【TSF】ネットゲームの世界に転生しました ~魔王を討伐して富と名誉を~   作:とんべえ

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いざ冒険開始、その前に。

「プレセンティア冒険者ギルド職員、セレスです。ご用件は何でしょうか」

 

 この世界には冒険者ギルドと言うものがあり、冒険を始めるには、そこの認証を得る必要がある。

 

 簡単に言えば試験だ。

 

 鈴苑雪華は多くはないが少なくもない所持金を持っていたので、試験料を払い試験を受けることにした。

 

(この辺りはゲームスタート時と同じだな)

 

 相対するのは中年の剣士である。

 

 村人の服を着て木製の剣を持っていた。

 

 他にも数名のギルド職員が立っていた。

 

 審判に、証人となる未届け人だ。

 

(ゲームではNPCだったけども、ここまでリアルだと実在の人物と錯覚しそうだ)

 

 NPCとは簡単に言えばプレイヤーのいないアバターの事だ、通例、セリフ等のパターンは限られている。

 

(いや待て待て。転生した世界なら実在の人物に決まっている)

 

「お客人。突っ立ってばかりじゃ試験になりません」

 

「あ、はい。すいません ――やぁっ!」

 

 雪華が手にするのは木製の丸棒だ。

 

 リーチの長さを生かし突いてみたが、剣士の木製剣にいなされた。

 

(クリックするのみのゲームとは訳が違うのは当たり前だ、よぅし!)

 

 間髪おかず木製丸棒を引き戻し姿勢を正す。

 

「ふむ」

 

 剣士はそう言うと鋭い一撃を雪華に打ち込むんだ。

 

 彼女は、丸棒で真っ向から受け止め、その威力を逆に利用して、後ろに跳躍、距離をとった。

 

 剣士は言う。

 

「良いでしょう。合格です」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「とてもいい素質をお持ちだ。それではご武運を」

 

 雪華の後姿を見送った試験担当の剣士は深い息を吐いた。

 

 内に溜まったストレスを吐き出すようだ。

 

 他のスタッフ達が言う。

 

「今の客、鈴苑雪華だっけか。あの切り返し、洒落じゃすまない早さだったな」

「持ち手の掴み替えなんざ見えない早さだったぞ」

「ユニークスキルかな」

「ここは初心者が来るところだぞ。それ以外ありえない」

「よしお前らそこまでだ。次の客に備えるぞ。それが俺らの仕事だからな」

 

 職員たちを武者震いさせた事など雪華は知る由もない。

 

 

 

 プレセンティアと言う町は旧王都または古都とも呼ばれ、ウロボロス世界で最も大きく歴史の長い都市国家である。

 

 それ故に観光や商売で多くの人が訪れ、賑やかだ。

 

 雪華は人込みを分け入ったり避けたりしながら、装備の準備に奔走していた。

 

 ワンピースに肩掛けという村人装備で、冒険なんてありえないので、雪華は防具屋と武器屋を何度か往復して、見立てみた。

 

 彼女はせめて皮の鎧をと思ったが、あいにくと資金が足りない。

 

 仕方ないと旅人の服で妥協した。

 

 妥協はしたのだがデザインで窮した。

 

 格好いいと思うのは大抵男物で、買う事はできるが妙な目で見られる。

 

 それ以上にあうサイズの物がない。

 

 合うサイズの物と言うと微妙に露出度が高い。

 

 散々悩んだ挙句に、微妙なら妥協することにした。

 

 店長の中年男性が言う。

 

「どうかなされましたか?」

 

「いえ、生地は厚くて良いのですが、ここの露出どうにかなりませんか」

 

「流行っている物では随分少ない方ですよ」

 

「そうでしょうね……」

 

 雪華が転生する前の話である。

 

 キャラメイクを得意とする見ず知らずのユーザーに、露出を増やせと煽った事もあったのだった。

 

(因果応報とはこの事か。とほほ)

 

 武器は散々悩んだ末に、試験でも使った木製の丸棒を選んだ。

 

 背の丈以上あり、長すぎたので武器屋に調整してもらった。

 

 体力を回復する効果のあるポーションは一個のみ。

 

 毒消し草は次回に先送り。

 

 準備完了、町の近くのモンスターならどうにでもなる装備となった。

 

(早く稼いで装備を充実させよう)

 

 プレセンティアに限らず、ほとんどの都は都市国家で、幾重の堅牢な壁に守られている。

 

 都市内と外をつなぐのはゲートと言われる門だ。

 

 衛士たちが詰めており、門の警備と維持を担うのである。

 

 プレセンティアにある四つのうちの一つ、南にあるゲートには、巨大な客車と貨車を連ねた武装商隊〈アーマードトレーダー〉や冒険者らが行き交っていた。

 

 冒険に向かう冒険者たちの列に並べば、彼らの熱気に充てられて、ワクワク感があふれ出る。

 

 一人、また一人、冒険者証を提示し門をくぐっていく。

 

「冒険者証を拝見」

 

 雪華は首から吊り下げていた小さなメタルプレートを提示した。

 

「どうぞ。道中お気を付けください」

 

 門をくぐった先には、山よりも高い大樹に、浮遊する島、広い広い光景が広がっていたのだった。

 

 冒険のスタートだ。

 

「よぅし」

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