黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~   作:ww12

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ゲーム開発部に振り回されるキイコの回です。

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前回のあらすじ


ゲヘナに一足先に到着したキイコは美食研究会とのいざこざが原因で風紀委員会に追われる事となってしまう。その道中で不良達に絡まれながらも銃器工場内に逃げ込むが、不良達に足を撃たれてしまった。最早逃げ続ける事も不可能となり、キイコは遂に『神性変身』を行う。邪神そのものと言わんばかりの姿になったキイコは不良達を全員殺害し、更に後を追ってやってきた風紀委員や万魔殿の生徒達も殺害する。圧倒的な戦闘力で大損害を与える中、ゲヘナ最強の空崎ヒナが場を収める為に姿を現した事でキイコは攻撃を止め、ゲヘナを去る。
ゲヘナを離れたキイコは非物質化による飛翔で別の場所に向かうが、その道中で力尽きて倒れてしまう。倒れた場所はキヴォトス三大校の一角であるミレニアムサイエンススクールの裏路地であり、時間帯が夜に差し掛かっているのもあって人通りが減りつつある。人知れず餓死するのかと思いきや、探索で通り掛かったゲーム開発部のモモイ、ミドリ、アリスの3人に拾われて一命を取り留め、キイコはゲーム開発部の部室に連れ込まれたのであった。




Ep13.光の勇者と闇の英雄

 

 

ゲーム開発部に拾われたキイコは部室で一息つき、モモイ達から渡されたレトルトの料理を食べて空腹を満たす。すっかり満腹になったキイコはソファで横になり寝ようとするが、その矢先でモモイが声を掛けた。

 

 

モモイ

「そう言えば、名前は?」

 

キイコ

「キイコ……」

 

モモイ

「どこの学校に通ってるの?」

 

キイコ

「どこにも通ってねぇ。そもそもキヴォトスの基準的に通える年齢じゃねぇよ。」

 

ミドリ

「それじゃあ今は幾つですか?」

 

キイコ

「20歳だ。テメェらから見ればシャーレの先公と同じ『大人』なんだよ。」

 

モモイ

「は、20歳ぃ!!?まさかの会長より年上ぇ!!?」

 

 

キイコが大人である事に全員が驚愕する。キイコの顔は傍から見ればまだ16か17に見える程の童顔であり、一目で20歳だと分かるものではなかったからだ。一方ユズはそんなキイコの容姿を見て何かを察する。

 

 

ユズ

(ヘイローが無い黄色のレインコートって、どこかで聞いたような……)

 

アリス

「どうかしましたか?」

 

ユズ

「あ……ううん、何でもない………」

 

ミドリ

「………ん? え!!?ちょっとお姉ちゃん!!!」

 

モモイ

「うひゃあ!!?急にどうしたの!!?」

 

ミドリ

「何かモモトークのメッセージが凄い事になってて、何が有ったのか見てみたら連邦生徒会が記者会見を始めたらしいよ!!今も生放送中だって!!」

 

モモイ

「嘘!!?ユズ、パソコンつけて!!」

 

 

慌てた様子でパソコンを起動させ、クロノススクールの生放送チャンネルを開く。そこには七神リンの姿が映っており、それに気付いたキイコは起き上がって画面に注目した。

 

 

リン

『今から昔話をさせていただきます。今より遥か昔、この世界が始まりを迎えたばかりの時代。この地には2つの民族が存在していました。頭の上に輪を持つ上位民族、そして輪を持たない下位民族。輪を持つ上位民族は世界を牛耳り、下位民族からの搾取を繰り返して傲慢になりつつありました。度重なる搾取に下位民族は救いを求め、この世界の創造主とされる、司祭と呼ばれる存在を崇拝するようになります。しかしこれが更なる悲劇を招いてしまいました。上位民族はこれを『反乱』の前兆と捉え、下位民族への弾圧を始めたのです。下位民族は住処を追われ、更には世界その物を追われてしまい、誰の目にも届かない地下深くへと潜りました。』

 

 

キイコ

「打ち明けたか……」

 

