黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~   作:ww12

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今回はこの小説シリーズ最初の山場となります。

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前回のあらすじ


ゲーム開発部に廃墟に連れてこられたキイコはその先でクンヤンの生徒達と遭遇し、アリスと共にこれを殲滅する。そしてその戦いの爪痕は特異現象捜査部とC&Cに発見され、キイコがミレニアムに来ている事が明らかとなる。それは即ち、C&Cがキイコと激突するのは時間の問題である事を意味していた。




Ep14.ミレニアム VS 黄衣の王

 

 

キイコ

「モモイ、私は何時ここを出て行けばいい?」

 

モモイ

「え!?出ていくって…?」

 

キイコ

「まさか知らねぇのか? 今の私はミレニアムじゃ追われる身になっているんだよ。ユウカとかいう聞き分けの無ぇキヴォトス人がブチ込まれた原因って事でな。」

 

モモイ

「そうだったの!!?」

 

 

モモイが驚く中、アリスは何の事か分からず首を傾げ、ミドリとユズは気まずそうに眼を逸らす。モモイはミドリとユズの様子がおかしい事に気付くとすぐさま声を掛けた。

 

 

モモイ

「まさかキイコさんが今言ってた事知っていたの!?」

 

ミドリ

「部室に連れ込んだときに初めて気付いたよ。でも実質匿う事になっちゃったから言えなくて…」

 

ユズ

「うぅ……私達共犯者になっちゃった…」

 

 

キイコ

「仕方ねぇ、今日を限りにここを出て行く。他の頭でっかち共にはテメェらの事は黙っておいてやるよ。」

 

 

そう言いいつつ部室から出て行こうとするが、その直前に棚の絵に何かが置かれている事に気付く。キイコはそれを摘まみ上げて見つめると、徐々に怒りの形相へと変わり始めた。

 

 

キイコ

「ふざけやがって……」

 

アリス

「それは何ですか?」

 

キイコ

「盗聴器。昨日の時点でテメェらが私を匿ってる事がバレちまってたみてぇだ。」

 

モモイ

「ちょっ!!?ヴェリタスぅ……!!」

 

キイコ

「まずい事になったぞクソッタレがぁ…………あ゛っ!!!!!

 

 

盗聴器に目掛けて大声を出し、すぐに投げ捨てて部室を飛び出す。モモイ達も追いかけるように部室を出ると、目の前をミレニアム所属ではない生徒達が通り過ぎて行った。

 

 

ミドリ

「ヴァルキューレ!?」

 

ユズ

「どうしよう……キイコさんが…」

 

アリス

「キイコさんがピンチになっちゃいました!!」

 

モモイ

「もしかしたら先生が来てるのかも……説得して止めさせなくちゃ!!」

 

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その頃、ミレニアム随一のハッカー集団≪ヴェリタス≫の部室では1人の生徒が倒れていた。キイコが盗聴器に目掛けて大声を出した事により、ヘッドホンからゼロ距離で届いてしまったのだ。

 

 

ハレ

「コタマ先輩!!?」

 

コタマ

「油断しました……でも、会話からしてほぼ確定で間違いありません。蓮田キイコはミレニアム、それも校舎内にいます…」

 

ハレ

「分かったからしっかりして!!」

 

チヒロ

「セミナーは既に動いている。それに加えてC&Cやヴァルキューレも要請したみたいね。」

 

コタマ

「私達も加勢しますか?」

 

チヒロ

「いや、それは止めておこう。セミナーはゲーム開発部の様子を探れと言ったのであって、その後に加勢しろとは言ってないから。」

 

ハレ

「という事はこのまま静観かぁ………それにしてもこんな時にマキはどこ行ったの?」

 

チヒロ

「そういえば今日は全然見てないね。」

 

 

ヴェリタスはセミナーからの命令でゲーム開発部に盗聴器を仕掛け、そこから聞き取った情報を既に報告していた。しかしそれ以上は何もしない事を決め、キイコの捕縛には出向かないのであった。

 

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ヴァルキューレ生徒A

「いたぞ!!!追い詰めろ!!!」

 

