黄衣の虚無 ~Apocalypse Archive~   作:ww12

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前回のラストから続き、キイコの出自に迫る内容となります。そして遂にあの方とご対面。

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前回のあらすじ

ブラックマーケットを散歩していたキイコはひょんな事からトリニティ総合学園の生徒である阿慈谷ヒフミの怒りを買ってしまい、そのまま戦闘となってしまう。最初は自身の能力を用いて圧倒していたが、途中から乱入したヒフミの友人である白洲アズサによって形勢逆転してしまい、左肩を負傷してしまった。予期せぬ事態にヒフミとアズサは応急処置を行い、キイコは一命を取り留める。意識を取り戻したキイコは2人と和解して親しくなり、自分の出自について語るのだった。


Ep4.クンヤン人

キイコの口から語られたのは聞いた事も無い学校名と人種であり、ヒフミとアズサは困惑する。キイコはそのまま話を続けるが、その話は聞けば聞く程キヴォトスの闇に触れるような話であり、連邦生徒会に不信感を抱きそうになる情報だらけだったのだ。

 

 

キイコ

「かつてこの世界の地上には≪名も無き神≫を崇拝する司祭達がいて、当時のキヴォトス人達とは対立していた………っていうのがこの世界の正史になっているそうだが、実際は少し異なる。ヘイローを持つキヴォトス人以外にも別の民族が存在していて、そいつらは司祭達の思想に共感していた。その結果何が起きたと思う? 迫害だ。ヘイローを持たないこの民族は司祭達に共感しただけで、次々とキヴォトス人達に追いやられていったんだ。最終的にキヴォトスの外れまで追いやられて、最早地上に自分達の居場所は無いと悟り地下に潜って新たな文明を築いた。そうして出来上がった地底都市の名がクンヤンで、そこに住み着いたヘイローを持たない民族はクンヤン人と名乗るようになった。尤も、連邦生徒会はこの事実を隠してクンヤン人そのものの存在を無かった事にしているがな。」

 

ヒフミ

「そんな事が……」

 

アズサ

「酷いな…」

 

キイコ

「クンヤン人に対する仕打ちに司祭達は悲しんだそうだ。ヘイローを存在を良い事に、ヘイローを持たない罪無き弱者達を一方的に攻撃している様はまるで侵略行為そのものだと。やがてキヴォトスが学園都市として発展していくと、クンヤンもそれに対抗して学園都市化の開拓を始めた。ただ、当初は司祭達が都市の主導権を握っていた影響もあってか、クンヤンはキヴォトス以上に発達した文明を築いた。それだけじゃない、複数の学校を統合して街そのものを一つの学校にする事で、生徒達の一体化を図った。これがさっき言ったクンヤン連合学園という名前の所為になる。そこの生徒はキヴォトスと違って常に一枚岩だ。街中で銃撃戦が起きた事は一度も無いらしい。」

 

アズサ

「だがお前は見たところ脱走者のようだが……」

 

キイコ

「ああ、それは私が特殊過ぎるだけだ。何せクンヤン史上初の脱走者だからな。」

 

 

かつて地上に存在したヘイローを持たない民族こと、クンヤン人の封じられた歴史に2人は絶句するしかなかった。特にヒフミは自分達の先祖が人種差別による迫害を行い、挙句の果てにキヴォトスから追い出してしまったという事実に罪悪感を感じてしまったのだ。

 

 

ヒフミ

「ごめんなさい……私達の先祖がそんな酷い事を…」

 

キイコ

「何でテメェが謝んだよ。そんな事しても過ぎた歴史は変わらねぇ。」

 

アズサ

「ああ、私達に出来るのは同じ過ちを繰り返さないようにする事だ。今のキヴォトスに差別なんてあってはいけない。」

 

ヒフミ

「どうにか和解出来ませんか? 私は人種差別なんて絶対に認めません。みんなと仲良くなれる未来が見たいんです!!」

 

キイコ

もう遅ぇ。私以外の(・・・・)クンヤン人全員が本能的にキヴォトス人の絶滅を望んでる。そうやって平和思想を訴えても、テメェがキヴォトス人じゃ端から聞く耳持たねぇよ。」

 

ヒフミ

「そんな……そんなの…あんまりじゃないですかぁ!!!」

 

アズサ

「歴史は繰り返す……今度はクンヤン人がキヴォトス人を迫害する番って訳か………」

 

 

非情な現実を突き付けられ、ヒフミは泣き出してしまう。一方アズサはかつて自身が所属していたアリウス分校を思い出していた。エデン条約の裏で暗躍したアリウス分校が憎悪と執念を糧に式典会場を襲撃した事件は記憶に新しく、これも発端は過去に被った差別と迫害で奇しくも一致しており、クンヤン人の境遇が他人事とは思えなかったのだ。

 

 

キイコ

「早く泣き止ませろ。話が続けられねぇ。」

 

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アズサ

「落ち着いたか?」

 

ヒフミ

「うん、もう大丈夫です…」

 

