「さぁ、来週から明るく楽しい期末試験でーす♡」
その言葉に、ハイテンションの鳴海とは真逆の嫌そうな声が教室中に響く。
教科は、国算理社だけでなく美術・音楽・体育・家庭科を加えた8教科で、2日間に分けて行われる。
「当然アリスは使用禁止!カンニングには厳しーい罰があるから気をつけてね♡じゃ、みんな頑張って〜♡」
「蜜柑ちゃんや大輝くん、悠真くん、碧くんは初めての期末試験だね。アリス学園の問題は普通と毛色が違うから大変かもしれないけど…」
「この子は、アホそうだけどなんでもできるわよ」
蛍が蜜柑に代わって委員長に回答する。
アホそう!?蛍!?
「僕達3人は、学園には来てなかったけど授業もテストも実は前からみんなと同じのを受けてたんだ。授業は動画だったけどね。だから初めてのようで完全に初めてってわけでもないんだよね」
「えーっ!!実質Stella Curareと一緒に授業もテストもずっと前から受けてたってこと〜!?」
「なにそれ、最高じゃない!」
パーマや他の女子生徒の高い声に、つい耳を塞ぐ。
そこ、盛り上がるとこなんや…。ウチにはわからん…。
「佐倉頭いいのかよ!こっち側の人間だと思ってたのに…。裏切り者〜!」
クラスの男子数人が悔しそうに見てくる。
なんや、失礼やなー!!そんなウチってアホそうなん!?
「ふっ」
隣に座っている棗までもがこっちを見て笑っている。
「棗ぇーーっ!!あんたも同じこと思っとるんか!?みんなひどい!!」
「そうだよ、蜜柑をバカにしないで!!一緒に勉強するとき、いつも蜜柑が僕達に教えてくれてるんだから!」
「あら?学園で碧くん達と一緒に勉強をしているところなんて見たことがない気がするのだけど…」
相変わらず蛍の鋭い指摘に顔が強張る。
「東京に来たとき偶然会って仲良くなった、と言ってたけど…その時、そんなに一緒にいたのかしら?」
どうしてそんな必要があったの?と言いたげな目に冷や汗が止まらない。
「蜜柑ちゃんは運動が得意でしょ?ダンスも上手だったからレッスンを見てもらってアドバイスをもらってたんだ。その時期が夏休みだったから夏休みの宿題もたまにやってたんだよね?」
悠真のフォローに感謝しながら、首を勢いよく振る。すると、蛍は疑ってはいるものもそれ以上は追求してこなかった。
は〜…蛍には嘘が通用しないからつい固まってまう…。悠真、ほんまにありがとう…。
気まずさから逃れるように教室を出てトボトボと気晴らしに歩く。
蛍には隠しきれる気がせん…。早めに対応せなあかんな。今度社長さんに連絡して
「みかーん!」
ふと後ろから声がして振り返ると、碧が駆け寄ってきていた。そしてキョロキョロと周りを見て人がいないのを確認してから蜜柑の手を両手で掴む。
「さっきは…ごめん!蜜柑をフォローしようと思ったらつい……」
「あー、大丈夫大丈夫!悠真が誤魔化してくれたし、あのくらいで気付く人なんておらんやろ」
碧は安心したようにしゃがみ込んだ。
「悠真には感謝だね…。危うくバレちゃうとこだったよ。これは僕達の大切な秘密なのに…」
碧の言葉につい苦笑いになる。
相変わらずやなぁ…。特に、棗のことは敵対視してるみたいやし…。2人ともウチにとって大切な人やから仲良くしてくれたら嬉しいんやけど。
そんなことを呑気に考えていて、2人を影から見ている人物がいるなんて全く気付けていなかった。
教室に戻ると、早速何人かが集まって期末試験に向けて勉強会をしていた。
「あ、佐倉と白石戻ってきた!」
ルカぴょんと委員長が笑顔で迎えてくれる。
「蜜柑こっち。隣空いてるわよ」
椅子を引いて待ってくれている蛍が目に入り、そこに腰を下ろす。
すると、向かいに座っている棗が不満そうな顔になっていた。
あ…棗も隣空けてくれとったんか…。ごめん…。
「残念だったわね」
その言葉を放った蛍はとても自慢げな表情で嬉しそうな声色である。
そして棗の眉間の皺がより深くなる。
ば、ばちばちしてる…っ!2人とも落ち着いて〜!!
「なぁ蜜柑、この問題ってどうやって解くんだっけ…!?」
大輝!いいタイミング!!
挑発し合う2人を横目に大輝の質問に答える。
「あっ、俺もそこ聞きたい!」
流架も同じところがわからなかったようでノートを持ってきた。
「ここはな、複雑そうに見えるけど…図形をここで区切ってみたら考えやすくなるで」
「あっ、そうか。それでこれを…こうして……あれ…うわ、公式なんだっけ…!!」
「この公式は覚え方があって 」
類似問題も何問か解くことで大輝も流架もスラスラ解けるようになっていく。
「完全に理解した!もうヨユーだぜ!!サンキュー!」
「佐倉、教えるの上手だね…。すごくわかりやすかった!ありがとう」
「しかも今みたいに俺と流架に教え方を分けてたみたいに、その人に合った教え方してくれるのがすげぇとこなんだよな」
そんな3人の様子を見て、徐々に人が集まってくる。
「蜜柑ちゃん、私も教えて欲しいところがあるんだけど…!」
「佐倉、俺はここが全くわからなくて!」
「僕も聞きたい!!」
べ、別にええけど……急にみんなやる気がすごい…。
「えーっと、ここはな 」
「なんか佐倉のせいでみんな勉強モードになってますね」
棗に近寄ってきた男子生徒が話しかけられ、棗は静かに蜜柑を見つめる。
「あ、あの〜、それで俺も…棗さんにこの問題を聞きたくて…」
遠慮がちに聞いてくるその生徒に、「こんなのもわかんねぇのかよ」と言いながらも優しく教える。
「棗くんのそんな姿、初めてみた」
委員長がとても嬉しそうに言うため、棗の顔は少しだけ赤面していた。
棗はなんだかんだお人好しやからなぁ。ま、まぁ…そんなところが好きなんやけど…。
脳内でふと考えてしまったことがバレないよう誤魔化すためにも、また周りのクラスメイトの質問に答えていると……
「調子乗ってんじゃねーよ」
そんな言葉が耳に届いた。
え??
つい顔を上げ声の主を探すように周りを見渡すが、人が多くみんながそれぞれ話しているため見つけることができない。
聞き間違い…………?