モモイ

「え……どういう事……」

 

 

リン

『既に御察しされた方がいるかもしれませんが、その上位民族こそが我々キヴォトス人。そして迫害され地下に潜った下位民族は、今現在キヴォトス各地で襲撃事件を起こしているクンヤン人です。私達の先祖は決して赦されない大罪を犯しました。そしてその罪を償う事無く世代交代を積み重ね、現在に至ります。地下に潜ったクンヤン人は、我々キヴォトス人に絶滅という名の贖罪を求めるようになりました。我々連邦生徒会はそれを受け入れ、クンヤン人の襲撃に対して静観を貫き通しましたが……ある1人のクンヤン人との出会いによって、本日考えを改めました。』

 

 

全員がリンの話に聞き入り、部室が静寂に包まれた。その後も続く話はキヴォトスの今後を揺るがすものとなり、非情な現実を突きつける事となる。

 

 

リン

『キヴォトスに住まう生徒の皆さん!!先祖達の失敗を知り、自分が大罪人の血を引いている事への心境は御察ししています!!ですが、かと言ってクンヤン人にその事を謝罪してももう手遅れです!!クンヤン人はキヴォトスを滅ぼすまで、攻撃の手を止める事は有りません!!だからこそ、全てのキヴォトス人が手を取り合い、怨嗟に染まり暴走するクンヤン人達と、戦ってほしいのです!!!!この私、七神リン首席行政官は、未だ失踪中の連邦生徒会長に代わって、今ここに宣言します!!!!』

 

 

 

リン

『学園地底都市クンヤンに、宣戦布告を…!!!!』

 

 

ナル

『その言葉を待っていたぁぁぁああああああああ!!!!!!』

 

 

キイコ

「っ!!?加雄間ナル!!!テメェまでキヴォトスに来てやがったのか…!!」

 

ミドリ

「知り合いですか!?」

 

キイコ

「私の先輩だ……」

 

 

キイコはナルの姿を見て立ち上がり、パソコンの画面のすぐ手前まで近寄る。その表情は怒りに満ちており、モモイ達は冷や汗をかいた。

 

 

ナル

『僕はクンヤン連合学園10年、加雄間ナル。連邦生徒会が突然の記者会見を開くから何事かと思って来てみたら………クンヤンに宣戦布告とはね。遂に重い腰を上げたって訳だ。これでクンヤンは思いっきりキヴォトスで暴れられる。ご決断感謝するよ、リンちゃん。』

 

リン

『くっ…!!』

 

ナル

『さてと……今この瞬間、キヴォトスとクンヤンは戦争状態になった。僕は一度戻って區藤会長に報告しないとね。今までの部分動員から総動員に切り替えて、装備の生産量も増やして、作戦も練って……忙しくなりそうだ…!!』

 

 

ナルはマイクパフォーマンスのようにマイクを投げ捨てると全身にノイズを纏い、真上に飛翔して姿を消す。その後生放送は中断され、カラーバーの画面になってしまった。

 

 

モモイ

「戦争って……冗談だよね…? 今の全部夢だよね!?」

 

ミドリ

「お姉ちゃん、現実だよ……」

 

キイコ

「あの代行の話を聞いた以上、隠す必要は無ぇな。私は代行の話に出てきたクンヤン人の1人だ。かつてこのキヴォトスに存在し、今は地下に潜ったヘイローを持たない民族。そんでもってあのとき先公を襲った連中もクンヤン人だ。」

 

モモイ

「あのとき………あーー!!!ニュースになってた先生襲撃事件!!!ユウカ先輩が殺しちゃった人達の事かぁ!!!」

 

ミドリ

「あぁホントだ!!!ニュースの映像を見返してみたら襲ってる人達全員ヘイローが無い!!」

 

ユズ

「それじゃあ……キイコさんは先生を襲った人達と同じ学校に……」

 

キイコ

「どこにも通ってねぇっつっただろ。脱走してキヴォトスに来たんだ。クンヤンのやり方にはもううんざりだし、あいつらとはとっくに敵同士だよ。」

 

 

