黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~ 作:ww12
今回はスケバントリオが酷い目に遭っているので注意。
________________________
前回のあらすじ
キヴォトス南部の地下に存在する資源を巡ってカイザーコーポレーションとタルタロス学園が衝突した。カイザーPMCが雇った傭兵バイトとヘルメット団からなる大部隊が攻め込む中、そこに紛れていたのはヘイローも銃も持たず黄色のレインコートを纏った謎の少女。
その少女は触れた物を『削り取るように消滅させる』といった規格外の能力を持ち、この能力を用いてタルタロス学園の生徒会長、本堂テユを殺害。カイザー陣営の勝利に大きく貢献したのであった。
見事タルタロス学園攻略を果たした傭兵バイトとヘルメット団達は列を作り、カイザーPMCから報酬金を順番に受け取る。そんな中、列に紛れていたレインコートの少女に順番が回ってきたが、そこに軍服を纏ったロボットの男がやってきた。
カイザーPMC
「し、司令官!?」
ジェネラル
「君とは少し話がしたい。報酬金を受け取ったら私の所に来てくれ。」
「あん…? まぁいい、早く金寄こせ。」
カイザーPMC
「あ、ああ……給料2ヶ月分と、それからタルタロスの生徒会長討伐の追加報酬10万だ。」
レインコートの少女は無言で受け取り、少し離れた所で待つジェネラルの下へ向かう。腕組みをしながら待っていたジェネラルはレインコートの少女の隣に並ぶように立つと口を開いた。
ジェネラル
「君の報酬金は他の雇われと比べて3倍多く、更に追加報酬も得ている。これが何を意味しているか分かるかね?」
「さぁな。」
ジェネラル
「我々カイザーは今日の戦いで活躍した君を高く評価している。そこで正式にスカウトしたいと思って、こうして声を掛けた訳だ。君は見たところどの学籍も無いように見える。幾ら強くとも、1人で生きていくのは至難の業だ。我々の下へ来れば、君の生活も豊かになると保障するぞ。」
「成程……」
レインコートの少女の呟きにジェネラルは計画通りと内心思った。ここで規格外の力を持つレインコートの少女を味方に付ければ、連邦生徒会の掌握が容易になると踏んだのだ。尚、レインコートの少女の返答は期待していたものではなかった。
「断る。」
ジェネラル
「ふむ……これからの生活も保障すると言っているのだが、何の不満が有るのだ?」
「嫌いなんだよ。テメェらみてぇに群れて窮屈な思いすんのはよ。」
ジェネラル
「ならば、君が今望んでいる物は何だ。我々カイザーならすぐに用意出来るぞ。」
「言ったなテメェ。」
ジェネラル
「っ!!!??」
レインコートの少女は一気に詰め寄ると胸倉を掴み睨みつける。予想外の展開にジェネラルは言葉を詰まらせてしまった。
「テメェんとこの系列に不動産は有るのか?」
ジェネラル
「な、何…?」
「テメェんとこの系列に不動産は有んのかって聞いてんだ!!!!」
ガシッ ギギギギギ……
ジェネラル
「がっ……かはっ…」
胸倉から手を離したかと思いきや、今度は首を掴み力を籠める。ジェネラルは質問に答えなければ殺されると察し、枯れた声で答えた。
ジェネラル
「も、勿論有る……ただ、私の管轄ではないから一度連絡を入れる必要がある……」
「なら構わねぇ。さっさとしやがれ、すぐに用意出来んだろ?」
ジェネラル
(生意気な子供だが……下手に刺激すれば私であろうと消し飛ばされる可能性が高い…ここは素直に応じるとしよう…)
ジェネラルは通信機らしき物を取り出すとカイザー系列の不動産会社に連絡を入れる。少しすると一通り連絡し終えたのか、通話を繋げたままレインコートの少女に声を掛けた。
ジェネラル
「まずは居住者名の登録が必要になる。君の名前を聞かせてくれないか?」
「
ジェネラル
「楽間エメラだな……次は物件だが、君はどこで暮らしたい?」
「ブラックマーケットの近く。出来れば人があまり寄り付かねぇような所だ。」
ジェネラル
「成程……となると以前から目を付けていたあの空き家がいいかもしれんな。」
目星を付けていた物件が存在するらしく、電話の向こうではスムーズに手続きが進んでいるようであった。そして遂に通話を終えて通信機を懐に仕舞うとジェネラルは近くのカイザーPMCに車を手配するよう命令を出した。
ジェネラル
「ブラックマーケットから少し離れた所に一軒家が有るのだが、そこは大昔の地震による地割れで出来上がった深い谷が存在する危険地帯だ。そこで構わないのであれば、このまま現地に送ろうと思っている。」
「構わねぇよ。」
カイザーPMCが用意した軍用車に乗り込み、タルタロス自治区の地下空間から離れて数時間ぶりの地上に出る。そのままブラックマーケットを通過して街の外れの方に出ると、そこは僅かな草しか生えていない荒野のような場所だった。その先には深い谷が続いており、谷の向こう岸には木造の小屋が見えていた。