キイコ

「チィッ!!!」

 

 

通路をひたすら走り続けて撒こうとするが、ヴァルキューレの生徒達の追跡は予想以上に執拗であり、撒くどころか次第に数が増えていた。キイコはドアを蹴破って更に奥へ進むが、その奥からヴァルキューレの別動隊が現れ、挟み撃ちの状態になってしまった。

 

 

キイコ

「回り込まれたか……けど退路が完全に断たれた訳じゃねぇ!!」

 

 

徐々に全身がノイズに変わり始め、非物質化で目の前のガラスをすり抜けようと歩み出す。しかしそれに勘付いたヴァルキューレ生徒はある物を使用した。

 

 

ヴァルキューレ生徒B

「催涙弾!!!」

 

キイコ

「っ!!!??」

 

 

次々と催涙弾が発射され、催涙ガスが通路に充満し始める。ヴァルキューレの生徒達は事前にガスマスクを着けており、それに対してキイコは顔を晒したままであった。

 

 

キイコ

「クソッ…!!げほっ……かはっ…………」

 

 

非物質化を妨害された事でノイズ化しかけていた体は元に戻り、その場に蹲る。その様子は外からもハッキリと見えており、その光景をノアやC&Cの面々、そして先生が見つめていた。

 

 

ノア

「この時を待っていましたよ、蓮田キイコ。」

 

ネル

「催涙ガスで動けなくしてから拘束か。こりゃアタシらの出番は無いかもしんねぇな。」

 

アスナ

「リーダー、そうでもないみたい……」

 

先生

「アスナの言う通りだ。キイコがあれくらいでやられるとは思えない。」

 

ネル

「何言ってんだ。現在進行形で催涙弾の餌食になって………あ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォンッ

 

 

 

 

 

催涙ガスが充満する中、キイコはガラスを叩く。その手は肌が真っ黒に変色し、全ての指がうねり始めていた。

 

 

キイコ

「グヴヴヴヴヴヴゥ………!!!」

 

 

段々と体格が大柄になっていき、身長が2メートルを超える。そして足の肌が真っ白になり、髪の奥から左右に分かれた蒼白の仮面が現れ、カシャンと音を立てながら閉じて顔を隠す。そして催涙ガスが充満する中を堂々と立ち上がり、ガスの中から黄色い眼光を放った。

 

 

 

ガシャァ!!!!

 

 

ノア

「きゃあ!!?」

 

ネル

「うおっ!!」

 

 

ガラスを両手で砕き、催涙ガスが外に漏れ出す。そしてそのガスの中からキイコは飛び出して地面に着地した。

 

 

キイコ

「グルルルルルルル……!!」

 

 

 

先生

「あれが変身状態のキイコか…」

 

ノア

「化け物……!!」

 

 

 

キイコ

グォォォォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!

 

 

 

 

 

 

雄叫びを上げたキイコは真正面に見える先生達の方へと歩き出すが、その直後に側面から弾幕が張られる。変身状態である為に弾丸は弾かれるが、それでも痛みは感じており、キイコはすぐに視線をずらして走り出す。その先にはヴァルキューレの警備局に属する生徒達がアサルトライフルで撃ちまくっており、その数は1個小隊程であった。

 

 

先生

「まずい、あそこのヴァルキューレの子達が!!」

 

ノア

「装甲車を出してください!!少しでも多くの火力で押し切るんです!!」

 

 

インカムでヴァルキューレの生徒達に大声で命令を出し、その命令を受けたヴァルキューレの装甲車が2台走り出す。タレットに取り付けた機関銃の弾幕を浴びせながら接近するが、キイコはタックルを食らわせて1台を横転させた。そして弾幕を浴びせ続けるヴァルキューレ警備局の生徒達の目の前まで来ると突如足を止めて向きを変え、迫って来るもう1台の装甲車のフロント部に蹴りを放った。

 

 

ズドガシャァッ!!!!

