【TSF】ネットゲームの世界に転生しました ~魔王を討伐して富と名誉を~ 作:とんべえ
「プレセンティア冒険者ギルド職員、セレスです。ご用件は何でしょうか」
この世界には冒険者ギルドと言うものがあり、冒険を始めるには、そこの認証を得る必要がある。
簡単に言えば試験だ。
鈴苑雪華は多くはないが少なくもない所持金を持っていたので、試験料を払い試験を受けることにした。
(この辺りはゲームスタート時と同じだな)
相対するのは中年の剣士である。
村人の服を着て木製の剣を持っていた。
他にも数名のギルド職員が立っていた。
審判に、証人となる未届け人だ。
(ゲームではNPCだったけども、ここまでリアルだと実在の人物と錯覚しそうだ)
NPCとは簡単に言えばプレイヤーのいないアバターの事だ、通例、セリフ等のパターンは限られている。
(いや待て待て。転生した世界なら実在の人物に決まっている)
「お客人。突っ立ってばかりじゃ試験になりません」
「あ、はい。すいません ――やぁっ!」
雪華が手にするのは木製の丸棒だ。
リーチの長さを生かし突いてみたが、剣士の木製剣にいなされた。
(クリックするのみのゲームとは訳が違うのは当たり前だ、よぅし!)
間髪おかず木製丸棒を引き戻し姿勢を正す。
「ふむ」
剣士はそう言うと鋭い一撃を雪華に打ち込むんだ。
彼女は、丸棒で真っ向から受け止め、その威力を逆に利用して、後ろに跳躍、距離をとった。
剣士は言う。
「良いでしょう。合格です」
「はい。ありがとうございます」
「とてもいい素質をお持ちだ。それではご武運を」
雪華の後姿を見送った試験担当の剣士は深い息を吐いた。
内に溜まったストレスを吐き出すようだ。
他のスタッフ達が言う。
「今の客、鈴苑雪華だっけか。あの切り返し、洒落じゃすまない早さだったな」
「持ち手の掴み替えなんざ見えない早さだったぞ」
「ユニークスキルかな」
「ここは初心者が来るところだぞ。それ以外ありえない」
「よしお前らそこまでだ。次の客に備えるぞ。それが俺らの仕事だからな」
職員たちを武者震いさせた事など雪華は知る由もない。
◆
プレセンティアと言う町は旧王都または古都とも呼ばれ、ウロボロス世界で最も大きく歴史の長い都市国家である。
それ故に観光や商売で多くの人が訪れ、賑やかだ。
雪華は人込みを分け入ったり避けたりしながら、装備の準備に奔走していた。
ワンピースに肩掛けという村人装備で、冒険なんてありえないので、雪華は防具屋と武器屋を何度か往復して、見立てみた。
彼女はせめて皮の鎧をと思ったが、あいにくと資金が足りない。
仕方ないと旅人の服で妥協した。
妥協はしたのだがデザインで窮した。
格好いいと思うのは大抵男物で、買う事はできるが妙な目で見られる。
それ以上にあうサイズの物がない。
合うサイズの物と言うと微妙に露出度が高い。
散々悩んだ挙句に、微妙なら妥協することにした。
店長の中年男性が言う。
「どうかなされましたか?」
「いえ、生地は厚くて良いのですが、ここの露出どうにかなりませんか」
「流行っている物では随分少ない方ですよ」
「そうでしょうね……」
雪華が転生する前の話である。
キャラメイクを得意とする見ず知らずのユーザーに、露出を増やせと煽った事もあったのだった。
(因果応報とはこの事か。とほほ)
武器は散々悩んだ末に、試験でも使った木製の丸棒を選んだ。
背の丈以上あり、長すぎたので武器屋に調整してもらった。
体力を回復する効果のあるポーションは一個のみ。
毒消し草は次回に先送り。
準備完了、町の近くのモンスターならどうにでもなる装備となった。
(早く稼いで装備を充実させよう)
プレセンティアに限らず、ほとんどの都は都市国家で、幾重の堅牢な壁に守られている。
都市内と外をつなぐのはゲートと言われる門だ。
衛士たちが詰めており、門の警備と維持を担うのである。
プレセンティアにある四つのうちの一つ、南にあるゲートには、巨大な客車と貨車を連ねた武装商隊〈アーマードトレーダー〉や冒険者らが行き交っていた。
冒険に向かう冒険者たちの列に並べば、彼らの熱気に充てられて、ワクワク感があふれ出る。
一人、また一人、冒険者証を提示し門をくぐっていく。
「冒険者証を拝見」
雪華は首から吊り下げていた小さなメタルプレートを提示した。
「どうぞ。道中お気を付けください」
門をくぐった先には、山よりも高い大樹に、浮遊する島、広い広い光景が広がっていたのだった。
冒険のスタートだ。
「よぅし」