【TSF】ネットゲームの世界に転生しました ~魔王を討伐して富と名誉を~   作:とんべえ

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魔王討伐とダンジョン攻防戦

 二人が根城にしているダンジョンはソシルオ村の北北東に位置し、遠くないことから手軽なダンジョンとして知られている。

 

 地下三階まであるアンデッド系のダンジョンで、ボスモンスターは、アンデッドの最上級ヴァンパイアである。

 

 ウロボロスワールドでは八体存在する魔王の一つとして扱われるだけあり、倒すのに手間がかかる。

 

 特にここのヴァンパイアの場合は、ダメージが一定値を下回るとコウモリに化け、他のコウモリと紛れてしまう。

 

 逃げる前に殲滅させる大戦力が必要で、労力の割には見返りがない魔王と呼ばれている。

 

 そこで雪華は考えた。

 

「この服従の骸骨を使えば万事解決っ!」

 

 ヴァンパイアが覚醒する過程は既に分かっており、棺桶の扉を開けた直後を狙えばいい。

 

 レアアイテムが期待できる分強力なワーウルフは、ヴァンパイアが姿を見せないと出てこないのだ。

 

 それを逆手に取るのである。

 

「言いたい事は分かるけれど、そんな上手く行くかな」

 

 雪華の説明を聞いていたメラニーを含む終焉派の一派は、暇だしやるか、乗り気じゃないのでパス、久々のイベントだと、三者三葉の体である。

 

 ダンジョン地下三階は、洞窟ではなく地下神殿と言った方が正しいエリアだ。

 

 大広間の中央にある棺桶、それを開けたところからボス戦が始まる。

 

 雪華が言う。

 

「それでは皆さん、首尾よくよろしく」

「「「おー」」」

 

 メラニーと数名の騎士が棺桶のふたを開ける。

 

 現れたのは、間白い肌と真っ赤な唇と、大きな牙をもつリビングデッド、ヴァンパイアだ。

 

 事態はまだ動かない。

 

 ガタンと棺桶の扉がずり落ち、ヴァンパイアの目が開く。

 

 誰かが今だと叫んだ。

 

「えいっ!」

 

 雪華が服従の骸骨をヴァンパイアの胸に突き立てたのである。

 

「フハハハハ、愚かな人間どもよ、どもよ、ど、……ご命令を。我が主」

 

「寝てください」

 

「はい」

 

 再び棺桶に収まるヴァンパイア。

 

 企みは大成功である。

 

 寝てくださいは無いだろうと一部クレームが入ったが、ワーウルフの登場で気にする者はいなくなった。

 

 ワーウルフは高値で取引できるアイテムをドロップするのである。

 

「出たミスリル!」

 

「こちとら賢者の石だ!」

 

 雪華がワーウルフに向かったのでメラニーも慌てて後を追った。

 

 ガンガンガリ、ワーウルフの鋭いかぎづめで雪華のカイトシールドが悲鳴を上げる。

 

 ガンガリガン、雪華はただ凌いでいただけではない。

 

 一、二、三、とリズムを読んでいたのだ。

 

 

「一つっ、二つっ、三つーーっ!」

 

 雪華は三つ目のタイミングで強く押し返した。

 

 カウンターを取られワーウルフはたたらを踏む。

 

 素の隙をメラニーは見逃さなかった。

 

 炎の矢を二本当てたのである。

 

 そしてまた雪華も見逃さなかった。

 

 カイトシールドの先端をワーウルフの口に打ち込んだのだった。

 

((この機は逃さない!))