キイコ

「続けるぞ。次は私自身についてだ。私は最初に言ったようにクンヤンで暮らしていた。入学当初から連合生徒会長に認められたいと躍起になって、その為なら殺しやら何やらと無茶しまくったもんだ。転機を迎えたのは3年に進級したときだった。ツァス連合議会*1が司祭達が遺した技術を使って平行世界への道を開けたらしくてな。私はそこに出向く攻略メンバーに選ばれて、仲間と一緒に平行世界のキヴォトスを襲撃したんだ。当時は思想教育の影響を強く受けていたから、楽しんでキヴォトス人を殺しまくったよ。」

 

 

その話を聞いた2人はまたしても絶句してしまう。ヒフミはキイコが仲間と共に平行世界のキヴォトスを滅ぼしたという話を聞いて警戒心を高め、アズサは銃に手を伸ばそうとしていた。しかしキイコはそれに気付いてアズサを睨み付けながら話を続ける。

 

 

キイコ

「正直言って、私のキヴォトス人に対する憎悪はそのときに冷めちまった。平行世界とはいえ、キヴォトスを滅ぼしたという結果に変わりないからな。だけどツァス連合議会は満足しなかった。その後も別の平行世界の道を開いてはそこに向かわせて滅ぼし、また別の道を開いてはそこに向かわせて滅ぼし……その繰り返しで私は段々と気が滅入っちまった。そうしていくうちに今年で8年に進級して、ようやく攻略メンバーから外された。それと同時に平行世界のキヴォトス攻略で積み上げた戦績を称えられて、クンヤン連合学園の最高幹部『オールドワンス』に選ばれた。オールドワンスは連合生徒会長が最も信頼を置く幹部の総称で、世代ごとに数も異なる。今の代は私を含めて17人だ。」

 

ヒフミ

「貴女、クンヤンの大幹部なんですか!?」

 

キイコ

「ああ、だが連合生徒会長の思想に賛同出来なくなって脱走し、今に至る訳だ。」

 

アズサ

「その連合生徒会長はどんな奴なんだ?」

 

キイコ

クンヤン連合学園10年、區藤(くどう)フルア。司祭達や初代連合生徒会長の思想を色濃く受け継いだクソッタレだ。」

 

 

するとアズサはある疑問を抱く。クンヤン連合学園の情報を聞いていくうちにキヴォトスの学校との相違点が見られ、違和感を覚えたのだった。

 

 

アズサ

「質問いいか? クンヤンは何歳から入学出来る?」

 

キイコ

「12歳からだったはず。」

 

アズサ

「学年は全部で幾つだ?」

 

キイコ

「10年制だ。」

 

アズサ

「12歳で入学したとして……今年で8学年のお前は、まさか19歳…!?」

 

ヒフミ

「ええええええええええええええええええええ!!!??」

 

 

キイコが当に成人を迎えていた事に気付き、2人は驚愕する。この世界においてまともな容姿をしている身近な大人はシャーレの先生だけであり、自分達と年齢の近い大人の存在は皆無だったのだ。しかしキイコは驚く2人を見て困惑していた。

 

 

キイコ

「もう今年の誕生日は過ぎたから20歳だ。外の世界じゃ大学っていう20歳過ぎでも通える学校が有るんだが、キヴォトスには無ぇのか?」

 

 

さっきまでの重苦しい空気が吹き飛び、キイコは脱力して壁に凭れ掛かる。するとヒフミが何かに気付いて声を掛けた。その視線の先はキイコの首であり、右側の顎の付け根からすぐ下に黄色の烙印のようなものが浮かび上がっていたのである。それは3つの『?』が融合したようなマークを円で囲っており、まるでヘイローのようであった。

 

 

ヒフミ

「キイコさんの首に何か有りますけど…」

 

キイコ

「ああこれか。『スティグマ』っつって、クンヤン人のヘイローみてぇなもんだ。」

 

アズサ

「スティグマとはまた不謹慎な名称だな……」

 

キイコ

「こいつは力の源だ。能力を使い過ぎると出血しちまうから常に気を付けなきゃならねぇ。」

 

ヒフミ

「能力って、ノイズを纏った攻撃の事ですよね。」

 

キイコ

「ああ、クンヤン人なら誰もが持つ物理的接触操作能力、通称『非物質化(ノンマテリアル)』。自分の体の質量を無くして相手の物理攻撃を無効化したり、逆に触れた物体や相手の質量を無くして消滅させる。歴とした対キヴォトス人用の能力だ。いくら頑丈な体だろうと、それが物体である以上絶対に打ち勝つ事は出来ない。ちなみにこの能力も司祭達が遺した遺産だ。」

 

 

クンヤン人の能力を知った2人は最早言葉が出なかった。非物質化の前にはキヴォトス人特有の頑丈さなど紙装甲同然であり、先程キイコと戦って勝てたのは単に運が良かっただけだと思うしかなかったからだ。キイコから語られた情報量の多さに2人は脳がパンクしそうになったのか、頭を抱えて唸りだしてしまった。

 

 

