黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~ 作:ww12
今後の展開の構想を練ってたら大分更新が遅れた…
何はともあれ黄印の旗揚げ編開始です。キイコもここから本格的に動き出します。
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前回のあらすじ
ミレニアムサイエンススクールにてゲーム開発部に匿ってもらっていたキイコだったが、ヴェリタスの盗聴によってバレてしまい、ヴァルキューレ、セミナー、そしてC&Cの混成部隊の攻撃を受ける。キイコはすかさず神性変身を行いこれを圧倒、更にはミレニアム最強と言われる美甘ネルすらも簡単にあしらってしまった。挙句の果てにはヴァルキューレのヘリを撃墜するという荒行もやってのけるが、この攻撃にアリスが巻き込まれてしまう。しかしキイコは墜落したヘリの爆発からアリスを守り抜く。その後気絶したアリスを抱き上げたまま、遠くへ飛翔していくのだった。
Ep15.邪神と無機物の2人旅
ここはミレニアム自治区の自然地帯である≪東アルプス≫。この日は季節外れの雷雨に見舞われており、大雨の中をキイコはアリスを抱き上げながら雨宿りが出来る場所を探していた。
雨に打たれて歩き続ける事数分、ようやく洞穴を発見したキイコは早速その中へと入っていく。洞穴は変身した今のキイコが頭をぶつけてしまう程に天井が低く、キイコは屈んで気絶したアリスを洞穴の奥に座らせた。
キイコ
「…………」
アリス
「……………ん…」
キイコ
「っ!!」
アリス
「あれ………っ!?わぁぁああ!!?」
キイコ
「グァァアアゥ!?」
アリスが目を覚ますと蒼白の仮面の左半分が欠け、真っ白な肌と目を黄色く光らせる変身状態のキイコの顔が視界に映り、思わず悲鳴を上げる。対するキイコもそれに驚き、屈んだ状態から勢い良く立ち上がった。
ドゴッ
キイコ
「アガッ!?………ア˝ア˝ァァ……!!」
勢い良く立ち上がった事で洞穴の天井に頭をぶつけ、雨が降る外に出て痛みが走る頭に手を当てる。その様子を見て目の前にいるのがキイコだと気付いたアリスは恐る恐る声を掛けた。
アリス
「キイコさん…?」
キイコ
「グァッ…?」
アリス
「アリスを、守ってくれたんですか?」
キイコ
「……………」
ピシャッ
ドゴォォォオオオオン!!!!
キイコ
「ガァッ!!?グルルルァァァアアアアアア!!!」
比較的近くに落ちた落雷の音に反応し、再び洞穴の外に出る。そして近くの大岩を持ち上げると空に目掛けて投擲し、雷鳴に負けない大音量の雄叫びを上げた。
キイコ
「グォォォォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!」
叫び終えると周囲を警戒し始め、アリスに「下がれ」と言わんばかりに手を翳し始めた。この行動にアリスは慌ててキイコの手を掴み、洞穴の奥へと引っ張り始めた。
アリス
「あの、大丈夫です!!大丈夫ですから!!」
キイコ
「グゥゥ……」
アリス
「あ、天井気を付けてください。さっきみたいにぶつけちゃいますから。」
洞窟の奥に2人は腰掛ける。するとキイコの体は徐々に縮み始め、白い肌は血色を取り戻していき、黒い触手になっていた手も元の形に戻り、左半分が欠けた蒼白の仮面も消失した。
キイコ
「はぁ…はぁ……」
アリス
「あの………今のは…」
キイコ
「『神性変身』………私の体に宿るハスターの力を最大限に引き出したものだ。変身すると理性が吹っ飛びそうになるからあまり使いたくはねぇんだけどな。」
アリス
「そうだったんですか……どうしてアリスを助けてくれたんですか?」
キイコ
「何故かテメェだけは死なせちゃいけねぇって、そう思っちまったんだ。何で助けちまったんだろうな………」
アリス
「キイコさんは、ずっと悩んでますよね? 隠してるつもりでも、アリスには分かります。キイコさんって、自分が良い人か悪い人なのか分からなくなっちゃったんですか?」
その発言にキイコは目を丸くして驚き、溜息をつく。そしてアリスの頭を撫でながらその発言に答えた。