 

 

この蹴りでフロント部は大きくひしゃげ、中に乗っていたヴァルキューレの生徒達はその衝撃で気絶してしまう。そしてキイコはその車体を両手で持ち上げ、すぐ近くで未だに弾幕を浴びせ続けるヴァルキューレ警備局の生徒達に目掛けて叩き付けたり振り回したりと、一方的な蹂躙を始める。装甲車の質量や重量とキイコの腕力が合わさった力は凄まじく、その攻撃を食らったヴァルキューレ警備局の生徒達は悉く意識を失ってしまった。

 

 

キイコ

「グルル……グアァアアアア!!!」

 

 

ブォンッ

 

ガシャァ!!!

 

 

「「「きゃあああああああ!!!?」」」

 

 

装甲車のひしゃげたフロント部からエンジンを引っ張り出すとそれを投擲し、先生の近くを通り過ぎて背後の建物のガラスを突き破る。するとその建物の中から悲鳴が上がり、先生とノア、ネル達C&Cがその建物の中を覗き込むと、その奥の壁に先程投擲された装甲車のエンジンが減り込んでいた。

 

 

ノア

「何て力…!!!」

 

先生

「っ……ネル…!!!」

 

ネル

「おう………お前らアタシを援護しろ。」

 

アスナ

「気を付けてよリーダー……」

 

 

 

 

ダダダダダダダダダダ!!!!

 

 

 

キイコ

「グガァァッ!!?」

 

 

ネルは走りながら両手に持った短機関銃を発砲し、キイコに肉薄する。キイコは迎え撃とうとするが、その直後にアスナとトキのアサルトライフルの弾幕やアカネの爆弾投擲による援護で身動きを封じられた。

 

 

ダァンッ!!!

 

ガァンッ!!!

 

 

何も出来なくなったところにカリンの対物ライフルの弾が蒼白の仮面に直撃し、仰け反って倒れそうになるがギリギリで踏み止まり、触手に変化した両手を構える。するとその触手が丸まり拳を形作ると光沢を放つ銀色に変色し、打ち鳴らして金属音を響かせた。最近になって習得した触手硬質化の応用であり、キイコは打撃武器にして盾を形成したのであった。

 

 

ダァンッ!!!

 

ガキィィンッ!!!

 

 

キイコ

グルルルルルルルルルル……!!!!

 

 

硬質化した両手を交差させて対物弾を防ぎ、亀裂の入った蒼白の仮面を開いて醜い素顔を晒し近付いてくるネルを睨み付ける。ネルは短機関銃の発砲を止め、足を更に速めてキイコに接近した。

 

 

キイコ

「ガァァアア!!!」

 

ネル

「っ!!!」

 

 

ドゴォンッ!!!

 

 

硬質化した手を振り翳して殴り掛かるが、ネルはすぐに跳躍で躱してキイコの肩を踏み台にし、先程キイコが振り回していた装甲車の上に飛び乗る。そしてその上から短機関銃の弾幕を浴びせるが、分厚いゴムにぶつかったような鈍い音が出るだけで大した効果は無く、キイコはそのまま殴り掛かった。

 

 

ネル

「おっと!!」

 

 

ダダダダダダダダダダダダ!!!!

 

 

再び跳躍で躱してキイコの真上を飛び越え、同時に宙返りをしながら短機関銃の弾幕を浴びせ続ける。着地した後も発砲を続けるが、ここに来て弾倉の中身が尽きてしまい、ネルは急いで装填を行う。しかし装填を終えた直後にキイコは殴り掛かり、ネルは体を反らして拳を躱し、続けて繰り出された足払いにはバタフライツイストで回避に専念する。しかしキイコの猛攻は止む気配が無く、次々と拳の連撃を放ってネルを1歩ずつ後退させていく。

 

 

先生

「ネルでも厳しいか……」

 

ノア

「先生、会長がこの時の為に用意したあれを投入するみたいです。一度ネル先輩を下がらせましょう。」

 

先生

「何か考えでも有るんだな? よし……ネル、一旦下がるんだ。」

 

 

ネル

「あぁ!?下がれ!?っておわっ!!!」

 

キイコ

「ガァァァアアアアアア!!!」

 

 