その発言を聞いてキイコがクンヤンを脱走した裏切り者であり、キヴォトスの味方になる可能性が浮上するが、モモイ達は同時に警戒心を抱くようになる。そんな中、この緊迫した空気を壊す者がいた。

 

 

アリス

「キイコさんは悪の組織の一員でありながら正義に目覚めたって事ですね!!」

 

キイコ

「何でそうなるんだよ!!!??」

 

アリス

「アリス知ってます!!魔王の手下も数が多いとその中から違う考えを持つ手下が現れて、勇者に協力する展開が有りますから!!」

 

モモイ

「確かに前作ったゲームにはそういう展開入れたけど…」

 

キイコ

「私が善玉に見えるか? どう見ても悪人面だろうが。怖くねぇのかよ。」

 

アリス

「キイコさんとそっくりな喋り方をする先輩がいるので平気です!!」

 

キイコ

「あぁそうか……」

 

 

この手のゲーム知識に疎いキイコはその発言を聞いて納得する。かつてクンヤンの大幹部であるオールドワンスだった頃、キヴォトスの各学校の最強クラスの情報は既に頭に入れていたからだ。

 

 

モモイ

「ミドリ、どうしよう…?」

 

ミドリ

「明日の廃墟探索に連れて行って、その時に私達を守ってくれるかで判断しよう。今はまだ私達をどう思ってるか分からないし。」

 

キイコ

「おいテメェら、今日はもう遅いし私はここで寝させてもらうぞ。もし途中で起こしたら顔面に拳骨だからな。」

 

モモイ

「………………不安になってきた…」

 

________________________

 

 

翌日、ゲーム開発部の4人とキイコはミレニアム自治区内の廃墟に来ていた。オートマタなどの防衛機構が健在な危険地帯に連れてこられたキイコは不満気な顔であり、アリス以外の3人は冷や汗をかいている。

 

 

キイコ

「ここに何の用が有るんだ? わざわざ私まで連れて行く必要無ぇだろ。」

 

モモイ

「えっとぉ……今度作るゲームのネタ探し…かな……?」

 

ミドリ

「お姉ちゃん……」

 

キイコ

「嘘つくならもっとマシな嘘つきな。帰るぞ。」

 

モモイ

「ちょ、ちょっと待って!!!嘘ついたのは謝るから帰ろうとしないで!!!キイコさん昨日自分がクンヤン人って言ってたでしょ!?クンヤン人ってどのくらい強いのか気になっちゃったからここまで連れてきちゃったの!!」

 

キイコ

「嘘つく奴は信用出来ねぇ。」

 

モモイ

「おーねーがーいー!!!置いてかないでぇ!!!ここ凄く危険なんだからぁ!!!先生無しじゃ私達どうなるか分かんないしぃ!!!」

 

 

帰ろうとするキイコを止めようと、レインコートの裾を掴んだまま引き摺られるモモイ。最早苛立ちを通り越して呆れ返ったキイコは足を止め、モモイを無理やり振り解いた。

 

 

キイコ

「分かった、付き合ってやるよ。でも嘘ついた罰は受けてもらうぞ。」

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

モモイ

「あぎゃっ!!?……うぅ…!!」

 

キイコ

「ったく………ん?」

 

アリス

「どうかしましたか?」

 

キイコ

「あいつら…!!」

 

 

拳骨を食らったモモイはその場で泣き出す。キイコはそれを気にも留めず周囲を見渡していると、奥の方で複数の人影が動いているのが見えた。すぐさまその方向へ走り出し、アリスも後に続いていく。残された3人も慌てて追いかけ始めた。

 

 

ユズ

「あ……置いてかないでぇ…!!」

 

ミドリ

「キイコさん!?アリスちゃん!?お姉ちゃんいつまで泣いてるの!!」

 

モモイ

「ぐすっ……あれ、キイコさん急に走り出してどうしたの…?」

 

 