キイコ
「よりによってテメェにバレるとはな……ああ、テメェの言う通りだ。前にも話したが、私は以前はクンヤンにいた。だけど脱走してこのキヴォトスまで流れ着いた。それからは自分がこれからどうすりゃいいのか、全く分からず終いだ。挙句の果てにキヴォトス人はあまり好きじゃねぇし、かと言ってクンヤンに戻るつもりもねぇ。そうこう考えてる内に気が付いたらテメェやモモイ達が私を気に掛けてくれたせいで、私はいつの間にかキヴォトス人に『情』が芽生えそうになっちまった。」
アリス
「やっぱり………」
キイコ
「あ?」
アリス
「やっぱりキイコさんは、敵じゃないです!!!」
キイコ
「うっ………」
アリスはキイコが心の内を打ち明けた事で、キイコがキヴォトスの敵ではない事を悟り、嬉しそうにキイコに抱き着く。そしてキイコの手を掴み純粋無垢な視線を向けながら笑顔で語り掛けた。
アリス
「アリスは信じてます!!貴女が悪い人じゃないって事を!!」
キイコ
「テメェ……」
アリス
「アリスは勇者で、キイコさんはスーパーヒーロー!!怖いもの無しですね!!!」
キイコ
「おい……はぁぁぁ………そういう事にしとくか。」
雷雨が降る東アルプスの洞穴の中で、クンヤン人の少女とアンドロイドの少女の絆が芽生え、2人はそのまま一晩を過ごす事となった。アリスはキイコのレインコートの内側に潜り、膝の上に座って眠り始め、キイコもそんなアリスを抱き締めながら眠りについた。
夜が明ける頃に雷雨は止み、東アルプスの空は快晴が広がっていた。キイコはアリスを連れて洞穴から出発し、東アルプスの開けた場所へ移動する。
キイコ
「さて、どうするか。ミレニアムまで真っ直ぐ帰るか?」
アリス
「いえ……折角ですから、キイコさんと一緒に少し冒険してみたいです!!」
キイコ
「そっか……よし、私の背中にしがみついてろ。絶対に手ぇ離すなよ!!」
アリス
「はい!!」
アリスはキイコの背中にしがみつき、それを確認したキイコは真っ直ぐ走り出す。その速さは時速50キロという驚異的なもので、そこから次第に高さを上げながら何度も跳躍し、非物質化による飛翔で一気に空へと上っていった。
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先生
「キイコはアリスを助けて、どこに行ったんだ………」
先生はシャーレのオフィスで椅子に座り考え事をしていた。キイコとアリスの行方が気になり、いつもの作業に集中出来なかったのである。
そんな中、携帯の電話が鳴り、先生はすぐに出た。
先生
「………!!?今度はアビドスに行ったのか!!?」
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飛翔の途中で非物質化を解き、アリスに空からの景色を見せる。アリスは興奮してしがみついたまま叫び、キイコはその声を聞いて微笑んだ。
その後再び非物質化して落下速度を落とし、一度川の真ん中に出来た小さな陸地に着地する。周囲を見渡した後は再び跳躍からの非物質化で飛翔し、その先の砂岩地帯へと入っていった。砂岩の上を駆け抜け、更にアビドス砂漠の近場を更に進んでいく。やがて開けた場所に着地し、背負っていたアリスを下ろした。
キイコ
「ここらで少し休むか。丁度いい日陰を見つけたしよ。」
アリス
「大きな岩ですねぇ。」
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アビドス高校
ホシノ
「ノノミちゃんとアヤネちゃんがいないだけでこんなに寂しいなんてねぇ……」
シロコ
「ん……ホシノ先輩、凄い哀愁漂わせてる。」
セリカ
「しっ!!こういうのは分かってても言うもんじゃないでしょ…!!」
クンヤン連合学園からの刺客である黒霧姉妹を退けたアビドス高校はノノミとアヤネが負傷で入院してしまい、戦力が減ってしまっていた。更に運が悪い事に連邦生徒会がクンヤンに宣戦布告をしてしまい、準備が不十分のまま戦時体制へと移行してしまったのだ。
シロコ