叩き潰そうと硬質化した手を連続で振り下ろし、地面に巨大な亀裂が入る。ネルは目の前に振り下ろされた拳を蹴って距離を取り、先生達の方へと走り出す。キイコはその後を追いかけ始め、徐々に足を速めて行った。

 

 

ネル

「クソッ、追い付かれちまう!!」

 

ノア

「ネル先輩伏せて!!!」

 

 

言われた通りに伏せた瞬間、頭上を何かが飛び越えてキイコの前に立ち塞がる。それは小学生が描いた絵のような4本腕のロボットであり、手の先端部にはスピーカーが取り付けられている。キイコは迷わずそのロボットに殴り掛かろうとするが、その瞬間スピーカーから一斉に大音量と共に衝撃波が放たれた。

 

 

キイコ

「グォォ…ァァアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

大音波と衝撃波によって動きを封じられ、キイコは耳を塞いで倒れ込む。その様子を慌てて外に飛び出したモモイ達ゲーム開発部が目撃し、モモイは顔を青ざめて先生の方に駆け寄った。

 

 

モモイ

「先生!!」

 

先生

「モモイ!!?駄目だ離れろ!!危険過ぎる!!」

 

モモイ

「そんな事よりあれを止めさせて!!キイコさんが死んじゃうよ!!!」

 

アリス

「キイコさん!!!!」

 

 

キイコ

「っ!!!グゥゥ……グォォ…ォォオオオオ……!!!」

 

 

超音波を食らいながらも立ち上がり、ロボットを睨み付ける。そして片手の触手を伸ばして地面に突き刺すと、その触手が地面の下を伝ってロボットの真下に行き、先端を硬質化させて飛び出した。

 

 

ガシャァ!!!

 

 

先生

「っ!!?」

 

ノア

「ヴァルキューレ!!ヘリはまだ到着しないのですか!!?」

 

 

真下から飛び出した触手がロボットの体を貫き、大音波が一瞬にして止まる。先生は呆然としてしまい、ノアはインカムでヴァルキューレの生徒達に怒鳴りながら命令を出した。

 

 

ネル

「無茶苦茶しやがる……おい!!ヘリが到着するまで時間を稼ぐぞ!!」

 

アスナ

「リーダー!!」

 

 

ガシッ

 

 

ネル

「あぁ!!?いつの間に…!!?」

 

 

ネルの足下から触手が飛び出し、両手と両足に巻き付いて拘束する。キイコは身動きが出来なくなったネルに歩いて近付き、目の前で立ち止まった。ネルは拘束されたまま睨み返し、大声で叫んだ。

 

 

ネル

「テメェ、こんなクソダセぇやり方でアタシに勝とうってのかよ!!ゲヘナで暴れたときもそうやって卑怯な変身能力使ったんだってな!!撃たれたらすぐ死ぬ癖に調子に乗りやがって!!!

この()()()()が!!!!!

 

キイコ

「……………グルルルルルルルルル!!!!

 

 

 

 

ドギャッ

 

 

 

 

拘束を解くと同時に強烈な蹴りを放ち、ネルは避ける間も無くまともに食らってしまう。ネルは蹴られた小石のように何度も地面をバウンドしながら吹き飛び、電柱に頭からぶつかってしまった。

 

 

アスナ

「嘘………リーダー…」

 

カリン

「ネル先輩が負けた…!?」

 

アカネ

「こんな事が……」

 

トキ

「あれがクンヤンの大幹部、オールドワンス……ネル先輩でも勝てないのですね…」

 

 

 

先生

「ネルが負けた!!?まずいぞ…!!」

 

ノア

「オールドワンス………キヴォトスの常識に囚われない異次元級の強さだと言うのですか…!!あれが後十何人もいるだなんて……」

 

 

ネルを蹴り飛ばす光景を見せ付けた事で、全員が戦意喪失をしてしまう。そんな中、キイコに近付く者が1人いた。ネルを蹴り飛ばして気が立っていたキイコはその者を視界に捉えると驚いたように目を見開き、ゆっくりと歩み寄り始めた。

 

 

キイコ

「グゥゥ……!?」

 

アリス

「キイコさん……」

 

 

 

