつものように嫌味を言う。
「だってぇ〜〜」
「すごくよかったよね。はい、佐倉」
そして流架がティッシュを差し出す。
「ありがと…」
「もー、そんなに泣いてたら目腫れちゃうよ」
そして碧にハンカチで涙を拭き取ってもらっている蜜柑。
距離感どうなってんだよ?
「蜜柑、ホワロンの列今なら結構空いてるわよ」
その蛍の言葉に蜜柑が目を輝かせる。
「ホワロンって蜜柑ちゃんが前に言ってたお菓子だよね?僕も買いたいな」
「俺も!俺も食いたい!」
「ほな、みんなで買いに行こ!」
蜜柑は碧のそばから離れてホワロンのお店へ歩みを進める。
みんなが行くのを見て棗も追おうとすると……
「なんでこんなヤツが…」
隣から聞こえたその声の持ち主に視線を移す。
「僕は認めない。お前には絶対蜜柑を渡さないから」
はっ、それが本性かよ