【TSF】ネットゲームの世界に転生しました ~魔王を討伐して富と名誉を~ 作:とんべえ
雪華の発案で、ブラックスミスのメラニーはオイルランプの庇〈ひさし〉を叩いて伸ばして穴をあけ、火傷防止の保護具にしたのである。
雪華はそれをベルトにぶら下げた。
合点がいったメラニーは、もう一つ作り自分の物とした。
装備を整え、いざダンジョンセカンドトライである。
雪華はカイトシールドで守りつつ、スピアでスケルトンを突いた。
スケルトンの肋骨がひっかかり動きが鈍る。
その隙を突きメラニーは大ハンマーを打ち下ろす。
敵一に対し二人掛かりならば戦い方は対して変わりはない。
問題は複数のスケルトンがいた場合である。
雪華は両の手でカイトシールドを支え押し返す。
そこをメラニーが大ハンマーを打ち下ろす。
シールダーに徹しようがしよまいが、当然のことながら両手がフリーの方がいいに決まっている。
雪華が深い深呼吸しているのを見て、メラニーは出口近くまで戻ろうと進言した。
「さすがダンジョン一筋縄ではいかない。あれ以上増えたら逆に押し切られていたかも」と雪華は己を戒めた。
ダンジョンの出入り口付近は、他の冒険者はパーティーがたむろっているので休憩にはうってつけだ。
地面から現れたモンスターも近づかれる前に誰かが狩ってしまうので問題はない。
その場には幾人かのソロプレイヤーと二つ三つのパーティが各々都合のいいところで陣取っていた。
「「「……」」」
雪華は恐る恐る「今日が初めてです」と言った。
「こういう時、終焉派はいかんな」
「なんかこう祝福しようって起こりにくいですよね」
「自称も多いけどサバけてるよな」
「んだな。ようこそ終焉派に」
「微妙に矛盾してるw」
「wwwwwwwwwww」
「草狩るぞゴラァ」
その内の一つである雪華の元へ、一体のグールが運悪く向かっていく。
そうしたら、メラニーが撃ったクロスボウで火矢が命中し、その炎はグールの全身を覆いつくした。
とあるプーリストが「その火矢ってユニークスキル?」とメラニーに聞いたので彼女は「そうですよ」とためらいがちに答えた。
ある騎士〈ナイト〉が立ち上がる。
「俺も暴露する」
片手持ち剣の二刀流だった。
「あーすっきりした」
「ちょ、それよこせw」
「できないし、やらんw」
「ユニークスキルの噂は絶えなかったけれど、本当だったんだね」
別の騎士が「その辺にしておいて」と言いに来た、そうしたらある剣士が「隊長だ。いつの間に」と言った。
雪華が「隊長?」と言うと誰かが「終焉派のリーダー」と答えた。
「真一郎です。終焉派のリーダーをやってます」
「鈴苑雪華です」
「メラニー=メランナです」
「レアな話、特にユニークスキルの話は公然の秘密にしておくのが一番おさまりが良いから、いや、強制じゃないんですけど」
「「わかりました」」
「隊長もどぎつい奴持ってそう」
「あーあーきこえないっ!」
「約束の日が近いんじゃね? ユニークスキルとかアンバランスなモノが増えてくるって言うし」
「延命派が二連勝でしょ? 浮遊大陸が閉鎖されたのってそのせいだって言う人もいる」
「次来るかな。終焉派の勝利」
「審判だ、審判の日が来るのじゃ」
そのセリフは終焉派の隊長の物だ。
「鈴苑雪華さん、剣士ぐらいになっておいた方が何かと得だよ。それじゃ」
◆
「剣士以上のクラスでないとPVPできないから、かな」
「装備で見た目が変わるシステムだから、すっかり見落としてたねぇ」
「セレスさんも居るし、挨拶がてら一度戻りますか」
二人はプレセンティアに一度戻ることにした。
そして剣士系が集う酒屋である。
雪華はNPCの剣を絡め落とすように、叩き落とした。
彼女は無事剣士クラスになったのである。
武者修行をしてくると試験員〈NPC〉が変わったのはここだけの話だ。
「そのようなサービスは致しておりませんので、ご承知おき下さい」
おや、と雪華は思った。
聞こえてきたセレスの声は、随分と態度が固い。
冒険者ギルドに入れば、案の定、セレスにちょっかいをかける軟派野郎の図式であった。
「なぁ、なんでもお申し付けくださいって言ったのはあんたじゃねぇか、セレス」
見合う雪華とメラニー。
苛立たし気に腕をまくるのは雪華であり、憲兵案件だがやるしかないと気合を入れるのがメラニーである。
「ちょっとそこの騎士さん、いい年してセレスさんが嫌がってるのが分からないかな」
「なんだおまえは」
「セレスファンの一人」
「お登りはすっこんでな」
「そう言う訳にもいかない」
「PVPでもやろうってか。良い度胸しやがる。俺のレベルは――」
突如凛とした声が響いた。
「そこまでよ」
現れたのは聖騎士に相応しい出で立ちで、見るものを委縮させる威圧を持っていた。
「チッ、延命派隊長のロッサナ=ロッセリーニかよ。憲兵隊の真似事までするとは、せいが出るこった」
「真似事ではないわ。貴方が実在の様に、私たちも実在なのよ。詰所まで連れて行ってください」
「「ハッ」」
引き連れてきたであろう二人の騎士が不埒者を連行していった。
「セレスさん、もう少し早く連絡をください」
「タイミングが難しくて、そっけない態度も職員としてはご法度ですし」
ロッサナはチラと雪華らを見た。
「終焉派の割には殊勝な心掛けと言いたいのですが、見た通り私は延命派兼憲兵隊の隊長です。用件がないのなら立ち去るように」
立場の都合ならば言う事は特に無いと、雪華はロッサナを見送った。
間違いなく転生者だ、そうでなくてはあの威圧が説明できない、それでいて高いレベルの持ち主。
雪華は鋭い顔つきだ。
メラニーはこういう時雪華は男だと不安がる。
(大事になるのは避けたいんだけどねぇ)