黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~   作:ww12

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今回はクンヤン陣営の襲撃がメインの回です。
なのでキイコの出番はほとんど無く、ツルギの出番が多めです。

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前回のあらすじ


キイコがゲマトリアの下で鍛錬を積む中、アビドス高校ではオールドワンス候補生の黒霧姉妹の襲撃を受け、同時期に矯正局に収容されたクンヤンの生徒、美墨クーラの尋問が行われた。黒霧姉妹は対策委員会との死闘の末に長女のクナをホシノに殺され、クーラは尋問の途中で錯乱して意味深な言葉を発した後に頭が破裂して死亡した。

クンヤン人によるキヴォトスでの活動が日に日に活発化していたのだ。




Ep9.クンヤン強襲

 

 

ゲマトリアの隠れ家

 

 

ゴルコンダ

「虚無エネルギーの反応が1つ消えましたね。暁のホルスが片方を仕留めたようです。」

 

デカルコマニー

「そういうこった!!」

 

黒服

「クックックッ……暁のホルスでようやく互角と言ったところですか。キイコさんはどう思いますか?」

 

キイコ

「オールドワンスがこんな簡単に殺られる訳がねぇ。多分候補生だろうな。」

 

________________________

 

 

ヴァルキューレ警察学校

 

 

カンナ

「…………」

 

クーラ

『クンヤン連合学園10年、區藤フルア連合生徒会長……』

 

 

カンナは尋問で録音したクーラの音声を何度も聞いて情報の整理をしていた。クンヤン連合学園、そして區藤フルアという人物の存在。聞いた事も無い学校に首を傾げそうになるが、それ以上に気になる情報がこの後の音声に含まれていた。

 

 

クーラ

『這いよる混沌!!!生ける炎!!!狩り立てる者!!!蛇の父!!!主なる目!!!黒き者!!!闇に囁く者!!!千の顔を持つ月!!!眠れる者!!!声無く叫ぶ者!!!火山の主!!!原人の敵!!!白蛆!!!塵埃を踏み歩く者!!!山の恐怖!!!風に乗りて歩む者!!!黄衣の王!!!』

 

カンナ

(首謀者は區藤フルアと言っていたが、この17の意味深な言葉は誰かの異名にも聞こえる。まさか區藤フルアの部下で、最後の『黄衣の王』は蓮田キイコの事を指しているのか? もしそうだとすれば蓮田キイコは……)

 

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トリニティ総合学園

 

 

ハスミ

「蓮田キイコはまだ見つからないのですか?」

 

イチカ

「進展無しっす……あのレインコートマジでどこ行ったんすか…」

 

ツルギ

「私達の動きに勘付いて身を潜めたそうだな。キヴォトスの外に出た事も考慮した方がいいだろう。それよりも別の問題が発生中だ。」

 

ハスミ

「先生を襲撃した謎の学校『クンヤン連合学園』の生徒達の件ですね。」

 

ツルギ

「数時間前に先生から連絡が届いた。アビドス高校でも襲撃が有ったらしい。生徒5人中2人が重傷を負って病院送りにされたそうだ。それ以外にもキヴォトス各地でクンヤンの襲撃が相次いでいる。」

 

イチカ

「ええ!?アビドスって少数精鋭で負けるイメージが無かったから意外なんすけど!?」

 

 

トリニティ総合学園の正義実現委員会は蓮田キイコを捜索するも、依然として行方を掴めず、更にキヴォトスのあちこちで起こるクンヤン連合学園の襲撃が重なった事で難航してしまっていた。

 

 

ジリリリリリリ…

 

 

ハスミ

「もしもし……え、はい……今代わります。」

 

 

固定電話が鳴りだす。突然の電話で何か様子がおかしい事にツルギは一早く気付き、警戒心を露わにする。困惑するハスミから受話器を受け取り、ツルギは電話に出た。

 

 

ツルギ

「剣先ツルギだ。」

 

『やあ、話が出来て嬉しいよ。剣先ツルギ。』

 

ツルギ

「お前は誰だ。」

 

ナル

『僕はクンヤン連合学園10年、加雄間(かおすま)ナル。通り名は≪這いよる混沌≫。君達トリニティからすればゲヘナみたいな通り名に聞こえるかもね。』

 

ツルギ

「御託はいい、要件を言え。」

 

ナル

『君に伝えたい事が2つ有るんだ。なぁに、雑談じゃないよ。蓮田キイコの事に関する話さ。』

 