アズサ

「ちょっと整理する時間が欲しいな……今日はもうここまでにしよう…」

 

ヒフミ

「そうですね……キイコさん、もしまた会えたら話の続きを聞かせてください。」

 

キイコ

「ああ、その機会が有ったらな。」

 

 

そう言い残すとキイコは全身をノイズに変えて飛翔し、小屋まで真っ直ぐ向かった。時刻はすっかり日没で周囲は暗くなっており、キイコは小屋の明かりを点けた。

 

 

キイコ

「………………あいつらと話しているときにずっと感じた視線の正体はテメェだな?」

 

「クックックッ………如何にも、こうして面と向かって話し合う機会を待ち望んでいましたよ。蓮田キイコさん。」

 

 

明かりを点けると小屋の中には黒いスーツを纏った異形の男が立っていた。肌は真っ黒で白い亀裂が入っており、顔には目や口のような大きな亀裂が入り黒い靄のようなものを漂わせている。キイコは警戒心を露わにし、右手にノイズを纏う。しかし黒スーツの男は両手を上げて無抵抗を意思を見せた。

 

 

黒服

「落ち着いてください、私は神秘の探求を行う≪ゲマトリア≫の≪黒服≫と申します。貴女が持つその力は神秘でもなければ、それが反転した恐怖でもない。私はその力の根源を解明したくて、こうしてやって来た訳です。」

 

キイコ

「ゲマトリア……區藤会長が言っていた連中か………まぁいい、もうクンヤンに戻る気はねぇから教えてやる。」

 

黒服

「っ!?本当ですか? では是非とも聞かせてください。貴女がキヴォトスの生徒に話した非物質化の源を。」

 

キイコ

「≪虚無≫。クンヤン人の力の源は神秘でも恐怖でもねぇ、その間に有るモンだ。」

 

黒服

「神秘と恐怖の間ですか……それは考えてもみませんでしたね。確かに一理あります。神秘を正の数、恐怖を負の数に例え、それを五分五分に足すと後に残るのは0……成程、貴女の力は神秘だけでなく恐怖すらも掻き消すという訳ですか………クックックッ……実に面白い…!!」

 

キイコ

「何企んでるのか知らねぇが、もっと探求したいのなら私の話も聞いてもらうぞ。」

 

黒服

「クックックッ……いいですとも、我々ゲマトリアに何を伝えたいのか聞かせてもらいましょう。」

 

キイコ

「クンヤンを脱走した以上、追っ手をキヴォトスに送り込んでくるはずだ。クンヤン人はキヴォトス人を憎んでいるから、放っておいたら次々と殺されちまう。テメェらゲマトリアからすれば、研究対象を虐殺されるのは望ましくねぇだろ?」

 

黒服

「確かに、クンヤン人の能力である非物質化は生徒達にとって脅威と言えるでしょう。となると……貴女が言いたい事はこうですか? 『力の探求を許可するから協力してほしい』、と。」

 

 

キイコは無言で頷く。すると黒服は口を押えて笑い出した。その笑いは数分間続き、ようやく収まると黒服は懐から書類を出して机の上に置いた。

 

 

黒服

「そうと決まれば、この契約書に名前と印をお願いします。」

 

キイコ

「ああ…」

 

 

キイコは契約者の欄に名前を書いた後に自身の親指を噛んで出血させ、血で染まった親指を印鑑の代わりに押し込んだ。それを見た黒服は再び笑うと自身の親指を口の亀裂まで持っていく。すると親指から黒い靄が溢れ出し、確認の欄に印として押し込んだ。契約書には血判と黒い靄の印が押されており、微かな禍々しさを漂わせていた。

 

 

黒服

「これで契約は完了です。しかし血判とは驚きました。思わず私も血判で応えてしまいましたよ…クックックッ……」

 

キイコ

「用が済んだなら早く行きやがれ。私はもう寝たいんだよ。」

 

黒服

「そうですか……では、私はこれでお暇しようと思います。またお会いしましょう、蓮田キイコさん……クックックックックッ…」

 

 

そう言い残して黒服は小屋から出ていく。キイコはジャケットを脱ぎネクタイを外してベットの上に身を投げ、そのまま天井を見つめ続ける。そして明日の予定はどうしようかと考えながら徐々に目を閉じていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガコッ  ギィィィィ……

 

 

「ここがキヴォトスか……蓮田キイコはこの街のどこかにいる訳だな…」

 

「単独行動は避けろ。邪魔をする奴は殺せ。」

 

 

同時刻、キヴォトスのD.U.内に有るマンホールの蓋が開き、そこから次々と()()()()()()()()()少女達が姿を現す。ワイシャツに青いベストと黒いスカートを纏い、手には拳銃やスコップ、更にはナイフや銃剣、つるはし、手斧といった凶器を握っていた。

 

 

*1
キヴォトスの連邦生徒会に該当する組織




黒服との接触、そして不穏な空気が段々と漂ってきました。

次回はあの4人組との邂逅です。


追記:誤字が見つかり急遽修正しました。前々回でもあったな……
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