黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~ 作:ww12
今回はキイコがゲヘナで大暴れします。
相変わらずモブが凄惨な事になるので苦手な方は注意。
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前回のあらすじ
キイコは先生達と共にトリニティに行き、誤解を解く為にティーパーティーと面会を行う。しかしキイコはトリニティの気品溢れる空気の裏に潜む陰湿さに気付き、じわじわと怒りを蓄積させていた。そして帰り際にその怒りが爆発してしまい、その場にいたトリニティの生徒達を素手で殲滅した挙句、聖園ミカとの一騎打ちで彼女を圧倒してしまう。これが原因となって先生とは再び対立してしまい、キイコは先生を置き去りにして一足先にゲヘナへと向かう。ところが向かった先のゲヘナで美食研究会と鉢合わせし、食事休憩に水を差された事で再び激怒。彼女達を瓦礫の下敷きにしてその場を後にする。そしてその瞬間を風紀委員会の銀鏡イオリが目撃しており、今度は風紀委員会に追われる事となった。
美食研究会を瓦礫の下敷きにして一息ついたキイコは当ても無くゲヘナの街中を歩き続ける。その背後からはイオリを始め、風紀委員会の生徒達が尾行しており、既にキイコはそれに気付いていた。
キイコ
「おい………随分と下っ手くそな尾行だな。」
イオリ
「何だ、気付いていたのか………なら言わせてもらうぞ。お前を拘束する。無駄な抵抗はするなよ。」
キイコ
「まさかあの阿婆擦れ共の事で怒ってんのか? 悪ぃのはあいつらだろうが。」
イオリ
「確かに非が有ったのはあいつらだ。だがお前があいつらにした事は度が過ぎている。下手をすれば死んでいたんだぞ。」
キイコ
「死んだら死んだでこれ以上店を爆破されなくて済むじゃねぇか。面倒事が減るのに何の不満が有る?」
イオリ
「お前って奴は……!!もういい、各員撃ち方始め!!!」
建物の陰に隠れていた風紀委員達が姿を現し、キイコに目掛けて発砲する。キイコはすぐさま走り出し、建物の隙間に入り込んで逃走を始めた。当然風紀委員達は追跡を始めており、イオリはその間に別動隊へ連絡を入れる。
イオリ
「蓮田キイコを発見した!!奴は東部市街地から北西方向に逃走中!!チナツ、そっちに向かっているぞ!!」
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チナツ
「こっちに来ているようですね……各自警戒態勢!!」
チナツが率いる風紀委員の別動隊は自分達の持ち場にキイコが来るという報告を受け、銃を構えて待ち構える。少しすると正面の道からキイコが真っ直ぐ走ってくるのが見えた。
キイコ
「チッ……」
チナツ
「撃て!!」
弾幕が張られる中でキイコは全身にノイズを纏い、チナツに急接近して飛び蹴りを仕掛ける。チナツは間一髪で躱すが、キイコはそのまま奥の方へと走り去ってしまった。
チナツ
「追跡してください!!」
イオリ
「チナツ!!奴はどの方角に向かった!?」
チナツ
「真っ直ぐ走っていきました!!銃器工場に向かっています!!」
イオリ
「銃を手に入れるつもりか!?逃がすな追えぇええ!!」
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キイコはひたすら走って柵や車を飛び越え、時には屋根に上ったりとパルクールのような動きで風紀委員会の追跡を振り切ろうとする。そして狭い通路に下りて真っ直ぐ走り抜け、その先の角を曲がった。
ドッ
キイコ
「ぐっ!?」
ゲヘナ生徒A
「あだっ!!?」
バシャァッ
ゲヘナ生徒B
「うわっ!?」