ツルギ

「分かった……聞かせてもらおうか。」

 

 

ツルギは警戒しつつもナルから情報を聞き出そうと要件を呑む。その様子を周囲はただ黙って見つめるしかなかった。

 

 

ナル

『キイコは元々僕が通っているクンヤン連合学園の生徒でね。僕より2つ下の後輩なんだ。キヴォトスで起きているクンヤン生徒の襲撃は、キイコの捜索を妨げそうな障害を取り除く為だよ。』

 

ツルギ

「先生もその障害だと? だから襲撃したのか?」

 

ナル

勿論さぁ。

 

ツルギ

「グギィィッ……!!もう1つの話は何だ…!?」

 

ナル

『補習授業部の阿慈谷ヒフミ、彼女の所に後輩達を大勢送り込んだよ。あの子は知り過ぎちゃったからね。当然の報いを受けてもらう。』

 

ツルギ

「何だと…?」

 

ナル

『心配なら早く行きなよ。まぁ行ければだけど、じゃあ僕はこれで。』

 

 

電話が切られ、ツルギは受話器を元に戻す。そして自身の銃であるブラッドとガンパウダーを手に取り準備を始めた。

 

 

ハスミ

「どこに行くんですか?」

 

ツルギ

「阿慈谷ヒフミの所だ。急がないと殺されてしまう。」

 

イチカ

「何かよく分かんないすけど、みんなに伝えておくっす!!」

 

________________________

 

 

ヒフミ

「間に合ってよかった……このペロロ様の期間が今日で最後だったから…」

 

アズサ

「パンクロック衣装……また凄いのが発売されたんだな。」

 

 

 

「暢気に買い物とは、キヴォトス人は随分と平和ボケしてると見た。」

 

ヒフミ&アズサ

「!!?」

 

 

背後からの声に驚いて振り返ると、そこには一斉に銃を向けるクンヤン連合学園の生徒達が立っていた。ボルトアクション銃や短機関銃を構え、先端には銃剣を取り付けている事から猛烈な殺意が溢れている事を2人は感じ取る。しかし応戦しようにも数的に不利であり、クンヤン生徒の数は少なくとも50人は超えていた。

 

 

クンヤン生徒A

「お前達はここで殺す。私達クンヤンの事を知り過ぎてしまったからな。」

 

アズサ

「なんて数だ……いつの間に…」

 

ヒフミ

「ど、どうしましょう…」

 

クンヤン生徒B

「こいつらビビっちまって銃すら構えてないな。」

 

クンヤン生徒A

「ああ、さっさと仕留めて撤収するぞ。狙え!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカ

「撃てぇぇぇぇええ!!!!」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 

クンヤン生徒A

「なぁっ!!?正義実現委員会!!!怯むな迎え撃て!!!」

 

 

バンッ バンッ ドドドドドドドドド

 

 

正実生徒A

「ぐあっ!!?」

 

正実生徒B

「がああっ!!!」

 

 

間一髪で駆け付けたイチカ率いる正義実現委員会との撃ち合いが始まる。クンヤンの生徒達が放つ弾丸は神秘を消し飛ばす虚無を纏っている為、キヴォトス人特有の頑丈さは意味を成さず、次々と正義実現委員会の生徒達を撃ち抜いていく。同時にキヴォトス人程の頑丈さを持たないクンヤンの生徒達も、正義実現委員会の生徒達が放つ弾丸に撃たれて次々と倒れていった。それはキヴォトスでは日常であるはずの銃撃戦が、本物の殺し合いに変わっていく事を意味していた。

 

 

アズサ

「双方共に死人が出てるぞ……これがキヴォトス人とクンヤン人の戦いか…」

 

ヒフミ

「止めてください!!!こんなのって…!!」

 

イチカ

「早く逃げるっす!!!こいつらはあんたらを狙ってるんすよ!!!」

 

アズサ

「この場は正義実現委員会に任せた方が良さそうだ。逃げるぞ!!」

 

 

アズサはヒフミの手を引いて走り出す。背後からの銃声が聞こえなくなるまで走り続け、トリニティ自治区内の自然公園前に到着した。

 

 

アズサ

「よし……ここまで来れば…」

 

ヒフミ

「死んでいった……沢山死んで…」

 

アズサ

「キイコと初めて会ったときに聞いていたが、想像以上だったな……」

 

