黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~   作:ww12

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ハーメルンでは初投稿となります。
何卒よろしく。


流離の黄衣編
Ep1.レインコートのステゴロ少女


黙示録曰く、太陽と月が蝕に覆われし(とき)、≪方舟≫の名を冠する都を、赤き海が飲み込む。

 

それは、封じられ、忘れ去られた(ふる)き神々が舞い戻りし証。

 

旧き神々は世界の支配者なり。書き換えられしこの世界を、再び自らの手で統治するのだ。

 

 

________________________

 

 

 

目を覚ますと土の天井が視界に入る。自分は何故寝てしまったのか、しかしそれもすぐに考えなくなる。

黄色のレインコートを纏い、ウェーブのかかった長い黒髪を垂らし、175㎝の長身を持つ少女は仰向けのまま土の天井を見つめ続けていた。

 

 

(今のは夢か…? これから戦うってのに、縁起でもねぇな……)

 

 

しばらくするとロボットの顔が覗き込む。そのロボットは迷彩柄が施され、手にはアサルトライフルを持っていた。周囲ではピンクや青の作業着を着た少女やヘルメットで顔を隠した少女達が銃を持って一斉に走っており、自分だけが置いて行かれているようであった。

 

 

カイザーPMC

「昼寝とは暢気な奴だ。さっさと立て!!報酬が欲しくないのか?」

 

「欲しくなきゃ最初っからここには来ねぇっての。じゃあ行って来るぜ……」

 

 

そう言ってレインコートの少女はゆっくり立ち上がると手ぶら(・・・)で周囲の少女達と同じ方向に歩き出した。

ここは学園都市≪キヴォトス≫南部の地下空間であり、そこには豊富な資源が埋まっていると言われている。これに目を付けた大企業≪カイザーコーポレーション≫はその資源を確保しようとしたが、その地下空間は≪タルタロス学園≫の自治区の一部であり、資源もその学校の管轄であった。

最初は交渉で資源を手にしようとしたが、以前からカイザーに反感を持つタルタロスの生徒達はこれを躊躇なく一蹴した事で交渉は決裂。しかしカイザーは引き下がる事は無く、何としても資源を手に入れる為に多額の報酬をチラつかせて金に飢えた不良や傭兵バイトの生徒達を雇い、配下のPMCと共にこれを殲滅しようと大規模な侵攻を仕掛けたのだ。

 

激しい攻防戦は長時間に渡り、徐々にタルタロスが劣勢になっていく。正面からの戦線はカイザーPMCや傭兵バイト、ヘルメット団の大部隊が弾幕を絶え間なく放ち、タルタロス生徒達の注意を引いていた。一方で戦線の側面に回り込んだ者もおり、レインコートの少女はその中にいた。

 

 

ヘルメット団A

「ここから入れそうだぞ……」

 

ヘルメット団B

「鍵かかってる……そりゃ閉めるよな。」

 

傭兵バイトA

「でもどうするの? ドアごと吹き飛ばしたら絶対バレるし…」

 

 

バレないように突破する方法を考えようとするが、ここにいるのは傭兵バイトとヘルメット団。特殊部隊のノウハウは皆無であり、統率力も素人に毛が生えたようなものである。しかしそんな中、レインコートの少女が鍵のかかったドアの前に立つと拳を構えた。

 

 

「私がやる…」

 

ヘルメット団A

「何だお前。ヘイローも銃も無いくせにどうする気だ?」

 

 

ヘルメット団の少女が言った通り、レインコートの少女には頭上の輪であるヘイローが無く、更に銃を一丁も持っていなかった。傍から見れば足手まといにしか見えないレインコートの少女は構えた拳をドアノブに目掛けて放つ。周囲はそんな事をしても無駄だと思っていたが、

 

 

「…………っ!!!!」

 

 

 

 

 

ガオンッ

 

 

ヘルメット団A

「は……?」

 

 

レインコートの少女の拳がノイズのようなものに覆われ、ドアノブに触れるとそれもノイズに覆われる。そしてノイズが消えるとドアノブが有った箇所は削り取られたかのように綺麗さっぱり無くなっており、滑らかな円形の穴が空いていた。ドアノブのすぐ下に有ったロックも纏めて無くなっており、結果的に大きな音を立てずに突破する事が出来たのだった。

 

 

「ふぅ……さて、中に入るか……」

 

 

レインコートの少女は奥へと進み、取り残された傭兵バイトとヘルメット団達は呆然としつつも後に続く。その先ではタルタロスの生徒達が銃を構えて一斉射撃をしていたが、幸いにもこちらに気付いてはいなかった。傭兵バイトとヘルメット団達はそのまま奇襲攻撃を仕掛けようと銃を構えたが、直後にレインコートの少女が真っ直ぐ走って肉薄。これには思わず驚いて固まってしまい、構えの姿勢も崩れてしまった。タルタロスの生徒達はレインコートの少女に気付いて銃口を向けようとするが、レインコートの少女は跳躍と同時に右足を持ち上げ、隊長格と思われるタルタロスの生徒に振り下ろす。その右足は先程の拳と同様ノイズに覆われていた。