角を曲がった先で4人グループのゲヘナ生徒達とぶつかってしまい、ぶつかったゲヘナ生徒が持っていたジュース缶の中身が零れ落ちる。その一部はゲヘナ生徒の制服を汚してしまい、4人はキイコを睨み付けた。
ゲヘナ生徒A
「どーしてくれんだおい!!!零した上に汚れちまったじゃねぇか!!!」
キイコ
「悪ぃな。」
ゲヘナ生徒B
「悪ぃなで済むかゴラァ!!!」
ゲヘナ生徒C
「待てぇえ!!!」
ゲヘナ生徒D
「有り金置いてけぇえ!!!」
キイコは4人を無視して銃器工場の中に入っていくが、4人も執拗に追いかけて工場内へと入っていく。その瞬間を風紀委員の1人が目撃していた。
風紀委員A
「ターゲットは銃器工場に入っていきました。余計なのも一緒にいますが……」
イオリ
『余計な奴ら? まさか温泉開発部か?』
風紀委員A
「いえ、ただの不良が4人だけです。」
イオリ
『ならすぐに奴から離れるよう警告しろ!!殺されるぞ!!』
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ゲヘナ生徒B
「あいつどこ行きやがった!?」
ゲヘナ生徒A
「捜せ!!まだ近くにいるはずだ!!」
キイコ
「しつけぇなあいつら……」
部品を流すコンベアーが置かれた広い工場内をキイコは隠れながら進み、その後を4人のゲヘナ生徒が辺りを漁りながら追って来る。どうにか撒こうと複雑な通路を進み続けるが、別のフロアに続くドアを開けた途端にゲヘナ生徒2人に見つかってしまった。
ゲヘナ生徒C
「あっ!!」
ゲヘナ生徒D
「見つけた!!おーいこっちだ!!」
キイコ
「クソッ!!」
近くの窓ガラスを突き破り、その先の階段の手摺を飛び越えて逃走するが、4人は逃がすまいと銃を構えて発砲した。
ドドドドドドドドド!!
キイコ
「うぐぁっ!!!??」
ゲヘナ生徒B
「よし当たった!!!」
右足に2発被弾し、転倒してしまう。キイコは這いずりながらも身を隠そうとするが、4人は段々と距離を詰めてくる。最早万事休すと一瞬思い込んだが、今こそアレを使う時ではないのかと考える。
キイコ
(クッソ……まさかここに来て撃たれるとは………この傷を治すには少し時間が掛かるし………やるしかねぇか。理性が吹っ飛びそうになるが、かと言ってこのまま捕まる訳にもいかねぇ!!)
ゲヘナ生徒C
「よーわっ、貫通して血出てるじゃん。」
ゲヘナ生徒A
「お前ら周りを見張ってろ。風紀委員が来てるかもしれないからな。」
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チナツ
「撃たれたみたいですね……」
イオリ
「殺されたら先生襲撃事件の情報が聞き出せなくなるぞ。」
チナツ
「私が麻酔を打ち込んであの4人を黙らせます。その間に蓮田キイコを拘束してください。」
麻酔針を入れた弾倉を拳銃に装填し、工場の空いた窓から狙いを定める。4人はチナツに気付いておらず、床に倒れたキイコを囲んでいた。その内1人は丁度射線に立っており、チナツは麻酔針を発射した。
パシュッ
ゲヘナ生徒D
「いたっ……んぁ………」
ドサッ
ゲヘナ生徒B
「ん? どうした!?」
ゲヘナ生徒C
「何か針刺さってる……まさかもう風紀委員が来たの!?早く逃げなきゃ!!」
ゲヘナ生徒A
「待てよ!!まずはこいつの有り金を分捕って…」
ガシッ
べキャッ
ゲヘナ生徒A
「い˝っ…!!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
キイコの懐を探ろうとした途端、右足から折れるような音が鳴り暗闇の奥へ引っ張られる。更に倒れていたはずのキイコと麻酔で眠ったゲヘナ生徒の姿が一瞬にして消えており、残された2人は暗闇の方へ視線を向ける。
ゲヘナ生徒B
「ね、ねぇ……」
ゲヘナ生徒C
「悪い冗談止めてよ…」
ブォンッ ガシャァ!!!