ヒフミ

「この先何人死ぬんでしょうか…私、怖い……」

 

アズサ

「そんな事考えたくもないな……っ!!?」

 

 

アズサが何者かの気配を察して銃を構える。すると近くの草むらの中からクンヤンの生徒が姿を現し、手に持ったナイフをアズサに目掛けて死角から振り下ろしてきた。そのクンヤンの生徒は2人を見下せる長身であり、アズサが銃で防御するのが精一杯になる程の力量を秘めていた。

 

 

ヒフミ

「アズサちゃん!!!」

 

アズサ

「逃げろヒフミ!!!こいつは私が押さえる!!!」

 

ヒフミ

「でも…!!」

 

長身クンヤン生徒

「まずはお前…その次はぁぁぁあああ!!!」

 

 

ヒフミは銃を構えようとするが、クンヤン生徒の殺意溢れる気迫に怯んでしまう。アズサはナイフの先端が額に届いて出血しつつも押し返そうと抵抗を続けた。

 

 

アズサ

「早く行けええ!!!」

 

ヒフミ

「っ…!!!」

 

 

ヒフミは言われた通りに自然公園の奥へと走り、アズサと長身のクンヤン生徒だけが残る。アズサはこのまま目の前のクンヤン生徒を退けようとするが、力量ではクンヤン生徒の方が未だに勝っていた。

 

 

長身クンヤン生徒

「さっさと死ねキヴォトス人!!!」

 

アズサ

「やってみ……うおっ!!?」

 

 

バァン!!!!

 

 

左からの新たな気配に気付いて視線をずらしたアズサは顔を青ざめて飛び退く。クンヤン生徒もその方向に視線を向けた途端、銃声と共に頭が肉片となって倒れた。

 

 

ツルギ

「間に合ったか。」

 

アズサ

「つ、ツルギ先輩……」

 

ツルギ

「阿慈谷ヒフミはどうした? 一緒じゃなかったのか?」

 

アズサ

「そこの自然公園の方に逃げ込んだ。私は時間稼ぎでクンヤン人を足止めしていた。」

 

ツルギ

「そうか、ご苦労だった。ここからは私が行く。お前はそこで待っていろ。」

 

 

ヒフミを捜す為に自然公園に入り、両手に持った散弾銃の装填を行う。すると懐のスマホから電話が鳴りだし、ツルギはすぐに出た。

 

 

ツルギ

「もしもし……」

 

ナル

『ヒフミは逃げ足が速いみたいだね。正義実現委員会の助けが入ったとはいえ、あれだけの大人数を切り抜けるなんてさ。』

 

ツルギ

「その声は加雄間ナルっ…!!」

 

ナル

『何故君のスマホの電話番号を知ってるのかって聞きたいんだろうけど、生憎それは答えられないなぁ。それより、送り込んだ後輩達の中で一番腕の立つ3人組が自然公園に入っていったよ。ま、精々食われないようにする事だね。剣先ツルギ。』

 

ツルギ

「クソッ…!!!」

 

 

駆け足で自然公園の奥へと進み、ヒフミを捜すツルギ。一方ヒフミは自然公園内の大きな池の近くにおり、設置されていたベンチの上で横になっていた。

 

 

ヒフミ

「大丈夫……アズサちゃん、コハルちゃん、ハナコちゃん……それに先生が助けてくれます……でも、もしかしたらキイコさんが……」

 

 

ガサガサッ…

 

 

ヒフミ

「ひっ!?」

 

 

茂みからの音を聞いて飛び起き、銃を構える。その手は震えており、ちょっとした事で落としそうになる程の乱れた構えだった。何が潜んでいるのか分からない恐怖に息も段々と荒くなり、心臓の鼓動は速く、顔からは汗が溢れ出していた。

 

 

ヒフミ

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 

 

 

ガサガサガサガサ!!!