キイコとアリスに追いつくと、奥の方で謎の集団が立っているのが見える。その集団はオートマタではなく、ヘイローを持たない制服姿の少女達であった。その数は青いベストを着たナイフなどの小型近接武器持ちが7人、赤い外套にシルクハットを被ったサーベルと拳銃持ちが1人、緑のブレザーとチェック柄スカートにキャスケット帽を被った狙撃銃持ちが2人、フード付きの黒い外套に紫のベストを着た短機関銃持ちが6人の計16人という大人数であり、モモイ達は息を呑む。

 

 

キイコ

「クンヤンの奴らがこんな所で何をしてやがる……」

 

モモイ

「昨日の記者会見で言われてた人達だよね……確かに何してるんだろう…」

 

ミドリ

「何か話してる……聞いてみよう…」

 

 

 

 

クンヤン生徒隊長*1

「うん、間違いない。目標物はこの廃墟のどこかよ。」

 

クンヤン生徒偵察兵A*2

「本当ですか? 出発前に資料を何度も見返して、目星を付けた場所は虱潰しで行きましたがどれも徒労に終わったじゃないですか。」

 

クンヤン生徒偵察兵B

「まだ見落としが有るって事だろ。廃墟は広いからな。絶対見つかるはずさ。」

 

クンヤン生徒突撃兵A*3

「だといいけどな……この辺りはDivi:Sionの連中も徘徊しているから、勘付かれる前に早いとこ見つけて撤収したい気分だ……」

 

 

盗み聞きした会話からして、何かを探しているのは明確であった。更に会話を聞いて情報を探ろうとするが、その直後に背後から気配を察した。

 

 

クンヤン生徒偵察兵C

「おいそこのキヴォトス人!!!何をしている!!!」

 

ユズ

「ひぃっ!!?」

 

モモイ

「うわぁ見つかっちゃったぁ!!!」

 

クンヤン生徒偵察兵D

「ミレニアムの制服だ……こんな辺境の地まで何をしに……待て、そこのキヴォトス人は資料に載ってた奴か? それにすぐ隣のお前は…!!」

 

キイコ

「ああ、そのまさかだよクソッタレ共が。」

 

クンヤン生徒隊長

「飛んで火にいる何とやらね。探していたAL-1Sと蓮田キイコが同時に現れるなんて今日はついてるわ。」

 

 

背後から増援として現れたクンヤン生徒達。青いベストの小型武器持ちが2人、黒い外套と黄色ベストで山高帽を被ったボルトアクション銃持ちが3人、縦縞模様の緑ベストで散弾銃とマチェットを持つ大柄な2人の7人であり、この場にいるクンヤン生徒は合計23人となった。

 

 

ミドリ

「アリスちゃんとキイコさんを狙ってるの!?」

 

アリス

「理由は分かりませんが、捕まる訳にはいきません!!」

 

キイコ

「もう逃げ場は無ぇみてぇだな。テメェら腹括りやがれ!!!」

 

 

先制で動いたのはキイコだった。短機関銃を持ったクンヤン生徒達が咄嗟に発砲するが、キイコは全身にノイズを纏った非物質化でこれを無効化し、拳を振り翳す。クンヤン生徒達の視線がキイコに集中していると気付いたミドリとユズはすぐに銃を構えて発砲した。

 

 

クンヤン生徒突撃兵A

「ぐあああ!!!」

 

ミドリ

「あっ…」

 

 

しかしミドリは自分が撃った相手が大量の血を流しながら倒れていく瞬間を見て発砲を止めてしまう。銃撃戦自体は何度も経験したが、明確に相手を殺したのは初めてだったからだ。

 

 

モモイ

「ミドリ!!」

 

ミドリ

「はっ……考え込んでる場合じゃないよね…!!」

 

クンヤン生徒狙撃兵A*4

「このチビ共が!!!」

 

 

崩れた建物の2階に上り、狙撃銃を構えるクンヤン生徒。しかしそれに気付いたユズが手に持ったグレネードランチャーを撃ち込み、足場を崩した。

 

 

クンヤン生徒狙撃兵A

「うわああああああああ!!?」

 

 

ゴシャッ

 

 

ユズ

「う………かはっ、おげえ˝え˝え˝え˝!!!」

 

 

落下して瓦礫の山に頭を打ち、脳みそをぶちまけて死んでいくのを直視してしまい、ユズはその場で膝を突き嘔吐してしまう。その隙をクンヤンの生徒達は見逃すはずも無く、ユズは長尺のソウトゥースナイフを持つクンヤン生徒に脇腹を蹴り飛ばされた。

 

 

ユズ

「ごぉえ˝…!!かはっげほっ………」

 

クンヤン生徒偵察兵A

「死ねキヴォトス人!!!」

 

モモイ

「ユズ!!!」

 

 

ドドドドドドドドド!!!