「この前襲ってきたあの双子、私達の先祖が迫害した民族の子孫だって、連邦生徒会は言ってた。でも正直納得がいかない。何で私達? 私達は誰も迫害なんてしてない。」
セリカ
「私達が迫害者の子孫だから……直接関与してなくても、それだけで十分狙われる理由になるわよ。」
シロコ
「ん、理不尽。」
セリカ
「それには同感だわ……はぁ、2人の退院は何時になるのかしら…」
シロコ
「嫌な気分になってきた……少し外の空気吸ってくる。」
シロコは外に出て愛用のドローンを飛ばし、適当な場所に飛ばして搭載したカメラで辺りを適当に見渡す。するとそのカメラの映像が砂岩地帯を映した途端、不可解な物が横切った。黄色のレインコートを纏い誰かを背負った人影が砂岩地帯を駆け抜けていたのだ。シロコはすぐにドローンを下ろして仕舞い、ロードバイクで砂岩地帯へと向かって行った。
セリカ
「シロコ先輩遅いわね……ん?」
モモトークにシロコから連絡が届き、セリカは早速確認する。その内容を確認し終えるとホシノに声を掛け、銃の手入れを始めた。
セリカ
「ホシノ先輩、シロコ先輩が砂岩地帯で誰かを発見したって!!そいつは黄色のレインコートを着ていたみたい!!もしかしたらこの前言っていた蓮田キイコかもしれないわ!!」
ホシノ
「んん…? レインコート……レインコート!?哀愁漂わせてる場合じゃない!!シロコちゃん1人じゃ危険過ぎる!!」
ホシノは事の重大さを察し、急いで準備を整えセリカと共に砂岩地帯へと向かって行った。
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アリスは大きな砂岩の日陰で昼寝をしており、キイコのレインコートを布団代わりに被っている。一方レインコートを脱いで緑ジャケット姿になったキイコは地面に埋まっている砂岩の上で胡坐をかき、瞑想をしていた。神性変身における理性を少しでもコントロール出来るように精神を安定させようとしているのだ。
キイコ
「…………………あ?」
プロペラの音が微かに聞こえ始め、キイコは立ち上がって音の方へ移動する。そこにはカメラを搭載した白いドローンがキイコにレンズを向けていた。クンヤンにドローンは無かった為、キイコは困惑してしまう。
キイコ
「何だありゃ……」
シロコ
「動かないで。」
キイコ
「チッ……」
背後から声が聞こえ、キイコは渋々両手を上げる。シロコは銃を構えたまま背後から近寄り、キイコの真後ろに立つ。
シロコ
「蓮田キイコ……なんだよね?」
キイコ
「だったら何だ。」
シロコ
「ここで拘束するからジッとしてて。私も出来れば殺したくないから。」
キイコ
「相変わらず肝心な所で甘ぇんだなキヴォトス人。」
キイコの姿がノイズの塊のようになるとシロコの体をすり抜けながら背後に回り、後頭部を掴んで地面に押さえ付ける。その一瞬過ぎる動きにシロコは反応出来なかった。
シロコ
「ぐぅ……!!」
キイコ
「出会い頭に銃を向けなきゃこんな目に遭わなかったのにな。」
シロコ
「お前が……蓮田キイコ…!!」
キイコ
「そういうテメェはアビドスのモンだな。となるとホルスも、来ちまってるか……」
キイコが視線を向けた先には切羽詰まった表情のホシノとセリカが銃を向けている。特にホシノは今にも発砲しそうな程に息を荒げていた。
ホシノ
「シロコちゃんを……放してよ。」
キイコ
「だったらまずテメェらは銃を下ろせ。私はテメェらと敵対する理由が無ぇんだよ。」
セリカ
「嘘を付かないで!!!この前襲撃してきた双子はアンタが裏切り者って言ってたけど、そんな芝居には引っかからないんだから!!!」
キイコ
「芝居じゃねぇ。私は本当にクンヤンを脱走した。」
セリカ
「芝居じゃないなら今ここで証拠を見せなさいよ!!!」
キイコ
「証拠なら丁度テメェらの後ろにいるぞ。」
セリカ
「え?」
セリカが振り返ると、そこには皮膚がひび割れて一部が樹木化したように変質し、中世の兵士のような鎧を纏い、体の所々に空いた穴から橙色の光が溢れる人を歪ませたような怪物が片手剣を振り翳していた。
「ギェァァエ˝エ˝エ˝エ˝!!!」
ガキィンッ バァンッ!!!