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ベシャッ
チナツ
「きゃっ!!?」
イオリ
「何だ!!?」
ガラスを突き破って風紀委員達の所へ飛んできたのは頭と四肢を失った2つの胴体であり、どちらもゲヘナの制服を着ている。断面からアスファルトに血溜まりを広げ、それを見た風紀委員達は悲鳴を上げた。
風紀委員A
「ひっ…あぁぁああ!!?」
風紀委員B
「いやぁあああ!!!」
イオリ
「直視するな!!!クソッ、とうとうやりやがった…!!!チナツ、アコちゃんに報告!!奴に絡んだ不良が2人殺された!!!」
チナツ
「分かりました!!」
イオリ
「第1、第2班は私に続け!!これより工場内に突入し奴を仕留める!!最早拘束は不可能だ!!見つけ次第射殺しろ!!!」
「「「「了解!!!!!」」」」
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ゲヘナ生徒B
「今のは何だったの?」
ゲヘナ生徒C
「ってちょっと!!血が…!!」
ゲヘナ生徒B
「え……ひぃぃ!!?」
床は勿論、自分らの顔や制服に血が付着していた。血を見てパニックになる中、暗闇の奥から唸り声が聞こえてくる。2人は恐る恐る暗闇に視線を向けると、その奥で黄色い小さな光が2つ並んでいるのが見えた。
キイコ
「グォォォォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!」
イオリ
「今の叫び声は…」
ゲヘナ生徒C
「うわぁぁぁああああああああ!!!!」
ゲヘナ生徒B
「あ、風紀委員会!!助けて!!!化け物が……」
ドスッ
ゲヘナ生徒B
「がふっ……」
先端部を尖らせて硬質化した触手が心臓を貫き、更に幾つもの触手が手足に巻き付いて暗闇の奥へと引っ張っていく。その後片方の靴だけが暗闇の奥から飛んできた。
ゲヘナ生徒C
「また殺されちゃった……もう嫌だあああ!!!」
ガシッ
ゲヘナ生徒C
「あっ嘘!?嫌ぁぁあああああああ!!!!」
イオリ
「クソッ!!!いい加減にしろ蓮田キイコ!!!!」
逃げようとするゲヘナ生徒の足を触手が掴み、暗闇の奥へと引き摺って行く。イオリは手に持った小銃を発砲するが、奥が暗闇となっている為に手応えが有るのかは分からなかった。すると暗闇の奥の壁に小さな照明の光で影が映り、イオリはそこに視線を向ける。その影は先程引き摺り込まれたゲヘナ生徒が両足を触手で掴まれて逆さ吊りにされていた。
ゲヘナ生徒C
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!もう悪い事しません!!!悔い改めます!!!いい子になります!!!お願いします!!!許して…」
ギギギギギ……
ゲヘナ生徒C
「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!い゛だい゛!!!い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛!!!裂゛げぢゃ゛う゛!!!千゛切゛れ゛ぢゃ゛う゛!!!千゛切゛れ゛ぢゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」
ブチブチッ バギャァッ!!!!
両足を無理やり真横に開かされ、そこから左右同時引っ張られた事で股関節が裂けて千切れてしまった。イオリは影だけでもその惨たらしさを感じ取り、頭の中で怒りと恐怖がぐちゃぐちゃになりながらも小銃を構え、風紀委員達を連れて奥へと進み始める。
イオリ
「単独行動は避けろ。まだ近くにいる。」
風紀委員A
「っ!!ターゲット発見、真正面です!!」
イオリ
「撃てぇっ!!!」
無数の銃弾がキイコの背中に目掛けて放たれ命中する。しかし銃弾は貫通せず、分厚いゴムにぶつかったような鈍い音を立ててポロポロと床に落ちていった。キイコは背後から撃たれた事に気付くと黄色い眼光を放ちながら振り返り、イオリ達を視界に捉える。
イオリ
「散開しろ!!!!」
キイコ
「グォォオオオオアアアアア!!!!」
ガシッ
風紀委員B
「あぁ!!?助け…いぎぁぁあ゛あ゛あ゛!!!!」
ミシミシ…グシャッ!!!
工場内の設備を蹴散らしながら迫り、風紀委員の1人の頭を掴んで握り潰す。その断末魔は外にまで響いており、チナツは冷や汗をかいていた。
チナツ
「大丈夫でしょうか……」
アコ
『チナツ、現在ヒナ委員長と万魔殿の部隊がそちらに向かっています。到着するまで絶対に蓮田キイコを逃がさないでください。』
チナツ
「分かりました…!!」
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イオリ
「撃ち続けろ!!!」
ドドドドドドドドド!!!