 

 

 

 

ツルギ

「私だ、阿慈谷ヒフミ。正義実現委員会の剣先ツルギ。」

 

ヒフミ

「ツルギ先輩!?」

 

ツルギ

「無事のようだな。奴らの幹部がお前を殺す為に手練れの3人が自然公園に入ったと電話で伝えてきたものだから、私も駆け足で来た。」

 

ヒフミ

「アズサちゃんは!!?」

 

ツルギ

「白洲アズサは無事だ。自然公園内の道中でハスミに保護するよう伝えておいた。」

 

ヒフミ

「よかった……」

 

ツルギ

「すぐにここを離れるぞ。奴らの手練れとなると私でも苦戦を強いられるかもしれな……っ!!?一足遅かったか…!!!」

 

 

大きな池の向こう岸から草木を掻き分ける音が鳴りだし、3人の人影が飛び出した。その人影は木の葉の隙間から差し込む日光でハッキリと姿を晒されたが、その姿は2人の想像を超えるものだった。

 

 

「グルルォォゥ!!!」

 

「ワ˝ンワ˝ンワ˝ンッ!!!ワ˝ン、ワ˝ンワ˝ン!!!」

 

「クハァァァアアア……!!!」

 

 

ナルが電話で言及した手練れの3人。それはクンヤンの制服を着ていたが、上半身が人狼その物と化しており、人間の面影を残しているのは頭の髪型と尻尾を除く下半身だけであった。上半身を覆う体毛の色はそれぞれが黒、白、茶色の3種類で、黒は全体的に筋肉質でガタイが良く、白は細身だがツルギ越えの長身であり、茶色はワニのような大顎を持っていた。

 

 

ヒフミ

「何ですか、あれ…」

 

ツルギ

「ヒフミ、下がっていろ。こいつらは私がっ……!!!」

 

 

ツルギの表情が狂気染みた笑みに変わっているのを見て、ヒフミは大人しく従いツルギの背後の茂みに身を隠す。歩く戦略兵器と呼ばれる剣先ツルギと人狼化した3人のクンヤン生徒。木々に囲まれた静かな自然地帯で戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

ツルギ

「さぁ来い…!!キヒィッ!!!」

 

 

黒人狼

「グワ˝オゥ!!!」

 

白人狼

「ワ˝ンワ˝ンッ!!!」

 

茶人狼

「ガァァアアアア!!!」

 

 

向こう岸から大きな池を跳躍で飛び越えてツルギの前に降り立つ3人の人狼。ツルギは早速散弾銃を発砲するも俊敏な動きで躱されて接近を許してしまう。しかし瞬時に散弾銃を鈍器のように振り回す戦法に切り替え、人狼達の攻撃を受け流して強烈な一撃を叩き込む。この様子をヒフミは黙って見ているしかなかった。

 

 

ヒフミ

(ツルギ先輩……私の為に…)

 

茶人狼

「グォォゥ!!!」

 

ツルギ

「ギハハハ!!!そう来たか!!!」

 

 

茶人狼が左手に持った散弾銃の銃身に噛み付き、射撃の妨害をする。ツルギはすぐに右手に持った散弾銃で茶人狼の頭を狙うが、今度は黒人狼に右手の散弾銃の銃身を噛み付かれてしまった。残った白人狼は射撃が上手く出来なくなったツルギを確認した後に標的を変え、茂みに隠れていたヒフミに襲い掛かった。

 

 

白人狼

「ワ˝ンワ˝ンッ!!!」

 

ヒフミ

「え!?きゃあああああ!!!」

 

ツルギ

「ギィ!!?ヒフミ!!?クソッ!!!!」

 

 

黒人狼と茶人狼を無理やり振り解き、白人狼に散弾銃を向ける。しかし白人狼はそれを察知していたのか、ヒフミを無理やり立たせると首を掴んで自身の前に翳した。

 

 

ツルギ

「っ!!!こいつ……!!!」

 

黒人狼

「グォォオオオ!!!」

 

ツルギ

「ぐあぁっ!!?」

 

 

ヒフミを盾にされた事で射撃を躊躇ってしまい、その隙を突いた黒人狼に右手を噛み付かれて散弾銃を落とす。すると白人狼は用済みと言わんばかりにヒフミを投げ捨てて散弾銃を拾い上げ、その場でバラバラに分解してしまった。ツルギは左手の散弾銃で右手に噛み付いた黒人狼を狙うが、今度は茶人狼が左手に噛み付く。またしても散弾銃を落としてしまい、再び白人狼がそれを拾って分解した。武器を失ったツルギは人狼達と取っ組み合いながら森林地帯の方へと転がっていき、ヒフミから離れていった。

 

 

ヒフミ

「そんな……ツルギ先輩が……」

 

 

体の彼方此方を噛み付かれて血だらけになるツルギ。茶人狼はツルギの左足に牙を食い込ませ、黒人狼は馬乗りになって顔面に食らい付こうと口を開ける。ツルギは左手で噛み付きを防ぎ、右手で黒人狼の左手を掴むと大きく口を開けて噛み返した。