 

 

クンヤン生徒偵察兵A

「あぐぁっ!!?畜生……」

 

モモイ

「大丈夫!!?」

 

ユズ

「大丈夫じゃないかも……」

 

キイコ

「テメェら足引っ張ってんじゃねぇよ……!!」

 

 

モモイ達はクンヤンの生徒を1人殺す度に気分を害して戦いの手を止めてしまい、キイコはそれに苛立ちを隠せずにいた。痺れを切らしたキイコは指を黒い触手に変化させると、アリス以外の3人を掴んで離れた位置へ投げ飛ばした。

 

 

キイコ

「足手纏いは離れてろ!!!」

 

モモイ

「わあああああ!!?」

 

ミドリ

「何これ!!?」

 

ユズ

「ひぃぃ!!?」

 

 

キイコ

「アリス、ここからは私とテメェの2人で行くぞ。」

 

アリス

「分かりました!!」

 

キイコ

「手ぇ抜いて生かしたら拳骨だからなぁ!!!」

 

アリス

「うわーーん!!拳骨は勘弁してください!!!」

 

 

再びクンヤンの生徒達に目掛けて走り出し、アリスがスーパーノヴァでキイコに銃を向けるクンヤン生徒を消し飛ばす。2人は初めて会ってからまだ一晩しか経っていないにも拘らず連携が取れており、キイコの触手で遠くに離されたモモイ達は驚きを隠せなかった。

 

 

モモイ

「キイコさん銃無しなのにあんな風に戦えるなんて…」

 

ミドリ

「そんな事よりさっきの触手は何だったの!?」

 

ユズ

「もしかして、キイコさんはゲームのモンスターみたいなのに変身出来るんじゃ…」

 

 

キイコ

「うおおおおおおおおお!!!!」

 

 

ドグォッ!!!

 

 

「「「「「うわああああああああ!!?」」」」」

 

 

アリス

「てりゃぁぁあ!!!」

 

 

ガァンッ!!!

 

 

クンヤン生徒執行兵A*5

「何ごぶぁっ!!?」

 

クンヤン生徒執行兵B

「何ちゅうモン振り回してんだこいがべばぁ!!?」

 

 

キイコは触手に変化させた指の薙ぎ払いで5人纏めて建物の外へと弾き飛ばし、アリスもスーパーノヴァを振り回して接近してきた大柄なクンヤン生徒2人を叩き潰す。23人もいたクンヤン生徒は残り6人となり、キイコとアリスは残った6人に歩み寄っていた。

 

 

クンヤン生徒隊長

「う、撃て撃てぇ!!!」

 

 

バンッ バンッ バンッ

 

 

ボルトアクション銃を持ったクンヤン生徒3人が発砲するが、キイコは両腕の触手を硬質化させて弾丸を弾く。すると今度はナイフを持ったクンヤン生徒2人がキイコを狙って接近するも、キイコは触手から元の手に戻すと同時に非物質化のノイズを纏い、ナイフが当たるよりも早く2人の体を貫いた。貫かれた箇所はノイズに覆われていたが、やがてそれが消えると大きな穴が空き、大量の血が噴き出して倒れた。

 

 

クンヤン生徒歩兵A*6

「クッソォ!!!」

 

クンヤン生徒歩兵B

「まだだ畜生めがあああ!!!」

 

 

ボルトアクション銃の先端に取り付けた銃剣で突き刺そうと迫るが、キイコは躱すと同時に銃身を掴み、銃剣を取り外してクンヤン生徒の首に突き刺す。

 