風紀委員C
「助けっ…!!お母さん!!!お母さ…」
ズグシャッ!!!
ガチュッブチッパキッ ゴクッ
風紀委員D
「ひっ、脳みそ食べてる……」
イオリ
「化け物が…!!」
ドドドドドドドドド!!!
キイコ
「グゥウ……!!」
集中射撃で捕食の邪魔をされたキイコは風紀委員の死体を投げ捨て移動を始める。イオリ達は工場内の設備に身を隠しながら移動するキイコを追跡し、姿を捉えれば迷わずに発砲した。しかし弾丸は命中しているものの、未だに鈍い音を立てて弾かれるばかりである。
イオリ
「絶対に逃がすな!!!」
イオリは階段から吊り足場に上り、工場内を見渡してキイコを捜す。風紀委員達はキイコの姿を視界から外さないように追跡しつつ発砲する。キイコは駆け足で工場内を移動しており、先程と打って変わって逃げに徹しているようだった。
風紀委員E
「閃光手榴弾!!!」
カランカラン…
キイコ
「グゥ…?」
ドォッ キィィィィィイイン……
閃光手榴弾の光と爆音で視界と音が遮られる。正面は閃光手榴弾の爆発で生じた白い煙で何も見えなくなっており、更に周囲の音が不自然な程に静まり返っていた。これに対し風紀委員達は何が起きてもいいように銃の再装填を行い身構えた。
ギギィィィィイイイイイイイ!!!
キイコ
「グゥオオオオオオオ!!!」
白い煙の奥からコンテナが現れ、風紀委員達に迫る。コンテナの後ろにはキイコがおり、手で押しながら全力疾走をしていた。風紀委員達はすぐさま飛び退き、イオリは吊り通路からコンテナを押すキイコに発砲する。
ガァンッ チュドォォォン!!!
設備にコンテナがぶつかり大爆発を起こす。イオリは爆風で尻餅をついたがすぐに起き上がり、再びキイコを捜し始めた。設備の大爆発によって工場内は煙が充満し始めており、視界が徐々に悪化していく。その煙の中をキイコは堂々と歩いており、イオリはその姿を捉えるとすぐさま発砲する。相変わらず弾は弾かれるが、それでも諦めずに再装填をしてキイコに狙いを定めた。
バンッ
キイコ
「グガッ……!!!」
キイコはイオリが吊り通路に移動していた事にようやく気付き、煙の中から見上げる。その顔は煙による視界の悪さと工場内の暗さが合わさってよく見えなかったが、数歩前に出た事で天井から吊り下がった照明が顔を照らした。
キイコ
「グルルルルルルル………!!!!」
イオリ
「っ…!!!??」
左右に開いた仮面の奥に有る素顔と目が合ったイオリは思わず構えを解いて隙を晒してしまう。その瞬間をキイコは見逃さず、近くに置かれた弾薬箱を掴んで投擲した。
ブォンッ
イオリ
「クソッ!!!って、しまっ……」
ドガァァアアン!!!
間一髪で躱すが、投擲された弾薬箱からロケットランチャーの弾頭が零れ落ちてると気付くも、既に手遅れであった。落下した弾頭は爆発し、更に他の弾頭も次々と誘爆してイオリは爆風で外に吹き飛ばされる。それを見たキイコは停車していたフォークリフトを持ち上げて壁に投擲し、大穴を開けて外に出た。
ドゴォンッ!!!
万魔殿生徒A
「うわぁあああああ!!!?」
ガシャァッ!!!
万魔殿生徒B
「何だあい…」
ドグチャッ!!!