 

 

ツルギ

「あぁぐぅっ!!!」

 

黒人狼

「グゥルォッ!!?」

 

白人狼

「ワ˝ァウッ!!!」

 

ツルギ

「お˝ぁっ!!?……かはっ!!」

 

 

黒人狼を退けたのも束の間、白人狼がスカートを捲り上げてその奥の股間に噛み付いた。ツルギはすぐに白人狼の頭を掴んで引き剥がし*1、そのまま勢い良く立ち上がる。そして白人狼に拳を叩き込み、その直後に白人狼の片足を掴んで体勢を立て直した黒人狼に叩き付けた。

白人狼と黒人狼に反撃した後は、未だに左足に噛み付いている茶人狼の片足を掴んで持ち上げる。片足を掴んで持ち上げられた事で、茶人狼は制服のスカートが裏返り、体毛に覆われてない生足と下着が露わになった。

 

 

茶人狼

「ググゥゥゥウッ!!!」

 

ツルギ

「キェェェェアアア˝ア˝ア˝ア˝!!!!」

 

 

ズドゴォッ!!!

 

 

茶人狼

「ゴガッ……」

 

 

そんな茶人狼の無防備になった股間に先程の意趣返しと言わんばかりの拳を叩き込み、顎の力が無くなった隙を見て投げ捨てる。しかし人狼達は見かけ以上に頑丈であり、黒人狼と茶人狼はすぐに起き上がってツルギを挟み撃ちするように回り込んでいた。

 

 

黒人狼

「グルル…グゥォオッ!!!」

 

茶人狼

「グゥ、グゥオオオオ!!!」

 

 

同時に飛び掛かるが、ツルギは両足に力を込めて跳躍し、真上に有る木の枝に飛び乗る。黒人狼と茶人狼は飛び掛かりで互いにぶつかってしまうもすぐに体勢を整え、ツルギが飛び乗った木のすぐ隣に生えた木を登って追い付き、黒人狼はツルギが乗っている枝に飛び移った。

 

 

黒人狼

「グゥルル…!!」

 

ツルギ

「くっ……」

 

茶人狼

「ゴァァアアアウッ!!!」

 

ツルギ

「ぐぁっ、があああ!!?」

 

 

黒人狼を迎え撃とうとした矢先に死角から茶人狼が左肩に噛み付き、その直後に黒人狼は正面から飛び掛かる。死角と正面からの同時攻撃にツルギは抵抗するも、足を滑らせて枝から落下してしまう。黒人狼と茶人狼も一緒に落ちて別の枝に体を強打し、その衝撃で折れた枝と共に地面に激突した。その光景はヒフミの目に焼き付き、言葉を失わせるには十分であった。

 

 

ヒフミ

「っ……!!!」

 

 

茶人狼

「ググゥゥゥ…!!」

 

ツルギ

「離…れろっ!!!」

 

 

落下しても尚左肩に噛み付いたままの茶人狼の頭に近くに有った大きな石を叩き込み、無理やり引き剥がす。その直後、ツルギを目の前を白い影が通り過ぎてヒフミに向かって行った。

 

 

白人狼

「ワ˝ァウッ!!!」

 

ヒフミ

「きゃああああああ!!!」

 

ツルギ

「いい加減に……」

 

黒人狼

「グォォオオオ!!!」

 

ツルギ

「しやがれぇぇええええ!!!!」

 

 

ズゴォッ

 

 

ヒフミの救助を妨害しようと飛び掛かかった黒人狼の喉の奥に拳を捻じ込み、腕力だけで黒人狼を真上に持ち上げて地面に叩き付ける。そして口から腕を引き抜き、頭を勢いよく踏み付けた。

 

 

ツルギ

「キェェェェェアアアアアアア˝ア˝ア˝ア˝!!!!」

 

 

ドグチャッ!!!