咄嗟にホシノが間に入り片手剣を盾で防ぎ、瞬時に散弾銃で頭を吹き飛ばした。その怪物は橙色に光る体液を撒き散らし、鎧と片手剣だけを残して蒸発した。
セリカ
「何なのよ今のは!!?」
キイコ
「クンヤン連合学園の『兵器開発部』が量産している生物兵器の1つ、『アンデッド』だ。環境適応能力が高ぇって聞いていたが、こんな砂漠でも動けるとはな。」
ホシノ
「量産って、他にもいるの?」
キイコ
「いるぞ。数えるのが面倒臭くなるくらいには。」
ボゴッ…
ズズッ
キイコ
「とか言ってたら追加が来たみてぇだ…!!」
砂岩地帯と砂漠地帯の境目に当たる地面から次々とアンデッドが姿を現し、こちらへ向かってくる。いずれも中世ヨーロッパの兵士を彷彿させており、これまで相手してきたヘルメット団やカイザーとはまた異質な敵であった。
キイコ
「これだけ頭数を揃えてるとなると、偵察目的じゃねぇな。明らかに私を追って来やがった。」
シロコ
「ん、今はキイコの事でどうこう言ってる場合じゃない。こいつら倒さないと。」
キイコ
「ああ、ここは共闘するしかねぇぞ。」
押さえていたシロコを解放し、一同はアンデッドの群れと対峙する。キイコは拳を構え、ホシノ、シロコ、セリカの3人は銃を構えた。
「「「「ガァァアアアアアア!!!」」」」
キイコ
「行くぞオラァ!!!」
アンデッド達は叫びながら走り出し、キイコ達もすぐに動いた。
3人の弾幕がすぐに張られ、アンデッド達は次々と蜂の巣状態になって倒れていく。しかし一部のアンデッド達はすぐに起き上がり、再び襲い掛かって来る。その内の一体がセリカに片手剣を振り下ろすが、部分変身で腕を硬質化させたキイコが間に入って防ぎ、すかさず腹に拳を叩き込む。セリカは一瞬戸惑ったがすぐに後に続き、キイコに腹を殴られて怯んだアンデッドの頭を撃ち抜いた。
セリカ
「頭が弱点みたいね。」
キイコ
「神経だけが蘇生された状態だからな。」
その後すぐに別のアンデッドへの攻撃に移り、キイコはそのアンデッドの左鎖骨に出来た割れ目に指を入れ、そこから真っ二つに引き裂いた。
キイコ
「うぉぉおおおあああ!!!」
メギメギメギ… バギャァッ!!!
シロコ
「凄い…」
セリカ
「いやどういう腕力してんのよ!!?」
ホシノ
「このまま一掃するよ!!」
キイコとホシノは次々とアンデッド達を倒していき、シロコとセリカもキイコの格闘術に驚きつつも後に続く。4人の共闘により、数十体にも及ぶアンデッドの群れは殲滅され、辺りには大量の鎧と片手剣だけが残った。
キイコ
「こんな何も無い所でこれだけ出るのはおかしい。こりゃあ近くに野営地が有るな…」
シロコ
「野営地?」
キイコ
「クンヤン連合学園の野営地だ。キヴォトスを攻めるに当たって至る所に建ててるんだろうよ。」
セリカ
「もしそれが本当なら見過ごせないわ!!その野営地はどこに有るの!?」
キイコ
「知るか。そこのアヌビスが飛ばしてた白いので探せねぇのかよ。」
シロコ
「ん、その言い方なんかムカつく。」
そう言いつつもドローンを飛ばし、周囲を探る。少しするとシロコは何かを見つけたのか、目を見開いた。
シロコ
「カタカタヘルメット団の基地が……」
セリカ
「どうかしたの?」
シロコ
「ん……乗っ取られたみたい。多分クンヤンに。」
キイコ
「もう殺られちまってたか。で、どうすんだ? このまま攻めるか?」
シロコ
「そりゃあ勿論…」
ホシノ
「待ってシロコちゃん、正直今回は洒落にならないかもしれないよ。」
キイコの問いにシロコは即答しようとするが、ホシノとセリカの反応を見て声を詰まらせる。今回の相手はキヴォトスと因縁が有るとは言え、今の世代にとっては未知の存在に等しいクンヤン連合学園だからだ。あくまで立ち退き要求ばかりだったヘルメット団やカイザーコーポレーションと違い、明確な殺意を持ってこちらを狙っている事を黒霧姉妹が既に証明している。
そう悩んでいると奥から誰かが走って来るのが見え、キイコはその姿を見た途端に嫌悪感を露わにした。
キイコ
「テメェ先公ぉ…!!」
先生
「本当にアビドスに来てたんだ……ホシノ達は大丈夫!?何か乱暴されてない!?」
ホシノ