投擲されて壁を突き破ったフォークリフトは丁度到着した万魔殿の部隊の生徒の1人を下敷きにし、後に続いて工場外に飛び出したキイコはもう1人を踏み潰した。
キイコは辺りを見渡し、外の状況を確認する。チナツ率いる工場外に残った風紀委員達に加え、増援としてやってきた万魔殿の部隊がおり、更に奥の方では重戦車が待機しているのが見えた。
キイコ
「グゥゥ…!!!」
イロハ
「あれが蓮田キイコ……何か想像してたのと違う……というか、人なの…?」
キイコはイロハが搭乗する重戦車こと≪虎丸≫に目掛けて走り出す。虎丸の主砲はキイコに狙いを定めており、キイコが走り出すと同時に発射していた。
ガシッ
ドガァァアアンッ!!!!
キイコ
「グルル……!!!」
イロハ
「え……嘘でしょ…」
キイコは真っ直ぐ飛んでくる榴弾を片手で掴み、投げ捨てるどころか自分の頭にぶつけて起爆させた。結果的に榴弾は直撃したものの、レインコートのフードや仮面の一部を焦がす程度であり、ほとんど効果は見られない。そしてこの行動は重戦車でもキイコを止める事は出来ないという絶望感を与えるには十分過ぎた。
キイコ
「ギィァァアアアア!!!」
虎丸の車体を登って砲身を掴むと砲塔の方へと引っ張る。すると砲身は軋むような音を立てながら曲がり始め、やがて砲口はキューポラの目の前まで来てしまった。
イロハ
「ひっ…!!」
キイコ
「グルルルルルルル……」
恐る恐るキューポラから顔を出すと、そこには湾曲して自分に向いた砲身と仮面で顔を隠したキイコの姿が有り、イロハは息が詰まって声が出なくなる。好機と見たキイコは仮面を開いて醜い素顔を晒し、イロハに思い知らせた。
キイコ
「グォォォォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!」
イロハ
「あ……あっ……」
ジョロロロロロ……
キューポラから虎丸の車内に目掛けて咆哮を上げる。イロハは至近距離からの咆哮と醜い素顔のダブルパンチによって恐怖が限界に達し、虎丸の中で無様に失禁してしまった。
虎丸の無力化を終えたキイコは車体から降り、少し離れた所に倒れているボロボロのイオリの方へと歩み寄る。
イオリ
「ぐっ…!!」
爆発を至近距離で食らった事で体中に激痛が走るが、それでもキイコを仕留めようと小銃に手を伸ばす。しかしキイコは無慈悲にも小銃を蹴り飛ばし、首根っこを掴んで無理やり立たせる。そしてチナツ達の方に視線を向け、風紀委員や万魔殿の生徒達を掻き分けて前に出ようとする小さな人影を睨み付けた。
キイコ
「……………」
ヒナ
「みんな下がって。下手に刺激したらイオリが殺されてしまうわ。」
チナツ
「ヒナ委員長……」
遂に姿を現したゲヘナ最強の少女、≪空崎ヒナ≫。彼女は銃を下すようハンドサインで指示を出し、彼女自身も手に持った重機関銃の銃口をキイコに向けないようにしていた。チナツ達は指示に従い、銃を下ろしていく。それを見たキイコはイオリを引き摺りながらヒナの方へと歩み寄っていった。
今のキイコはヒナとの体格差が一目瞭然であり、目測でも2メートルを優に超える巨体となっていた。服装に変化は無いが、素肌を晒した足は肌が真っ白に変色し、袖口から出ている手は真っ黒な5本の触手に変化しており、先端部がそれぞれの指を形作っている。そして顔は感情が抜け落ちたような青白い仮面で隠されていた。
ヒナ
「貴女が蓮田キイコね………今攻撃を中止させたわ。イオリを渡しなさい。」
キイコ
「…………」
ブォンッ
チナツ
「きゃっ!!?」
イオリ
「うぅ……」
チナツ
「イオリ…? 生きてる……よかった…」
キイコは視線をチナツに移すと、引き摺って連れてきたイオリを軽く投擲する。チナツは全身で受け止め、イオリがまだ生きている事に安堵のため息をついた。それを見届けたキイコは視線をヒナに戻し、姿勢を低くして目線を合わせる。そして仮面が左右に開き、醜い素顔を晒した。
キイコ
「……………」
ヒナ
「……………」
キイコ
「グルルルルルルル………!!!!」
