【TSF】ネットゲームの世界に転生しました ~魔王を討伐して富と名誉を~ 作:とんべえ
ダンジョン地下一階のアンデッドは大抵一体で、まれに三体揃ってやってくる。
地下二階になると複数体で襲い来るのが常識だ。
雪華とメラニーは現れる片っ端からアンデッドを倒していた。
「でぇぇぇいっ!」
カタカタ笑っていたシャレコウベを、メラニーは、大ハンマーをゴルフドライバーの要領で、打ち抜いた。
アンデッドの群れが吹き飛ぶさまは、花火の様に派手だった。
「ナイスショット! でもちょっと強引じゃないかなっ!」
雪華はショートソードで丁寧に、首と胴を泣き別れにさせていた。
噛まれても映画の様に感染はしないが、カタカタ煩いのでダンジョンの隅に蹴飛ばし転がしていった。
「メラニーはなんか鬱憤溜まっちゃっています! もう一本!」
フルスイング、ナイスショット。
先の不埒者ダンプトの件が鬱憤の原因だった。
「もう一本!」
我々も同じ道をたどるのではないのかと、二人はその解を出せないでいたのだった。
「メラニー。そろそろ村に戻ろう。ドロップアイテムでバックパックがもう一杯一杯だ」
「雪華は気にしていないのね」
「ペア組んでいるうちは大丈夫、って思うことにした」
メラニーの深いため息。真面目に悩んでいるのが馬鹿らしくなる。
「ありっちゃあり」
「ありありのあり、戻ろう」
◆
予定通りプレセンティアでドロップアイテムを売った。
予想より高めに売れたので雪華は満足だった。
かねてよりの懸案だった家の購入は、間取りで折り合いがつかずまた日を改めることにした。
二人は不動産屋に謝ったがよくある事だと言われて苦笑いするのみである。
そしていつものダンジョンへ帰るその途中の事だった。
妙な出来事に出くわしたのだった。
シーフとプーリストのペアだった。
端から見ていると、プーリストがお供をしている、もしくは子守り。
職業的に見てもレベル的に見てもその関係が適当だ。
事実、シーフがモンスターからダメージを受けると、適切にヒール呪文を使う。
「ついてくるなって言ってるだろ! ついてくるなよぉ……」
お目付け役がうっとうしいだとしても、シーフの絶望感が過剰すぎだ。
そのシーフはプーリストを死神とでも思っているかのようだ。
そのプーリストはどう見ても楚々とした美人に見える。
「ケケケケケ」
厄介ごとだなと雪華とメラニーは思った。
そしてまた関わるのはよそうとも思った。
ただ黙ってすれ違う、そのはずだった。
だが間の悪い時というのはあるもので、丁度草原の定番ホワイトワングの群れが全員を襲ったのであった。
ホワイトワングの一匹目はプーリストに襲い掛かったのである。
「メラニー!」
「はいさっ!」
ホワイトワングの群れに背を向けることになるがやむを得ない。
雪華はショートソードでプーリストを襲った一匹を倒した。
雪華の背後を襲う数匹のホワイトワングは、メラニーの大ハンマーフルスイングで蹴散らした。
シーフは三匹のホワイトワングに成す術もなく追いかけられていた。
雪華は小石で、メラニーはクロスボウで二匹をシーフから引きはがした。
一対一となったシーフはナイフを使ってどうにかホワイトワングを倒していた。
「なんて事するんだよ! もうちょっとでそのプーリストが死んだかもしれないのに!」
かく言うそのシーフもHP残がレッドゾーンになっていた。
「ヒール!」
プーリストのヒール、その恩恵にある者のセリフである。
雪華はピンときた。
「君、このプーリストさんに何かしたな」
「う、僕は悪くない! 呪いのアイテムを作ったやつが悪いんだ!」
支配の骸骨というマジックアイテムがある。
それは杭の形をしており、これを突き立てられた者は、服従するのである。
「この間までは良かったんだ、この間までは。なんでも素直に従っていたんだ。誰だよNPCにAiなんて実装したのは」
このシーフはユーザーでプーリストはNPCだった。
「ケケケケ。そういうことなのです。倫理コードまで破らせたのはクリティカルでした。聖職者に物を盗ませるなんんて。ケケケケ」
プーリストの胸元に骸骨が突き刺さっていた。
なるほど、そのケケケで反抗していると、二人は腑に落ちた。
そうしたら復讐だとプーリストは訂正した。
「地獄の果てまで追いかけるのです」
目が完全に逝っていた。
いやだいやだいやだいやだ、そのシーフはそればかりだ。
「その杭を抜けばいいんだろ?」
ちょっと雪華、大丈夫任せなさい、抜いたら呪われる可能性が、だから任せなさい、暫くにらみ合ったあと、メラニーは引き下がった。
結果から言うと抜いたところで呪われる事はなかった。
雪華はそれを布でぐるぐるにまいてバックパックにしまい込んだ。
服従の呪いが解けて、シーフはいつの間にか消えていた。
雪華は言う。
「プーリストさんはこれからどうします?」
「お礼をせねばならない身ですが、私はNPCプーリストなのでお役には立てません。王都に戻らなければ」
「ここからだと随分遠いですね。道中お気を付けを」
プーリストを見送った二人は、一路ソシルオ村への道をとった。
メラニーは不信感をあらわにしていた。
「で、どうするのそれ。私に使うとか」
「まさか」
「否定されるとそれはそれでショックだけどさ」
「ほら、うちらって新参者だから、ちょっと貢献してみようかと」
「雪華、貴方まさか」
「ダンジョンが我らを待っている~♪」