 

 

踏み付けられた黒人狼の頭は割れ、脳や目玉が外に飛び出して絶命する。そのままツルギはヒフミの上で馬乗りになっている白人狼の背後に歩み寄って首を掴んだ。

 

 

ガシッ

 

 

白人狼

「ワ˝ウッ!!?ガァフッ……!!」

 

 

ミシミシミシミシ……

 

コキャッ

 

 

ヒフミ

「ひっ!!?」

 

ツルギ

「…………」

 

 

握力で首の骨を折り、白人狼は絶命する。その後白人狼は遠くに投擲され、その先に有った木の枝が体を貫いた。

 

 

ツルギ

「ヒフミ……私は大丈夫だ…」

 

ヒフミ

「ツルギ先輩……」

 

 

茶人狼

「グゴァァアアアアア!!!」

 

ツルギ

「ぐぁああ!!」

 

ヒフミ

「きゃあ!?」

 

 

再び左肩に噛み付く茶人狼。ツルギは無理やり引き剥がし、指や掌に牙が食い込む事も厭わず顎を抉じ開けようとする。茶人狼はこのまま手を噛み千切ろうと顎力を強めて抵抗するが、次第にツルギの腕力に押され始めた。

 

 

メギィッ

 

 

茶人狼

「ハガッ……!?」

 

 

ガッ ドサッ

 

ブチブチブチ…

 

ビギィィィイイイイイ!!!

 

 

顎が外れて呆気に取られる茶人狼をツルギは足払いで仰向けに転ばせ、上顎を踏み付けて押さえ込む。そして下顎を掴んで腹の位置まで引き裂き、茶人狼は肋骨や内臓が剥き出しになって絶命した。

3人の人狼を倒し終えたツルギは満身創痍になっており、息を切らしている。ヒフミはツルギの猟奇的な止めに恐怖しつつも声を掛けた。

 

 

ヒフミ

「あの……」

 

ツルギ

「体の治りが遅い……いつもならとっくに完治しているはずだが……」

 

 

フラフラの足取りで近くの木に寄って座り込む。しばらくすると体中から蒸気のような白い煙が昇り始め、ツルギの傷は見る見るうちに塞がっていった。

 

 

ツルギ

「私としたことが、無茶な戦い方をしてしまったな……」

 

ヒフミ

「あ、いえ……私は気にしてませんから…助けてくれてありがとうございます。」

 

 

分解されて散乱する散弾銃の部品を見て呟いたツルギにヒフミは冷や汗をかきつつもフォローを入れる。更にしばらくするとツルギは立ち上がり、懐からスマホを取り出した。

 

 

ツルギ

「ハスミ、私だ。ああ、少々手こずったが、阿慈谷ヒフミは守り切った。すぐそっちに向かう。」

 

 

その後ツルギとヒフミの2人は自然公園の外を目指して歩き始める。その様子を木の陰から見ている者がいた。湾曲したアホ毛を持つ銀髪のロングで背が高く、黒いブレザーに灰色のベストを纏い、黒いストッキングに革のブーツを履いたその女性は小さく笑いながら呟いた。

 

 

ナル

「剣先ツルギ……兆しの段階だけど、あの土壇場で()()()()()()()()()()させていたね。能天使カマエルの力、まだまだ伸び代が有りそうだ。」

 

________________________

 

 

キイコ

「っ!!!!」

 

黒服

「どうかしましたか?」

 

キイコ

「微かに感じたぞ……キヴォトス人の誰かが神性魂を一瞬だけ覚醒させやがった。」

 

黒服

「それは驚きですね。神性魂はクンヤン人だけが持っているものとばかり…」

 

キイコ

「こりゃあグズグズしてらんねぇぞ。もっと鍛えて力を付けないと………」

 

 

ツルギが無意識に放った神性魂から溢れる神秘エネルギーはキイコが勘付く程に強力なものだった。キイコはこれに対抗するその時に備えて更なる鍛錬を行い、マエストロが作り出したミメシスと何度も戦い続ける。

 

 

そしてその鍛錬の末に、キイコは新たな技を獲得した。それを披露するのは、この翌日に起きたキヴォトス人に大きなショックを与える重大事件の最中である。

 

 

*1
当然ながら下着の一部が牙に引っかかって破れている






キイコの新技は次回お披露目です。


今回ツルギと交戦した人狼達は神性魂で変身したクンヤンの生徒で、一見野性的に見えますが知能は滅茶苦茶高い方です。行動パターンも1人1人が決まっていて、


・黒人狼→筋肉質な体格を活かして正面からのゴリ押し戦法を多用する

・白人狼→人狼達のリーダー格で、ツルギよりも本来の標的であるヒフミを優先して狙っている

・茶人狼→死角からの奇襲を多用して強靭な顎で噛み付き続ける


といった感じになっています。
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