「あれがそうか?」
ジェネラル
「如何にも。以前はこの谷に橋が架かっていたのだが、誰も手入れをしていなかったのか、老朽化して崩れてしまったようだ。あの小屋に行くにはどうしてもこの谷を超える必要があるのだが、君はどうするかね?」
「問題ねぇよ…」
するとエメラは全身がノイズに覆われ、人型から歪んだ球体のような形状に変化する。そしてその場から飛翔して谷の上を通過し、小屋の前に降りると元のレインコートを纏う姿に戻った。ジェネラルは内心驚きつつも平静を保ち、声を掛ける。しかしその声は驚きを隠しきれてないのか、若干震え気味であった。
ジェネラル
「住み心地は良さそうかね?」
「悪くねぇ、普通に暮らせそうな出来だ。」
ジェネラル
「お役に立てたようで何よりだ。最低限の生活用品は後日送るよう手配しておく。今はその場にある物で我慢してくれ。」
そう言い残し、ジェネラルは軍用車に乗り込んで来た道を戻っていく。エメラはそれを見届けると小屋の中に入り、レインコートを脱いで机の上にほっぽり出した。レインコートの下にはワイシャツに黒いスカート、更に黄色のネクタイと緑のテーラードジャケットを着ており、ワイシャツはスカートから出してネクタイを緩め、ジャケットは前開きをしたりと全体的に着崩した格好をしていた。
「住処は確保した。次は生活費をどう稼ぐかだ……それにしてもカイザーの奴らあっさりと信じたな。楽間エメラが偽名だって事に気付きもしなかった。」
キイコ
「私の本当の名前は
エメラ改めキイコはレインコートを脱いだ状態でブラックマーケットへ向かい、自分に合った働き口は無いかと求人情報を探し始める。すると歩いている道の先で3人のスケバンが屯しているのが見えた。キイコはそのまま素通りしようと早歩きで真っ直ぐ進むが、背後から肩を掴まれてしまった。
スケバンA
「おい、何素通りしようとしてんだ。通行料払えよ。」
キイコ
「…………」
スケバンB
「聞こえてねぇのか? 金出せっつってんだよ。」
キイコ
「………テメェらみてぇな三下に払う金はねぇ。」
スケバンA
「んだとコラ!!!」
ミニガンの銃口を向けようと構えるが、次の瞬間には銃身にノイズが纏わり付いていた。スケバンAは困惑しているとその隙を突いてキイコは顔面に拳を叩き込む。スケバンAは鼻血を撒き散らしながら3回バウンドした後に建物の壁に激突して気絶してしまった。
スケバンC
「何だこいつ!!?」
慌ててライフルを構えるスケバンCだが、既にキイコは死角に回り込んでおり、トリガーに掛けた右手の指にノイズを纏った踵落としを食らわせた。スケバンCの右手の指はライフルのグリップやトリガー諸共ノイズに覆われ、やがてそれが消えると指は削り取られたかのように消滅してしまっていた。残った指は親指の半分と小指だけであり、無くなった指の断面から鮮血が噴き出した。
スケバンC
「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝い˝ぃだぁい˝い˝い˝い˝い˝!!!!!」
キイコ
「小指は残した、少なくとも鼻糞ぐらいは穿れるだろうよ。さて、残るはテメェだな。」
スケバンB
「こ、こっち来んじゃねぇえええええ!!!」
半狂乱でサブマシンガンを乱射するが、キイコは全身をノイズに変えて急接近する。弾丸はノイズをすり抜けて奥に飛んでいくだけであり、スケバンBはこの非現実的な瞬間に顔を青ざめ戦意喪失してしまった。キイコはスケバンBの頭を両手で掴み顔を睨みつける。黄色い瞳の視線の先に有るその顔は恐怖で涙を流し、鼻水も溢れてマスクがずぶ濡れになっていた。更には足元から液体が滴り落ちるような音が聞こえ、微かなアンモニア臭も漂ってくる。
キイコは呆れたように溜息をつくと、スケバンBの目にノイズを纏った親指を持っていき、それを躊躇い無しに捻じ込んだ。
スケバンB
「ぎゃあ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝!!!!!」
スケバンBの両目はノイズに覆われ、それが消えると同時に血が滝のように溢れ出す。顔を殴られ気絶し、指を失い、失明したスケバン達にキイコは一切気に掛けず先へ進み始めた。まるで最初から眼中に無かったかのような素振りに陰から見ていたブラックマーケットの市民達は震え上がり、急いで皆に知らせようと四方八方に走り出す。
これが巡り巡って新たな出会いを招く事になるのをキイコはまだ知らなかった。
キイコ
「チッ……この仕事じゃ大した金にもなんねぇか……次だ次。」
レインコートの少女の名前判明&ブラックマーケットでの活動開始となりました。
次回からはようやく原作からのネームド生徒が登場します。