 

 二人は同時に攻撃をした。

 

 雪華のショートソードが真一文字の軌跡を描く。

 

 ワーウルフ胸がサクリと割れ、その膝が折れる。

 

 そこをメラニーが大ハンマーで唐竹に打ち下ろした。

 

「ぎゃうっ」

 

 モンスターを倒して経験値とドロップアイテムを得た、金剛石だった。

 

 二人よりレベルの高い者が多いこともあり、イベントは滞りなく進んだ。

 

「あのヴァンパイアどうする?」

 

「暫くこのままでよくね?」

 

「ワーウルフの方がおいしいしな」

 

「雪華さんメラニーさん。MVPに推薦しておくよ~」

 

「あ、隊長だ」

 

「これで二人もランカーだね」

 

「大手柄じゃ、しゃーないわ」

 

 こうして二人は、半期ごとに更新されるMVPリストに載り、終焉派どころか延命派すら大勢が知る名前となったのである。

 

 

 二人は大半から歓迎された。

 

「おめでとうございます!」

 

 それは敵対しているはずの延命派だった。

 

「か、ぺっ」

 

 それは同じ派閥の終焉派だ。

 

 レアケースだがこういう者たちもいた。

 

 二人は有名税だとあきらめた。

 

 露骨なのがウロボロス不動産のディーラーである。

 

「MVP様に相応しい物件をご用意いたしました」

 

 価格は五割増しだが、質は倍だった。

 

 膨れ上がる不満を必死に堪えて彼女らは契約書にサインした。

 

 プレセンティアの東南ブロックにある清閑な住宅街。

 

 風呂トイレ別、ダイニングキッチンの最上階、そして二間。

 

 確かに二間在ったが、備え付けのベッドは片方のみのキングサイズベッド一個のみ。

 

 二人は関係を持った。

 

 羞恥を取り繕うように二人は再びダンジョンの地下三階でワーウルフを狩り始めた。

 

 

 暫くたった頃である。

 

 ダンジョンの所有権を賭けた戦いを、終焉派が仕掛けた。

 

 全部で八あるダンジョンのうち、延命派は五つ所有しており、終焉派が勝てば一つ奪還してイーブンに、持っていけるのだ。

 

 戦場は新都のニュープレセンティアにあるコロッセウムだ。

 

 延命派と終焉派の双方が陣取り対峙していた。

 

 雪華とメラニーは左翼の打撃部隊に所属していた。

 

 戦闘開始のラッパが鳴る。

 

 最前列は大型のシールドとスパイクから構成されている第一次部隊だ。

 

 敵の攻撃をさばきながら身の丈の数倍はあろうというスパイクで刺しあうのである。

 

 永遠に続くかと思われた小手先勝負は徐々に距離が詰まり、近接戦闘の状況となった。

 

「突撃!」

 

 騎兵隊と共に雪華ら歩兵隊が進軍を開始。

 

 雪華は盾で敵兵の攻撃を巧みに捌くとスピアで突き返した。

 

 クリティカル発生、延命派の騎士が倒れ、ポータルで強制退場する。

 

 PVPでは体力〈HP〉が四分の一を切ると敗北判定が下されるのだった。

 

 雪華の背後に敵兵が迫る。

 

 その敵兵にはメラニーの大ハンマーが打ち下ろされた。

 

 その敵も判定が下され強制退場した。

 

「ナイスメラニー!」

「この調子で次いくよ雪華!」

 

 雪華が攻撃をすれば、その背後をメラニーが守る。

 

 雪華が防御に徹するとその隙をメラニーが突く。

 

 攻防一体のコンビネーションで二人は戦場を駆け抜けていった。

 

 その合戦は、終焉派の勝利で終わった。

 

 所有ダンジョン数四対四のイーブンだ、引き分けということである。

 

 ウロボロスのシステムは全アイテムリセットと言う判定を下した。

 

 元々終焉派は執着しない者が多いので、肩の荷が下りたと引退する者や、意気揚々と冒険を再開する者がいた。

 

 メラニーと異なり雪華は落胆の色を隠さない。

 

「ほら雪華また最初からやれると思えば、」

「メラニー、お家賃どうしましょう」

「あ”」

 

 

 ウロボロスとは自分の尾に食らいつく蛇の事である。

 

 喰らい続ければいずれ消滅だ。

 

 かといって何もしなければそれは死と同じことである。

 

 ウロボロスは今日も我々に問いかける。

 

 進むか、戻るか。

 

 すべてをリセットしてやり直すのを終焉派、可能な限り続けるのを延命派。

 

 答えが得られるのはもうしばらく先の事である。




ご愛読ありがとうございました。
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