 

ザシュッ プシィィィ

 

 

クンヤン生徒歩兵A

「ごがっ……がぼぼぼぼ…」

 

 

首を突き刺された事で気道に血が入り、泡の音を立てながら吐血して倒れる。キイコは血の付いた銃剣をアリスに投げ渡し、アリスは自身に迫るクンヤン生徒の足に突き刺した。

 

 

ドスッ

 

 

クンヤン生徒歩兵B

「があああ!!?」

 

アリス

「隙あり!!!」

 

 

銃剣が足に刺さって膝を突いた瞬間を狙い、アリスは至近距離でスーパーノヴァを発射する。放たれたレーザーが消えると、足に銃剣が刺さった下半身だけが残った。

 

 

クンヤン生徒歩兵C

「そんな、こんな事って…」

 

 

ガオンッ

 

 

キイコ

「余所見してんじゃねぇ。」

 

 

ノイズを纏った拳が頭の左半分に直撃し、ノイズに覆われた左半分が消えると脳みそを零しながら倒れた。残ったのは隊長格のクンヤン生徒だけとなり、キイコは再び指を触手に変化させる。

 

 

キイコ

「アリス、こいつで最後だ。一緒に止め刺すぞ。」

 

アリス

「はい、確実にやっつけます!!」

 

クンヤン生徒隊長

「クッ……!!」

 

 

キイコは伸ばした触手を地面に突き刺し周囲の柱や壁の内側を通過させた後、四方からクンヤン生徒の手足に巻き付く。触手に手足を掴まれたクンヤン生徒は大の字に手足を広げさせられ、宙に浮かされてしまった。

 

 

キイコ

「アリス!!!」

 

アリス

「光よ!!!」

 

クンヤン生徒隊長

「ま、待って…!!」

 

 

スーパーノヴァから放たれたレーザーはクンヤン生徒の体に直撃し、容赦無く消し飛ばす。残ったのは触手が掴む手足だけとなり、やがてそれらは無造作に投げ捨てられた。

 

 

キイコ

「終わったぞ。」

 

アリス

「やりました!!」

 

 

モモイ

「やりましたじゃないよちょっとぉ!!!」

 

ミドリ

「噓でしょ…全員殺しちゃったの!?」

 

ユズ

「うっ、また……おえ˝え˝え˝え˝え˝え˝!!!」

 

 

周囲はクンヤンの生徒達の死体が転がっており、モモイ達は絶句する。初めての対クンヤン人戦という事もあってその手は震えており、ユズに至っては再び嘔吐していた。そんな3人にキイコは近付き、怒気の混じった声で話し掛けた。

 

 

キイコ

「それで、どうだった?」

 

モモイ

「え……?」

 

キイコ

「テメェらはクンヤン人の強さが知りたくてここに来たんだろうが!!!言い出しっぺが目的を忘れてんじゃねぇ!!!」

 

モモイ

「ひぃ!?ごめんなさいごめんなさい!!!正直舐めてました!!!」

 

ミドリ

「当たり前のように殺してて怖過ぎるよ……クンヤンっていつもこんな感じなの…?」

 

ユズ

「部室に残ればよかった……」

 

アリス

「でも目的は達成しましたよね? キイコさんはとても強いクンヤン人です!!モモイ達もしっかり守ってくれて、まるでスーパーヒーローみたいでした!!」

 

 

アリスの言う通り、キイコは足手纏いを引き離すという形ではあったが、その行動は結果的にモモイ達を守っており、無自覚だが悪人じゃないという事が分かった。一方で敵には一切の容赦が無く、完膚なきまで叩き潰して殺害するなど、アリスが言うようなスーパーヒーローとは程遠いものであった。

 

 

ミドリ

「アリスちゃんはキイコさんをヒーローって言ってるけど、あれじゃあどっちかって言うと……」

 

モモイ

「うん、流石に私も分かるよ。あれはスーパーヒーローって言うより……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キイコ

「私が正義の味方ってか? 馬鹿言え。」

 

 

 

闇の英雄(ダークヒーロー)