 

 

タルタロス生徒A

「うわあああああああああ!!!?」

 

「うぉぉぉるらぁぁ!!!!!」

 

ガオンッ

 

ノイズを纏った踵落としは隊長格のタルタロス生徒の脳天から股下まで貫通し、体にはノイズの縦線が引かれる。そしてそのノイズが消えるとそこには何も無く、隊長格のタルタロス生徒は大量の血と内臓を零しながら真っ二つになって倒れた。周囲のタルタロス生徒達は悲鳴を上げて戦意喪失し、銃を捨てて腰を抜かし失禁する。しかしレインコートの少女は容赦なく攻撃を続け、1人残らず殲滅していった。

 

 

ヘルメット団A

「おい、これ大丈夫なのか…? 思いっきり殺しまくってるぞ?」

 

ヘルメット団B

「うえっ…えげつねぇ……タルタロスの連中に少し同情しちまうわ…」

 

 

________________________

 

 

 

カイザーPMC

「よし、ここは制圧した!!進めええええ!!!」

 

 

その頃、正面からの戦線ではようやくカイザー陣営が前進し、タルタロスの最初の防衛線突破に成功する。傭兵バイトとヘルメット団の大部隊は次々と施設内に入り、タルタロスの生徒達と交戦する。入り組んだ施設故に突発的な白兵戦も多発しており、銃床で叩いたり銃身で鍔迫り合いをしたりと泥沼化していった。

 

 

傭兵バイトB

「へへっ、おっ先にーー!!」

 

傭兵バイトC

「クソッ、待ちやが[ドガァァアアン!!!]……えっ?」

 

 

 

 

 

「ん˝ん˝ん˝んぅぉぉおおおおおお!!!!」

 

ヘルメット団C

「ぐあぁあ!!?」

 

「ふんぁあぁっ!!!」

 

ドガァァアアン!!!

 

傭兵バイトD

「ぎゃあああああ!!!」

 

 

 

筋肉質で大柄なタルタロスの生徒は防楯付きのバズーカ砲を鈍器のように振り回して近くのヘルメット団員を弾き飛ばし、続けて背後に振り向くと同時にロケット弾を放って傭兵バイト吹き飛ばした。その圧倒的な強者感に傭兵バイトとヘルメット団達は攻撃の手を止めて後退ってしまう。その生徒はタルタロスにおいて名の知れた存在であり、名前を知っている傭兵バイトとヘルメット団達から声が上がった。

 

 

ヘルメット団D

「本堂テユだ!!!」

 

傭兵バイトE

「本堂テユって、確か元ミレニアムの…?」

 

ヘルメット団E

「素手で車を持ち上げたって噂の!?」

 

 

 

テユ

「どうした? こいつで吹き飛ばされたい奴から前に出ろ!!!」

 

カイザーPMC

「何をしている!?奴はタルタロスの生徒会長だぞ!!早く仕留めてこの戦いを終わらせるんだ!!!」

 

 

カイザーPMCは傭兵バイトとヘルメット団達に発破を掛けようとするが、誰1人として動く気配は見られない。これにはカイザーPMCも頭を抱えて唸る事しか出来なかった。この現状をテユは態勢を立て直す好機と見て周囲のタルタロスの生徒達に声を掛けた。

 

 

テユ

「所詮は烏合の衆か……タルタロスの生徒達よ!!!情けは無用だ!!!この身の程知らず共に力の差と言うものを教えてやるのだ!!!そしてそのまま地上に叩き出してや………むっ!!?

 

 

 

ヘルメット団F

「何だあいつ…銃持ってないぞ…」

 

傭兵バイトF

「ヘイローが無い…あれじゃ殺してくれって言ってるようなもんだ。」

 

傭兵バイトG

「相手が相手だしなぁ…」

 

ヘルメット団G

「雨降ってないのに何でレインコート着てるんだろ?」

 

 

傭兵バイトとヘルメット団達を掻き分けて出てきたのはレインコートの少女。ヘイローが無く銃を持っていない彼女は黄色いレインコートも相まって悪目立ちしていた。当然ながら周囲からは陰口が飛び交い、レインコートの少女にもその声は届いているが、彼女は無視してカイザーPMCに声を掛ける。

 

 

「30万……」

 

カイザーPMC

「ん…? 何だと?」

 

「この筋肉達磨の値段だ。私らみてぇな雇われはなぁ、テメェらみてぇに結果出して名誉得るだけじゃ食っていけねぇんだよ。」

 

カイザーPMC

「ほぅ……頼もしい奴だ。いいだろう、見事奴を仕留める事が出来たら、報酬に10万上乗せしてやろう。」

 

「チッ……機械の分際でセコい奴だな……まぁいい、さっさと終わらせるぞ。」

 

 

拳を鳴らしてテユの前に出たレインコートの少女。テユはレインコートの少女を観察するように見つめ、返り血が付着したレインコートを見て只者ではないと察する。一方で銃を持たずヘイローも無い事からいとも簡単に倒せるという確固たる自信もあり、それが慢心を生んでしまっていた。

 

 

テユ

「後悔する事になるぞ。お前が賭けた10万で、死ぬ事になるやもしれ…」

 

「うぉぉおらああああああああ!!!!!」

 

 

ガキィン!!!!