歯を食いしばりながら唸り声を上げ、ヒナを睨み付けたキイコは全身にノイズを纏い、その場から飛翔して去っていく。取り残されたヒナ達は最早追跡する事も出来ず、その場に佇むしかなかった。
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先生
「キイコが先に来ていたはずだけど……今はどこに?」
ヒナ
「蓮田キイコは………多分、もうゲヘナにはいないわ。」
先生
「いない!?何が有ったんだ!?」
ヒナ
「説明するより見てもらった方が早いかもしれない。来て。」
キイコと風紀委員会の死闘から数十分後。遅れてゲヘナに到着した先生はヒナにキイコの行方を聞くも、既にキイコはゲヘナを離れていた。ヒナの案内で連れてこられた場所はゲヘナ自治区の銃器工場前であり、そこにはヴァルキューレや風紀委員会、更に救急医学部の生徒達が慌ただしく動き回っていた。工場の建物は壁に幾つかの穴が空き、その穴や窓から煙が昇っていた。
先生
「どうなって…」
ヒナ
「こっちよ、先生。」
ヒナに手を引かれて救急医学部の生徒達が集まっている場所に来ると、そこには布を被せられた遺体が担架に乗せられ並んでいた。先生はこの光景に絶句し、ヒナも視線を逸らしてしまう。
ヒナ
「不良生徒4人、風紀委員会2人、万魔殿親衛隊2人の計8人が殺されたわ。それに加えて、イオリが全身打撲と火傷の重傷。棗イロハが精神的ショックで意識不明。美食研究会全員が瓦礫の下敷きにされて全治二ヶ月の病院送りになったわ。」
先生
「これを……キイコが1人で………」
ヒナ
「トリニティでも大暴れしたそうね。出発前にマコトから聞いたわ。」
先生
「……………キイコを追う。もし去り際を見ているなら、どこに向かったか分かるか?」
ヒナ
「あまり当てにならないかもしれないけど、私が見た感じだと方角的にミレニアムの可能性が高いわね。今度はそこで暴れるつもりかしら…」
先生
「分かった、ミレニアムに行こう。」
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場所は移りミレニアム自治区。既に日は沈んで街の活気は鎮まっていく。そんな中、ビルとビルの間に挟まれた裏路地を小柄な少女達が探索していた。
「もう日が暮れたし戻らない?」
「何言ってるの!!まだ何も見つけてないでしょ!!こういう所には大抵面白い物が落ちてたりするんだから!!」
「あっ!!あそこに黄色い物が有ります!!」
「ホントだ!!暗くてもハッキリ見える!!」
少女達が黄色い物体に近付き、スマホのライトを当てる。それが倒れた人である事に気付くと少女達は動揺してしまった。
「って人じゃん!!」
「うわーーん!!お宝かと思いきや死体を発見しちゃいました!!」
「ちょっと!!まだ死んでるかどうかも分からないよ!!あの、大丈夫ですか!?生きてますか!!?」
「うぅ………」
キイコ
「飯……水………」
「生きてる…!!お腹空かせてるみたい。部室に連れて行って何か食べさせよう!!」
「お姉ちゃん!!?こんな得体の知れない人を部室に入れるの!?」
「救助イベントですね!!勇者としてほっとけません!!」
裏路地で力尽き倒れていたキイコは通り掛かった小柄な少女達に拾われ、ミレニアムサイエンススクールの校舎へと運ばれていく。夜になり静まり返った校舎の中を進み、やがて小さな部屋へと到着した。
「あれ、早かったね………その人は?」
「裏路地で倒れていたから拾ったの!!お腹空かせて死にかけだから何か食べさせないと……」
キイコ
「ここはどこだ…テメェらは………」
「口悪っ……お姉ちゃん、やっぱり拾わない方が良かったんじゃ…」
「そんな事言わないで!!!」
キイコ
「テメェら何なんだよ……」
モモイ
「私は才羽モモイ!!こっちは妹のミドリで、こっちは天童アリス!!そんであっちにいるのが花岡ユズ!!私達はミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部だよ!!」
遂に神性変身をしてしまいました。
次回はミレニアムでゲーム開発部とのあれやこれやな話になります。