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

キイコとゲーム開発部が帰ってから数時間後。廃墟は夜に差し掛かり、真っ暗闇に包まれている。そんな暗闇の中を露出度の高い格好をした生徒とメイド服を着た5人組がライトを照らしながら歩いていた。その生徒は≪特異現象捜査部≫の≪和泉本エイミ≫であり、5人組のメイドは≪Cleaning&Clearing≫、通称≪C&C≫と呼ばれるミレニアム屈指の戦闘集団である。普段はエイミ1人で行動する事が多いのだが、今のキヴォトスはクンヤンとの戦争状態である為、今回は護衛としてC&Cを同行させていた。

 

 

エイミ

「あの崩れかけの建物、未知のエネルギーが観測された場所です。」

 

ネル

「あそこだな。おし、入るぞ。」

 

 

6人は建物内をライトで照らしながら探索する。辺りは瓦礫や倒れた柱などが散らばっており、薄気味悪い光景が続くばかりであった。

 

 

アスナ

「リーダー!!あそこ!!」

 

 

アスナが指を差す方向に大量の死体が転がっている。死後数時間が経過しており、僅かな腐敗臭が漂い始めていた。

 

 

カリン

「どう見ても銃で撃たれた傷じゃない……何をやったらこんな風に…」

 

アカネ

「欠損箇所も爆弾で吹き飛ばされたと言うより、何かで削り取られたように見えますね。」

 

トキ

「一体どのような武器を用いたのでしょうか。これ程綺麗な穴を開けられる武器は聞いた事が有りません。」

 

 

C&Cが疑問に思う中、エイミは死体の状態を観察して1つの結論に行き着く。ネルはエイミの言葉に耳を傾けた。

 

 

エイミ

「恐らくこれは、武器ではなく素手でやった可能性が高いですね。」

 

ネル

「はぁ? これを素手でか?」

 

エイミ

「死体のほとんどに打撲傷が見られました。それにこの死体の胴体に空いた穴は銃弾によるものではありません。もし銃弾であればこの穴は対物弾よりも更に大きい弾頭が貫通した事になります。しかしこの穴より小さい対物弾ですら胴体に直撃すれば、穴が空くどころかバラバラの肉片になり兼ねません。この穴は手が貫通した事で空いたのでしょう。」

 

ネル

「………確かにそうだな。穴が綺麗に空きすぎてる。」

 

エイミ

「しかしそれでも不自然な点は有ります。手が貫通した以上、内臓やその他の体組織が摩擦で変形して位置がずれているはずです。しかしこの穴の内側はそれが起きているどころか、その箇所が削り取られたように消えてしまっています。」

 

ネル

「つまり、どういう事だ?」

 

エイミ

「これをやった犯人は間違いなく科学では証明出来ない何かをした可能性が高いという事です。これが出来る人物の有力候補は、クンヤン人の蓮田キイコでしょう。」

 

ネル

「巷で噂になってるレインコート女か。クンヤン人の事ならあたしらもある程度は調べたぞ。魔法染みた能力を使うんだってな。」

 

エイミ

「セミナーに報告する必要が有ります。私の仮説が本当であれば、蓮田キイコはこのミレニアムに足を踏み入れた事になりますから。」

 

 

廃墟に転がるクンヤンの生徒達の死体は、キイコがミレニアムに来ている事を示唆する証拠となってしまった。そしてそれは、C&Cを率いるネルの闘争心に火を付けてしまうのであった。

 

 

ネル

「蓮田キイコ、本当にミレニアムに来ているんなら覚悟しとけよ………テメェはあたしの獲物だ…!!」

 

 

*1
赤い外套とシルクハットの生徒

*2
青いベストの生徒

*3
黒い外套と紫ベストの生徒

*4
緑ブレザーとチェック柄スカートにキャスケット帽の生徒

*5
縦縞模様の緑ベストの生徒

*6
黒い外套と黄色ベストに山高帽の生徒






次回、C&Cが蓮田キイコと接触。


キイコにとってミレニアムでの出来事は大きな山場となります。
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