 

 

テユ

「何っ!!?」

 

 

ゴガァンッ!!ドグォッ!!バギィァ!!ズガァンッ!!

 

 

拳の連撃をバズーカに付けている防楯で防ぐが、その一撃の重さに一歩また一歩と後退させられてしまう。この光景に傭兵バイトとヘルメット団達は驚き、更にはタルタロスの生徒達も動揺を隠せずにいた。

 

 

ヘルメット団F

「は、速ぇ!!?」

 

傭兵バイトG

「いやいや、拳で出せる威力じゃないって…」

 

傭兵バイトF

「何モンだあいつ!!?」

 

 

タルタロス生徒B

「ちょっと!!?テユ会長が押されてない!!?」

 

タルタロス生徒C

「あんなに苦戦してるテユ会長初めて見た…」

 

 

拳の連撃を受け止め続けたバズーカの防楯はベコベコにひしゃげてしまっていた。これにはテユも我慢の限界を迎え、大声で叫びながら前蹴りを仕掛けた。

 

 

テユ

「いい気になるなぁ!!!!」

 

「くっ…!!」

 

 

バズーカが鈍器のように振り下ろされ、レインコートの少女はこれを両腕で受け止め防御する。そして互いにバックステップで距離を取ると、レインコートの少女は再び真っ直ぐ駆け出し、テユはバズーカを構えてロケット弾を発射した。

 

発射されたロケット弾は真っ直ぐレインコートの少女を捉えていたが、彼女は避ける素振りは見せずに右手の裏拳でロケット弾を弾いた(・・・・・・・・・・・・・・・)。裏拳はノイズに覆われており、触れた弾頭もすぐにノイズに覆われ消滅してしまった。弾頭を失ったロケット弾はそのまま明後日の方向に飛んで行ってしまい不発に終わる。これには周囲のタルタロスの生徒達は疎かテユも呆然としてしまった。

 

 

「っ…!!!」

 

テユ

「しまっ…!!」

 

 

そしてその隙をレインコートの少女は見逃さず、一気に肉薄してノイズを纏った左フックを仕掛ける。その左手がテユの右脇腹に接触するとそこもノイズに覆われ、脇腹の奥深くへと食い込んでいく。腹を抉られる激痛がテユの顔を歪ませ、遂に膝を突かせるに至った。深く食い込んだ左手を引き抜かれると、右脇腹を覆っていたノイズは消えて丸い穴が空く。そしてそこから鮮血と共に内臓が零れ始め、テユは地面に落ちないように両手で押さえた。

 

レインコートの少女は満身創痍のテユに止めを刺そうと右手を上げ、チョップの構えと同時に再びノイズを纏う。テユは吐血しながらも命乞いをするしかなかった。

 

 

テユ

「待て…!!認める、お前は強い……タルタロスが守り続けた地下資源も引き渡す…だから命だけ

ガオンッ

わぉぁああああああああああああ!!!!??」

 

 

無慈悲にもノイズを纏ったチョップはテユの頭を両断した。首の根元まで食い込んだ右手を引き抜くと、テユのヘイローは砕け散り、脳天から首に出来たノイズの縦線は消え、そこから血飛沫が上がって背後にいたタルタロスの生徒達に降り注ぐ。レインコートの少女はこれに対し何とも思わず一息つき、周囲を見渡す。傭兵バイトとヘルメット団達は呆然とレインコートの少女を見つめていたが、タルタロスの生徒会長である本堂テユを倒したという事実に気付く。そして自分たちの勝利が確定したと理解し、一斉に歓声を上げた。

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」

 

 

カイザーPMC

「い、今だ!!!敵は怯んだぞ!!!畳み掛けろおおおおおおお!!!」

 

 

周囲が壊走していくタルタロスの生徒達を追撃していく中、レインコートの少女はテユの死体から脳の一部を毟り取り、何の躊躇いも無くそれを頬張る。この悍ましい光景を遠くから見ていた者がおり、その者は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「神秘でもなければ恐怖でもない、あの力は我々でも理解し得ない何かを秘めている。興味深いですね……その力の根源が何なのか、探求のし甲斐が有りそうです…クックックックックッ……」

 

 

 





という訳で1話目です。
レインコートの少女は何者なのか、その正体は次回以降までお預けという事で。
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