ノア

「アリスちゃん!!?」

 

先生

「危ない!!キイコから離れるんだ!!!」

 

 

キイコとアリスが見つめ合う中、空からヘリの音が聞こえだし、次第に大きくなっていく。キイコは空を見上げると、そこにはヴァルキューレの校章が描かれたヘリがチェーンガンを向けていた。

 

 

キイコ

「グァァウ!!!」

 

アリス

「わぁあ!!?」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

ノア

「まだ撃たないで!!!アリスちゃんが巻き込まれちゃいます!!!」

 

 

キイコはアリスに覆い被さり、チェーンガンの弾幕を背中で受け止める。ノアは顔を青ざめて攻撃中止の指示を出したが、キイコが取った次の行動により手遅れとなった。

 

 

キイコ

「ギェェエエエエアアアアアアア!!!!」

 

 

ガシャァッ!!!

 

 

先端部を硬質化させた触手を伸ばし、ローターの付け根を突き刺し破損させる。ローターを壊されて高度の維持が出来なくなったヘリはキイコとアリスの近くに墜落し、爆炎を広げていく。キイコはアリスを抱き締めるように守り、そのまま爆炎に飲み込まれていった。

 

 

ノア

「嫌ああああああ!!!!!」

 

先生

「アリス!!!」

 

モモイ

「キイコさん!!!アリスちゃん!!!」

 

 

辺りに広がる炎が次第に減っていき、その奥から大柄な人影が立ち上がる。その影の正体は気絶したアリスをお姫様抱っこで持ち上げるキイコであった。アリスを庇い爆炎が直撃した事で、レインコートは所々が焦げ、蒼白の仮面は左半分が欠けて肌を残した素顔の半分が晒されていた。

 

 

キイコ

グルルルルルルルルルル……!!!!

 

 

黄色の眼光を放ちながら先生達を睨み付け、歯を食いしばり唸り声を上げる。その後明後日の方向に向くとアリスを抱えたまま全身にノイズを纏い、飛翔して去っていった。

取り残された先生達は周囲の惨状とキイコの捕縛が失敗に終わったという結果に呆然とし、そこに追い打ちを掛けるかのように天気が雨に変わり始めた。

 

________________________

 

 

同時刻、キヴォトスから遠く離れた東の外れの地。その地下空間にとある3人組が来ていた。白石ウタハ、猫塚ヒビキ、豊見コトリといったミレニアムの≪エンジニア部≫である。

 

 

ウタハ

「どこに座標設定していたんだヒビキぃ!!!」

 

ヒビキ

「ごめん……徹夜で仕上げたから、眠気で視界が霞んで座標の数値を間違えた……」

 

コトリ

「転送装置の開発を聞いたときはまさかと思いましたが本当に作ってしまうとは……しかしヒビキが徹夜で作ったのであれば当のヒビキではなく、徹夜をしてないウタハ先輩が座標の設定をやった方が良かったのではないのかとつくづく思いますね。それにしてもここはどこでしょうか? どこかの地下空間だという事は分かりますが、キヴォトスでこれ程広大な地下空間は聞いた事が有りませんね。」

 

ウタハ

「とにかく部室に戻って仕切り直しだ!!ヒビキ、ミレニアムの座標は分かるか?」

 

ヒビキ

「ちゃんとプログラムに入れておいたから大丈夫なはず……」

 

 

エンジニア部はヒビキが徹夜で作った転送装置の動作テストを行ったが、座標を間違えて未知の領域へ来てしまっていた。ウタハとヒビキは急いで部室に戻る為に転送装置を起動させようとするが、そんな2人を余所にコトリが地下空間の奥深くへと歩き出していた。

 

 

ウタハ

「コトリ!?どこに行く気だ!?」

 

コトリ

「あちらに何か見えます。大きくて頑丈そうな扉です。何か文字が書かれていますけど、この位置からだと遠過ぎて読めないので近くに行ってみようと思います。」

 

ウタハ

「止めろ!!!こんな未開の地で勝手な事したら何が起きるか分かったもんじゃない!!!」

 

ヒビキ

「コトリ、今は好奇心を抑えて……」

 