「大丈夫だよぉ。キイコもおじさん達に敵意は無かったからねぇ。」
セリカ
「でも、カタカタヘルメット団の基地がクンヤンに制圧されたせいで、ここら辺りも安全とは言えなくなったわ…」
先生
「そうか……それからキイコ!!アリスはどうしたんだ!!」
キイコ
「アリスならそこの岩の陰で寝てるぞ。勿論傷1つ付けちゃいねぇ。」
砂岩の日陰でレインコートを布団代わりにして昼寝しているアリスを見た先生は急いで駆け寄り、体を揺すって起こす。アリスは起き上がると大きく欠伸をし、目を擦りながら先生を視界に捉えた。
アリス
「あ、先生!!」
先生
「本当にキイコに何もされてないんだよね!?」
アリス
「はい、アリスは大丈夫です!!キイコさんとはあの後更に仲良くなって、ここまで冒険の旅をしてきました!!」
先生
「そうか……よかった…」
キイコ
「テメェの目的はそいつの安否みてぇだな。だったらこれ以上アリスを守る必要はねぇ。」
そう言ってその場から歩き去ろうとするが、ホシノが咄嗟に散弾銃を向けている事を察して足を止める。キイコは溜息をつくとこれからの目的を告げた。
キイコ
「今から私はここらの近くに有るクンヤンの野営地を堕としに行く。テメェらアビドスはどうする? 一緒に来るか?」
ホシノ
「それを信じろって証拠は?」
キイコ
「ホルス、テメェ今の私がその証拠を持って無ぇ事を分かってて言ってるだろ。」
シロコ
「ホシノ先輩、私は一緒に行く。本当かどうかは実際に見て判断すればいい。」
セリカ
「シロコ先輩が言うなら、私も一緒に行くわ!!だけど蓮田キイコ、私はまだアンタの事信じた訳じゃないから勘違いしないでよね!!」
キイコはセリカの言葉に一瞬苛立ちそうになるも抑え、2人を連れて野営地の方角に歩き出す。ホシノも後に続こうとしたが、キイコは足を止めて振り返り、ホシノを睨み付けた。
キイコ
「テメェはそこで先公とアリスを守ってろ。こんな何も無いようで敵が潜んでるかもしれない場所に置き去りにする気か?」
ホシノ
「っ!!!」
先生
「ホシノ…キイコの言う通りだよ。ここで君まで行ってしまったら、私やアリスを守る者がいなくなってしまう。」
ホシノ
「分かった………キイコ、もしシロコちゃんとセリカちゃんに何かあったら…!!」
キイコ
「私は『一緒に来るか?』って聞いただけで『着いてこい』とは一言も言ってねぇ。怪我したり死んだとしてもそいつの自己責任だ。テメェら2人もそれを承知してるんだろ?」
シロコ
「ん……」
セリカ
「それはそうだけど……」
その後遠ざかっていく3人を見送った先生、アリス、ホシノの3人は砂岩の日陰でひたすら帰りを待ち続ける。すると砂岩の反対側から人影が現れ、その姿を見たホシノは散弾銃を構え、先生もアリスを庇うようにその者の前に立った。
黒服
「クックックックッ……まさかここでお会いになられるとは…」
ホシノ
「何しに来た…!!」
黒服
「蓮田キイコさんがここ数日隠れ家に戻って来ないので捜索していたのですよ。」
先生
「キイコならシロコとセリカを連れて近くに有るクンヤンの野営地に向かった。もしホシノやアリスに手を出すなら…」
黒服
「私は蓮田キイコさんの様子を見に来ただけで、貴女方には特に用事は有りませんのでご安心を。クックックッ…」
一抹の不安を抱えつつも、先生達はキイコ達の帰りを待ち続ける事になった。
キイコは相変わらずですが、次第に心に変化が表れつつあります。
次回はクンヤンに制圧されたカタカタヘルメット団の基地へ殴り込みです。
以下、今回登場したクンヤンの生物兵器解説
アンデッド
クンヤンで最も量産されている生物兵器。次元樹を用いて中世の外の世界から調達した兵士の死体を素体にしており、装備もそのまま。しかし外見は皮膚の一部が樹木のような質感になってひび割れ、内側からオレンジ色の光を放っている。主な用途は戦場での威力偵察と残党狩りであり、本格的な戦いで用いられる事は無い。
派生種に「イム=ブヒ」がおり、こちらは自治区内において人工太陽や人口雨の調節を担う労働用。睡眠や食事も必要としない為、不眠不休で働き続けても特に支障はない。こちらの名前のモチーフ元は「墳丘の怪」に登場する同名の労働用ゾンビ。