 

コトリの言う通り、地下空間の奥には光沢を放つ巨大な扉が見え、その奥には幾つもの高層ビルらしき建築物が見えた。ウタハとヒビキが扉に向かうコトリを制止して転送装置の方へ連れ戻そうとするが、その瞬間扉の奥から異様な雰囲気を3人は感じ取った。

 

 

ウウゥゥゥゥゥゥゥゥ………

 

 

ヒビキ

「警報の音…」

 

ウタハ

「転送装置を隠せ!!!そこの岩陰だ!!!隠れろぉ!!!」

 

 

3人は転送装置を持ち上げ、地下空間の端に有る巨大な岩の陰に隠し、3人もそのまま岩陰に隠れる。警報が聞こえた扉の方向を岩陰から顔を出して覗き見ると、目を疑うものが姿を現した。

 

 

 

グロロロロロロォォ……!!

 

 

 

 

ウタハ

「何だあれは……」

 

ヒビキ

「ひっ…ドラゴン……?」

 

コトリ

「ドラゴンにしては私が知っているものと造形が違いますね。頭部の形状は馬に似ていますし、足の骨格は形状的に鳥類に近むぐぅ!?」

 

ウタハ

「静かにしろバレるだろうが…!!」

 

 

蝙蝠のような翼をはためかせて現れた飛竜のような生物。その生物は扉のすぐ上に立てられた建築物の屋根に乗り周囲を見渡し始める。そしてよく見るとその背中には誰かを乗せており、ウタハはその姿を見て声を漏らした。

 

 

ウタハ

「加雄間ナル……連邦生徒会がクンヤンに宣戦布告した放送で乱入した奴だ……」

 

ヒビキ

「本当だ……じゃあ、あの扉の先は……」

 

コトリ

「学園地底都市クンヤン……私達は偶然にも敵対都市の入り口前に来ていたみたいですね……」

 

 

 

 

ナル

「おかしいな……キヴォトス人の気配を感じたんだが………もう少し探ろうか…」

 

 

 

 

キィィィィィィィィィィィ………

 

 

 

ウタハ

「うわぁぁああ!?」

 

ヒビキ

「ううぅ…!!何この声? 音? 分かんない…!!」

 

コトリ

「あぁぁ…!!胸が苦しい……憎悪と哀しみがぐるぐると渦巻いてるような……ああ駄目…!!考えたら正気を保てなくなりそうです…」

 

 

ナルが自身の体に宿す神性魂の力で発した怪音で3人は耳を塞ぎ蹲る。しかし幸運にもバレてはおらず、怪音はすぐに止んだ。

 

 

ギェェアアアアアアア!!!!

 

 

 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

 

 

ナルが騎乗する飛竜が咆哮を上げると扉が開き、同時に扉の奥から武装したクンヤンの生徒達が隊列を成して行軍を始めた。その数は少なくとも万単位は軽く超えており、3人は息を殺して岩陰から大軍勢を覗き見る。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!

 

 

どこか狂気を感じる表情を浮かべ、多種多様な銃や近接武器で武装したクンヤンの生徒達を直に見た3人はこっそりと転送装置の起動に移った。3人の存在に気付いていなかったとはいえ、溢れ出る殺気に3人は本能的に恐怖を感じてしまったのだ。

 

 

ウタハ

「まだか…!?」

 

ヒビキ

「ここをこうすれば…よし!!」

 

コトリ

「急いでください。いつバレてもおかしくないんですから。」

 

ヒビキ

「ミレニアムの座標……これで…!!」

 

 

起動した転送装置と3人は白い電撃に包まれる。その直後に扉の上から翼をはためかせて飛翔した飛竜が岩陰を覗き見るが、既に3人と転送装置は影も形も無かった。

 

 

ナル

「やっぱり気のせいか……」

 

 

飛竜はナルを乗せたまま行軍するクンヤンの生徒達と同じ方向へ飛び、地上へ飛び出していった。

 

 






今回で『流離の黄衣編』は終了となります。

次回はキイコに敗北したネルが主役の閑話を挟む予定です。

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